睡眠に関する悩みの中でも、寝付きが悪く、なかなか入眠できない場合の解決策として有効なのが、睡眠導入剤の使用です。適切に使用すれば不眠解消の助けになりますが、副作用や依存性などを心配して抵抗感を持つ人もいるのではないでしょうか?
今回は、南青山アンティーク通りクリニックの福西勇夫院長に自分に合った睡眠導入剤の選び方と正しい使用方法についてお話を伺いました。

正しい睡眠導入剤の選び方|タイプに合わせた使い方とは【医師監修】

睡眠薬(睡眠導入剤)の種類と効果

睡眠薬(睡眠導入剤)の種類と効果

医療機関で不眠に関する不眠症状を伝えると、医師は診察した上で状況を診断し、不眠の基本的な治療法の一つとして、薬を処方するケースがあります。処方される薬は睡眠薬または睡眠導入剤が一般的です。
ここでは、睡眠薬と睡眠導入剤の違い、その種類について紹介します。

睡眠導入剤とは

不眠にはさまざまな種類があり、同様に、薬にもさまざまな種類があります。薬を選ぶ時の指標の一つとして“作用時間”があり、大きく4つのタイプに分けられます

  • 超短時間型:3~4時間
  • 短時間型:5~6時間
  • 中時間型:7~8時間
  • 長時間型:それ以上の時間

 

睡眠導入剤とは、基本的には寝付きの改善に作用する薬剤全般を指す睡眠薬の一種で、上記の「超短時間型」や「短時間型」に該当する睡眠薬を指します。睡眠薬はゆっくりと長く効くのに対し、睡眠導入剤はすぐに効き、効果も比較的短時間です。

市販薬と処方薬の違い

薬局などで購入できる市販薬は、医師の処方を受けて調剤薬局で購入する処方薬と比較すると、副作用が少なく、効果も穏やかです。不眠の症状が軽い場合は、市販薬を使用してみて、それで症状が改善するのであれば、処方薬を服用する必要はありません。

代表的な薬の種類

代表的な市販薬・処方薬としては、それぞれ下記のようなものがあります

市販薬

・ジフェンヒドラミン塩酸塩

処方薬

・バルビツール系
・非ベンゾジアゼピン系
・ベンゾジアゼピン系
・メラトニン受容体作動薬
・オレキシン受容体拮抗薬
 
処方薬については、古くはバルビツール系が主流でしたが、副作用が強く安全性にも課題がありました。その後、ベンゾジアゼピン系の薬が開発され、バルビツール系と比較すると安全性が高いため、多く処方されるようになりました。さらに依存度が弱いベンゾジアゼピン系も登場し、この2種類が現在の主流になっています。
 
また、最近では体内時計に作用するメラトニン受容体作動薬や、覚醒を維持する脳内物質に作用するオレキシン受容体拮抗薬といった、さらに依存度の弱い薬も登場し、処方されるようになってきています。
これに対して市販薬は、かぜ薬などにも含まれているジフェンヒドラミン塩酸塩を成分としていて、緩やかに、自然に近い眠りに導く効果が期待できます。

睡眠導入剤の作用

人間の脳内には神経伝達物質という、情報を伝えるための物質があります。GABA、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン、アセチルコリンなどがこれにあたり、睡眠導入剤の多くは、このような神経伝達物質の働きをコントロールすることで、作用します。
 
例として、現在もよく使われているベンゾジアゼピン系の薬の作用を解説しましょう。ベンゾジアゼピン系の薬は大脳辺縁系のベンゾジアゼピン受容体に作用して、さまざまな神経の機能を抑制します。抑制されるのはノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経系で、これらの機能が抑制されると不安や緊張がなくなり、徐々に眠くなるのです。

睡眠導入剤の代謝

睡眠導入剤は服用後、胃で消化された後、小腸で吸収され血液に入ります。その後、静脈の流れに乗って心臓に至り、心臓から全身に運ばれ、脳に運ばれたものが催眠作用を発揮します。一方で肝臓にたどり着いた薬は肝臓内の酵素によって分解され、最終的には便、または尿として排出されます。
過去に処方されていた薬には、体内に蓄積されて耐性ができるという問題がありましたが、現在ではそのような薬が処方されることはほとんどありません。

部分症状としての不眠

実は不眠を訴える患者さんの中で、睡眠薬が処方されるケースは多くありません。
大部分は、うつ病や統合失調症など、他の病気の症状として不眠が出ているため、うつ病なら抗うつ剤を処方するなど、不眠を併発させている病気の治療を行います。睡眠薬、または睡眠導入剤が“治療薬”になるのは、慢性の不眠症である精神生理性不眠症のみですので、自己判断で不眠だと決めつけずに、必ず医師の診察を受けてください

睡眠薬(睡眠導入剤)のリスク

睡眠薬(睡眠導入剤)のリスク

最近の薬は、安全性がかなり高まっていますが、副作用がまったくないわけではありません。代表的な副作用を確認しておきましょう。

代表的な副作用

翌日、眠気が残る(持ち越し効果)

効果が長時間続くタイプに多い副作用ですが、睡眠導入剤の服用でも翌朝まで眠気が残ることがあります。高齢者に現れやすい症状で、ふらついて転倒する危険があるので、注意してください。

物忘れをする(健忘)

薬を服用した後、効果が現れてからの記憶がないことがあります。

薬に頼るようになる(依存)

最近は、依存性が低い薬が主流になっていますが、薬の種類や個人差によって、依存してしまうケースもあります。依存には、「薬がないと眠れない」という思い込みから不眠が深刻になる精神的依存と、薬を長期間服用していて薬を飲まないと眠れなくなる身体的依存の2つのパターンがあります。

薬が効きにくくなる(耐性)

何年も同じ薬を服用していると、効果が出にくくなってくることがあります。医師の指示に従って、正しく服用するようにしましょう。

睡眠導入剤の正しい飲み方

睡眠導入剤の正しい飲み方

アルコールと一緒に飲まない

飲酒後に睡眠導入剤を使用すると両方の催眠作用が出て、翌朝も眠気が残る場合や、健忘などの副作用が現れる場合があります。一方で、アルコールの作用で眠れなくなることもあります。また、アルコールは、睡眠導入剤が正しく効いているかどうかの判断にも影響を及ぼすので、一緒に飲むのは避けましょう。
ちなみに、他の診療科でも治療を受けたり、他の薬を服用していたりする場合は、その旨を医師に伝えるようにしてください。

短時間の仮眠に使わない

睡眠導入剤は超短時間型のものでも3~4時間程度、効果が持続します。また、服用後、催眠作用が現れるまでに10~30分程度かかるので、1~2時間眠りたいというケースでは使用できません。服用後、短時間で目を覚ましたとしても、薬の作用が残ってふらつきやめまいなどを起こす場合があるので注意しましょう。

状況に合わせて使用する

例えば、「次の日が休みでゆっくり眠れるので服用しない」「次の日が早朝から仕事で眠らないと仕事にならないので、睡眠確保のために服用する」というように、優先順位をつけて、適切に使用することが大切です。ただ、薬によっては、毎日飲んで初めて正しく効果が出るものや、症状が出た時に飲むものがあるので、医師の指示に従って服用してください。
 
睡眠導入剤には、寝付きが悪いという症状を改善する効果がありますが、症状の軽重や薬を必要とする理由などによって、最適な薬が変わります。また、不眠が別の病気の症状として出ている場合もあります。まずは薬についての正しい知識を身につけて、医師の指示に従って適切に服用してください。
 

photo:Getty Images

  • 体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。

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