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統合失調症とは、感情や考えをまとめる(統合する)能力が低下してしまう病気のこと。私たちは喜びや怒り、悲しみ、楽しみといった様々な感情を持ち、常に思考を巡らせて生きていますが、何らかの原因で様々な情報や刺激に過敏になりすぎてしまうと、脳が対応できなくなってしまいます。
 
こうした統合失調症の多くは10代後半から20代にかけて発症しますが、3040代になってから発症する人もいます。その割合はおよそ100人に1人と、けっして珍しい病気ではありません。そこで、統合失調症という病気を理解し、どう対処していけばよいかをまとめました。

 

統合失調症の原因

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統合失調症が発症する原因は、はっきりとは解明されていません。ただ、様々な研究結果を総合すると、以下のようなものが一因となり、これらが合わさった結果、発症することが分かってきました。

考えられる原因

遺伝の影響

統合失調症は糖尿病や高血圧と同じように、家族に統合失調症の人がいると発症のしやすさが遺伝すると考えられています。ただし、全く同じ遺伝子を持つ一卵性双生児の場合でも、一人が発症したからといって、もう一人が発症する確率は100%ではありません。統合失調症が完全に遺伝の病気であれば、必ずもう一人も発病するはずです。
 
ですから、親が統合失調症だからといって、子どもが必ず統合失調症になるというわけではありません。

環境の影響

統合失調症は、心理的・社会的ストレスが重なると発病する場合がありますが、明確な原因はまだはっきりとわかっていません。ただし、病気の再発にはストレスが影響している場合が多いのは確かです。

睡眠不足の影響

脳内ドーパミンが過剰に分泌されることで統合失調症が発症する」というドーパピン仮説が一般的です。「やる気ホルモン」と呼ばれるドーパミンが増えることで、脳は興奮状態になります。日中は脳の働きを活発にしてくれるドーパミンですが、分泌量が多いと寝つきが悪くなり、不眠につながってしまいます。
 
正常にドーパミンを分泌するためには夜間にしっかり睡眠をとることが大切ですが、寝不足が続くと体内時計が乱れ、ドーパミンの過剰分泌がますます加速してしまう可能性があります。

統合失調症の症状

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統合失調症の症状は多様なため、ここでは特に多い症状をピックアップしてご紹介します。以下のようなサインがある場合には、統合失調症の専門医を受診するようにしましょう。

幻覚

幻覚とは「実際にはないものが感覚として感じられること」。統合失調症で最も多いのは、聴覚についての幻覚です。誰もいないのに人の声が聴こえたり(幻聴)、幻聴に聴き入って笑ったり(空笑)、幻聴との対話でブツブツ言ったりする(独語)症状がみられることもあります。そのため、周りの人からは奇妙に思われ、その苦しさを理解してもらいにくいことがあります。

妄想

妄想とは、明らかに誤った内容でも信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない思考状態のこと。街ですれ違う人が自分を襲おうとしている(被害妄想)、道を歩くと皆が自分を見る(注察妄想)などの内容が代表的です。また、自分の考えが赤の他人に知られている(思考伝播)、誰かに命令されて操られている(作為体験)、身体の感覚がおかしい(体感幻覚)といった訴えも比較的多く見られます。

生活に関わる障害

統合失調症では、考えや感情がうまくまとまらないために、「日常生活や社会生活において適切な会話や行動、作業がうまくできない」という障害が現れることも。幻覚や妄想に比べ、病気によるものとは一見わかりにくい症状です。

会話や行動の異変

話のピントがずれる、話題が急に飛んでしまう、相手の話のポイントや考えがつかめない、作業ミスが多いなどの症状が特徴的です。

感情の障害

自分の感情と他人の感情の理解について、両方に障害が生じます。自分の感情については、特に発症初期は気分が不安定になって不安感やイライラ感が目立ち、突発的に感情が爆発し、通常の精神状態では理解しがたい行動をしてしまうこともあるので注意が必要です。病気が慢性的になってくると物事に感情がわきにくい、感情を適切に表せない、表情が乏しいなどの症状が目立つようになります。
 
