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眠れないことに不安を抱き、その不安がさらなる不眠につながる…。そんな状況から抜け出すためには、やはり病院へ行くのが近道のような気がします。でも、最初はなかなかハードルが高いもの。そこで、不眠に悩んだ場合、どんな症状が出たら病院へ行った方がいいのか、臨床心理士で早稲田大学人間科学部助教の岡島義先生にお話を伺いました。

本当に眠れていないのか、不安な時は? 眠りを記録する方法

岡島先生は睡眠薬に頼らず、再発の可能性も低い不眠症の治療法として注目される「認知行動療法」について研究しています。同療法の観点から、岡島先生に睡眠に不安を感じた時に実践する、睡眠チェック方法について教えていただきます。
 
以前の記事では、岡島先生に「不眠症」と診断される条件について教えてもらいましたが、不眠を自覚してもどのタイミングで病院へ行くべきなのか、なかなか判断が難しいところです。「こんな症状が現れたら病院へ」という基準はあるのでしょうか。
 
「眠れない日が最低でも一週間続いたら、まずは、病院を受診してみてください。ただし、そこで不眠症と診断されたからといって、症状が劇的に改善するわけではありません。自分の現在の状態を自分自身で把握し、睡眠習慣を変えるための対策を練る必要があるでしょう」(岡島先生)
 
不眠症の人はしっかり寝ていても「眠れていない」と過小評価する傾向にあるとのこと。
 
「主観的に“眠れている”と思えないことも不眠症の大きな要因です。不眠症は、“睡眠不安症”と言い換えてもよいかもしれません」(岡島先生)
 
しかし、自分の寝ている姿を観察することはできません。本当に不眠症なのかと不安な場合、具体的にどれくらい眠れていないのか、自分でチェックするにはどうすればよいのでしょうか。
 
「少しでも不眠ではないかと不安に思ったら、睡眠ダイアリー(睡眠日誌)をつけることがおすすめです。とはいえ、枕元にメモを置いて目を覚ますたびに記録していては、眠れない記憶ばかりが残ってしまって不眠を助長する可能性もあります。朝起きた時に、大体でいいので寝た時間と起きた時間、もしくは夜中に目が覚めた回数などを記録するだけでOKです」(岡島先生)

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引用文献「岡島 義:4週間でぐっすり眠れる本(さくら舎、2015)」
「睡眠ダイアリー」をつけるのは、先述の「認知行動療法」による治療でも最初に行うこと。まずは、睡眠の問題点や睡眠を妨げている“クセ”を洗い出すことが先決となります。
(※認知行動療法の具体的な内容については、別の記事で詳しくご紹介します)
 
最近では、枕元に置いておくだけで睡眠を記録できるようなアプリも出てきています。こうしたツールを使用して自動的に記録できれば便利ですが、睡眠ダイアリーの代用として使えないのでしょうか。
 
「患者さんの中にもアプリを利用されている方がいますが、実はまだ精度が高くないため、実際の診療では参考程度にしか使いません。やはり、睡眠ダイアリーをつけてもらったほうがよいですね」(岡島先生)
 
不眠症の人は主観的な睡眠評価が低い傾向にあるため、睡眠ダイアリーを記録し、自分の睡眠を見なおしてみることで、“眠れてないと思っていたけど、実際には眠れていた”ということに気づき、不眠への不安が和らぐことがあるといいます。
 
実際、本人は毎日2〜3時間しか眠れていないと訴えるのに、調べてみると実はきちんと眠れている…という症状の人もいるそう。これは「逆説性不眠」と呼ばれ、「眠れない!」という意識が強すぎるために、不安のあまり自分が不眠症だと強く思い込んでしまうもの。このような症状の治療にも、睡眠ダイアリーなど本人による記録と、病院の計測器や医師の見解など客観的な見地を比較して説明する方法が使われているのだそうです。

