寝坊をするのは「睡眠負債」のせい? 朝スッキリ目覚めるための方法

どんなに気を付けていても、起きようと思っていた時間に起きられず、寝坊をしてしまう…。

もしかすると、それはただの「気のゆるみ」だけではなく、病気のサインの可能性があります。

今回は、寝坊の原因や病気の可能性、寝坊の予防法について、医療法人社団絹和会の理事長を務める井上雄一先生にお話を伺いました。

寝坊をしてしまう原因

寝坊した男性

寝坊の主な原因は、睡眠時間の不足と質の低い睡眠による「睡眠不足」です。睡眠不足の状態が続く「睡眠負債」が蓄積した状態になると、寝坊のリスクが高くなります。

「睡眠負債を返さないまま放置していると、眠気をもよおす『睡眠物質』が蓄積して脳が覚醒しづらくなり、朝の目覚めに影響が出てしまいます。

これが、寝坊の原因になってしまうのです」(井上先生)

 

睡眠時間の不足

寝坊は、必要とされる睡眠時間を確保できていないときに起こりやすくなります。

「必要な睡眠時間には個人差がありますが、およそ7〜8時間程度が目安になると思います」(井上先生)

睡眠不足は寝坊の原因となるだけでなく、十分な疲労回復ができなくなるほか、日中の注意力や作業能率の低下など、日常生活にも支障をもたらします。

 

睡眠の質が低い

睡眠時間が十分とれている場合でも、寝付きが悪かったり夜中に目が覚めてしまったりして、深く眠れず「睡眠の質」が落ちてしまうと、「睡眠が不足している」状態になってしまいます。

これにより、起きたい時間に目覚められなくなり、寝坊をしてしまうことがあります。睡眠の質が低下してしまう原因には、大きく分けて以下の2つが挙げられます。

 

体内時計の乱れ

「体内時計」とは、一日のリズムを刻む体内機能のことを指します。

朝から昼にかけては自律神経の覚醒を司る「交感神経」が優位になり、体温や血圧が上がり、これにより身体が覚醒する、という仕組みになっています。

夕方から夜にかけては休息を司る「副交感神経」が優位になり、体温や血圧を下げて睡眠に導くという機能になっています。

 

体内時計がスムーズに機能していれば、朝になると自然と覚醒に向かうため、寝坊することなくスムーズに目覚められます。

しかし、就寝時間が遅くなるなどによって体内時計が乱れると「朝起きて、昼に活動し、夜眠る」というリズムが遅れがちになってしまうため、本来目覚めるべき時間に覚醒のスイッチが入らず、起きられなくなってしまうのです。

 

自律神経の乱れ

自律神経が乱れると、前述した体内時計も乱れてしまい、寝坊をしやすくなります。

 

心身にストレス負荷がかかると、交感神経を刺激する「副腎皮質ホルモン」が分泌されます。

平常時は朝に適量分泌され、心身を活動的にする手助けとなりますが、強いストレスを受け続けると、夜になっても副腎皮質ホルモンが分泌されてしまい、交感神経が優位になった覚醒状態が続いてしまいます。

 

すると、覚醒モードから入眠モードに切り替わりにくくなり、なかなか寝付けなくなります。

入眠に時間がかかり、これにつれて睡眠時間が後ろにずれると、体内時計が乱れるので、寝坊をしやすくなってしまいます。

 

寝坊から考えられる病気の可能性

病院と医師

寝坊の原因が睡眠不足の場合は、1~2週間ほど継続して十分な睡眠時間をとり、「睡眠負債」を返済することで、改善がみられます。

しかし、睡眠時間を見直しても寝坊が続く場合は、下記の病気の可能性があります。早めに専門の医療機関を受診しましょう。

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が停止してしまう病気です。

眠っている間に10秒以上呼吸が停止する状態が、1時間あたり5回以上繰り返されると睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

呼吸が止まることで酸欠状態となるため、息苦しさから頻繁に中途覚醒が起こり、睡眠の質が低下します。眠っている間に起こる症状のため、本人が気づかない場合が多いそうです。

 

「症状が出ると脳に酸素が行き渡らなくなるため、起床時に低酸素による頭痛や倦怠感などが生じます

また、常習性のあるいびきも一つのバロメーターになるので、一緒に眠る家族やパートナーに確認してもらうのもよいでしょう。

睡眠時無呼吸症候群は男性に多いとされる睡眠障害ですが、女性の罹患者もまれではありません」(井上先生)

