「身体がだるい」「朝起きられない」「元気が出てこない」。そんな風に感じていても、仕事を休めなかったり、残業が続いたりして、心身ともに負荷がかかる日が続いていませんか?
 
ストレスを抱えたまま、対処をせず放置をしていると、心のつらさが身体の症状として現れてしまう「心身症」になる可能性があります。社会人がおちいりやすい、ストレスの蓄積を防ぐためのポイントとは何でしょうか。日本大学医学部附属板橋病院心療内科の丸岡秀一郎部長にストレスの基本や対処法を伺いました。

 

現代人が抱えるストレスとは

ストレスで頭を抱える女性

現代ではストレスを感じる状況も個人によって多様化し、社会的背景も影響しています。ここでは、現代の社会的な背景によるストレスについて解説します。

デジタル化による会話の減少

スマートフォンやPCによるチャット機能の進化により、アナログな人間関係が希薄になってきたことがストレスを生む要因のひとつとなっています。面と向かって会話をする機会が減り、相手に自分の考えていることを理解してもらえないのではないか、と思ってしまうこともストレスの要因となるのです。
 
職場ではパワハラやセクハラなどの「ハラスメント」と呼ばれる人と人との衝突が増えています。さらに、「ハラスメント」に過敏になることで、トラブルを起こさないようにするために、直接的なやり取りを避ける傾向が出てくるようになりました。こうして人間関係が希薄になり、「言いたいことが伝えられない」と感じることがストレスにつながっています。

現状のストレス度合いを確認するポイント

ストレスを抱えている女性

ストレスがたまっていても「自分が一時的に疲れているだけかもしれない」「ただ怠けているだけかもしれない」と思い、我慢を続けていると、やがて心身に異常をきたしてしまう可能性があります。ここでは、今の自分がストレスをためてしまっているかどうか、確認する目安について解説します。

精神面での兆候

ストレスがたまっていると、脳の中のホルモンや神経伝達物質の状態に変化が生じ、感情面 に変調をきたします。具体的には以下の症状が出ます。

  • 平常時は気にならなかったことも、気にかかり、気分が落ち着かなくなる
  • イライラしやすくなる
  • すぐ不安になる
  • やる気がなくなる

 

など

身体面での兆候

ストレスがたまってくると、自律神経やホルモンの状態に変化が生じ、体調にも影響が及びます。下記症状が出たら、ストレスがたまっている可能性があります。

  • 疲れやすい
  • 動悸
  • めまい
  • 息切れ
  • 便通異常(便秘・下痢)
  • 頭痛
  • 不眠

 

など

ストレスの原因

ストレスを抱えた男性

「ストレス」とは、「ストレッサー(圧力を与えるもの)」によって受けた「歪み」のことを指します。ここでは、ストレスの原因となるストレッサーについて、またストレスをためやすい人の特徴について解説します。

ストレスの原因になりやすい外部要因

ストレスを引き起こす「ストレッサー」は生活の至るところにあります。光や音、振動、におい、化学物質のような物理的なものだけではなく、職場や家庭などの日常に潜む社会的、心理的な問題があります。なかでも、配偶者の死、離婚、別居、近しい家族の死などが特に影響の強いものとして挙げられます。

  • 物理的ストレッサー
    温度、気圧、騒音など
  • 生物的ストレッサー
    ウイルス、痛み、疾病など
  • 化学的ストレッサー
    アルコール、薬物、大気汚染物質など
  • 社会的ストレッサー
    転居、死別、結婚、昇進、退職、事故など
  • 精神的ストレッサー
    不安、怒り、緊張、焦りなど

 

ストレスをためやすい人の特徴

過去のつらい経験や、両親から受けた教育やしつけなどの影響によって認知のゆがみが起こり、物事の受け取り方が悪いほうに向かいやすくなってしまい、自分をつらい状況に追い込みやすくなってしまいます。すると、以下のような思考のくせがついてしまい、ストレスを抱えやすくなってしまいます。

  • 完璧主義
  • ネガティブに物事をとらえやすくなる
  • すべて自分のせいだと思いこんでしまう
  • 愚痴をこぼせない
  • 人に相談できない

 

ストレスを放置するとどうなる?

