こんにちは。睡眠コンサルタントの土井です。
 
今回で連載の第12回目となります。前回は不眠症治療の「認知行動療法」との出会いから実践の部分までご紹介させていただきました。今回はその後の睡眠薬の減薬から断薬までの治療体験を書いていきたいと思います。

睡眠薬の減薬に必要なこと| 薬を卒業し、私が睡眠に自信を持てた方法

私は幼い頃から不眠に苦しみ、約20年もの間、不眠に悩んできました。また、病院での治療も10代の頃からはじめ、睡眠薬の服用は5年以上の経験があります。そんな私も紆余曲折あり、連載1回目でご紹介した通り、色んな方法を試しながら、やっと数年前に不眠を克服することができました。
 
私自身、不眠克服までに時間はかかりましたが、私の経験が今不眠で悩む方・周りの方の不眠症状で悩む方の参考になれば幸いです。

それまで服用していた睡眠薬の減薬に挑戦!

それまで服用していた睡眠薬の減薬に挑戦!

その後も睡眠専門のクリニックにて認知行動療法での治療を続け、不眠の症状がかなりおさまってきました。そして不眠の症状がよくなるにしたがって、徐々に日常の元気な生活が取り戻せるようになってきました。まだ睡眠薬を飲みながらですが、夜しっかり眠れて、日中も元気に過ごせるようになり、再び仕事もできるようになってきました。
 
再開した仕事にも慣れ、不眠の症状が落ち着いてくると、そろそろ減薬をしたいと思うようになりました。先生に「減薬をしたい」と相談し、「漸減法」という方法で減薬実施することになりました。
 
漸減法とは、睡眠薬を飲む量を少しずつ減らしていくことで最終的に薬の服用をやめる方法です。私が服用していた超短時間作用型の睡眠薬にはよく適用される方法であるということでした。
 
具体的には、2週間~3週間で服用している薬を4分の1錠ずつ減らすということをやってきました。たとえば、1錠睡眠薬を飲んでいるとしたら、まずは4分の3錠、2週間~3週間後には2分の1錠、そのさらに2週間~3週間後には4分の1錠という風に、服薬量を減らしていきます。
 
その時飲んでいた薬は2種類、計4錠でした。漸減法のやり方に則り2週間~3週間で4分の1錠ずつ減らしていきました。今までうまくいかなかったので、最初は減薬への不安もありましたが最後の1錠になるまでは順調に減らすことができました
 
「自分は睡眠を改善するために日々行動しているんだ!」という自信と、睡眠薬や睡眠の仕組みをある程度理解できたことで、減薬自体への不安感が減ったことが大きかったと思います。

最後の1錠を減らすまで

最後の1錠を減らすまで

しかし、最後の1錠から減らしていくのにかなり手こずりました。それまでとは違い、一時的に眠れなくなったり、減薬自体への不安感も強くなってきました。それまでは薬を減らすといっても完全に睡眠薬を飲まなくなるわけではなく、少なくとも1錠はしっかり飲んでいるので大丈夫だという安心感もあったのですが、1錠から減らすとなると急に不安になっていたのです。
 
「本当に自分の不眠は治っているのだろうか?」
「睡眠薬の効果で眠れていただけで、これ以上睡眠薬を減らしたらまた眠れなくなってしまうのではないか?」
とつい不安に思ってしまうのです。
 
はじめはなかなかうまくいかず、4分の3錠服用して、そのあと結局残りの4分の1錠を飲む、ということもよくありました。仕事がある日は不安感が特に強かったので、休日前や次の日に余裕があるタイミングから実践してみました。
 
休日を中心に実践していく中で、完璧ではなくても、ある程度眠れて、日中も元気でいられるな、という体験が増えてきました。すると、少しずつ不安が減り、仕事のある日も減薬が実践できるようになっていきました
 
なんとか数か月かけて、睡眠薬を残り4分の1錠まで減らすことに成功しました。あとほんのひとかけらです。
 
そんなタイミングで認知行動療法の治療の8回のセッションが終了しました。認知行動療法は6回~8回程度で数か月~半年ほどを目安に治療が行われることが多く、私の場合は8回終了した時点で治療が一区切りとなりました。
 
希望すれば治療を続けることもできましたが、今まで実践してきた自信と、先生から「土井さんなら自分でやっていけると思います」という言葉を頂いたので、一旦通院しての治療は止め、自分の力で認知行動療法を継続してみることにしました。ひとりでやってみて困ったらまた受診すればいいや、くらいの気持ちでいました。

睡眠に自信を持ちたい。でも、“最後のひとかけら”がやめられない

睡眠に自信を持ちたい。でも、“最後のひとかけら”がやめられない

最後の4分の1錠から完全に断薬するまでが一番つらく時間がかかりました。4分の1錠なので、薬の効果としてはあまりないはずです。したがって、やめてもそこまで睡眠に違いはないだろうと考えるのが普通です。
 
しかし、睡眠薬を飲んでいることの精神的な安心感なのか、最後の4分の1をやめるのはハードルが高く、なかなか達成できませんでした。その時は薬の成分自体への依存というより、薬を飲んでいる安心感への依存があったように感じます。
 
ほとんど効果がないということは、ある意味別に飲んでも飲まなくても影響は小さいということであり、場合によってはお守り代わりに飲み続けるという選択肢もあります。しかし、私としては少しでも服用を続けている限り、睡眠に対する不安感や恐れが消えないのではないか、という感覚がありました。
 