また、他人の感情を理解するのが苦手になり、相手の気持ちに気づかなかったり、誤解したりすることが増える傾向も見られます。こうした感情の障害のため、対人関係において自分を理解してもらったり、相手と気持ちの交流をもったりすることが苦手になっていきます。

意欲の喪失

物事を行うために必要な意欲が失われていきます。仕事や勉強をする意欲が出ずにぼーっとしてまう(無為)、部屋が乱雑でも整理整頓する気になれないなどの症状が特徴です。さらに、他人とコミュニケーションをとる意欲、会話をしようとする意欲が乏しくなり、次第に無口で閉じこもった生活にシフトしていきます(自閉)。

病識の障害

病識とは、自分が病気であること、あるいは幻覚や妄想のような症状が病気によるものであることに、自分自身で気づくことができることをいいます。統合失調症の場合はこの病識が障害され、自分が病気を患っていることを認識できない場合があります。

統合失調症の治療法

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もし、自分や家族に統合失調症の疑いがある場合、治療を外来・通院で行うか入院で行うかを決める必要があります。一律の基準があるわけではないので、医師と相談して検討すると良いでしょう。

こんな人は入院を検討した方がいいかもしれません

  • 日常生活での苦痛が強いため、自宅では休養しにくい
  • 幻覚や妄想に行動が影響されるため、通常の日常生活を送ることが困難
  • 自分が病気であるとの認識に乏しく、服薬や静養など治療に必要な最低限の約束を守れない

こんな人は外来を視野に入れてみても

  • 症状を自覚しており、それに配慮して日常生活を送ることができる
  • 服薬や静養などを自分でコントロールできる

 
統合失調症は発病から治療開始までの期間が短いほど、軽症なうちに早期の改善が期待できます。反対に適切な治療を受けずにいる期間が長いほど、病が長期化し、その後の社会適応も難しくなるとされています。統合失調症の治療は、外来・入院いずれの場合でも、薬物療法と心理社会的な治療を組み合わせて行います。

薬物療法

統合失調症の治療のメインとなるのが、薬物治療です。統合失調症が発症するメカニズムがいまだ明らかになっていない以上根本的な治療ではありませんが、症状を改善することは可能です。現在では、治療効果の高い様々な薬が開発されており、早期に薬による治療をスタートすれば、回復も早く、再発のリスクを抑えることができます。

使用する薬は?

統合失調症の治療に用いられる薬を「抗精神病薬」と呼び、その作用は大きく分けて3つあります。
 
①幻覚、妄想などの症状を改善する
②不安、不眠、興奮、衝動性を軽減する
③感情や意欲の障害などを改善する
 
抗精神病薬はさまざまな種類があり、それぞれ違う特徴を持っています。薬の利き方は人それぞれなので、医師と相談しながら自分に合う薬を見つけると良いでしょう。
 
その他、症状や病気の経過などに応じて不安やイライラを和らげる「抗不安薬」、睡眠障害を改善する「睡眠薬」、気分を安定化させる「気分安定薬」などを一緒に使い、症状の早期改善を目指します。

心理社会的治療

精神療法やリハビリテーションなどを指します。一般的には、薬物療法と心理社会的な治療を組み合わせることが勧められています。

リハビリテーションとは

統合失調症では様々な症状によって家庭生活や社会生活に障害が生じるため、日常生活における障害の回復も治療の目標になります。薬物療法と並行して障害を受けていない機能を生かすことで家庭生活や社会生活を円滑にし、生きる意欲の回復を目指すのがリハビリテーションです。
 
リハビリテーションに用いられる方法は、病状や生活の状態によりさまざま。病気や薬について学び再発を防ぎたいとの希望がある人には「心理教育」、対人関係やコミュニケーションを改善する必要がある人には「生活技能訓練」、仕事における集中力や持続力、作業能力の回復を目指す場合には「作業療法」など、個々の患者さんの病状に沿って行います。

