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便は身体からの大事な「お便り」。そんな「お便り」の研究が最近進んでいます。
大便は個人情報の塊のようなものです。「大便内の細菌を調べれば、その人の腸内が今どんな状態なのかがわかり、腸内フローラはいわば指紋のように1人1人違う」と理化学研究所の辨野義己博士はおっしゃっています。

 

日本人ひとりが人生80年のあいだに排泄する大便の量は平均でおよそ8.8トン。そんな便を形成する腸内細菌は体内に6,000億個~1兆個あると言われています。もちろん、すべてが同じ細菌ではなく、腸内に生息する細菌は1,000種類以上。ここで面白いのは、その種類が人によって異なることです。1人1人腸内フローラは異なり、腸内細菌が人の思考や行動や性格を作っているかもしれないのです。今回はそんな腸内細菌の世界を少しご紹介しましょう。

あなたの性格や思考、メンタルは腸内細菌が決めている!?

 

・ヨーグルトを食べることで社交的になる
近年の研究では、腸にいる細菌が脳内化学物質に影響を及ぼす可能性が示されています。たとえば、ヨーグルトを食べることで明るくなり、気分が良くなるかもしれない、という可能性。
アイルランドのコーク大学の研究チームがマウスを使ってある実験を行ったところ、一定量のプロバイオティクスを与えたマウスは自閉症状が緩和され、不安レベルが下がったそうです。人間社会においても、腸内細胞が社交性を形成するのに役に立つ可能性があるということです。

 

出典:A gut feeling: Bacteria like that found in yoghurt may have helped shape our personalities and made us who we are

 

・腸内環境は思考や行動、人格形成に大きく関わっている
協同乳業研究所も、腸内細菌が大脳の代謝系に影響を与えていることを発表し、神経発達障害や脳の発達と行動にも腸内細菌群が影響すると報告しています。腸内細菌のバランスが、人間の思考や行動にも影響する可能性があるということです。

 

出典:Cerebral low-molecular metabolites influenced by intestinal microbiota: a pilot study(Frontiers in Systems Neuroscience)

 

・腸内細菌を育てると、緊張しなくなる
腸内環境の良さはメンタルの強さにも影響してくると言います。
幸福や安らぎを感じるセロトニンという物質は腸内細菌によってその多くが産出されています。腸内環境が良好であれば、精神が安定するということ。ここぞという場面でも緊張しない自分をサポートしてくれるかもしれません。

 

トップアスリートの腸内細菌は種類が2倍も豊富!

 

このごろ、トップアスリートが運動や食事はもちろん、睡眠ケアを重視している傾向が見られますよね。岡山大大学院環境生命科学研究科の森田英利教授の調査によると「トップアスリートの腸内細菌叢は病気の人や通常の健常者にはない特定の細菌群が多く分布している」そうです。
アスリートは食事や睡眠、運動量などを厳密に管理している人が多く、必然的に腸内の環境は整えられ、腸内細菌叢の状態が良いとのこと。
アイルランドのコーク大学の研究チームも、世界的なラグビーチームに所属するラグビー選手たちが一般人の2倍もの種類の腸内細菌を持っている、と発表しています。特に、炎症を抑える役割を持つ菌(筋肉の疲労回復に繋がる腸内細菌)が多く見つかったそうです。腸内細菌こそがトップレベルのパフォーマンスを支えていると言っても過言ではありません。

 

トップアスリートならずとも、パフォーマンスアップのために、まずバランスのとれた食事と睡眠、運度を、と考える人は多いもの。でも、腸内環境が悪いといかにバランスの良さそうな生活であっても、身体を最適な状態に高めることが難しくなってしまうのです。

 

腸内細菌が睡眠にも影響している!

 

東京医科歯科大学の藤田紘一郎名誉教授によると、腸内細菌は睡眠にも影響を与えているそうです。
腸が元気であれば、メラトニンの合成量が増え、睡眠と覚醒のリズムが整い、熟睡できるようになると言います。(出典:病気を防ぐ「腸」の時間割)

 

睡眠には「メラトニン」というホルモンが関係します。
メラトニンが増えると、睡眠と覚醒のリズムが整い、熟睡できるようになります。

 

その「メラトニン」の材料はタンパク質です。口から入った肉や魚や卵などのたんぱく質を含む食材は腸で消化吸収されます。(大まかに、たんぱく質→アミノ酸(トリプトファン)→セロトニン→メラトニンの順に分解される)
たんぱく質分解の過程で必要とされるのが、ビタミンC、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6といったビタミン群です。そのビタミン群を合成してくれるのが、腸内細菌たちなのです。
実は、野菜や果物、あるいはサプリメントをとったところで、腸内フローラが貧弱な状態であれば、ビタミンの吸収量は著しく減ります。つまり、ビタミンを含む食べ物を摂ったとしても、それがビタミンを摂取したことになるわけではなく、そのカギは腸内細菌たちが握っているのです。

 

こうした理由から、メラトニンの合成には、腸の健康がとても大事であることがわかります。腸が元気であれば、腸内フローラが豊かに保たれ、ビタミン群の合成力が高まります。その状態のときに、肉や魚、卵など良質なタンパク質が入ってくると、メラトニンの分泌量を増やせるのです。結果、より良い眠りにつながる、というわけです。

 

腸が元気になれば、しあわせホルモンも増える!

 

なお、メラトニンの前段階であるセロトニンには、心のバランスを整える作用があります。
私たちの心が「幸せだなあ」という感情で満たされるのは、セロトニンが脳内で放出されているおかげです。
セロトニンの分泌量が増えれば、メラトニンの量も多くなり、睡眠のリズムが整います。反対に、セロトニンの分泌量が減ると不安感が強まり、不眠状態が続くようになります。
うつ病の患者さんは、セロトニンの分泌量が著しく減っていることがわかっています。また、うつ病を発症する前段階には、決まって不眠症があるものです。
腸が元気であれば、熟睡できるようになるとともに、幸福感も高まるのです!

 

今回は「知られざる腸内細菌の世界」ということで、腸内細菌に関する近年の研究結果をご紹介しました。
身体の中からの「お便り」を見ることは自分の体調管理の1つです。せっせと「お便り」を作っている腸内細菌たちは、実はとても「頼りがい」のある存在かもしれません。
「出た」・「出ない」だけでなくちょっと眺める習慣をもって、自分の体調を知る一環にしてみてはいかがでしょうか。

 

良い睡眠は整った腸から!? 「腸内環境」を整え睡眠ホルモンを生み出そう

 

photo:Thinkstock / Getty Images

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