筋肉や内臓など、身体中のあらゆる組織を包んでいる「筋膜」。肩こりや腰痛などは、筋膜同士の癒着が原因のひとつといわれています。

筋膜リリースをする男性

癒着した筋膜を引き剥がし、こりを解消する「筋膜リリース」の正しい方法を、ソル・エ・マーレ鍼灸治療院の院長・滝澤幸一さんにお伺いしました。

 

筋膜リリースとは

肩こりに悩む女性

「筋膜」とは、タンパク質でできた薄い膜のことで、筋肉をはじめ、内臓、骨、血管、神経など、さまざまな組織を包んでいます。これまでの医学では、「筋膜」はそれほど重要なものだと考えられていませんでしたが、近年の研究でこりによる痛みの発生源がこの「筋膜の癒着」にあることが分かってきました。こりの軽減のために、筋膜の癒着を剥がすことを「筋膜リリース」といいます。ここでは、筋膜がこりを引き起こす理由について解説します。

筋膜がこりを引き起こす仕組み

筋肉を動かすと、筋膜はその動きに合わせて伸び縮みします。筋膜は、コラーゲンとエラスチンという2つのタンパク質で作られており、この2つが絡み合って構成されています。通常、コラーゲンとエラスチンのすき間は粘性のある「細胞間基質」という液体で満たされていますが、運動不足や長時間の同じ姿勢などが続いて筋肉の動きが少なくなると、細胞間基質の水分が失われ、本来スムーズに動くはずの筋膜同士が癒着し、筋膜の滑走性(かっそうせい=滑らかさ)が失われてしまいます。癒着した状態が長く続くと、筋肉の動きが阻害されて、血行不良になり、こりや痛みが出てきます。この癒着した状態の筋膜を剥がすことで、こりの解消につながります。

筋膜リリースの効果

腰痛に悩む女性

筋膜リリースを行うと、主に以下に挙げた効果が期待できます。

こりの解消

毎日長時間イスに座る姿勢が続くなど、筋肉の一部に負担が集中すると、筋膜が癒着してしまいます。その状態が継続すると、やがてこりになり、痛みの原因になると考えられています。筋膜リリースは、癒着した筋膜をリリース(解放)することによって、筋膜に滑走性を取り戻させるので、筋肉がスムーズに動くようになり、こりが解消されやすくなります

内臓機能の向上

筋膜は全身に張り巡らされています。例えば、腰痛持ちで便秘の人が、腰痛の治療をすると、同時に便秘も解消することがあります。これは胃や肝臓などを覆っている腹膜と、腰の筋膜がつながっているために起こるのです。腰の筋膜の癒着を剥がす過程で、腹膜の癒着も剥がれ、腸の蠕動運動がスムーズになり、便秘が解消されるなど内臓機能が向上すると考えられます

血流がよくなる

筋膜リリースによってこりが解消されると、これまでにこりで圧迫されていた血管やリンパ節が圧迫から解放され、体内の血液やリンパの巡りが良くなります。血の巡りが良くなると、冷え性の改善にもつながります。

自律神経のバランスがよくなる

こりによる痛みは、たとえ小さなものでも毎日続けば、身体にとっては非常に大きなストレスです。ストレスは自律神経の乱れにつながるので、筋膜リリースを行うと、こりが解消し、自律神経のバランスも整いやすくなります

代謝がよくなる

人の身体には、消化や吸収、体内エネルギーを作り出す代謝の機能を正常な状態に保とうとする「恒常性」という働きがあります。自律神経が乱れると、この「恒常性」が正常に機能しなくなり、代謝の働きが悪くなってしまいます。筋膜リリースで自律神経が整うと、エネルギー代謝も正常に機能します

こりから来る頭痛が治まる

こりは、時にひどい頭痛を伴うことがあります。原因は人によってさまざまですが、主に、後頭部の下部にある頭板状筋(とうばんじょうきん)のこりや、首筋の斜角筋、こめかみの側頭筋のこりによって頭痛が引き起こされます。筋膜リリースによってこれらの場所の筋膜の癒着を剥がし、頭痛を解消しやすくします

