寝不足で頭痛が起きてしまったという経験はありませんか? 寝不足で起こる頭痛には、じわじわとした鈍痛もあれば、耐えられないほどの強烈な痛みもあります。頭痛のタイプに合わせた対処法や予防法について、にわファミリークリニック医師の篠原伸顕先生(東京頭痛クリニック院長)に伺いました。

寝不足で頭痛がおこるメカニズム|症状と対処法

寝不足による頭痛の症状

頭痛を鎮める

寝不足とは、睡眠時間を十分にとれなかったり、睡眠の質が悪かったりして、スッキリ起きられない、日中に眠気が襲ってくるといった状態をいいます。頭痛は、風邪や二日酔いなどさまざまな原因で起きますが、寝不足も原因のひとつです
 
寝不足による頭痛は「緊張型頭痛」「片頭痛」「群発頭痛」が関連していることが多いので、まずは自分の頭痛の症状はどれに当てはまるのか確認しましょう。

緊張型頭痛の症状

緊張型頭痛は慢性的に起こる頭痛の中では最も多いタイプとして知られています。次のような症状が特徴です。

  • 後頭部から頭全体にかけて頭を締め付けるような鈍痛を感じる
  • ゆっくりと時間をかけて痛みが強まる
  • 頭の両側に痛みが出る
  • 吐き気や嘔吐はあまりない
  • 心臓の脈拍に合わせて痛みが強くなったり弱くなったり変化はしない

 

緊張型頭痛の痛みは、ゆっくりと時間をかけて強くなっていき、痛みの程度が変化しながら継続します。痛みは1日で治まる場合もあれば、何日も痛みが反復する場合があります。頭の両側に痛みを感じ、頭の片側だけに痛みが出ることはありません。おでこから頭を一周する部分が帯で締められるような感覚で痛みます。また、頭痛に伴って吐き気を感じる場合は少なく、たとえ吐き気を感じることはあっても、実際に吐くまで至ることはほとんどありません。

片頭痛の症状

片頭痛は、疫学調査(統計)によると日本人の約840万人が悩まされているタイプの頭痛と分かっています。次のような症状が特徴です。

  • 頭に脈を打つような強い痛みがある
  • 急に痛みが出てくる
  • 頭を動かす動作によって痛みが強くなる
  • 吐き気や嘔吐がある
  • 脈に合わせるように痛みが変化する
  • 痛みが出るとき、光や音、匂いなどに過敏になる

 

目の奥の眼窩部(がんかぶ)から側頭部にかけて、脈を打つような痛みが出ます。頭をえぐるような痛み、頭を刺さすような痛みと表現されることもあります。女性に多い頭痛で、30代の女性では5人に1人が片頭痛を持っているといわれています。痛みが続く時間は幅があり、これまでの研究結果によれば、短いときは2分ほど、長いときは30分ほどと分かっています。そうした痛みが、1日に5回以上にわたって繰り返します。
 
痛みは頭の片方だけに出てくることもあれば、頭の両方に出てくることもあります。緊張型頭痛とは異なり、頭を左右に振ったり、おじぎをしたり、運動したりしたとき、動作に伴って痛みも強くなるところが特徴です。頭痛にともなって、脳の「嘔吐中枢」と呼ばれるところが刺激されるため、吐き気や嘔吐がある場合も多くあり、吐き気を感じるだけにとどまらずに、実際に吐いてしまう人もいます。中には、頭痛を感じずに、吐き気や嘔吐だけ出てくる人もいます。
 
また、片頭痛のある人のうちの2割程度では、片頭痛を感じる前に、閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる幻覚症状があらわれ、まぶしい光や、視野を横切るようにギザギザした線が見えることがあります。

群発頭痛の症状

群発頭痛は20代~40代の男性に多い頭痛です。次のような症状がないか確認してみてください。

  • 1年のうち決まった時期に耐えられないほどの痛みが出る
  • 毎日決まった時刻に痛みが出てくる
  • 痛みの出てくる頻度は、少ないときは2日に1回ほど、多いときは1日に8回ほどになる
  • 夜間に痛みを感じることが多い
  • 頭痛のときに涙や鼻水が出る、鼻づまりがある
  • 頭痛のときに、まぶたの垂れ下がりがある
  • 普段から光や音、匂いに過敏になる

 

目の奥の眼窩部(がんかぶ)や頭の側面に耐えられないほど強い痛みが急激に起こってくることが特徴です。1年のうちの1~2カ月という決まった時期、毎日決まった時刻に痛みが出てきます。痛みは短いときは15分、長いときは180分の間にわたって継続します。痛みは片方だけに出ることが多く、左右が入れ替わることもあります。交感神経に異常が生じてしまうことにより、頭痛が出ている側の目の充血が起きたり、涙が出てきたりするほか、鼻水が出たり鼻づまりが起きたりします。さらに、まぶたが垂れ下がる眼瞼下垂(がんけんかすい)が起こることもあります。

