こんにちは。睡眠コンサルタントの土井です。幼い頃から不眠に悩んできた私にとって、不眠克服までの約20年の間には苦しい経験もたくさんありました。しかし、今は不眠を克服し、こうして不眠に悩む方に自分の経験をお伝えできるまでになりました。連載の最後となる今回は、睡眠に長年悩んできた当事者として、社会がこんな風に変わればいいなーという提案を4つご紹介します。

プレミアムマンデーと睡眠通信簿で眠りを改善!睡眠健康度UPの提案

提案① 睡眠も健康診断でチェック

提案① 睡眠も健康診断でチェック

まず1つ目は、健康診断に睡眠に関する項目を追加することです。現在、自分の睡眠が健康かどうかを知る機会がなかなかありません。病院に行くにも、基本的には自己判断になります。
 
そのため自分で睡眠の不調をなんとなく理解していても、どうすればよいか分からない場合が多く、かなり深刻になるまで放置してしまうことも多いように感じます。いろんな病気の早期発見や予防への関心が高まる中、睡眠の問題については、対策が行われていません。
 
そこで、睡眠に関して定期的に健康診断を行うというのはどうでしょうか? 身体の健康診断と共に睡眠についても同じように診断していくのです。
 
具体的な方法は、決められた数週間で睡眠の記録をとると共に、不眠重度尺度(ISI)やアテネ不眠尺度(AIS)のような睡眠の質問表に答えてもらいます。その結果で、今の自分の睡眠が健康かどうかが客観的にわかると、いうような仕組みです。
 
健康診断の他の項目と同様に、不調が見つかった場合は、病院での詳しい検査を行い、治療が必要であれば治療を行うという流れになります。睡眠時無呼吸症候群など自身では気づきにくい病気も、こういった機会があることで病院に行く機会ができ、早めに対処できるようになるでしょう。病院に行くほどでもない人も、自分の睡眠の状態がわかることで、改善しようというモチベーションにもなりえます。

大人にも「睡眠通信簿」を

大人にも「睡眠通信簿」を

実際に、福井県のある小学校では「睡眠通信簿」という名で、毎学期1回2週間の睡眠を記録する活動があります。元々は、中学に進学してから不登校になる卒業生が他の学校より多かったことをキッカケに、睡眠について本格的に調査するようになったようです。
 
当初は夜10時以降に寝る生徒が62%に達していましたが、数年の取組みでその割合が23%にまで減少し、卒業生の不登校者もゼロになるという結果が出たという事例があります。
 
大人の場合でも、睡眠の状態をチェックすることが生産性が落ちている原因の把握につながったりもします。調子を崩している社員を把握し、生産性をアップさせたり、早期に対策を行うことでメンタルヘルスによる不調を減らしたりすることが期待できるでしょう。
 
そして、なにより睡眠に対する意識が変わり、睡眠を大切にするようになることで、健康な睡眠がとれる人が多くなってくるはずです。睡眠は一見個人の問題のように見えますが、様々な病気のリスクを増大させ、大きな経済損失を生むなど社会的な問題であると言えます。5人に1人が睡眠に悩むという今、個人の問題にせず、社会の問題として取り組むことが大切ではないでしょうか。
 
将来的に、睡眠を記録するウェラブルデバイスがもっと普及すれば、自分で記録しなくても勝手にデータとってくれるようになり、AIがアドバイスしてくれる…なんていう世界も実現するかもしれません。

提案② 正しい睡眠を学ぶ機会を

提案② 正しい睡眠を学ぶ機会を

睡眠の健康診断と合わせて取り組みたいのが、睡眠を学ぶ機会の設置です。20年間の不眠を経て率直に思ったのは、「睡眠は大切なことなのに、教わる機会がない」ということです。生まれたときから毎日当たり前のように眠り、自分の眠り方など改めて考えてみたことがないという人がほとんどのはずですが、その眠り方が眠りに悪影響している、ということもあるのです。
 
睡眠についてもっと早く知っておけば、不眠の苦しみを減らせたなと実感しています。私はたまたま睡眠について学ぶ重要性に気づけましたが、不眠で悩む人からの相談を聞きながら、ずっと正しい睡眠について知らないで苦しむ人もいるんだろうなと、日々感じています。健康で充実した生活には欠かせない良質な眠りを実現するための方法を学ぶ機会があれば、この現状はかなり変わってくるのではないでしょうか?
 