ストレスをためたまま無理をしている女性

ストレス状態が継続していると、心だけではなく、身体の不調にもつながってきます。これを心身症といいます。ここでは、ストレス状態を放置するとかかる身体への変化について解説します。

ストレスを放置すると現れる反応

人間はストレッサーの影響を受けたとき、「ストレス反応」と呼ばれる変化が起こります。具体的には以下のものが挙げられます。

自律神経のバランスの変化

身体のさまざまな機能は、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスによってコントロールされていますが、ストレスがかかると自律神経のバランスが変化し、交感神経の働きが活発になります。すると、血管が収縮して、心拍数が上がることで血圧が上がったり、筋肉の緊張が高まったりします。その結果、心臓や血管への負担が増え、筋肉も疲労することになるのです。

ホルモンバランスの変化

ストレスがかかるとホルモンのバランスを司る機能にも影響を及ぼします。

コルチゾールの分泌

脳の視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)と呼ばれるホルモンが出て、次に脳の下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)と呼ばれるホルモンが出ます。すると、腎臓の近くにある副腎からコルチゾール(副腎皮質ホルモン)と呼ばれるホルモンが出てきます。このコルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれており、分泌され続けると高血圧につながったり、免疫力が下がり感染症にかかりやすくなったりします

セロトニンの減少

ストレスを感じると、脳と身体を覚醒させる作用と、環境や対人、精神などから受けるストレスに対応する作用のあるドーパミンやノルアドレナリンが過剰に放出され、人間の精神バランスを保つために必要なセロトニンの分泌が減ってしまいます。セロトニンの分泌量が減ると、神経伝達物質のバランスが崩れ、脳内の神経細胞の働きに影響が出てしまったり、腸内環境のバランスが崩れてしまい、便秘になってしまったりします。

心身に表れる不調

前述したメカニズムによって、ストレスがかかると心身ともに以下の不調が現れやすくなります。以下に心身の不調の症状をまとめました。

精神面での反応

抑うつ状態、うつ病

悲しみや不安が持続的な状態です。興味や楽しみの感情がなくなり、不快な気分や無力感、絶望が続きます。

適応障害

特定の環境に身をおけなくなる状態です。仕事に行きたくなくなったり、学校に行きたくなくなったりします。

パニック障害

急激に不安や恐怖を感じる状態です。短ければ数分、長いと数時間続きます。息苦しさや息切れを感じるほか、心臓の鼓動が速くなったり、汗が出てきたり、体が震えたりします。

身体面での反応

アトピー性皮膚炎

皮膚にかゆみが生じたり、湿疹ができたりする状態が続く状態をいいます。皮膚が厚くなったり、皮膚の表面の溝がはっきりと浮き出てきたりします。

喘息(ぜんそく)

ストレスによってホルモンや神経の状態が変化し、気道のアレルギー反応が強く出て息苦しくなる病気。

心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)

ストレスの影響によって神経への刺激を感じやすくなってしまい、空咳が止まらなくなる状態です。

機能性胃腸症

上部消化管(食道、胃、十二指腸)の動きの調節がうまくいかず、吐き気や膨満感が続くなどの異常が出ます。

胃十二指腸潰瘍

ストレスによって酸の分泌が増えて潰瘍ができる病気。

過敏性腸症候群

腸の内部に変化がないにもかかわらず、腹痛や不快感が起きたり、便通が変化したりする状態をいいます。便秘と下痢が交互に起こることが多いとされています。

緊張型頭痛

頭を締め付けるような痛みの出てくる状態です。

高血圧

ストレスにより、交感神経が優位となり、血管が収縮して血圧が上がった状態になります。

ストレスの対処法

ストレスが解消された女性

ストレスはためずに、すぐ対処することが重要です。ここでは、その日のうちにストレスを対処するために実践したい「呼吸のコントロール」と「睡眠の改善」について解説していきます。