寝不足による頭痛のメカニズム

強い痛みの原因とは

寝不足のときに起こる「緊張型頭痛」「片頭痛」「群発頭痛」が、それぞれどのようなメカニズムになっているのかを確認していきます。

緊張型頭痛の原因

眠れないことで感じるストレス、睡眠時の寝相の悪さ、冷えなどにより、肩やこめかみなどの筋肉に緊張が起こります。すると筋肉の血行が悪くなった部分に、炎症が起こり、痛みを促す物質が生成され、頭痛が引き起こされます。また、ストレスが慢性化することで、痛覚が過敏になり、脳が痛みを感じやすくなるともいわれています。

片頭痛の原因

寝不足によってストレスを感じると、脳の興奮状態を抑制するために、脳内で「セロトニン」という神経伝達物質が分泌されます。セロトニンは、血管を収縮させる作用があります。セロトニンが分泌されて、ストレス状態が緩和されると、セロトニンの分泌が減り、血管を収縮させる働きがなくなるので、血管が広がってしまいます。すると、頭蓋骨の中の血管も広がって、血管の周りを取り巻く「三叉神経(さんさしんけい)」と呼ばれる神経が圧迫を受け、刺激を受けます。その刺激が、痛みを感知する大脳皮質の「体性感覚野」に伝わり、痛みが出ます。

群発頭痛の原因

群発頭痛の原因はまだよく分かっていません。目の奥にある内頸動脈(ないけいどうみゃく)が拡張し、炎症を起こすことが原因ではないかと考えられています。
群発頭痛の痛みは夜間に出てくることが多く、痛みが耐えられないほど強いために、睡眠途中に目が覚める、寝付けない、といった症状があらわれます。

寝不足による頭痛の対処法

頭痛からの回復

寝不足で頭痛が出てきたときの対処法は、頭痛の種類によって大きく異なります。頭痛のタイプに合わせた対応をしましょう。

緊張性頭痛の対処法

緊張性頭痛は、筋肉の緊張によって引き起こされるため、この緊張をほぐす方法が有効です。

入浴

こめかみや肩などの筋肉の緊張を、湯船でゆっくり温めることでほぐしていきます。20分~30分ほどつかりながら行うと、ストレスが緩和され、リラックスできます。温かいタオルをこわばっている筋肉に当てて、温めることも効果的です。

軽い運動

肩を回すといった軽い運動をして、長時間にわたって同じ姿勢を続けないようにします。筋肉を動かすことで、筋肉の緊張がゆるみ緊張性頭痛が軽くなります。運動で身体を温めることも、筋肉の緊張をゆるめる方法のひとつです。ただし、水泳のような水に入る運動は身体を冷やしてしまうので、緊張型頭痛のときは控えましょう。

寝る姿勢を変える

枕が高すぎたり、寝る環境の影響で寝る姿勢が悪くなったりしているときは、枕を低くする、さらに枕と首の後ろの間に隙間ができないようにバスタオルを畳んで首の後ろに敷くのが効果的です。また、適切な回数の寝返りが打てる環境も重要です。ベッドの上にぬいぐるみやクッションなどの余計なものを置かない、布団をきちんと平らに敷くなど、楽な姿勢で寝られるような工夫を試してみましょう。

マッサージ・鍼灸

血流を良くすることで、筋肉の緊張をほぐすことができます。肩や首、こめかみなどの凝りを解消することで、頭痛を和らげる効果が期待できます。

片頭痛の対処法

片頭痛は血管が広がることで痛みが出るので、血管を収縮させる行動によって痛みが治まります。

頭部を冷やす

首の真後ろのくぼんだところ、「盆の窪(ぼんのくぼ)」と呼ばれるところを、冷却シートや冷えたタオル、氷嚢(ひょうのう)などを使って冷やすと血管が収縮し、痛みが和らぎます。

薄暗く静かなところで休む

片頭痛の痛みが起きているときには、光や音などに過敏になるので、静かで暗い場所でゆっくりと休みましょう。横になれないときには、椅子に座るなどして静かにしていると徐々に痛みが治まります。

カフェインを摂る

カフェインには、血管を収縮させる効果があります。痛みが出たら、コーヒーや紅茶などを1杯飲むと良いでしょう。ただし、カフェインには覚醒効果があるので、カフェインの摂取は就寝の5時間前までにしてください。

