大事な仕事や試験の前に、いざ「やる気を出そう」と思っても、無気力になってしまい、やる気が出ない…。そんな経験はありませんか?
 
やる気が出ないことに余計に焦ってしまい、どんどん気分が落ち込む、そんな心の負の連鎖を生んでしまわないよう、やる気が出なくなる原因や、やる気を出す方法をご紹介します。

「やる気が出ない」のは病気!? 原因を知り、やる気を出す方法

やる気が出ない理由

やる気が出ない理由

やる気が出なくなる原因は?

やるべきことがあってもやる気が出ない、積極的にものごとを成しとげようという気になれない、という状態になるのはなぜなのでしょうか。それには、脳の神経伝達物質 (※)の影響が関係しています。
 
※神経伝達物質:神経細胞(ニューロン)でつくられ、他の神経細胞に興奮または抑制を伝える化学伝達物質で、アセチルコリンやドーパミン、ノルアドレナリンなどがある
 
私たちの脳では、様々な脳内物質が分泌されています。脳の神経伝達物質は、心に影響して喜びや不安などを感じさせたり、身体に影響してだるさをもたらしたりします。やる気が出なくなるのは、「セロトニン」や「ドーパミン」、「ノルアドレナリン」という神経伝達物質のバランスが乱れているからです。

「セロトニン」とは?

セロトニンには脳内物質のバランスを整え、精神を安定させる働きがあります。睡眠と覚醒のリズムや痛みの抑制などにも関わっている物質です。セロトニンが不足するとイライラしたり、不安を感じたりするほか、うつ病との関連も指摘されています。食欲や性欲、睡眠、情動、記憶、学習機能へ作用します。

「ドーパミン」とは?

ドーパミンは、意欲や喜びなど快感を得た時に活発になる物質。ドーパミンがたくさん分泌されるとやる気が出ます。また、人間が行動を起こす時にはドーパミンが分泌されており、正常に分泌されていると、行動の動機付けに正しく作用します。

「ノルアドレナリン」とは?

ノルアドレナリンは、動物が危険を感じた時に分泌される物質です。脳と身体を覚醒させる作用と、環境や対人、精神などから受けるストレスに対応する作用などがあります。
「ノルアドレナリン」の分泌を活性化させることで、ドーパミンの分泌も活発になります。

やる気が出なくなるメカニズム

平常時は、神経伝達物質の分泌をコントロールして、精神のバランスをとっていますが、人間がストレスを感じると、ドーパミンやノルアドレナリンが過剰分泌され、セロトニンの分泌量が減ってしまいます。セロトニンの分泌量が減ると、神経伝達物質のバランスが崩れ、脳内の神経細胞の働きに影響が出て、やる気が出なくなります。

やる気が出なくなる病気

やる気が出なくなる病気

やる気が出なくなる原因には、病気の可能性もあります。ここでは、脳内物質のバランスを整えるセロトニン不足による病気について説明します。

セロトニン不足が原因の病気

うつ病

うつ病は、「不眠や食欲不振などの特定の症状が、2週間以上にわたりほぼ毎日続いている状態」です。うつ病になる原因は心身の疲労やストレスなどで、やる気が出ない症状はうつ病の初期症状として見られます。うつ病になるとセロトニンが不足するので、やる気が出ない他にも、喜びの喪失や悲壮感にかられるなど、さまざまな精神障害の症状が出てきます。

セロトニン不足以外の要因でやる気が出なくなる病気

橋本病

身体を守る働きをするリンパ球が何らかのきっかけで甲状腺を攻撃し、甲状腺の機能が低下する病気です。身体の新陳代謝を促す甲状腺ホルモンの分泌が正常に行われなくなり、代謝機能が低下することで心身の機能が低下します。橋本病はやる気が出なくなる以外にも、以下のような症状が見られます。

  • 疲れやすくなる
  • 汗をかかなくなる
  • 体重が増加する
  • 脈拍や体温が低下する
  • 眠気を感じることが増える

自律神経失調症

精神的ストレスや過労などが原因で、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが崩れることで起こる症状の総称。自律神経は心身の状態を調整しているので、そのバランスが崩れることによって、だるさなどの全身的症状だけでなく、頭痛や耳鳴りなどの器官的症状、やる気が出ない、イライラするなどの精神的症状が出ることがあります。現れる症状は、人によって様々です。