リセット呼吸術

精神状態と呼吸のリズムは関係が深く、緊張、不安を感じていると、呼吸は浅く速くなり、気持ちが落ち着くとゆったりと深くなります。ストレスがかかると、交感神経が優位になり、呼吸が荒くなってしまうため、自律神経のバランスをコントロールすることが大切になります。
 
呼吸と自律神経の働きはセットになっており、息を吸うと交感神経の働きが優位になり、息を吐くと副交感神経の働きが優位になります。そのため息を吐くとリラックスし、落ち着いた気持ちになります。

リセット呼吸術の方法

呼吸と自律神経のつながりを生かしてストレスに対処する方法がリセット呼吸術です。リセット呼吸術の具体的な方法は以下のとおりです。
 
呼吸の状態を確認した上で、リセット呼吸術を実践していきましょう。リセット呼吸術は、腹式呼吸を基本とします。一般的に、人は1分間に15回~20回のペースで呼吸をしています。最初は、これと同じペースで、おなかを膨らまして息を吸い、おなかをへこまして息を吐くということを繰り返していきます。
 
ここでは、息を長めに吐くことがポイントとなります。順にリセット呼吸術の手順を見ていきましょう。

鼻から吸って、口から吐き、腹式呼吸を心がけましょう

鼻から吸って、口から吐き、腹式呼吸

普段息をしているようにいつもと変わらない体勢で、ゆったりとした気持ちで行います。
 
鼻から2秒かけて空気を吸い込み、おなかが膨らむように、空気を肺に入れます。力まずに自然と空気が入ってくるようにします。

2~4秒をかけてゆっくりと息を吐く

2~4秒をかけてゆっくりと息を吐く

鼻から2秒かけて空気を吸ったあとは、おなかを徐々にへこませるように、2~4秒をかけてゆっくりと息を吐いていきます。吸った時間と比べて2倍ほどの時間をかけるイメージです。このときに副交感神経の働きが高まり、ストレスを軽くすることができますので、ゆっくりと息を吐くようにしましょう。
 
息を吐ききったら、次の呼吸に向けて、もう一度自然と空気を肺に入れるようにします。
 
はじめのうちは、1分間に15回~20回ほどのペースでよいですが、慣れてきたら1回の呼吸を「2秒吸う →6秒吐く」という流れで合計8秒ほどかけましょう。1分間に7回~10回ほどの呼吸回数になるのが理想的です。

睡眠改善

十分な睡眠は心身の疲労回復に欠かせません。睡眠による疲労回復の役割をしっかり果たすためには、スムーズに入眠し、夜中に目を覚ますことなく、朝までぐっすり眠ることが大切です。
 
睡眠中は、脳を休めるノンレム睡眠と、レム睡眠と呼ばれる身体を休める睡眠のサイクルを繰り返しています。入眠直後はノンレム睡眠に入り、このときは副交感神経の働きが優位になっています。ノンレム睡眠の段階では、疲労回復に有効なホルモン「成長ホルモン」の分泌が盛んになるので、組織の修復など疲労回復にとっては特に重要です。
 
十分な睡眠をとるためには「適切な睡眠時間」と「質の良い睡眠」が重要です。以下に具体的な内容をまとめました。

十分な睡眠時間をとる

最適な睡眠時間には個人差があります。今の睡眠時間が自分にとって最適かどうかは、日中、起床から4時間後に眠気があるかどうかをチェックしてみましょう。眠気は「睡眠不足なので眠りなさい」という身体のサイン。
 
睡眠不足だと感じているときは、日中に20分程度の仮眠をとりましょう。ただし、15時以降に仮眠をとると、体内時計のリズムが崩れ、夜になかなか寝つけなくなってしまうことがあるので、仮眠をとりはじめるのは14時ぐらいまでにしましょう。

睡眠の質の改善

なかなかスムーズに眠れなかったり、夜中に途中で目が覚めたりすると睡眠の質が下がり、結果睡眠が不足していることになってしまいます。ここでは睡眠の質を上げるためのポイントをまとめました。

