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こう寒いと、布団の中で「ああ春まで冬眠したい…」とつぶやいてしまうこと、ありませんか?

 

2006年冬、六甲山で崖から落ちて動けなくなった男性が24日後に仮死状態で発見されるというニュースがありました。食べ物もなく、極寒の環境で長期間生き延びられたのは、身体が冬眠に近い状態になっていたためではないかと考えられています。

 

え、人間って本当に冬眠できるの!? そんな素朴な疑問を解決すべく、専門家の先生にうかがいました!

 

人間はクマのように冬眠できる?

 

冬眠する動物は、冬眠時に体温を下げている種が多いそうです。同じように体温を下げることができれば、人間も冬眠できるのでは?

 

いえ、人間は身体のつくりが冬眠に適しておらず、通常はそこまで体温を下げることができません

 

いきなり冬眠への夢を打ち砕いてくださったのは、冬眠動物の体温制御などを研究してきた、帝京科学大学の橋本眞明先生。

 

「人間の場合、体温が下がってくると、呼吸や代謝などのさまざまな機能が働いて体温を元に戻そうとします。それらの働きを抑えて、身体全体の温度を下げることができないと、自然に冬眠状態には入れません」(橋本先生)

 

つまり人間の身体は「体温を下げにくい」構造のよう。冒頭に挙げた六甲山の例は、何らかの理由で体温の調整機能が正常に働かなかったことで、冬眠に近い状態が偶発的に起こったと考えられるそうです。

 

「さらに、冬眠中も体内の毒素を排出する必要があります。クマは体内で毒素を別の物質に変えることができるので、尿などの排泄をしません。でも、人間の身体にはその機能がありません」(橋本先生)

 

なるほど、人間はトイレに起きなければ身体中に毒素が回ってしまうので、長い時間冬眠することができないのですね。

 

また、動物が冬眠から覚醒するときには老化を引き起こす「活性酸素」が大量に出ますが、冬眠動物たちは体内でビタミンCをつくって抗酸化できるため、健康を害すことはないのだそう。もちろん人間にはその機能がありません。冬眠のたびに、ぐっと老けてしまっては困ります…。

 

SF映画のような、コールドスリープは可能?

 

人間に自然な冬眠が難しいことはわかりました。でもSF映画などでは、「コールドスリープ」と呼ばれる、人間の身体を冷凍保存する技術が描かれていますよね。あのような技術は近い将来、実現できるのでしょうか?

 

「宇宙旅行に利用できないかと、過去にNASAが研究していましたが、今では現実的ではないと考えられ、研究は進んでいないようです」(橋本先生)

 

もしコールドスリープが実現して未来まで長生きしても、コールドスリープの間は寝ているので、その人の一生涯の活動時間は変わらないそう。さらに長く生きたかったら、目覚めた未来の延命技術に期待するしかないようです。

 

「たとえコールドスリープで100年余分に生き延びたとしても、100年後の地球には知り合いが誰もいなくなっているし、文化も大きく変わっているかもしれないですから。そこまでして長生きしたい人は、なかなかいないのではないでしょうか(笑)。
現実的には、医療目的で2~3年間の使用なら、実現できるかもしれません。重病の患者に対し、もう少しで完成しそうな治療薬の投与ができるまでコールドスリープに入ってもらう、というようなケースです」(橋本先生)

 

なるほど。より実用的な目的なら研究も進みそうですね。ちなみに冬眠の研究は、すでに医療の分野で役立っているものも多いそう。

 

「例えば、冬眠状態から一気に体温を上げるためのヒーターの種火として発見されたのが『褐色脂肪組織』。この組織には、余分な脂肪を燃やして熱にする働きもあるため、肥満の解消に効果があるのではないかと期待されています」(橋本先生)

 

冬眠の研究から肥満解消のカギが見つかるとは意外です。橋本先生によると、冬眠については、まだまだ解明できていないことがたくさんあるとのこと。これから研究が進めば、さらなる意外な発見も期待できそうですね。

 

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監修:橋本眞明(帝京科学大学医療科学部 東京理学療法学科教授)

 

photo:Thinkstock / Getty Images

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