時差ボケに悩む男性

時差ボケとは?|その原因や症状、予防の対策、なったときの治し方

海外旅行や出張で、眠い・眠れない・だるいなどの症状を感じることはありませんか?

それは体内時計と行き先の生活時間がずれ、睡眠やホルモンの分泌など身体のリズムが乱れることで起こります。時差ボケの症状を防ぐための出発前の対策や、なってしまった時の解消法を説明します。

 

「時差ボケ」って何?

鉄道や船で人々が移動していた時代には、まだ時差ボケはありませんでした。英語で時差ボケのことを、jet lagと言いますが、ジェット機(飛行機)で世界を旅行できるようになってからの比較的新しい問題なのです。

慣れた人でも、時差ボケになってしまいます。国際線のパイロットを対象に行った調査では、9割近くの人が何らかの時差ボケの症状に悩まされ、3分の1の人が睡眠障害を訴えていました。仕事とはいえ、国際線の乗務員さんも大変ですね。

一般的に時差ボケと呼ばれているものは、睡眠医学では「時差障害」と言います。国際的な診断基準に従うと、次の3項目に当てはまる場合が、時差障害です。

  • ジェット機に乗って、少なくとも3時間以上の時差がある場所へ旅行したときに、不眠や過眠を自覚する
  • 旅行後1~2日以内に、昼間の心身の機能が落ちたり、全身がだるくなったり、胃腸障害などの体の症状が出る
  • その睡眠障害は、他の睡眠障害や内科・精神科的な病気、薬物の使用などではうまく説明できない

 

時差ボケが起こる原因

なぜ、時差ボケが起きるのでしょうか?
 
高速度で時差がある場所まで移動すると、体内時計と現地の生活時間がずれてしまいます(外的脱同調)

さらに、体内時計がコントロールしている体温やホルモンの分泌、睡眠・覚醒のリズムが、それぞれバラバラになってしまうことが、症状をひどくします(内的脱同調)

時差ボケの症状は、目的地に到着した直後が最も強いように思うかもしれませんが、実際には2~3日目が一番つらいことがあります。これは、外的脱同調は到着直後に最もひどく、そのあと時間とともに解消するのに対して、内的脱同調は到着2~3日後にピークになるためです。

 

時差ボケとその症状

体内時計と現地の生活時間のずれ(外的脱同調)から起こる症状として、夜に眠れなくなり、日中に強い眠気に悩まされます。日本で夜の時間帯に行動したり、日本の昼の時間帯に眠ろうとしたりするので、当然のことといえます。

体内時計がコントロールしている各種の生体リズム間のずれ(内的脱同調)が原因で起こる症状としては、以下のものがあります。

  • 知的な作業能率の低下、疲労感
  • 身体のだるさ、頭痛、疲労感、集中力不足、イライラ感
  • 便秘、下痢、食欲低下、吐き気
  • 月経の乱れ
  • 目の疲れ

 

時差ボケの症状が軽い人と重い人の違い

先に、国際線のパイロットの9割近くが、何らかの時差ボケの症状に悩まされていると述べました。しかしその一方で、1割弱の人はまったく時差ボケを感じずに世界中を飛び回っているのです。この違いはどこにあるのでしょうか?

時差ボケの症状に影響するものとして、次の4つのものが知られています。

 

朝型と夜型

早寝早起きが得意で活動のピークが午前中にある朝型人間は、宵っ張りの朝寝坊で活動のピークが夕方にある夜型人間よりも、時差ボケの症状が強く出ます。これは、朝型人間の体内時計が、生活リズムの変化に順応しにくいためと考えられています。

 

年齢

若い人に比べて中高年者は、時差ボケによる睡眠障害や日中の眠気・疲労感が強くなり、睡眠の効率も悪くなります。時差ボケからの回復も、歳をとると遅くなってきます。

 

性格

神経質でナーバスな人や内向的な人は、時差ボケの回復に時間がかかります。人と会話したり遊んだり、あるいは仕事をすると、体内時計の調整が早く進みます。内向的な人は外向的な人に比べて、これらの「社会的同調因子」が少なくなるため、症状が長く続くのです。

 

飛行の方向

日本からハワイやアメリカへ向かうことを「東行きフライト」、ヨーロッパ方面へ行くことを「西行きフライト」と言います。人間の体内時計は1日が約25時間なので、東行きは体内時計の調整がしにくく、時差ボケの症状が強くなります

それに比べて西行きは、体内時計の調整がしやすいので、症状が軽いことが多いようです。ちなみに、体内時計が時差を調整できるのは、東行きで1日につき1時間、西行きで1時間半とも言われています。

 

出発前にやる時差ボケの予防対策

時差ボケ解消の基本は、なるべく早く体内時計を現地時間に合わせることです。とはいえ、2~3日程度の短い期間の滞在なら、日本時間のまま行動したほうが、帰国後に生活リズムを早く取り戻せます。臨機応変に対応しましょう。
 