 

周期性四肢(しゅうきせいしし)運動障害

「周期性四肢運動障害」は睡眠中に20〜30秒周期、または1時間に15回以上、膝や足の関節がピクピクと反ったり、足が蹴り上げるように動いたりする睡眠障害です。

眠りが浅くなるため中途覚醒につながり、十分な睡眠がとれず、寝坊の原因になることがあります。おもな原因は鉄分不足だと考えられており、女性に比較的多く見られる症状です。

 

周期性四肢運動障害と診断されて鉄分不足を指摘された場合は、医師の処方する薬と合わせて、ひじきやほうれん草、レバーなどの鉄分を多く含む食材を食事で補いましょう。

 

うつ病

寝坊を繰り返すだけではなく、寝付きの悪さや寝起きの悪さ、中途覚醒、気持ちが落ち込む「抑うつ気分」、昼間の眠気、立ちくらみ、全身の倦怠感などの症状が出た場合はうつ病の可能性があります。

 

寝坊の予防法

爽快な目覚め

寝坊をしないようにするためには、睡眠不足を解消し、規則正しい生活を送ることが大切です。

井上先生によると、下記のような方法で、寝坊を防げるといいます。

下記の方法を1〜2週間続けても寝坊が続く場合は、病気の可能性があるので、専門の医療機関に相談しましょう。

 

日中に15分程度の仮眠をとる

睡眠負債をこまめに返済する方法のひとつに「日中の仮眠」が挙げられます。

夜にまとまった睡眠時間を確保できないときは、仮眠をとり入れることで脳の「睡眠物質」を取り除き、睡眠を補いましょう。

 

ただし、仮眠をとる時間は15~20分以内にしてください。

30分以上眠ってしまうと、眠りが深くなってしまい目覚めた後も眠気がとれない「睡眠慣性」が出てしまったり、夜になかなか寝付けなくなったりしてしまいます。

 

夜間のスマホやPCの使用は控える

体内時計のリズムは光を浴びることで調整されています。

夜間に強い光を浴びすぎると、体内時計がずれやすくなるため、眠る時間が遅くなることで覚醒する時間もその分後ろにずれ、起きたい時間に起きられなくなってしまいます。

夜間は寝室の明るさを暗めにしましょう。

 

また、眠る直前にPCやスマートフォンを使用し、画面から出るブルーライトを浴びてしまうと脳が覚醒してしまい、体内時計のリズムが遅れやすいので、就寝予定時刻の1時間ほど前から控えるようにしましょう。

 

毎日、3食バランスのいい食事を摂る

不規則な食生活を送ると、体内時計のリズムが乱れてしまいます。

朝・昼・晩と1日3食を規則正しく摂り、内臓の活動リズムを一定にすることも大切です。ただし、眠る直前の食事は睡眠の質を下げてしまうので避けましょう。

 

日中適度な運動をする

日中の適度な疲労は、夜になると自然な眠気を呼ぶため、入眠がスムーズになります。

また、体内時計のリズムを保つために朝の通勤で一駅分歩くといった軽い運動や、ジョギングをしたり自転車に乗ったりする有酸素運動を30分程度行うとよいでしょう。

 

平日と休日の睡眠時間の差は2時間以内に

休日に平日よりも遅い起床時刻まで眠り過ぎてしまうと体内時計が乱れ、休み明けになっても眠気が残ったままになりやすくなります。

休日に平日よりも多めに睡眠をとりたい場合は、平日の起床時間から遅くなる時間を2時間以内にとどめることを目安にし、体内時計のリズムを崩さないように心がけましょう。

 

それでも睡眠時間が足りないと感じた場合は、15時までの間に15~20分程度の仮眠をとることで補いましょう。

 

寝坊が続く場合は危険な病気のサインの可能性も考えられます。自分の寝坊の原因が何かを考え、まずは日ごろの生活習慣を見直すことから改善していきましょう。

症状が改善されない場合は、たかが寝坊とあなどらず、大事が起こる前に睡眠の専門外来を受診してください。

 
<参照>
『認知行動療法で改善する不眠症』(すばる舎)

photo:Getty Images

井上 雄一

監修

医師・医学博士

井上 雄一

医療法人社団絹和会 理事長


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