寝るときの姿勢は睡眠の質を左右し、悪い姿勢で寝ていると、睡眠による十分な疲労回復効果が得られないだけではなく、身体の不調や病気の引き金になる恐れがあります。今回は、質のよい睡眠をとるための最適な寝姿勢、またその姿勢を維持する方法について、整形外科を併設し、オーダーメイド枕を販売する山田朱織枕研究所の松本和也さんに伺いました。

ベッドで熟睡する女性

 

寝るときの正しい姿勢とは

快適な目覚め

快眠を得るためには、寝る姿勢が重要です。横になったときの姿勢には、「仰向け」「横向き」「うつぶせ」などのパターンがありますが、基本的に人は睡眠時に寝返りをうつため、一定の姿勢で寝ているわけではありません。ここでは正しい寝姿勢とは何かを解説します。

寝る時の正しい姿勢とは

寝る時の姿勢で理想的なのは「首に負担がかかっていない」状態と、「寝返りを打ちやすい」状態です。ここでは、寝るときの姿勢として正しい状態について解説します。

首に負担がかからない姿勢

日中、人は頭の重さを支えるために、首の骨とその周囲にあり、バランスをとるための筋肉「抗重力筋(こうじゅうりょくきん)」を常に酷使し、首に大きな負担をかけています。
 
この頭の重さから唯一解放されるのが横になったときです。首が不自然に曲がったりねじれたりしない状態が、最も負担を軽減できる状態とされており、寝るときに、この姿勢をとることで、しっかりと首やその周囲の筋肉を休ませて疲労を回復することができます。

寝返りを打ちやすい姿勢

人は体内に流れる血液やリンパ液を全身に循環させるために、一晩に20〜30回ほど寝返りを打ちます。寝返りがスムーズにできないと体液循環が滞り、起床時に身体のだるさやむくみなどの不調を招く可能性があります。

正しい寝姿勢のチェック方法

自分の寝姿勢が自然で首に負担が少ないかどうかは、朝起きたときの状態で判断できます。下記のチェックリストでひとつでも当てはまった場合は、不自然な寝姿勢をとっている、または枕が合っていない可能性があります。
 
朝、起きたときに…

  • 枕がドーナツ型にへこんでいる
  • 枕がずれている
  • 枕から頭が落っこちている
  • 枕の低いところに頭を置いている
  • 枕の高いところに頭を置いている
  • 枕を肩下に引き込んでいる
  • 敷物を手で押して退けている
  • 枕の下に手を入れている

寝るときに正しい姿勢をとる方法

枕を選ぶ2人の女性

睡眠中、意識的に寝る姿勢をコントロールすることは難しいですが、正しく寝具を選ぶことによって、よい寝姿勢をとることが可能です。ここでは、首に負担がかかりにくい、または寝返りが打ちやすい状態になるために必要な寝具の選び方について解説します。

よりよい寝姿勢をキープするためには、枕を定期的に見直すことが必要です。「起床時に頭が枕の上にない」「朝起きたときに首の痛みや肩こりなどの不調がある」など、自分に合っていないと感じたときは枕を見直しましょう。枕を選ぶときに重視したい点として、高さ、硬さが挙げられます。

自分に合った高さかどうか

寝るときの姿勢で首に負担がかからないようにするためには、枕が高すぎても低すぎてもいけません。右肩と右腰、左肩と左腰がほぼ同時に、コロコロと無理なく回転できる状態になっているのがベストです。大切なのは「横向きに寝たときの高さ」「仰向けに寝たときの高さ」の両方において、下記のポイントを満たすように調節することです
 
横向きの場合は、枕を置き、寝たときに頭と首が一直線になっているかどうかがポイントです。鏡で見たり、パートナーなどに確認してもらったりするとよいでしょう。
 
仰向けに寝たときは、首の角度が15度ほど前傾している姿勢が理想です。あごを少し引いてみたときに、息がスーッと楽にできて、のどが苦しくないと感じたときの角度が15度です。

適度な硬さがあるか

スムーズな寝返りのためには頭が沈み込まないくらいの枕の硬さであることが重要です。柔らかすぎる、また経年によりへたりやすい素材は、寝返りが打ちづらくなるため、避けたほうがよいでしょう。

敷布団・マットレス

寝たときに腰が反る感じがしたり、のどが圧迫されたりするなどの不快感がないかをチェックしましょう。敷布団やマットレスが自分に合っておらず、寝返りがスムーズに打てていない可能性があります。
 
また、スムーズな寝返りのためには、ほどよい硬さがあることが重要です。腰が沈み込んでしまうような柔らかすぎるものは避けましょう

掛け布団

スムーズに寝返りを打ち、寝る姿勢を最適な状態に保つためには、掛け布団は身体への圧迫が少ない「軽い素材」を選びましょう。ずっしりとした綿布団よりも、軽くて暖かい羽毛布団がおすすめです。毛布は起毛素材のため、摩擦によって寝返りがしづらいことがあるので、寒いと感じたときは羽毛の掛け布団の上にかけるとよいでしょう。

パジャマの素材

パジャマはシルクや綿など、摩擦抵抗の少ないすべりのよいものを選びましょう。冬に寒いと感じたときは、表面はポリエステルやナイロン、内側は起毛素材を使った寝間着など、軽く身体を動かしやすい素材を選ぶようにしましょう。