例えば、学校の授業で睡眠について学び自分の身体と心を守る方法を学ぶ。例えば、会社で睡眠について研修を受け、資本となる健康を維持し、仕事の能率を上げる方法を学ぶ。このように学校や会社で睡眠について学び、自分で睡眠をマネジメントできる方法を学ぶ場があれば、不眠で苦しむ人が減るだけでなく、睡眠の効率を上げ、より生産性の高い社会が実現できるはずです。

提案③ 朝寝坊できる「プレミアムマンデー」

提案③ 朝寝坊できる「プレミアムマンデー」

日本人は世界的に睡眠時間が短いというデータがあります。その要因は生活の夜型化にあるのではないかと考えています。特にここ30年で一気に夜型化が進み、NHKの国民生活調査による1960年は午後10時までに寝ている人の割合が約70%だったにもかかわらず、2015年には30%以下になっています
 
しかし、就床時刻が遅くなっても学校や社会の始業時刻は変わらないため、慢性的な睡眠不足に陥っているのです。慢性的な睡眠不足は眠気をもたらすだけでなく、重大なミスの引き金になったり、健康上のリスクをも引き上げます。
 
多くの人が平日の睡眠不足を土日などの休みの日に回復しようとしますが、休みの日に長く寝すぎるため、逆に体内時計のリズムがずれ、また週明けがつらくなります。そして体内時計のリズムが整ってきたころには、また休みになり、再びリズムがずれる…という悪循環が生まれてしまいます。そうすると、常に睡眠不足で、本調子でない日々を過ごすことになります
 
そこで、プレミアムフライデーならぬ、朝寝坊できる「プレミアムマンデーを」導入してみるのはどうでしょうか? 週の数日1〜2時間だけ始業時刻を遅らし、寝坊してもよい日を作ってみるのです。睡眠不足が解消されるだけでなく、体内時計のリズム調整も楽になります。
 
もちろんそれによって、就業時間は多少減るかもしれませんが、週明けやそれ以降の生産性をあげることでカバーできるのではないかと考えています。

提案④ 仕事中の仮眠の導入

提案④ 仕事中の仮眠の導入

業務上、「プレミアムマンデー」の導入が難しい場合は、仮眠スペースと仮眠時間の設置はどうでしょうか?
 
午後の短い仮眠は厚生労働省も進めており、睡眠不足の緩和や午後からの生産性アップにつながります。コーヒーを飲みながら、眠い目をこすって仕事したり、居眠りしないよう鉛筆で自分の手を指しながら授業を受けているより、さっと短い仮眠をとり、頭をすっきりさせて物事に取り組んだほうがよほど効率的ではないでしょうか?
 
どうしてもいろんな要因で睡眠時間が短くなり続けている現状では、日中の仮眠などどこかで補わないと限界が来てしまいます。もちろんむやみやたらに仮眠をとると、寝すぎて逆に身体がつらくなったり、一時的に眠気が増加することもあるので、仮眠時間を設置して、効果的に仮眠がとれる工夫をします。
 
決してサボるためではなく、日中の生産性を上げ、健康な暮らしをもたらすために仮眠を導入するのです。
 
日本でも、仮眠スペースや仮眠制度を設けている企業があります。広く浸透するにはまだ時間とハードルがありそうですが、健康的に働く工夫を会社と働く人が一緒に考えていけると良いと思います。

さいごに:睡眠を大切にする文化を

さいごに:睡眠を大切にする文化を

4つの提案、いかがでしょうか?個人レベルでも、どれか1つからでも取組めれば、うまく眠れる環境づくりにつながると思います。
 
現在の日本は、睡眠について関心が低く、軽視しがちであるという風に感じています。睡眠はなかなか周りからはその実態が見えず、関与しづらい領域です。しかし、睡眠が大切なことはいうまでもありません。個人の努力だけでなく、日本全体として睡眠に対する関心を上げ、睡眠を守っていかなければいけないのではないでしょうか。
 
もっと睡眠を大切にし、睡眠を豊かにしていくような文化が育っていくように…それが、不眠を克服できた今の私の願いです。

photo:Getty Images

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