発酵性食物繊維とは、腸内で善玉菌のエサとなり、免疫を高めたり、脂肪の蓄積や血糖値の上昇を抑えたりする短鎖脂肪酸を生み出す食物繊維のこと。食生活や生活習慣によって乱れがちな現代人の腸内環境を整えてくれる栄養素として注目を集めています。

野菜の集合

腸内環境が劣化すると肥満につながったり肌荒れの原因になったり、免疫が低下してガンなどの疾患のリスクが上がることも知られています。大切な腸内環境の救世主、発酵性食物繊維の効果についてご紹介します。

 

発酵性食物繊維とは?

発酵性食物繊維とは、腸内細菌が好んで食べる食物繊維のことです。食物繊維は、大きく非デンプン性・デンプン性・その他の3種類に分けられます。さらに、非デンプン性食物繊維は、「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類に分類されます。発酵性食物繊維と呼ばれるのは、食物繊維の中でも水溶性食物繊維に分類される「フルクタン」「β-グルカン」や、でんぷん性食物繊維に分類される「レジスタントスターチ」などのことを指します。
 
発酵性食物繊維は、腸に棲む善玉菌のエサとなって腸内で発酵(分解)され、短鎖脂肪酸を発生させます。短鎖脂肪酸は、腸内環境を整えるだけでなく、人々の健康にさまざまな良い働きを及ぼす物質であり、発酵性食物繊維を摂ることは健康な身体作りにおいて非常に重要なのです。

炭水化物の構成

食物繊維の不足とリスク

食物繊維が不足すると、腸内環境はどんどん劣化(悪化)してしまいます。腸は「第2の脳」と呼ばれるほど重要な臓器で、 自律神経やホルモンバランスの調整、免疫力にも関係しています。そのため、腸内環境が劣化することで、身体にさまざまな悪影響が現れるのです。

日本人の食物繊維摂取量

日本人の食物繊維摂取量

食物繊維を十分に摂れていますか? 食物繊維は1日男性で20g、女性で18gの摂取が推奨されています。しかし、年々食物繊維の摂取量は減少、現代では1日に14~15gしか取れていないと言われています。食物繊維と言えば、サラダを思い浮かべる方も多いと思いますが、レタスサラダに含まれている食物繊維はなんと1g以下です。加えて、含まれている食物繊維はそのほとんどが不溶性食物繊維で、善玉菌のエサにはなりません。
 
また、食物繊維は野菜から摂るイメージがありますが、野菜からのみで十分な食物繊維を摂取するのは難しいです。実は食事の中で多く摂取する主食の炭水化物は食物繊維と糖質を含んでおり、多くの人は主食で食物繊維を補っています。過剰なダイエットなどで、極端に炭水化物の摂取を制限してしまうと、炭水化物から摂取している食物繊維の量が減ってしまいます。

食物繊維の不足による腸内劣化

食物繊維は前述のような不溶性食物繊維、水溶性食物繊維やでんぷん性食物繊維など、さまざまな種類をバランス良く食べるのが推奨されていますが、その摂取量は年々減少しています。中でも特に、善玉菌が食べエサとする発酵性食物繊維の摂取量が不足すると、腸内で悪玉菌が増えやすくなり、腸内劣化が進行してしまいます

食物繊維不足が引き起こす不調

腸内劣化によるリスク

腸内環境の劣化は、私たちが思っている以上に身体中へさまざまな悪影響をもたらします。腸内環境の劣化により、自律神経やホルモンバランスが乱れたり、免疫力が低下したりすると、「肥満」や「アレルギー」といった体質の変化だけでなく、「潰瘍性大腸炎」「過敏性腸症候群」といった腸の疾患、また、「糖尿病」や「大腸がん」といった重大な疾患にかかりやすくなります。

腸内劣化が引き起こすさまざまな健康、美容トラブル

食物繊維による腸内環境の改善

腸内劣化のリスクを減らすには、腸内環境を整え、理想的な腸内フローラ(※)のバランスを保つことが大切です。腸内フローラのバランスを整えるためには、良質な食物繊維を摂ることが最もおすすめです

