眠りながら家の中を歩き回ったり、奇妙な言葉を発したり…。フミナーズ読者の皆さんは、ねぼけておかしな行動をとったり、それを誰かに指摘されたりしたことはありませんか? ねぼけている間は、本人にほぼ自覚がありません。今回は、無意識のうちに行われるねぼけ行動やその対策をご紹介します。

ねぼけて「やらかす」人必見! 実は危険な病気の兆候かも

 

ねぼけとは?

ねぼけとは?

ねぼけとは、睡眠中に起こる異常行動「睡眠時随伴症(パラソムニア)」の覚醒障害の1つ。脳が眠っているにも関わらず、身体だけが覚醒して行動する状態のことをいいます。
 
ねぼけには大きく分けて2つのタイプがあります。1つが、身体と脳が両方休息している「ノンレム睡眠」から、脳が覚醒状態に移る際に発症する「ノンレム関連睡眠時随伴症」。もう1つが、身体は休息していて脳が目覚めている「レム睡眠時」に起こる「レム関連睡眠時随伴症」です。それぞれメカニズムと症状が異なります。

ノンレム関連睡眠時随伴症

夢は見ておらず、ノンレム睡眠から覚醒する時に起こる障害。5~12歳の小児に多く、成長とともに自然に症状が消えることがほとんどです。脳が半分眠っていて半分覚醒しているねぼけ状態であるため、本人に記憶がないことが多いのが特徴です。

レム関連睡眠時随伴症

睡眠中に突然起きあがり、大声で叫んだり暴れまわったりするのが特徴。「夢を見ていること」と「筋肉の緩み」に関係があると考えられています。中年期~老年期の大人に多く、夢を見ながら夢の内容にそった行動をとり、夢の内容を覚えている場合があります。

ねぼけの症状と対処法

それでは、ノンレム睡眠時とレム睡眠時における代表的なねぼけの症状と、その対処法を見ていきましょう。

ノンレム関連睡眠時随伴症のねぼけ症状

ノンレム関連睡眠時随伴症のねぼけ行動は、前述のとおり夢を見ていない時に出るのが特徴です。

夢中遊行症(夢遊病)

まるで起きているかのように数分~数十分間歩き回ったあと、寝床に戻って再び眠るという症状です。夢遊病という名前から「夢をみながら行動している」と思われがちですが、実際には夢をみないノンレム睡眠の間に起こっています。人によっては歌ったり、料理を作ったりするというねぼけの症例もあります。
3〜8歳の子どもによく見られ、脳が未発達であることが原因だと考えられています。大人の場合は、他の病気やストレスによる可能性があります。

夢中遊行症(夢遊病)の対処法

本人は無意識の状態で動き回るので、周りの人たちによる対処が必要です。本人を強引に目覚めさせようとすると興奮状態になる可能性があるため、症状がおさまるのを待ち、静かにゆっくり寝室まで連れていくようにしましょう。行動範囲は日常生活の中に限られるため、寝室の周辺には物などを置かず、窓に鍵をかけるなど、本人や周りの人の安全に対する配慮も大切です。

夜驚症

睡眠中、突然パニック状態に陥り、悲鳴や叫び声を上げるねぼけ症状。通常、数分間で症状はおさまり、眠りに戻ります。夢中遊行症と同様、3〜10歳の子どもに多く発症し、汗をかく、呼吸が速くなる、心拍数が上がるなど、恐怖を感じたときの身体現象が起こるのが特徴です。朝起きたときには何も覚えていないという人が大半ですが、恐怖のイメージだけが残る、という人もいます。夢中遊行症と併発することも多いねぼけ症状です。

夜驚症の対処法

青年期までに症状が消えることが多いため、治療は特に必要ないとされています。ただし、成人が発症した場合は、精神的なストレスや不安などの影響が大きいので、心療内科の診察を受けたほうがよいでしょう。

夜尿症(おねしょ)

俗に言う「おねしょ」のことです。5〜6歳になっても月に数日「おねしょ」がある場合、夜尿症と呼ばれます。睡眠が深く尿意を感じても起きられないこと、夜間の尿量をコントロールする「抗利尿ホルモン」の分泌不足、膀胱の容量不足などが原因です。