簡単なものでも大丈夫! 睡眠ダイアリーで分かること

睡眠外来などで使われている睡眠ダイアリーは、寝つき・起床の時間を記入するものや、睡眠時間をグラフのような形で塗っていくものなど、形式はさまざま。記入項目も異なります。個人的に睡眠ダイアリーをつけ始めてみたいという場合、どんな要素を記録すればいいのでしょうか。
 
「睡眠時間・起床時間の記録はマストですが、細かい数字まで覚えていなくても構いませんので、続けやすい形式が一番です。また、診察する側としては、少しでも多くの情報があったほうがよいので、どんなに些細なことでも記録してあると助かります。食事の時間を変えた、湯船にしっかり浸かってみた…など、今までと違うことをしたときは忘れずに記録しておいてくださいね」(岡島先生)
 
睡眠ダイアリーをつけることで、日々の睡眠時間や不眠の原因が見え始め、睡眠への不安も解消されるかもしれません。では、睡眠の質そのものの良し悪しはどのように判断すればよいのでしょうか?
 
「これはなかなか難しいのですが…適切な睡眠時間をとれたときに感じる“熟睡感”とは少し違って、質のよい睡眠をとれたときに感じるのは“満足感”のほうが近いかもしれません。診療で睡眠の質を測るには、5件法あるいは10件法を使って自己評価してもらっています」(岡島先生)
 
ここでいう5件法、10件法とは、眠りの満足度を「0(眠れていない)~5、あるいは10(とてもよく眠れた)」で評価する方法です。睡眠時間の長さや起きたときの爽快感が,必ずしも日中の問題の改善につながるとはいえないのだそう。治療と平行して、寝る前にきちんと身体を温める、就寝前にスマホを使うのは控えるなど、睡眠の質を上げるための取り組みを行うことが必要です。

現代人には難しい? ちょうどいい睡眠時間を知る方法

睡眠ダイアリーを記入していて気になるのが、自分の適切な睡眠時間。個人差があるとはいいますが、何時間寝るのが自分に合っているのか、どうすれば分かるのでしょうか。
 
「1週間ほどフリーの日をつくり、目覚ましをかけずに起床していれば、段々と適切な睡眠時間に落ち着いていくのですが、現実的ではありませんよね(笑)。判断の基準としては、日中の活動に支障がないかどうかにあります。さまざまな要因によって差が出るので難しいですが、例えば23時に寝て7時に起きる生活を1週間続けて、日中に眠くなるようなら睡眠時間を変えてまた1週間…などと、少しずつアジャストして支障が出ない時間を探していくのがいいですよ」
 
社会人の生活ではなかなか難しそうですが、長期休みなどを利用して試してみるのもよいかもしれません。忙しい生活の中では、毎日十分な睡眠をとるのが難しいという人も多いはず。しかし、日々の睡眠時間に過度にこだわる必要はないと岡島先生は言います。
 
「不眠症の人は特に、1日1日の睡眠を気にしすぎて不安になります。でも、1週間を通して睡眠不足を解消するように心がけてもらえれば大丈夫です。週末に寝だめするのはおすすめしませんが、例えば昨日1時間遅く寝たから、今日はちょっと早く寝よう…というふうに、1週間を通して平均的に適切な睡眠時間が確保できればOKです。1日眠れないくらいで不安に思わず、長いスパンで考えるようにしてくださいね」
 
ちなみに、平日と休日の睡眠時間の差は2時間以内が目安。あまり寝過ぎてしまうと、体内時計が乱れ、平日に支障が出てしまいます。
 
自分の睡眠の傾向を知ることで、よりよい睡眠へのヒントが見えてきます。また、病院へ行く際にも、普段の睡眠の情報があるとカウンセリングがスムーズに進むそう。不眠症ではなくても、睡眠に関して少しでも不安に感じたら、睡眠ダイアリーをつけてみるのがおすすめです。
 
監修:岡島義(早稲田大学人間科学学術院助教)
 

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photo:Thinkstock / Getty Images

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