無気力症候群(アパシーシンドローム)

特定のことに関して意欲や自発性がなくなる病気です。趣味は積極的に取り組む一方、仕事に対してはやる気が出なくなる、というような状態になります。感情の起伏が小さくなったり、様々なできことに対して無関心になったりします。無気力症候群は、強いストレスから身を守るための逃避行動と考えられています。受験を乗り越えた大学生に多いとされていましたが、最近では社会人にも見られる症状です。

やる気が出なくなるのは睡眠不足のせい?

やる気が出なくなるのは睡眠不足のせい?

病気や心身の不調によってやる気が出なくなることは前述の通りですが、それ以外に日常的な習慣が原因となっている可能性があります。それは、睡眠不足です。睡眠不足によって心身に不調が出ると、やる気を減退させてしまうことがあります。

睡眠不足でやる気が出なくなる理由

睡眠不足になったり、不規則な生活が続いたりすると、体内時計が狂い、脳内物質のバランスを整えるセロトニンの分泌が減ります。セロトニンの分泌が減ると、入眠時に必要なメラトニンというホルモンが分泌されなくってしまいます。すると、寝つきが悪くなったり、途中で目覚めることが増えたりして睡眠の質が下がりやすくなります。

やる気が出ない状態を解消する睡眠

やる気を出すために必要なセロトニンの分泌を正常にし、睡眠サイクルを整えることがポイントです。「何となく毎日やる気が出ない」と思っている人は、起きた後や眠る前の習慣を見直すことが大切です。

朝起きたらすぐに光を浴びる

目覚めてから太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットされ、脳からセロトニンが分泌されます。セロトニンが正常に分泌されると、夜に眠る時に必要なメラトニンも分泌され、眠りたい時間に眠れるようになります。

湯船につかってから寝床に入る

人間の眠くなるタイミングは、身体の中心部の「深部体温」が下がる時に訪れます。ベッドに入る前に、湯船につかってしっかりと身体を温めてあげると、そのあと体温が急激に下がり眠気が強くなります。温度は38度から40度のぬるめのお湯にしましょう。

やる気を出す方法

やる気を出す方法

「なんだか今日はやる気が出ない…」と感じたとき、ただがむしゃらに頑張るのはつらいもの。ここでは脳内のホルモンバランスをコントロールし、やる気を出す方法を紹介します。

好きなことからやり始める

喜びを感じる脳内物質「ドーパミン」は、活動すると分泌されます。まず活動することで、やる気が起こり、徐々に脳が活動状態になります。「面倒だ」と思っていることは、単純作業など頭を使わないものから始めるなど、工夫をしましょう。

ごほうびを用意する

「この仕事が終わったら海外旅行に行こう」「今日は早く仕事を片付けてレストランで食事をしよう」など、自分で自分にごほうびを用意することで、モチベーションを高めることができます。何かを達成して報酬を得られると予測されると、脳内でドーパミンが活性化し、やる気が出てきます

食事で“トリプトファン”を摂取する

脳内物質のバランスを整えるために必要な「セロトニン」の材料となるのが、「トリプトファン」という必須アミノ酸です。トリプトファンは体内でつくることができないため、食事で補う必要があります。トリプトファンが多く含まれているのは、たんぱく質を多く含む食品です。代表的なものは以下の通りです。

<トリプトファンが豊富な食品>

  • 豆類
  • 大豆製品
  • 乳製品
  • 青魚
  • 鶏ささみ肉
  • ナッツ類など

トリプトファンが体内でセロトニンに変わるためには、「ビタミンB6」と「炭水化物」の同時摂取が必要です。

  • ビタミンB6…たんぱく質をアミノ酸に分解するのを助け、野菜・果物にも多く含まれている。特にニンニクに多い。
  • 炭水化物…脳内にトリプトファンを取り込むのを助ける

