「頭痛に悩む妻を救いたい」学者の夫が開発したツールが、不眠症の人も救ったワケ

 

大切な人のために、何かしてあげたいーー。

世間を賑わせるような発明や出来事が誕生するきっかけが、実は開発者の“個人的な強い想い”にあったということは意外に多いものです。

「妻の頭痛を治したい」という想いから開発を始めたツールが、なぜか不眠症の人まで救う結果となったという、フミナーズには見逃せない実話をご紹介します。

ひどい頭痛に悩まされている妻を助けたい!

 

ある日、生理物理学者のガービッシュ氏の夫人が、ひどい頭痛を訴えました。ガービッシュ氏は、夫人の症状を快方に向かわせるため、自身の研究室にあった機器で血管の収縮・拡張値の測定を始めるのですが、その中で「息のリズムが変っていくと、そのリズムに従って血管の動きが変化する」ことに気がつきました。

 

ヨガの呼吸法の効果に、「深い呼吸を続ければ、副交感神経が優位になり、リラックス効果と血圧が低下する」というものがありますが、ガービッシュ氏が見つけたのも、これと同じメカニズム。さらに彼は、「単に深呼吸を続けるだけではなく、だんだんと呼吸のリズムをゆっくりとすることで、より効果が高くなる」ことも発見。この方法を活用することが、夫人の頭痛解消につながるのではないかと考えました。

 

ただ、実際にやってみるとわかりますが、深呼吸をずっと続けるというのは、簡単なようでなかなか難しいもの。それも徐々に呼吸のリズムをゆっくりしていく…となると、その難易度はグンと上がってしまいます。

 

「今日のお昼は何にしよう?」「あの人の言葉の真意は、どういう意味だったんだろう…」。そんなことが頭をよぎっただけで、途端に呼吸のリズムは狂ってしまう…呼吸法を駆使して頭痛を改善させることは、あまりにハードルが高すぎました。
しかしガービッシュ氏には、なんとかそれを実現させたいという、強い想いがありました。

 

簡単に深呼吸を継続できる方法は存在するのか!?

 

「“徐々にリズムがゆっくりとなっていく深呼吸”を簡単に長時間続けられる機械が必要だ!!」
夫人を想うガービッシュ氏のイノベーター魂に火がつきました。

 

試行錯誤の末、ガービッシュ氏は「呼吸リズムの誘導音」に目をつけます。
その仕組みは、お腹にセンサーをつけて呼吸リズムをキャッチし、それをベースに、徐々にゆっくりとなる深呼吸を続けられるようなガイド音を流す…というもの。「どんな音楽なら、深呼吸に集中し続けられるか?」ということについては、夫婦ともに音楽好きだったこともあり、共同作業で模索したそうです。
夫婦恊働の末、音の高低を駆使した“奥さん仕様の”ガイド音が完成。実際に使ってみると、苦労が報われ、奥さんの片頭痛はみるみる解消していったと言います。

 

高血圧治療から快眠誘因へ! 想定外の“副作用”がツーブリーズを生んだ

 

後日、この結果を元に臨床試験を行うと、徐々にリズムがゆっくりとなっていく深呼吸で、高血圧患者の血圧が有意に下がることが判明。そして2002年、アメリカ・FDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を得て、その技術は、高血圧治療用医療機器「RESPeRATE」として世に広まることとなりました。

 

呼吸リズムを整えるだけなので、副作用らしい副作用はナシ。そんな安全性からもRESPeRATEは、多くの高血圧患者から圧倒的な支持を集めるようになります。すべてが上手くいった…かのように思えましたが、患者たちが使用していく中で、思わぬ“副作用”が発覚してしまいました。
それは、日中にRESPeRATEを使って、呼吸セッション(1回10分以上推奨)をすると、眠気を感じてしまい、セッション未完了の内に眠ってしまう…という事例が出てきたこと。

 

徐々にリズムがゆっくりとなっていく深呼吸には、どうやら誘眠効果があるらしいーー。
そんな想定外の症例を参考に、新たなプロジェクトが始動します。それは呼吸法を駆使して、リラックス効果や休息のパフォーマンスを向上させる機器の開発でした。

 

不眠に頭を悩ませている人は、世界中にいる。そんな多くの人たちを救うことができたら…
夫人の頭痛を治したいという想いから始まった研究・開発は、いつの間にか世界中の人たちの眠れない悩みを解消したいという想いに変化していました。そんな大志を抱きながら、プロジェクトは急加速。最終的には、RESPeRATEのメカニズムを応用するだけではなく、“より多くの人がお手軽簡単に使えるように”との想いから、スマートフォンで使えるように設計・開発、製品化されることになりました。それは『ツーブリーズ』という名前で知られるようになります。

 

医療機器に搭載されているのと同じメカニズムを、そのまま自宅で気軽にスマートフォンとウェアラブルデバイスで利用できるのはIoT(Internet of Things)時代ならではと言えるかも知れません。不眠に悩む人にとっても、新たな解決方法が手に入る時代になったんですね。

 

『ツーブリーズ』について詳しくは、こちらをご覧ください。

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photo:Thinkstock / Getty Images

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