夜尿症(おねしょ)の対処法

3〜4歳を過ぎると、睡眠中の尿量の減少や膀胱容量の増加で、朝まで膀胱に尿を溜められるようになるため、おねしょは次第に減ります。おねしょをしている自分を後ろめたく感じる子どももいるため、叱らず、成長するにつれ減るものだと教えて安心させることが大切です。
5〜6歳を過ぎてもおねしょをする場合、頻度によっては眠る前の水分摂取を調整するなど、生活習慣を見直すことも大切です。医療機関を受診し、抗利尿ホルモン剤で治療するのも有効です。

歯ぎしり

歯ぎしりは「睡眠時ブラキシズム」とも呼ばれる、ねぼけ症状のひとつです。顎を動かす筋肉である「咬筋(こうきん)」に命令を送る脳の「運動野」が活性化するために起こります。

歯ぎしりの対処法

上の歯と下の歯が接触しないよう、マウスピースをつけるのが効果的です。歯ぎしりが激しく、歯がすり減っている、しみるなどの症状が出る場合は要注意。すぐに医師に相談するようにしましょう。

寝言

睡眠中に言葉を発する「寝言」は、ねぼけの代表的な症状の1つ。言語を司る脳の「前頭葉」の一部が、睡眠中の身体機能の低下に逆らい、勝手に働き出してしまうことが原因で起こります。言葉が明瞭かどうかは、人によってばらつきがあります。

寝言の対処法

多くの場合、治療は不要です。ただし、寝言が多くなると、同室者の眠りを妨げ、睡眠障害をもたらす可能性があります。また寝言で悲しみや苦しみなどを感情的に訴えかけている場合は、精神的ストレスが要因かもしれません。心療内科に相談しましょう。

レム関連睡眠時随伴症に起こるねぼけ症状

レム関連睡眠時随伴症は、前述のとおり夢を見ているときに起こるのが特徴です。

レム睡眠行動障害

脳がレム睡眠中の夢を現実だと捉え、眠っているはずの筋肉が覚醒状態になり、身体が反応することで症状が起こります。約半数の患者に、脳やせき髄の病気があります。
レム睡眠行動障害が発症する時間帯で多いのは、明け方です。突然大声でわめく、腕を振り回す、走り出すなどの特徴があります。

レム睡眠行動障害の対処法

専門医への相談が必須です。レム睡眠行動障害を診断するためには、レム睡眠中の脳や筋肉の状態を調べる「睡眠ポリグラフ検査」が用いられます。治療には抗てんかん薬が用いられるケースが多くあります。
脳の腫瘍(※1)や梗塞(※2)が原因の可能性も考えられます。症状を指摘されたら、専門医へ相談しましょう。

※1 腫瘍:異常に増化した細胞が塊となったもの
※2 梗塞:ある部分で血液の流れが止まり、血液が巡ってこない箇所の細胞が死んでしまうこと

ねぼけは実は病気の前兆かも? 関連する疾患とは

ねぼけは実は病気の前兆かも? 関連する疾患とは

ねぼけは、恐ろしい病気の初期症状である可能性もあります。 “ただのねぼけ”とは思えない場合は、専門の医療機関で診てもらいましょう。ねぼけという症状をおさえるよりも、ねぼけの原因となる病気を治療することが必要です。

ねぼけが症状に現れる病例

てんかん

「てんかん発作」とも呼ばれる、大脳の神経細胞の活動リズムが崩れることで生じる脳疾患です。泣いたり叫んだりする症状が「夜驚症」に似ているため、区別がつきにくいという特徴があります。乳幼児〜3歳以下の子どもに多く発症しますが、近年では高齢者が発症するケースも増えています。

パーキンソン病

主に高齢者に発症する原因不明の神経変性疾患。手足が震えたり、筋肉が硬直したりするなどの運動症状が出ます。また、においを感じる感覚が鈍くなるなど、嗅覚器官に影響が及ぶこともあります。症状の改善がみられない場合は、早めに病院へ行きましょう。

「レム睡眠行動障害」と金縛りの関係

「レム睡眠行動障害」と金縛りの関係

意識はあるのに身体が動かない、という状態になる金縛り。心霊現象のようにとらえられることもありますが、実は「睡眠麻痺」と呼ばれる医学的な見地から説明可能な症状です。

金縛りとは

金縛りとは、身体が休み、脳が活動しているレム睡眠中に覚醒してしまい「筋肉が弛緩し、動かないようロックされたように感じる」状態になることをいいます。ストレスや疲労がたまり、寝つきが悪く睡眠不足になりがちな人に見られやすい症状です。
 