耳の後ろをほぐす

両耳の真後ろの、頭蓋骨と首の筋肉の境目のところをマッサージすると痛みが和らぎます。ただし、首の真後ろのくぼみである「盆の窪」の部分は揉んでしまうと、かえって片頭痛が悪くなるので避けましょう。この場所をもむと副交感神経が刺激され、血管が拡張し、血流が増えて片頭痛が悪化する可能性があるためです。

暑い場所で過ごさない

気温の高いところで長時間にわたって過ごしたり、炎天下で帽子をかぶらずに歩いたりするのは避けましょう。暑さによって、頭部の血管が広がり、頭痛を悪化させる可能性があります。できるだけ涼しいところで過ごすようにしたり、外出するときには日光を避けられるように帽子をかぶったりするなど工夫をすると良いでしょう。また、痛みが出ているときは入浴や運動などで体温を上げないようにしてください。

群発頭痛の対処法

痛みが強い場合は医療機関へ

群発頭痛は、薬を処方してもらったり、高濃度の酸素を吸ったりする専門的な治療が必要です。処方薬は、エルゴタミン製剤やトリプタン系薬剤などが一般的で、カルシウム拮抗薬や副腎皮質ステロイドなども、医師の判断で使用されます。片頭痛と同じように身体を温めないように入浴は控えるほか、飲酒や喫煙も避けるようにします。

寝不足による頭痛の予防法

頭痛の予防で快適に

寝不足で起こる頭痛は、体操を行ったり睡眠時間を確保したりすることで防げます。ここでは、緊張型頭痛と片頭痛の具体的な予防法をご紹介します。

頭痛予防の体操

1回2分ほどでできる簡単な体操なので、1日1回を日課に取り入れてみましょう。

緊張型頭痛の予防体操

肩を中心とした筋肉をほぐすイメージで行います。

  • 足を肩幅くらいに開いて、ひじを軽く曲げます。
  • リュックサックを背負うイメージで、両腕を内側に回します。
  • 洋服を脱ぐイメージで、両腕を外側に回します。
  • 内外を交互に回す体操を6回繰り返します。

片頭痛の予防体操

片頭痛の痛みが出ているときは、運動を控えた方がよいのですが、片頭痛になりやすい方は、痛みがないときに簡単な予防のための体操を行いましょう。

  • 正面を向いて立ち、身体の軸を意識して頭を動かさないようにする。
  • そのまま、水平に腕を振って、両肩を大きく右に回転させます。
  • 同じように頭を動かさずに、両肩を左に大きく回転させます
  • この動きを左右交互に2分間続けます。

十分な睡眠時間をとる

寝不足を解消するには、質の高い十分な睡眠時間をとることが大切です。人によって必要な睡眠時間は異なるため、自分にとって最適な睡眠時間を知ったうえで、十分な睡眠をとりましょう。

最適な睡眠時間を知る

最適な睡眠時間を知るためには、起床してから4時間後の眠気を指標にします。脳は起床4時間後に最も活動的になるとされているので、そのときに眠気を感じるときは睡眠時間が足りていない可能性があります。1週間くらい続く長期休暇があれば、就寝時間を一定にして、目覚ましをかけず部屋のカーテンも閉めたままで、自然に目が覚める時間を計ってみましょう。快眠できたと感じるときが、最適な睡眠時間といえます。最適な睡眠時間を知って、就寝時間や起床時間を調整しましょう。

睡眠の質を高める方法

就寝前にコップ一杯の水を飲む

睡眠中に汗をかいて体温を下げることで、深い睡眠がとれるメカニズムになっています。睡眠中に十分な汗をかくために、常温の水から白湯をコップ一杯飲みましょう。

悩み事を書き出す

不安や悩み事があるときは、ベッドに入る前にその内容をメモ帳に書き出してみましょう。心につかえていたものがはっきりし、脳が整理されて不安や悩み事がやわらぐので、スムーズに入眠できるようになります。

寝室環境を整える

快適な睡眠のための室温は、夏は26度前後、冬は18度前後といわれています。特に冬は室温と寝床内環境との温度差が大きくなりやすいため、就寝前にエアコンなどで寝室の温度を適温にしておきましょう。

 

対処法を試しても頭痛が改善されない場合や、群発頭痛の可能性がある場合は医療機関を受診してください。
日本頭痛学会認定専門医一覧
http://www.jhsnet.org/ichiran.html

 

<参照>
『ハリソン内科学第5版』デニス・L・カスパーほか編 ,福井次矢ほか監修(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
『カプラン臨床精神医学テキスト第3版』ベンジャミン・J・サドックなど編著 ,井上令一監修(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
『家庭の医学』主婦の友社

photo:Getty Images

 

  • 体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。

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