「入眠儀式」を行う

寝る前の行動パターンを一定にすると「そろそろ寝る時間だ」と脳が認識しやすくなります。例えば、同じ時間帯に入浴したり、お風呂から上がった後に、リラックスしやすくなる好きな音楽をかけてストレッチをしたり、就寝2時間前を目安に、日中の覚醒状態から徐々にリラックスしていく時間を確保するようにするのです。

睡眠リズムの調整

質のよい睡眠をとるためには、睡眠のリズムを整えることも重要です。そのためには、毎朝決まった時間に起きるようにしましょう。朝には日光を浴び、睡眠ホルモン「メラトニン」の生成に重要なホルモン「セロトニン」の分泌を促すことで、夜に自然な眠気が起こりやすくなります。

ストレスをためないようにする方法

ストレスをためていない女性

ストレスは、うまく対応し、ストレスによる影響を受けないようにすることで蓄積を防ぐことができます。社会人の場合には、職場でストレスがあるからといって、すぐに会社を変えたり、人間関係を変えたりすることはなかなかできません。こうした背景もあり、ストレスへの耐性を高めた方が良いという考え方もあります。
 
ここではストレスコーピングというストレス対処の方法について解説します。

ストレスコーピング

友達と愚痴をこぼしあったり、家族と過ごしたりして「自分の心が軽くなった」と感じるための方法を知っておくことも重要です。
 
ただし、自分で対処法が分からない場合は、ためずに専門医に相談しましょう。医療機関では医師や臨床心理士がサポートしながら、対処してくれます。

コミュニケーション上での弱点を知る

他人とのコミュニケーションの課題をみつけていきます。課題があるならば、うまく社会と接点を持てるように、自分の弱点に対処していきます。ストレスの多くは人間関係から起きてきますから、他人にうまく自分の考えを伝えることで、コミュニケーションにストレスを伴わせないようにしていく工夫は意味があります。

認知のゆがみを直す

例えば人にほめられたときに、ポジティブ志向の人は、単純に「ほめられてうれしい。今後もがんばろう」と考えられる一方で、ネガティブ志向の人は、「いつもうまくできていないから、あえて今回は何か事情があってほめられたのだろう」と受け取ってしまうことがあります。このような認知のゆがみを直して、前向きに物事をとらえられるようにするとストレスを感じにくくなります。
 
上記の認知の歪みを改善するためには「コラム法」が有効です。

コラム法

不快な出来事があったとき、そのときに感じた正直な気持ちと出来事を、そのままノートに書きとめ、そのまま少し置いておきましょう。気持ちが落ち着いてきたころに、ノートに書いた出来事と感情が「認知の歪み」かどうかチェックしてみるといいでしょう。自分自身の認知の歪みが明確になったら、今度は現実に即して、客観的にとらえ直してみましょう。ノートに書き出すことで、ストレスをためやすい思考を修正することができます。

瞑想

心を鎮め、「いまここにある自分」の呼吸や皮膚感覚に意識を集中させることで、一時的にストレス状態から離れる方法です。これを繰り返すことで、ストレス耐性が高まり、気持ちが安定しやすくなります。
 
<呼吸をガイドする2breathe(ツーブリーズ)>
ウエアラブルセンサーを腹部に装着し、センサーとアプリと接続すると、呼吸パターンを読み取ってくれ、スマホアプリよりユーザーに合った呼吸調節ガイド音が流れてくる呼吸ガイドアイテムです。呼吸リズムの変化や、入眠時間などが記録されるので、リセット呼吸術にも活用できるアイテムです。

リセット呼吸術応援キャンペーン
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<参照>

デニス・L・カスパーほか編『ハリソン内科学第5版』,福井次矢ほか監修,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2016
ベンジャミン・J・サドックなど編著『カプラン臨床精神医学テキスト第3版』,井上令一監修,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2016.

photo:Getty Images

  • 体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。

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