私たちが眠っている間は、身体が休んでいて脳は活動している「レム睡眠」と、身体も脳も休んでいる「ノンレム睡眠」が交互に繰り返されています。眠りについた初期段階は通常ノンレム睡眠であることが多いのですが、何らかの理由で寝ついてすぐに「レム睡眠」となると、「金縛り」が起こりやすくなります。この症状は「睡眠麻痺」とも呼ばれています。

金縛りの対処法

・睡眠時間を十分に確保しましょう
・寝つきを良くするために、睡眠前にリラックスタイムをつくりましょう
・脳内の神経伝達の乱れを整える抗うつ薬や、「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」などを服用するのが有効だと言われています。専門医に相談しましょう。
 
金縛りは、覚醒や睡眠バランスが乱れることで強烈な眠気を誘う「ナルコレプシー」の症状のひとつとして現れることもあります。頻繁に起こるなど不安な場合は、早めに専門医の診断を仰ぎましょう。

「ねぼけ」を予防する日常的なケア

「ねぼけ」を予防する日常的なケア

ねぼけに共通して言えることは、主にストレスや睡眠不足がねぼけを引き起こしているということ。普段の生活を見直すことで、ねぼけ症状の改善や予防は可能です。普段の生活で無理のない範囲で工夫し、実践しましょう。

食生活を改善する

極度のストレスや疲労はねぼけにも大敵です。ストレスがたまると脳内物質「セロトニン」が減り、精神面が不安定になります。ストレスを感じていたら、セロトニンの原料となる「トリプトファン」を豊富に含んだ食事を心がけましょう。
 
トリプトファンは、主に豆腐などの大豆製品や乳製品などに含まれています。同時に、体内へのトリプトファン取り込みを促す「炭水化物」や、タンパク質のアミノ酸への分解を助ける「ビタミンB6」も摂りましょう。ビタミンB6はニンニクなどに含まれています。

眠る前の行動を見直す

仕事や家庭でのストレスを抱えたまま眠りに入ると、睡眠中にねぼけが生じることがあります。大切なのは、ゆったり楽な気持ちで眠りにつくこと。例えば、眠る前に読書をしたり、アロマバスに入ったりするなど、お気に入りのリラックスタイムを設けてみることをおすすめします。
 
ねぼけの症状は、さほど問題のないものから病気の可能性があるものまでさまざまです。ねぼけの症状に悩んだり、不安を感じたりした場合は自力で解決しようとせず、睡眠専門の医療機関や、精神科または神経内科などで診てもらいましょう。症状に合ったケアをすることが大切です。
 
また、ねぼけは自分では把握しづらいものです。家族やパートナーに自分の睡眠中の様子について聞き、症状を把握することからはじめてみましょう。

監修:坪田聡(雨晴クリニック副院長
 
<参照>
『睡眠障害のなぞを解く「眠りのしくみ」から「眠るスキル」まで』櫻井武(講談社)
『バイバイ、おねしょ!』冨部志保子(朝日新聞出版)
 
むさしの国分寺クリニック
http://www.mkclinic.sakura.ne.jp/tenkan-room/onuma_143.html
 
新都心こどもクリニック
http://www.s-akashi.jp/yanyou.html
 
メイクマニュアル医学百科 家庭版 患者さんとご家族のために
http://merckmanuals.jp/home/脳、脊髄、神経の病気/睡眠障害/睡眠時随伴症.html
 
「病院の言葉」をわかりやすくする提案(国立国語研究所)
http://pj.ninjal.ac.jp/byoin/teian/ruikeibetu/teiango/teiango-ruikei-b/syuyo.html
 
日本生活習慣病予防協会 脳梗塞
http://www.seikatsusyukanbyo.com/guide/cerebral-infarction.php
 
公益社団法人 日本てんかん協会
http://www.jea-net.jp/tenkan/tenkantoha.html
 
東海大学医学部脳神経外科
http://neurosurgery.med.u-tokai.ac.jp/edemiru/par/
 
日本歯科大学 新潟病院
https://www.ngt.ndu.ac.jp/hospital/dental/service/special04/
 
サワイ健康推進課
http://www.sawai.co.jp/kenko-suishinka/illness/201606.html

photo:Getty Images

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