睡眠不足は時差ボケの症状を強くします。出発前はいろいろと忙しいでしょうが、昼寝や仮眠をこまめに取り入れて、なるべく睡眠時間を確保するようにしましょう。

出発の1週間ほど前から、東行きフライトでは早寝早起きを、西行きフライトでは遅寝遅起きを心がけましょう。そして、出発日ころには、生活リズムを現地の時間に近付けるようにするのがベストです。

 

飛行機の中でできる時差ボケの予防対策

機内では、現地の時間に合わせて睡眠をとります。現地が夜なら眠り、朝になったら起きましょう。

眠る準備として、アイマスクや耳栓を機内に持ち込むことをお忘れなく。また、眠れないときには、アルコールを少し飲むのも良い方法です。しかし、飲みすぎは禁物。飛行機の中は気圧が低く酸素も少ないので、地上に比べて酔いが早く回ってしまいます。

目を覚ましておくためには、コーヒーなどでカフェインをとると効果的です。ただし、カフェインの作用は若い人で1~2時間、高齢者では5時間以上も続くことがあるので注意が必要です。機内を歩くことは目を覚ます効果以外に、エコノミークラス症候群の予防にも役立ちます。実践する場合は、他の人の迷惑にならない程度に行ってください。

 

国際線では、到着地の時間に合わせて食事が出てきます。このとき、少しでもよいですから、食べておきましょう。胃腸には、第2の体内時計「腹時計」があります。食事することで腹時計が、現地の時間に合ってくるからです

また、機内はとても乾燥しているので、水分補給もお忘れなく。脱水状態でいると時差ボケの症状が強く出ます

 

それでも時差ボケになってしまったときの治し方

日中に到着して、どうしても眠いときには2~3時間ほど仮眠をとります。あまり長く眠ると、夜の睡眠に悪影響が出ます。時間になったら眠くてもがんばって目を覚ましましょう。

起きたら屋外に出て、太陽の光を浴びると、体内時計の調整が進みます。アメリカ西海岸へ行く場合、着いた日は午後から、2日目は午前10時ころから、3日目は朝起きてからすぐに、太陽の光を浴びるのが最適です。

夕方以降に飛行機が着いたときは、現地の時刻に合わせて眠るようにします。目がさえて眠れない時は、ぬるめのお風呂に入ってリラックスしたり、夕食のときに適量のアルコールを飲んだりするとよいでしょう。

朝、起きたら熱めのシャワーを浴びると、目が覚めやすくなります。熱いお湯は交感神経を刺激して、活動的な1日を過ごすための準備をしてくれるからです。

朝食はなるべく取りましょう。胃腸にある体内時計「腹時計」が活動を始めます。食後にはコーヒーや紅茶を飲んで、カフェインを補給しましょう。

日中は、なるべく元気に動き回りましょう活発に過ごす人ほど、時差ボケが早く解消されます。ただし、体調が悪い時は無理をしないでください。事故でも起こったら大変です。とはいえ、暗いホテルの部屋に閉じこもりきりというのも問題です。体調が許す範囲で、日中はできるだけ明るい場所で過ごしましょう。

 

時差ボケに効く薬やサプリメントもあります

日本にいる間に睡眠・覚醒のリズムを変えられなかったり、飛行機の中でうまく調整できなかったりした場合には、最終手段として薬を使うこともあります。

睡眠薬

最初の1~2日に作用時間が短い睡眠薬を飲むと、十分な睡眠時間を確保できて日中の眠気が少なくなり、パフォーマンスも改善します。

ただし、アルコールを睡眠薬と一緒にとると、一時的な記憶喪失などが起こることがあるためやめておきましょう。睡眠薬を使用する際は、医師と十分に相談してから使ってください。

 

メラトニン

脳の松果体で作られる「メラトニン」は、睡眠ホルモンとも呼ばれています。日本では薬とされているため、一般の人は購入できませんが、アメリカなどではサプリメントとして売っています。

現地時間の午後8~9時ころに、1~3mg飲むと、体内時計の調整が早まり、時差ボケの症状を和らげてくれます。また、日本で不眠症の治療薬として医師が処方する薬「ロゼレム」には、メラトニンと同じような働きがあります。

 

ビタミンB12

体内時計を調整する作用が最も強いものは強い光です。ビタミンB12には、この光の作用を助ける働きがあります。また、ビタミンB12が直接、体内時計に作用したり、睡眠を促したりすると考える研究者もいます。

実際にはメチルコバラミン(活性型ビタミンB12)1.5~3.0mgを、1日3回に分けて内服します。

 

photo:Getty Images

 

坪田 聡

監修

医師・医学博士

坪田 聡

医師として睡眠障害の予防・治療に携わる一方で、睡眠改善に特化したビジネス・コーチとしても活躍中。「快適で健康な生活を送ろう」というコンセプトのもと、医学と行動計画の両面から睡眠の質を向上させるための指導や普及に尽力。総合情報サイトAll about 睡眠ガイド。 「睡眠専門医が教える! 一瞬で眠りにつく方法」(TJMOOK 宝島社)、「パワーナップ仮眠法」(フォレスト出版)他、監修・著書多数。

医療法人社団 明寿会 雨晴クリニック 副院長

Site: http://suiminguide.hatenablog.com/


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