※腸内には数多くの腸内細菌が集まっており、この腸内細菌の集まりを「腸内フローラ」と言います。

理想的な腸内フローラのバランス

腸内には約500~1000種類・約500~1000兆個もの腸内細菌が生息し、お互いに影響を与えながらバランスを保っています。理想的な腸内フローラのバランスは、善玉菌(20%):日和見菌(70%):悪玉菌(10%)といわれています。

腸内フローラのベストバランス

発酵性食物繊維で善玉菌を増やし、腸内フローラを整える

短鎖脂肪酸が生まれるメカニズム

腸内フローラのバランスが崩れ、腸内環境が劣化している人は、善玉菌が減少し、悪玉菌が優勢になっています。発酵性食物繊維は善玉菌のエサとなり腸内で発酵し、「短鎖脂肪酸」の生成を促します。
 
「短鎖脂肪酸」とは、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸(らくさん)などをいい、腸内を弱酸性にすることで、善玉菌が活動しやすい環境をつくり、善玉菌を増やしてくれます。
 
短鎖脂肪酸には、それ以外にも下記のような非常に重要な効果があります。

  • 免疫力を強化する
  • 生活習慣病を予防する
  • 大腸のバリア機能を強化する
  • 脂肪の蓄積や血糖値の上昇をおさえ、肥満を抑制する
  • 身体に満腹感を感じさせ、食欲を抑える

 

日本人の腸内フローラのための発酵性食物繊維

日本人特有の腸内フローラがあることを知っていますか? 日本人の腸内フローラは炭水化物を好んで食べるのが特徴です
 
腸内フローラのバランスは国ごとの食生活や風土によって異なり、昔から穀物を多く摂取する食生活が影響して、日本人の腸内フローラは炭水化物を好んで食べるようになりました。日本では、お米や大麦、小麦などの炭水化物をエサとする腸内細菌が多く、欧米ではタンパク質などをエサとする腸内細菌が多いことがわかっています。
つまり、日本人は、発酵性食物繊維を摂る場合、穀物から摂取することが非常に効率的であると言えます

発酵性食物繊維の効果

発酵性食物繊維は腸内環境を整えるのに重要な役目を果たします。腸内環境を整えることで、ダイエット効果、冷え性の解消や生活習慣病の予防、便秘改善、睡眠の質の改善なども期待できます。

発酵性食物繊維を食べると…

ダイエット

炭水化物の摂取を過剰に控える「糖質オフダイエット」には、短期間で体重減少の効果はありますが、それ以上に便秘やエネルギー不足といった副作用のリスクが高く、おすすめできません。炭水化物には糖質のほかに食物繊維(発酵性食物繊維)が含まれています。前述の通り、発酵性食物繊維には腸内細菌のエサとなり、短鎖脂肪酸を作り出す役割があり、摂取を控えることで腸内細菌のエサが減少、善玉菌の働きが弱まり、便秘など腸内劣化につながります。
 
炭水化物の摂取を控えるよりも、主食に大麦などの糖質が少なく、発酵性食物繊維の多い食材を取り入れることで、腸内環境を劣化させることなくダイエットができます。善玉菌の中には、ヤセ菌と言われる菌もいるため、発酵性食物繊維を摂取していくことでリバウンドしにくいダイエットが期待されます。
 
また、発酵性食物繊維をエサとして善玉菌が生み出す短鎖脂肪酸は、食欲を抑えるホルモンを増加させてくれるためダイエットの強い味方です。さらに肥満の原因である脂肪細胞の大型化を抑える効果や、消化管ホルモンのインクレチンに作用してインスリンの分泌を促進して血糖値の上昇を抑えたり、代謝を上げたりする効果もあるといわれています。代謝が上がることで冷え症の改善効果も期待されます。

便秘解消

便秘は腸内環境の悪化が一因とされており、善玉菌が活発に働いていれば便通も正常になります。発酵性食物繊維をエサとした善玉菌によって作り出される短鎖脂肪酸には、善玉菌が働きやすい腸内環境に整える働きがあります。さらに不溶性食物繊維も摂取すると、腸のぜん動運動が活発になり、便通が促される働きもあるため、便秘解消のために一層効果的といえます。

睡眠

発酵性食物繊維によって腸内環境を改善すると、睡眠の質も改善されるという実験結果が出ています。不眠に悩む日本人女性を対象に「スーパー大麦」を用いて行われた実験では、1日12gのスーパー大麦を摂取するようにしたところ、腸内で快眠を導くホルモン「メラトニン」の材料となる「セロトニン」の分泌に関与している細菌が増加し、4週目には睡眠の質が向上したことが確認されています。

発酵性食物繊維を効果的に摂るには?

