激しい腹痛、嘔吐、下痢…それは胃腸炎の症状かもしれません。症状が出てしまったときは、どんな対処法をとる必要があるのでしょうか? ここでは、胃腸炎の原因や対処法、胃腸炎にならないための予防法を紹介します。

胃腸炎の原因とは?原因別の予防法と対処法

 

胃腸炎の症状

胃腸炎の症状

胃腸炎になると、みぞおち付近の痛みや嘔吐、腹痛、下痢などが起こりますが、その発症原因によって現れる症状は異なります。

胃腸炎が起きたときに見られる主な症状

みぞおち付近を中心とした腹痛

胃炎の場合は、みぞおち付近、お腹の上の方にしぼられるような痛みが出ます。腸炎の場合は、重苦しい痛みや締めつけられるような強い痛みが生じます。胃炎の場合も腸炎の場合も、痛みが押し寄せてはわずかにやわらぎ、また痛みが押し寄せるといったパターンの繰り返しがしばしばみられます。

吐き気、嘔吐

胃の粘膜が炎症でただれて、刺激を受けると、脳にある「嘔吐中枢」が反応して、吐き気や嘔吐が起きます。

吐血

急性胃粘膜病変という胃炎の重症型では、潰瘍を伴うため、胃の粘膜から出血が起こり、激痛と共に口から血を吐き出すこともあります。

タール便

潰瘍を伴う炎症で胃の粘膜の出血が続くと、便が黒くなります。これをタール便と呼んでいます。

下痢

炎症によって大腸粘膜が刺激されると、大量の水分が分泌され、下痢の症状が出てきます。

血便

腸炎によって、腸管から出血が起きると、便に赤色の鮮やかな血が混じるようになります。

発熱

食中毒を含む感染性胃腸炎の一部では発熱の症状が出ます。

胃腸炎の原因

胃腸炎の原因

胃腸炎の原因の中で、特に多いのがウイルスや細菌による感染です。さらに、アレルギー、薬物、食事、ストレス、などによっても起こる場合があります。

感染による胃腸炎

細菌やウイルスなどの病原体による胃腸炎は、病原体が付着した手で口に触れたり、汚染された食品を食べたりすると感染します。

ウイルス性胃腸炎

ノロウイルス

感染性胃腸炎の原因のうち多くを占めているのがノロウイルスです。子どもから大人まで誰にでも感染し、激しい嘔吐や下痢、発熱を起こします。ウイルスが付着した貝類を食べることで感染することが多く、人から人へも感染します。厚生労働省により、食中毒原因ウイルスとして食品衛生法に制定されています。

ロタウイルス

感染力が強く、ほとんどの子どもが3~5歳までに感染するウイルスで、人から人へ経口感染します。突然嘔吐をしはじめるのが症状の特徴です。

アデノウイルス

低学年の子どもがかかりやすい「プール熱」の原因として知られていますが、アデノウイルスには多くの型があり、腹痛や下痢を起こすタイプもあります。

サポウイルス

ノロウイルスと感染経路や症状が似ており、嘔吐、下痢、発熱が起こります。免疫・抵抗力の低い5歳未満の子どもに感染しやすいウイルスです。

細菌性胃腸炎

カンピロバクター

牛、豚、鶏などの腸管内に存在しますが、十分に加熱されていない鶏肉や、汚染されたまな板などで調理された食品による感染例が大半を占めます。腹痛や発熱を引き起こします。

