【夜勤明けの過ごし方】睡眠専門医がすすめる交代勤務の睡眠調整法

【夜勤明けの過ごし方】睡眠専門医がすすめる交代勤務の睡眠調整法

フミナーズ読者の中にも、交代勤務で働く方が多くいらっしゃるはずです。夜勤明けはどんな風に過ごしていますか?

「夜勤明けは疲れきっているので、帰宅後すぐに眠ってしまう」という方もいれば、「昼の時間を有効に使って夜まで遊びまわる」人もいるでしょう。

 

実は夜勤明けの過ごし方次第で、疲労をうまく回復できる場合と、かえって疲労をため込んでしまう場合があります。

交代勤務でも身体への負担をなるべく抑えるための、夜勤明けの過ごし方をご紹介します。

 

夜勤明けの過ごし方が大切なわけ

「日勤に比べて夜勤の後は、身体がつらくて大変」と、思っている人が多いことでしょう。実際に交代勤務は、身体にかなりの負担をかけています。

 

交代勤務によっておこる健康への影響について、次にあげるものが知られています(久保達彦「交代制勤務による発がんリスクコミュニケーション」より)。

  • 睡眠障害
  • 胃腸障害
  • 肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム
  • 月経周期の乱れ、月経痛、不妊
  • 流産、早産、低体重児出産
  • 心筋梗塞、脳卒中
  • 乳がん、前立腺がん

 

これらの病気の多くは、眠るべき夜間に起きているため、生体リズムが狂ってしまうことが原因です。

 

たとえば、生体リズムがおかしくなると、脂肪や糖の代謝がうまくいかなくなるので、脂質異常症や糖尿病、肥満が起こりやすくなります。

睡眠のリズムが乱れると、女性ホルモンの分泌量が減ったり、分泌のリズムが不規則になったりします。その結果、不妊や流産、早産などが起こります。

睡眠ホルモンのメラトニンには、性ホルモンとしての働きもあります。そのため、生体リズムが不規則になると、性ホルモンが関係する乳がんや前立腺がんが増えます。

交代勤務の人はそうでない勤務の人に比べて、乳がんに1.7倍、前立腺がんに1.4倍もかかりやすくなるという統計があります。

 

これらの病気になるリスクを増やさないためには、夜勤明けに十分な睡眠をとって、睡眠のリズムを早く取り戻さなければなりません。

 

夜勤前や夜勤中、夜勤明けにできること

午後の仮眠は、夜の睡眠を先取りする働きがあります。ですから夜勤の前には、午後5時までに90分くらいの昼寝をしましょう。

これまでの研究で、50~120分の昼寝には夜勤中の眠気を減らす効果が認められています。

また、わずか20分の仮眠でも効果があったとする報告もあるので、夜勤の前には少しでも眠っておくことが大切です。
 

目覚めたら、コーヒーや緑茶などでカフェインをとると、仮眠の後の眠気を早くなくしてくれます。
 

夜勤中にも、できるだけ仮眠をとりましょう。そうすれば、眠気が減って作業能率が高まり、注意力が保たれるので事故やミスも少なくなります。

どの時間帯にどれだけの長さで仮眠を取ればよいのかは、まだはっきりしていません。まとまった時間が取れるなら、120分の仮眠がお勧めです。

このときも仮眠から目覚めたら、カフェインが入った飲み物や食べ物をとりましょう。

 

強い光には、眠気を減らして覚醒度を上げる働きがあります。夜勤中の職場は十分に明るくしておき、仕事が終わったらサングラスなどで強い光を避けながら、家に帰りましょう。

自宅でも遮光カーテンや厚手のカーテンで部屋を暗くして、できれば昼過ぎまで眠ります。翌日が日勤の場合は、夜の睡眠に悪影響を及ぼさないために、午後3時には起きましょう。

 

午後に眠気が残れば、10分以内の短い仮眠をとると楽になります。

 

夜勤以外の日も質の良い睡眠を心がけよう

交代勤務の人は、夜勤の日以外にも注意が必要です。夜勤でずれた生体リズムをそのまま引きずっていると、日勤の日や休日になかなか眠れなかったり起きられなかったりします。

 

睡眠や産業衛生の専門家がまとめた「働く世代の快眠10カ条」を参考にして、良い睡眠がとれるように心がけましょう。ここでは「交代勤務の工夫」以外の9項目をご紹介します。

 

十分かつ快適な睡眠で、仕事のやる気と効率がアップ

仕事のために睡眠時間を削るというのは、得策ではありません。睡眠不足になると、作業能率が落ちミスも増えるので、結局、効率的な仕事ができません。

煮詰まる前にグッスリ眠って、疲労の回復とストレスの解消を図りましょう。

 

睡眠時間は人それぞれ。日中の充足感が快適な睡眠のバロメーター

統計的には7時間前後の睡眠をとっている人が、健康で長生きなのは確かです。その一方で、睡眠はとても個性的なものでもあります。

自分に必要な睡眠時間と睡眠のリズムを知って、充実した快眠ライフを楽しみましょう。

 

朝……目覚めとともに体内時計がスタート。快眠の秘訣(ひけつ)は起床時間にあり

夜の睡眠の準備は、朝、目覚めたときから始まっています。布団を出たら明るい光を浴びて、体内時計をリセットしましょう。

朝食をきちんととれば、胃腸にある第2の体内時計「腹時計」も動き出します。

 