睡眠と統合失調症の関係

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不眠は統合失調症の黄色信号

統合失調症の人は、日中は過覚醒状態にあり、物事に集中できない、注意力が分散するといった状況が起こりがちです。また、過緊張状態が続くため、不眠になってしまうケースがしばしばあります。
 
不眠は統合失調症の初期から現れ、次第に「何となく仕事や学校を休んでしまう」「生活リズムが乱れる」という状況に発展していきます。他の病気でもいえることですが、統合失調症は「早期発見・早期治療」が特に重要。初期症状の一つである不眠は、早期発見・早期受診の大切なきっかけになるので注意しておきましょう。

不眠がどのくらい続いたら医者に行くべき?

不眠症状には個人差があり、受診時期の目安は一概にはいえません。ただし、まったく眠れない日が2日間続いたときは、早めに医療機関を受診することをおすすめします。多くの場合、睡眠時間は日に日に短くなっていき、次第に集中できなくなったり、物事に興味が持てなくなったりという症状も増えていきます。同様の症状が現れたら、早めに医師に相談しましょう。

症状が好転したときに必要な休養期間

統合失調症の症状が改善されてくると、多くの場合、気だるさを感じて活発に活動できない時期が訪れます。これは、神経が過剰に活動していた反動やそれまでの疲労がたまってエネルギーが落ち、心身の活動が鈍くなっているためと考えられます。具合の悪い状態が長かった人は、このリカバリー期間も長くなる傾向があるため、睡眠をしっかり取り、休養期間と考えましょう。
 
この時期、具体的には以下のようなことが起こります。

過眠の傾向がみられる

統合失調症の症状が落ち着いてくると、よく眠れるようになります。これまでの疲れを回復するかのように、昼も夜も関係なく眠気が襲ってくることがあります。

疲れやすくなる

心身のエネルギーを消耗した状態のため、疲れやすい、集中力がない、意欲がないなどの状態が続きます。「時間が解決してくれる」という意識で、ゆっくり休みましょう。

身近な人が統合失調症になったら

身近な人が統合失調症になったら
統合失調症はその症状ゆえに、家族の負担も重くなりがち。しかし、早期に治療を開始することで、改善も可能な病気です。「もしかしたら統合失調症かも?」と思ったらそのままにせず、できるだけ早く専門医の判断を仰ぎましょう。

家族が持つべき心構えとは

統合失調症を発症した人は、今までに体験したことのない不安な状態におかれています。妄想により他人への不信感が増すため、まずは家族が味方であることを伝え、安心させてあげることが大切です。

患者への接し方

統合失調症にかかると、周囲の人たちの接し方にとても敏感になります。特に家族は身近な存在なので、感情の表し方には注意が必要です。接し方のポイントは2つ。

批判的な言動をしない

統合失調症を患うと、気力がなくなったり、だるさを感じたりします。そのため、ゴロゴロと寝てばかりいたり、仕事を休んだりすることも多くなりがち。それは病気の影響であることを理解し、責めないようにしましょう。

過干渉にならない

病気であることを気にしすぎて過保護になったり、過干渉になってしまうのは逆効果。できるだけ動揺を見せずに、どんと構えていると患者さんも安心するはずです。
 
統合失調症の改善にはかなりの個人差があるようですが、家族や身近な人と協力しながら、焦らずにゆっくり治すことが大切です。
 
監修:今野裕之(ブレインケアクリニック院長)
 
<参照>
厚生労働省
みんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_into.html
 
公益社団法人 日本精神神経学会
学会活動 テーマ1:統合失調症とは何か
https://www.jspn.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=79
 
地域精神保健福祉機構
病気の症状と不眠の関係
https://www.comhbo.net/?page_id=3207
 
京都府
心の健康のためのサービスガイド
http://www.pref.kyoto.jp/health/health/health03_e.html
 
前田クリニック
統合失調症
http://www.dr-maedaclinic.jp/dt0606.html

photo:Thinkstock / Getty Images

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