サルモネラ

サルモネラに汚染されている鶏卵や鶏肉を摂取することで感染します。腹痛や発熱のほか、血便を引き起こすことがあります。

黄色ブドウ球菌

ヒトの喉や鼻にも存在する身近な菌ですが、おにぎりなどの食べ物の中で増殖する際に出す毒素によって胃腸炎が生じます。吐き気、嘔吐、腹痛を引き起こします。

病原性大腸菌

牛肉のほか、牛のフンで汚染された食べ物や水から感染します。腸管出血性大腸菌と呼ばれるタイプで、腹痛や血便などが起こります。

エルシニア

汚染された豚肉を食べたり、エルシニア菌に感染したイヌやネコと接触したりすることから感染します。発熱、腹痛、下痢が起こります。

腸炎ビブリオ

生の魚介類から感染する細菌です。発熱、嘔吐、腹痛、血便などを引き起こします。

ヘリコバクター・ピロリ

この菌は上で述べた病原体と異なり、食中毒を起こすわけではありません。胃の粘膜に長期にわたって感染する細菌です。胃の炎症を起こし、胃の粘膜を衰えさせる「萎縮(いしゅく)」を引き起こし、胃もたれや食欲不振が起こります。

そのほかの感染による原因

アニサキス

海産物に寄生している幼虫を気づかずに食べると、その寄生虫が胃の粘膜に侵入し、胃炎の原因となります。強い吐き気と嘔吐に加えて、みぞおちの痛みを引き起こします。

感染以外の原因

細菌やウイルス以外にも特定の食品や薬物を摂取することで、胃腸炎にかかる場合もあります。

アレルギー

サバやイカ、エビといった魚介類や卵などの食物アレルギーのある人が、特定の食品を食べると下痢を起こすことがあります。それらは、アレルギー反応による胃腸炎と考えられます。下痢のほか、食べたものを吐いたり、皮膚に発疹ができたりします。繰り返しアレルギーの原因となる食べ物を食べていると、呼吸困難などのショック状態を引き起こす可能性があります。

薬物

副作用として胃炎や腸炎を引き起こす可能性がある薬を下記で説明します。

鎮痛薬

鎮痛薬の一種である非ステロイド性消炎鎮痛薬は、炎症や痛みを抑えるのと同時に、胃粘膜保護機能も抑えられるため、胃粘膜が傷つき、胃炎が引き起こされます。

抗生物質

抗生物質を一定期間投与すると、腸内細菌のバランスが乱れ、腸炎が起こる場合があります。

経口避妊薬

経口避妊薬を服用すると、ホルモンのバランスが変化し、腸炎が起こる場合があります。

抗がん剤

腸の動きを活発にする副交感神経が刺激され、腸の運動が高まったり、吸収機能に障害が起こったりすることで、腸炎が起こる場合があります。

食事

アルコールや香辛料など、胃や腸への刺激が強い食品を飲食すると、粘膜が荒れ炎症を起こす場合があります。暴飲暴食も同様に胃腸に負担がかかるので、胃や腸に炎症が起きやすくなる原因になります。

ストレス

仕事、受験、家庭などの問題に対する精神的なストレスにより、胃酸の分泌を制御する自律神経が乱れます。それによって胃酸が過度に分泌されたり胃粘膜の血流が低下したりして胃炎が起こる場合があります。また、ケガのような肉体的なストレスも同様に胃炎の原因になります。

胃腸炎の対処法

胃腸炎の対処法

胃腸炎は、その原因に応じた対応が必要となります。最も多い感染性胃腸炎では、下痢による脱水を防ぐための水分補給が大切です。以下で原因別に適切な対処法を紹介します。

感染性胃腸炎の場合

下痢が起きているときは、水分や塩分が不足する脱水症状に気をつけましょう。下痢の症状自体は数日で自然に治まることが多いです。症状が重い人や感染への免疫・抵抗力が低下している人などのケースでは専門家の診察を受け、抗生物質を利用することがあります

水分補給

下痢の時には、常温に近い、薄めのお茶やミネラルウオーターなどを少しずつ飲みます。おかゆや、すりおろしたリンゴ、野菜スープなどで水分を補給するのも良いでしょう。さらに、脱水が進んでいる場合、ミネラルを含んだ経口補水液を摂取したり、病院で静脈への輸液をしたりすることで脱水症状を改善します。