昼……わずかな昼寝が午後の仕事効率を高める

ランチを食べたら午後3時までの間に、15分ほどの仮眠をとりましょう。短時間の昼寝は、午後の眠気を減らして仕事の能率をあげてくれます。

昼寝の後ではなく前にカフェインをとっておくと、さわやかに目覚められて、すぐに仕事に取りかかれます。

 

夜……快適な睡眠は自らの工夫で作り出す

夕方以降は、少し暗めで暖色系の照明で過ごします。

コーヒーやお茶などカフェインを含むものは、布団に入る4時間前までに、タバコも眠る1時間前までにしておきましょう。

夕方の軽い運動や就寝前のぬるめのお風呂は、寝つきを良くしてくれます。

 

寝る前に……自分なりのリラックス法を見つける

眠れない原因の多くはストレスです。眠る予定時刻の前1時間は、自分の好きなことしてリラックスできる時間にしましょう。

テレビやパソコン、モバイル末端、ゲーム機、スマートフォン、携帯電話などの画面は、眠気を減らしてしまうので避けたほうが無難です。

 

寝室……眠りやすい寝室環境も大切

理想的な室温は年間を通して16~26度、湿度は50~60%です。布団の中と部屋の温度差が大きいと、トイレなどで夜中に起きたときに、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。

明かりは豆電球のフットライト程度にして、図書館並みの静けさを目指しましょう。週に1度は布団を干して、清潔にすることもお忘れなく。

 

眠れないときの対処法……眠りは追いかけていくと逃げてゆく

布団に入ってからの考えごとや悩みごとは、眠れなくなる原因になります。

布団に入って30分たっても寝つけないときは、布団を出て、できれば他の部屋へ行って、リラックスできることをしながら眠たくなるのを待ちましょう。

翌朝は寝坊せずにいつもの時刻に起きると、次の夜には寝つきやすくなります。

 

それでも眠れないあなたに……早めに医師に相談を

生活の習慣や寝室の環境を見直してもうまく眠れないときには、病気のために不眠になっている可能性があります。

「いつか行こう」などと先延ばしにせず、早めにかかりつけ医に相談しましょう。診断がつかないとか治療の効果が出ないときには、睡眠障害の専門医を紹介してもらいましょう。

 

会社全体で取り組むべきこと

個人でできることとともに、会社全体でも交代勤務がしやすい環境を作ることに取り組みましょう。

 

交代勤務による睡眠障害を予防するためには、体内時計の狂いを最小限にすることが大切です。そのためには、勤務のローテーションを体内時計に合わせる工夫が必要です。
 

交代勤務のローテーションの組み方には、大きく分けて「正循環」と「逆循環」の2つの方法があります。

正循環は日勤→夕勤→夜勤と、勤務が次第に遅い時間帯になる方法です。
逆循環では、夜勤→夕勤→日勤と勤務時間帯が繰り上がってきます。

 

人間の体内時計は、24時間より少し長く約25時間です。このため、正循環は適応しやすく、逆循環では心身の不調が増えやすくなります。

できることなら職場全体として、正循環でローテーションするように、勤務体制を組み直してみてください。

 

日勤や夜勤が続く日数にも、工夫が必要です。勤務時間帯が短い周期で変わる「ファースト・ローテーション」は、夜勤の連続日数を減らす効果があります。

 

しかし、短い周期で睡眠時間を調整しなければならず、夜勤後の休日が十分に確保しにくくなるため、次の日勤では時差ぼけ状態になりやすい傾向があります。

 

これに対して、例えば「日勤5日→休日1日→夕勤5日→休日1日→夜勤5日→休日3日」のような「スロー・ローテーション」で勤務を組むと、睡眠時間を十分に確保しやすく、仕事中の作業能率を上げやミスを減らすことが期待できます。

 

夜勤前には自宅で仮眠をとり、休日の午前中は屋外で太陽の光を浴びるようにすると、さらに効果的です。

 

まとめ・夜勤明けには控えたいこと

夜勤明けの朝に眠気が減った気分になるのは、「朝には覚醒度が上がる」という生体リズムによるものです。

しかし、この時は脳の中に眠気の元である「睡眠物質」がたくさんたまっていますから、ちょっと気を抜くと居眠りしてしまいます。

 

実際に、アメリカの高速道路で起こった交通事故の分析によると、事故前の24時間に4時間未満しか眠っていないと、7時間以上眠った時と比べて事故の発生率が11.5倍になることがわかりました。

事故前に4~5時間の睡眠をとっていた場合でも、事故の発生率は4.3倍に上がります。

夜勤前や夜勤中に仮眠をとったとしても、夜勤明けの自動車の運転は、飲酒運転並みかそれ以上に危険ということです。

 

交代勤務では、とれるときに十分な睡眠をとって、生体リズムを早く元に戻すのが大切です。ここで述べたことを参考にして、健康で安全な毎日をお過ごしください。

 

photo:Getty Images

坪田 聡

執筆

医師・医学博士

坪田 聡

医師として睡眠障害の予防・治療に携わる一方で、睡眠改善に特化したビジネス・コーチとしても活躍中。「快適で健康な生活を送ろう」というコンセプトのもと、医学と行動計画の両面から睡眠の質を向上させるための指導や普及に尽力。総合情報サイトAll about 睡眠ガイド。 「睡眠専門医が教える! 一瞬で眠りにつく方法」(TJMOOK 宝島社)、「パワーナップ仮眠法」(フォレスト出版)他、監修・著書多数。

医療法人社団 明寿会 雨晴クリニック 副院長

Site: http://suiminguide.hatenablog.com/


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