大事な仕事の前日に、「今日は眠れるだろうか?」と不安になったり、旅行に行くときに睡眠薬を忘れ、「睡眠薬がなくて夜眠れなければ旅行もすべて台無しだ」と勝手に落ち込むのはもう嫌でした。だから、どうしても完全に睡眠薬をやめたかったのです。薬をやめることで、睡眠におびえる日々を卒業し、睡眠に自信をもちたかったのです。
 
そこで、腰を据えて最後の減薬をすることにしました。残りの睡眠薬を一気にやめるのではなく、ほんのちょっとずつ飲まない日をつくりました。まずは、休みの日の週に1回。それができてきたら、週2回、週3回と増やしていきました。うまくいってきたかと思いきや、再び眠れなくなって、つい睡眠薬を飲んでしまったりと、進歩は一進一退の日々でした。
 
ときには「もういいや」と思うこともありました。そんな時はすぐに断薬を続ける、辞めるの判断をせず、また体調と気持ちが断薬にむかえる日々をゆっくり待ちました。そして、準備が整えばまた断薬のチャレンジを開始させます。
 
そんな風にあきらめずに何度もチャレンジを続けていると、少しずつ睡眠薬を飲まなくても眠れるという経験が増えてきました。眠れるという経験が増えるに従って、少しずつ不安も減ってきました。
 
「睡眠薬がなくても眠れる」

「睡眠薬がなくても日中元気に過ごせる」
 
そう自信がつきはじめると、知らないうちに飲まなくても大丈夫になりました。睡眠薬を飲み始めてから約6年、認知行動療法の治療を初めて約1年、減薬を開始してからは8カ月程経っていました。
 
不眠がはじまってから、20年。ついに私は不眠を克服することができました。

気になる不眠症の治療費

不眠症の治療を受けようか迷っている方の中には治療費が気になる人も多いかと思います。私は睡眠薬による治療が6年、カウンセリングによる認知行動療法の治療は1年続けてきました。ご参考までに、私の不眠症治療にかかった費用をご紹介します。
 

  • 睡眠薬での治療

薬での治療でかかるお金は、主に診察代と薬代です。病院や治療内容によって多少変わりますが、診察が一回1,000円~2,000円前後、薬が一回1,000円前後でしたので、1回で2,000円~3,000円程度かかっていました。
 
私の場合はだいたい2週間に1回のペースで行っていたので月の治療費は5,000円ほどでした。年間だと約6万円、それが6年間ですので約36万円ほどかかっていたことになります。
 
いま自分で改めて計算してみてびっくりしました。一回一回はそこまで高くはないですが、何年、何十年と睡眠薬を服用するとなると私のようにかなりの金額になることが予想されます。
 

  • 認知行動療法

認知行動療法での治療は、カウンセリングが中心になります。さらに不眠症の認知行動療法には保険が効きませんので、1回の料金は高くなります。私の通っていたクリニックの場合は1回7,640円でしたが、中には1回1万円かかる所もあるようです。認知行動療法での治療は、6回〜8回で一つの治療としているところが多く、私の場合は8回の治療を半年程行いました。1回が7,640円ですので、半年で約6万円の費用がかかりました。
 
さらに認知行動療法での治療は、睡眠薬での治療に比べて受けられる病院が圧倒的に少ないため、県外まで治療を受けに行くということも珍しくありません。そうすると交通費がかかりますので、治療費に加え、交通費も含めて費用を考える必要があるでしょう。実際私も、京都から東京のクリニックに通院していました。また、カウンセリングの時間も1回1時間程度など薬だけの診察に比べ長く、時間的なコストもあると言えます。
 
ただこちらは睡眠薬での治療に比べ1回の治療費は高い分、私のように8回で不眠が解消し、短期間で治療を終えることができれば睡眠薬での治療に比べて安くなる可能性も大いにあります。

さいごに:焦らず、小さな成功体験を積み重ねる

さいごに:焦らず、小さな成功体験を積み重ねる

今回睡眠薬の減薬の体験談を書かせて頂きましたが、減薬までの道のりは簡単なものではありませんでした。私は6年程睡眠薬を服用していましたが、はじめの5年間は減薬もうまくいきませんでした。
 
もちろん認知行動療法を通じて睡眠を学び、不眠の根本にアプローチできたということも大きいですが、減薬に望む気持ちが変わったことも成功の要因であったと思います。
 
それは、「すぐに結果を出そうとせず、小さな成功体験を積み重ねる」という気持ちです。以前までは「睡眠薬を減らして、明日眠れなかったらどうしよう」と思ったり、一日減薬がうまくいかなかっただけで「やっぱり自分には減薬は無理だ」と考えたりしていました。すぐに結果が出ないとだめだと思い、睡眠が少しでもとれないとその日がすべてだめになってしまうと強く思い込んでいました。
 
それではうまくいくはずもありません。何年も服用を続けてきたものなので、思い立ったらすぐ減薬できるというものではありません。時間もかかりますし、一時的に眠れなくなるときもあるのが普通です。
 
「できない」ことばかりに注目せずに「できた」ことに注目し、自分で認めてあげることで睡眠や減薬に対する気持ちも変わっていきました。
 
腰をすえて、焦らずに少しずつ成功体験を積み重ねていく、この気持ちが減薬に臨む上では大切なのではないかと思います。私の体験談が皆さまの少しでも参考になれば幸いです。
 
次回は、私が治療体験から学んだことを書かせて頂ければと思います。

photo:Getty Images

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