眠りとスマホの適切な距離:快眠の大敵「スマホ」を手放せない時は?

眠りとスマホの適切な距離:快眠の大敵「スマホ」を手放せない時は?

連絡ツールとして役立つのはもちろんのこと、ネット検索・ゲーム・動画鑑賞など、さまざまな楽しみをもたらしてくれる「スマートフォン」。

しかし、就寝前に使うと頭や目が冴えてしまうため、快眠の大敵ともされています。実際のところ、おやすみ前のスマホにはどのようなリスクがあるのでしょうか?
 
今回は、慶應義塾大学医学研究科眼科学教室の臨床心理士・吉村道孝先生に、スマホが睡眠に及ぼす影響、さらに、スマホとの上手な付き合い方についてお話を伺いました。

 

メラトニンの抑制と情報による刺激。スマホが快眠を妨げる要因とは

スマホが睡眠によくないとされる原因のひとつは、ずばり「ブルーライト」。ディスプレイから発光される青く強いエネルギーをもった光が、睡眠ホルモン物質のメラトニンを抑制します。

 

しかし、ブルーライトだけではありません。スマホの画面から入ってくる情報が、神経を刺激することで睡眠の質を下げてしまうことも。

「単純にブルーライトだけでしたら、ディスプレイの明るさを最大限にしても、長時間浴びないと睡眠は影響を受けません。しかし、メールやSNS、ニュースなどを見ると自律神経が興奮するため、睡眠に大きな影響を与えると思われます」(吉村先生)

光の作用と興奮作用。どうやら、この2つが伴うと快眠を妨げてしまうようです。

 

睡眠効率はスマホの視聴距離で変わることも

吉村先生は、これまでに「スマートフォンと睡眠」に関する研究を発表しています。

まずは就寝前の姿勢別モバイル機器の使用状況を調査。スマホを所持している学生の多くが就寝直前や消灯後も利用し、ベッドの上やふとんの中で「寝転がった状態」でスマホを利用する時間が長いことが判明しました。

 

次に座ったときと寝転がったときのスマホから眼の距離を機械で計測。その結果、座っているときは平均20.3cm、横になっているときは平均16.4cmと、寝転がったときのほうが視聴距離は近いものに。

計測を行った対象者にアンケートを行ったところ、寝転がった状態での視聴距離が近い人ほど、睡眠効率が低下する傾向が見られました。
 
吉村先生は、「寝ながらスマホの場合には視聴距離はかなり近くなるので、ブルーライトを多く浴びてしまう。特に暗い場所では瞳孔が広がっているために、より多くの光が眼に入ってしまいます」と、睡眠時のスマホと眼の距離に懸念を示しました。

 

スマホ、ブルーライトとの「よりよい付き合い方」

吉村先生の研究では、学生のほとんどが寝る前だけでなく、就寝時もスマホを手の届くところに置き、着信音やバイブがONのままの状態で眠っていることが明らかになっています。

常にスマホを自分のそばに置き、就寝時の利用を続けていれば、睡眠の質は確実に低下。健康状態の悪化などを招いてもおかしくないでしょう。

とはいえ、日常でスマホをまったく使わないというのは難しいもの。そこで吉村先生に、睡眠への影響をできるだけ抑える「スマホとの付き合い方」を伝授していただきました。

 

●ディスプレイの明るさを調節し、視聴距離を十分に確保する

「スマホはもちろん、寝る前に脳が興奮するような刺激のある行動は控えた方がよい」と話す吉村先生。

スマホを使う用事は、寝る1時間前にすべて終わらせてしまうことが理想です。無理な場合は、ディスプレイの明るさを暗くし、視聴距離を十分に確保するなど、使い方にも気をつけること。また、見るコンテンツも選んだほうがよいでしょう。

「ゲームや動画だけでなくニュースやSNSも、脳に与える情報量が多いコンテンツです。自律神経を興奮させるようなコンテンツや画面を直視することはもちろん、スマホ操作が多いコンテンツは避けてください」(吉村先生)

 

最近のスマホには、明るさを調節できる機能があります。夜間は光の強さを切り変えるなどの工夫をしてみましょう。ブルーライトカット眼鏡を夜間に装着することもよいでしょう。

また、スマホは角度によっても光の強さが変わるので、真正面ではなく少し傾けた角度で見ると光を弱めることができます。

 

●ブルーライトは、コントロールすれば味方になる

スマホが放つブルーライトは、メラトニンを抑制して眠気を妨げるため、よくないイメージを抱きがち。しかし、「ブルーライトは決して悪だけではありません」と吉村先生はいいます。
 
「メラトニンは、朝や昼に光を浴びてぐっと抑えてあげないと夜に出てこない。大切なのは光を浴びるタイミングです。夜にブルーライトを浴びるのは睡眠によくありませんが、日中はブルーライトも含め光をきちんと浴びるのが大切だと思います」(吉村先生)
 

光を浴びるのはもちろん太陽光が一番ですが、陽の光の下になかなか行けないという人もいるでしょう。

そのような場合に、スマホの光を強くしたり、ブルーライトカット効果のあるメガネをあえてやめたりと、光をコントロールしてみる。そうすることで、睡眠の味方になってくれることもあるようです。

 

さいごに

寝るときまでも手放せないアイテムになっている「スマホ」。しかし、その裏側には常に睡眠や健康を損ねるリスクが存在しています。それだけに、適切なスマホの使い方を考慮することが必要だといえるでしょう。

「夜、なかなか寝つけない」「眠りが浅くて、日中もボーッとしてしまう」などの症状がある人は、夜のスマホ利用を早めに切り上げるだけでも、変わることがあるはず。この機会にぜひ、就寝前のスマホライフを見直してみてくださいね。
 
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photo:Thinkstock / Getty Images

吉村 道孝

監修

臨床心理士

吉村 道孝

慶應義塾大学 医学研究科 眼科学教室


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