筋膜リリースの方法

筋膜リリースをする女性

筋膜リリースは、筋膜同士の癒着を剥がし、滑走性を取り戻すためのケア方法です。基本的には筋トレや運動でも、筋肉を動かす行動であれば、癒着を剥がすことはできますが、ここでは、より簡単に、短い時間でできる筋膜リリースの具体的な方法を紹介します。

筋膜リリースの頻度と時間

毎日5分ほど行うのがベストですが、難しければ、週に一回15~20分でも構いません。例えば、歯磨きと同じように習慣として生活の中に取り入れると考えてください。虫歯の治療をしても、歯磨きをしないと、また虫歯になってしまうのと同じで、腰痛を治療院で治療しても、日々の筋膜リリースを怠ると、また腰痛になりやすくなります。自分の生活スタイルに合わせて筋膜リリースを行う時間や場所を決めて、毎日の習慣にすることが大事です。

【部分別】筋膜リリースの方法

筋膜リリースは、道具を使わなくても行えますが、道具を使用することで、より効率的に筋膜リリースを行うことができます。ここでは、道具(ローラー)を使わないで、筋膜リリースをする方法と、ローラーを使う方法を紹介します。

首の筋膜リリース

首・肩(ローラーなし)

  • 右手を背中の後ろにまわして、左手を写真のように首から右肩の間に添える。
  • そのまま首を左に傾けて、左手を押し下げて首の筋肉を伸ばす。自然な呼吸を行いながら、30秒静止する。
  • 左手を首側にずらし、(2)を行う。右手も同様に行う。左右各2~3セット。

 

腰の筋膜リリース

腰(ローラーなし)

  • イスに座った状態で、右足を左足の膝に乗せ、上半身を前に倒す。
  • お尻と腰の筋肉が引っ張られる感覚のところで、15秒ほど静止する。
  • 手は前に垂らし、しっかりとお尻と腰を伸ばして。左右各1~2セット。

 

足の筋膜リリース

足(ローラーなし)

  • 右足のつま先をブロックなどの少し高さのあるものに乗せ、上半身を前に倒して、右足のアキレス腱が伸びていることを意識する。
  • そのまま自然な呼吸をしながら、15秒ほど静止。左右各1~2セット。

 

首・肩の筋膜リリース

首・肩(ローラーあり)

  • 横になってローラーの上に首を乗せ、頭の重さを感じるところで20秒ほど静止する。

 

腰の筋膜リリース

腰(ローラーあり)

  • 横になって、ローラーの上に腰を乗せる。
  • そのままお尻から背中の肩甲骨のあたりまで、ローラーのあたる位置をずらしながら前後に20秒ほど動く。

 

足の筋膜リリース

足(ローラーあり)

  • 横になって、ローラーの上に右足を乗せ、その上に左足を乗せる。
  • 足首からふくらはぎにかけて、ローラーを前後に10秒ほど動かす。
  • 痛みを感じる場合は、右足を下ろし、左足の重みだけで押す。左右各1~2セット。

筋膜リリースのアイテムの選び方

筋膜リリースに使用する道具はローラーが一般的ですが、ストレッチポールや、タオルを丸めたものでも構いません。スポーツ用品店などで、さまざまなローラーが販売されているので、自分の身体のサイズに合った直径、長さ、硬度のものを探してみてください。
 
また、足底など、面積が小さい部分にはスプレー缶を使用してもいいでしょう。手の平や肩、胸部など、深部まで圧迫したい場合にはテニスボールなどが便利です。

筋膜リリースをしないほうがいい人

骨折している人

こりを改善してくれる筋膜リリースですが、けがをしているなど身体に力をかけない方がよい状態のときは、無理に行うのはやめましょう。

骨に異常がある人

骨折、骨粗鬆症など骨に異常のある方は、悪化させてしまうことがあるので、筋膜リリースを控えてください。
筋膜リリースは、気持ちいいと感じるときに効果が出ています。強い痛みを感じる場合は筋膜リリースを中断し、安静にする、専門家の診察を受けるなどしてください。

photo:Getty Images

  • 体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。

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