「トリプトファン」・「ビタミンB6」・「炭水化物」の3つの栄養素を摂りたい時は、バナナがおすすめです。朝食を食べる時間がない人でも意識して食べてください。さらにお米やパンを未精製のもの(玄米や胚芽米、ライ麦パンなど)にすると、ビタミンB6が同時にとれます。
 
過度なダイエットなどで動物性たんぱく質が不足すると、セロトニン不足によってやる気が低下したり、情緒不安定になったりと、様々な弊害がでてしまいます。バランスのよい食事を心がけましょう。

やる気不足の予防法

やる気不足の予防法

やる気を出すだけではなく、やる気をなくさないようにするために、「セロトニン」の分泌を正常に保つための行動は以下のとおりです。

日中に光を浴びる

強い光を浴びることで、眠りを促すメラトニンの分泌を促すとともに、セロトニンの働きも強める効果が期待できます。そのため、朝起きたらカーテンを開けて室内の照明をできるだけ明るくするなど、光をたくさん浴びるように工夫してみましょう。可能であれば、太陽の光を1時間ほど浴びるのが最適です。

腸内環境を整える

脳内物質のコントロールを行う「セロトニン」を増やすためには、腸内環境を整えることも重要です。セロトニンの材料となる「5-HTP」という物質は腸管(小腸や大腸など)で作られているため、腸がよく働くと、やる気が出やすくなります

 

腸内環境とセロトニンの関係

腸の中には、善玉菌や悪玉菌、日和見菌がおよそ217の割合で存在しています。善玉菌は「身体に有益な菌」、悪玉菌は「身体に害を与える菌」で、日和見菌は「腸内の状況によって善玉菌・悪玉菌のどちらか優勢な方に味方する菌」です。
 
食生活の乱れなどが原因で、日和見菌が悪玉菌に加勢して悪玉菌が増えると、腸内環境が悪化します。すると便秘になったり免疫力が低下したりし、セロトニンのもとになるたんぱく質の分解作業がうまくいかず、セロトニン不足になります。

セロトニンを増やす腸内環境作り

セロトニンの分泌を促す腸内環境づくりには、善玉菌を増やすことが重要です。善玉菌が入ったヨーグルトや、善玉菌のえさとなる食物繊維やオリゴ糖の入った食品を食べましょう。ヨーグルトに含まれる乳酸菌にはいろいろな種類がありますが、中でも植物性の乳酸菌が効果的です。

運動を習慣づける

セロトニンは、「リズム運動」と呼ばれる身体の活動によって分泌が促されます。リズム運動とは簡単なダンスやウォーキングなど、一定のリズムを刻む運動のことを言います。中でもウォーキングは、すぐにできる運動なのでおすすめ。朝の光を浴びながら20〜30分程度、歩くことに集中する時間を作ってください。
 
やる気が出ないと、なんだか毎日が憂うつになってしまいますよね。やる気を出すヒントは、毎日の生活の中にたくさんあります。
 
できるものから取り入れて、日々の仕事に前向きに取り組めるようにしていきましょう。
 
監修:坪田聡(雨晴クリニック副院長)

<参照>
『めんどくさくて、「なんだかやる気が出ない」がなくなる本』西多昌規(ソフトバンククリエイティブ)
『脳も体もガラリと変わる! 「睡眠力」を上げる方法』白川修一郎(永岡書店)
『3分あれば間に合います! やる気がなくてどうしようもない僕を救ってくれる本』牛堂登紀雄(WAVE出版)
『これ1冊できちんとわかる アーユルヴェーダ』西川眞知子(マイナビ)
『大人のメンタルヘルス新常識』トキオ・ナレッジ(宝島社)
『「昨日の疲れ」が抜けなくなったら読む本』西多昌規(だいわ文庫)

東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科
http://www.twmu.ac.jp/TWMU/Medicine/RinshoKouza/021/patient/hormone/hashimoto/index.html

厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary
伊藤医院 甲状腺を病む人々のために 橋本病
http://www.ito-hospital.jp/02_thyroid_disease/02_5_1about_hashimoto.html
オムロン はじめよう!ヘルシーライフ vol.113 「リズム運動」でメンタル強化を
http://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/113.html

photo:Getty Images

  • 体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。

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