薬物療法など

高齢者のほか、人工関節を使っていたり、ステロイドや免疫抑制薬を使っていたりする場合には、感染への免疫・抵抗力が低下しているので、細菌による胃腸炎の一部では、抗生物質を使って症状を抑えることがあります。抗生物質は医療機関で処方してもらいましょう。

アレルギーの場合

アレルギーを引き起こす食品を口にしないようにすることが第一です。じんましんがひどくなったり、腹痛が我慢できないほど強かったりする場合には、医療機関を受診してください。

薬物の場合

非ステロイド性消炎鎮痛薬の影響で胃炎が起きている場合には、すぐに服薬を中止することが大切です。専門医の判断のもと、胃酸を抑える酸分泌抑制薬や抗コリン薬、胃粘膜を守る防御因子増強薬といった薬を飲んで胃の粘膜の回復を図ります。

食事の場合

暴飲暴食で胃腸炎になってしまったときは、香辛料やアルコールなど刺激のある食品を控え、おかゆなど胃の負担が少ないものを少しずつ食べるようにしましょう。

胃腸炎の予防法

胃腸炎の予防法

胃腸炎の予防は、原因となるウイルスや細菌を体内に入れないことが重要です。普段の生活の中でできる予防法をご紹介します。

感染性胃腸炎を避けるための予防法

調理をする前は手洗いを徹底し、胃腸炎の原因となる菌を食材に付着させないようにしましょう。さらに、食材は十分に加熱する、調理後はできるだけ早く食べる、調理器具の洗浄・消毒・乾燥はしっかり行うなどの対策を行います。また普段から、トイレの後、帰宅後、食事の前に手を洗う習慣をつけることも大切です。

アレルギーによる胃腸炎の予防法

アレルギー反応を起こす可能性がある食品は、医療機関でアレルギー検査を受けることで把握できます。アレルギーの原因となる食品は決して摂取しないように気をつけましょう。

食事による胃腸炎の予防法

体調が優れないときや、疲れがたまっているときは、暴飲暴食を避けて、アルコールは適量(350mlの缶ビールなら、男性は1日2本、女性は1本までが目安)にとどめるほか、唐辛子などの香辛料や刺激の強い食品の摂りすぎは避けましょう。

服薬による胃腸炎予防法

非ステロイド性消炎鎮痛薬を使う時には、胃酸を抑える薬や胃潰瘍を治す薬の併用も有効です。専門医に相談の上、薬を処方してもらいましょう。

ストレスによる胃腸炎の予防法

ストレスの解消で注目されているのが、脳内の神経伝達物質「セロトニン」です。「幸せホルモン」と呼ばれることもあり、精神を安定させてくれると考えられています。セロトニンが正常に分泌されている状況にしていくことが大切です。例えば、普段の生活に瞑想を取り入れて、気持ちを安定させられるようにするとよいでしょう。ストレスの原因と解消法については下記の記事を参考にしてください。

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ストレスの原因と解消法のまとめ

大きな病気を引き起こす前に、知っておきたいストレス解消法をご紹介します

<参照>
タケダ健康サイト(下痢)
http://takeda-kenko.jp/navi/navi.php?key=geri
 
「ハリソン内科学第5版」デニス・L・カスパーほか編、福井次矢ほか監修(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
 
「消化器内科グリーンノート」木下芳一編著( 中外医学社)
 
「ガイトン生理学原著第11版」アーサー・C・ガイトンほか原著. 御手洗玄洋総監訳. 小川徳雄ほか監訳(エルゼビア・ジャパン)
 
「カプラン臨床精神医学テキスト第3版」ベンジャミン・J・サドックなど編著、井上令一監修(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
 
家庭の医学. 主婦の友. 2010.
 
「第3版栄養食事療法必携」中村丁次編著(医歯薬出版)
 
「今日の治療薬2017」浦部晶夫ほか編(南江堂)

photo:Getty Images

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