腸にとってよいことずくめの発酵性食物繊維ですが、どのように摂取するのが効果的なのでしょうか。ここでは、発酵性食物繊維を豊富に含む食材を紹介します。

発酵性食物繊維が含まれる食材

穀類

発酵性食物繊維は野菜よりも穀物に非常に多く含まれています。また前述のように、日本人の腸内細菌は米や大麦などの炭水化物を好む細菌が多いといわれています。そのため、主食である穀類から食物繊維を摂るのが簡単でおすすめです。なかでも発酵性食物繊維を多く含むとされているのが「大麦」と「スーパー大麦」の2つです。白米に混ぜたり、シリアルなどで食べたりすると良いでしょう。
 
・大麦(押麦)
大麦は穀類の中でも食物繊維が豊富とされ、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のバランスが最も良い食材です。発酵性食物繊維のなかでも特に「β-グルカン」
を多く含んでいます。
 
・スーパー大麦
通常の大麦に対して総食物繊維量が約2倍、また野菜などからは摂りにくい発酵性食物繊維の「レジスタントスターチ」を4倍も含んでいます。さらに「β-グルカン」や「フルクタン」の発酵性食物繊維も多く含んでいる、食物繊維の質、量ともに兼ね備えた文字通りスーパーな大麦です。
 
スーパー大麦に含まれている3種類の発酵性食物繊維は、腸内で腸内細菌のエサとなるタイミングが異なります。腸の入り口でフルクタンが、腸の中間でβ-グルカンが、そして腸内細菌が最も多い腸の奥でレジスタントスターチが腸内細菌のエサとなり発酵します。腸の入り口から奥までの全体で善玉菌を活性化させ短鎖脂肪酸が生成されるため、腸内環境を整える効果が高いといわれています。
 
なお、大麦のなかでもスーパー大麦に該当するのは、オーストラリアで開発された「バーリーマックス」という品種のみとなっています。

Check

スーパー大麦|腸の奥まで届き腸内環境を整える食物繊維

→スーパー大麦に含まれる栄養素や効果について解説しています

昆布、ワカメなどの海藻類

日本人は海藻を分解する腸内細菌を多くもつので、海藻から食物繊維を摂取するのも有効です。海藻にはアルギン酸という発酵性食物繊維が含まれており、体内の余分なコレステロールを包んで体外に排出してくれます。

リンゴや柑橘類

リンゴや柑橘類の果肉にはペクチンという発酵性食物繊維が豊富に含まれています。ペクチンは腸内環境を整えてくれるのに加え、アルギン酸と同じくコレステロールを排出する作用もあります。
 
「食物繊維」の重要性は広く知られていますが、発酵性食物繊維についてまでは知らなかった人も多いのではないでしょうか。発酵性食物繊維のもたらすメリットは数知れません。「発酵性食物繊維」はこれからの腸活に欠かせないキーワードとなりそうです。
 

監修:松井 輝明(帝京平成大学 健康メディカル学部 健康栄養学科教授)

 
<参照>
『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 ジャスティン・ソネンバーグ、エリカ・ソネンバーグ著、鍛原多惠子訳(早川書房)
 
『キレイにおいしくやせる!スーパー大麦ダイエットレシピ』庄司いずみ 料理、青江誠一郎 監修(永岡書店)
 
『「腸スッキリ!」健康法』藤田紘一郎(PHP文庫)
 
『病気にならない乳酸菌生活』藤田紘一郎(PHP文庫)
 
機能性大麦BARLEYmax(Tantangara)による整腸効果について―ランダム化二重盲検並行群間比較試験― 北薗 英一、妹脊 和男、松井 輝明
Jpn PharMACol Ther(薬理と治療)vol.44 no.12 2016
 
機能性大麦BARLEYmax(Tantangara)経口摂取による睡眠改善効果について 北薗 英一、西村 文、妹脊 和男、森田 英利
Jpn PharMACol Ther(薬理と治療)vol.45 no.8 2017

photo:Getty Images

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