寝る姿勢が心身に与える影響

寝起きに不調を覚える女性

正しい姿勢で寝ると、睡眠時に日中に蓄積した心身の疲労を十分に回復できますが、悪い姿勢で寝続けてしまうと、心身に悪影響が生じることがあります。ここでは正しい寝姿勢によるメリットと、悪い寝姿勢によるデメリットについて解説します。

正しい寝姿勢をとるメリット

寝る姿勢がよいと、頭を支えている首の骨や、周囲にある筋肉の緊張が適度に緩み、日中受けた負荷を取り除くことができます。筋肉が緩むと全身がリラックスし、血液循環が向上するので、新陳代謝が促され、身体の疲労回復がスムーズに行われます

悪い寝姿勢によるデメリット

不自然な姿勢で寝続けてしまうと、首に負担がかかり続け、首回りの筋肉が緊張し、コリが発生します。首周りの血管が締め付けられることで、神経の栄養状態が悪くなり、痛みが生じることがあります
 
首の神経は、主に頭頚部の皮膚や筋肉を司る「第2・3頚神経」、肩甲部・肩周囲を司る「第4・5頚神経」などがあります。悪い寝姿勢を続けると、これらの神経が圧迫され、起床時に頭痛や肩こりなどを感じてしまいます。

寝る姿勢が悪くなってしまう原因

寝相の悪い男性

寝姿勢が悪くなってしまう原因は、おもに自分に合わない寝具、寝返りの打ちづらい服装が挙げられます。ここでは寝る姿勢が悪くなってしまう原因について説明します。

寝具が合っていない

寝る姿勢は寝具によって大きく左右されます。寝具は前述したような、正しい寝姿勢をキープできるものを選びましょう。「触り心地がいい」など、正しい寝姿勢のために必要なポイントを外した観点から選んでしまうと、寝る姿勢が悪くなりやすくなります。

パーカーつきの服を着て寝る

フードのついたパーカーや、モコモコとした摩擦が起きやすい服を着て寝ると、寝返りが打ちづらくなるため、正しい寝姿勢を保ちにくくなってしまいます。
 
正しい寝姿勢を保つ環境をつくると、睡眠の質が高くなり、目覚めもよくなります。目覚めたときに首の痛みや肩こり、だるさなどの不調を感じたら、不自然な姿勢で寝ている可能性があります。枕やパジャマなど、身近なところから見直してみてはいかがでしょうか?

仮眠時の寝姿勢

機内で眠る男性

オフィスや移動中でも、正しい寝姿勢を意識すると、仮眠時の眠りの質が上がります。ここでは、心身の疲労を効率よく解消できる、仮眠時の寝姿勢について解説します。

オフィスでの仮眠

オフィスで仮眠をとるときは、横になって寝るときと同様、首に負担をかけない姿勢をとりましょう。雑誌や高さのあるものに頭をのせることで枕代わりにし、できるだけ首が急な角度で折り曲がらないように調整してみてください。腕を枕代わりにし、机に突っ伏してしまうと、首が不自然に曲がって負担がかかるだけでなく、腕が圧迫されて血流が滞り、仮眠後に腕が上がらなくなったり、しびれたりすることがあります。

移動中の仮眠

首がグラグラするような不安定な状態にならないよう、電車や新幹線で寝るときは、首を安定させられる壁側を選ぶようにしましょう。ネックピローを使う場合は、首の後ろや側面だけでなく顎下にもクッションがあるタイプのものを選びましょう。また、素材が柔らかすぎるタイプや、空気が入ったエアーピロータイプのものは、首が安定しにくいので避けたほうがよいでしょう。

自分に合った枕の作り方

自分に合った枕の作り方

寝る姿勢を改善したくても、枕を買いに行く時間がなかったり、なかなか自分に合ったものが見つからなかったりするときは、身近なアイテムで簡単に作れる「玄関マット枕」を試してみましょう。頭の高さや、いまの寝具の環境に合わせてカスタマイズできます。

用意するもの

・玄関マット 1枚(※1)
・大きめのタオルケットやスポーツタオル 1〜3枚(※2)
※1サイズは横80〜90cm×縦50cmほど。毛足の短いもの
※2たたんだときに玄関マットより小さくならないサイズ。手で表面をなでたときに跡がつかないくらい毛足が短いもの

玄関マット枕の作り方

(1)玄関マットをZ型に折る。
(2)タオルケットの短い辺を縦に二つ折りにし、長い辺を横に二つ折りにする。さらに玄関マットと同様にZ型に折る。
(3)(1)の上に(2)を重ねる。タオルケットは1枚ずつめくれる方を首側にする。

玄関マット枕の調整法

(1)横向きに寝て頭を枕に乗せる。両手は胸のあたりでクロスする。
(2)この状態で、頭、あご、胸までのラインをチェックする。
  ・首がまっすぐ……自分に合った高さです。
  ・首が上がっている場合……枕が高すぎるので、タオルを1枚ずつめくって首がまっすぐになる高さを探しましょう。
  ・首が下がっている場合……枕が低すぎるので、予備のタオルを1、2枚重ねて少しずつ高さを調整しましょう。
(3)次に仰向けになり、のどや首に圧迫感がないかチェックする。呼吸が楽なところを探しながら、タオルケットをめくったり戻したりして調節する。
(4)ちょうどいい高さになったら、寝返りをチェックする。左右に転がり、身体をひねらずスムーズにコロコロ転がれたらOK。
 
監修:山田朱織(16号整形外科 院長)
 
<参照>
「枕を変えると健康になる!」山田朱織著(あさ出版)
「睡眠姿勢革命」山田朱織著(日本評論社)

photo:Getty Images

  • 体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。

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