病院内でメモを取る医師

いびきを治療する方法と病院選びのポイント|早めの受診のメリットは?

自分自身は眠っているので気付かないことも多いいびきですが、睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状であり、合併症として高血圧や糖尿病などに発展する危険性があります。今回は、いびきの原因や治療方法、病院の選び方などについて、東京ロンフェルメ耳鼻いんこう科の竹腰英樹先生に話を伺いました。

いびきの原因

パートナーのいびきの音に悩み耳を塞ぐ女性

いびきは、睡眠中に空気の通り道である上気道(※)が狭くなることで発生する空気の振動音が原因で起こります。

「上気道が狭くなる理由はさまざまで、いびきはそれらの複数要因が重なって起こる症状です」(竹腰先生)

以下に、いびきの主な要因をまとめました。

※上気道:気道のうち、鼻から咽頭、喉頭にかけての部位

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が止まる病気です。医学的には、10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸とし、一晩の睡眠中(7時間)に無呼吸が30回以上、もしくは1時間あたり5回以上あれば、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

睡眠時無呼吸症候群といびきには、深い関わりがあります。睡眠時無呼吸症候群患者の9割以上がいびき症状を持っているほか、慢性的ないびきに悩んでいる人の約3割が睡眠時無呼吸症を持つと報告されています。なお、睡眠時無呼吸症候群やその他の疾患に起因していないいびきを「単純性いびき症」といいます。

「睡眠時無呼吸症候群についてはその怖さが注目されているため、治療の必要性を理解している方も多いと思われますが、単純性いびき症であっても治療が必要です」(竹腰先生)

 

睡眠時無呼吸症候群になったときのリスク

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の気流の停止によって脳に負担がかかり、睡眠の質が下がるなどの問題があります。睡眠の質の低下は、日中の強い眠気や集中力の低下などの疲労症状を招きます。

「睡眠時無呼吸症候群による眠気や集中力低下が居眠り運転につながり、大きな事故が発生した事例もあります。また、血中の酸素濃度低下によって身体の機能が低下することで、さまざまな悪影響が出てくるとこともあります。血圧の上昇が起こるだけではなく、心筋梗塞や脳梗塞、動脈硬化などのリスクが高まり、糖尿病を悪化させることもわかっています」(竹腰先生)

 

甲状腺の異常

甲状腺の肥大化によって喉や気道が圧迫され、いびきにつながることがあります。

 

舌がん・咽頭がん

舌がんや咽頭がんで喉が狭くなり、いびきを生じることがあります。

「今までいびきをかかなかった人が急にいびきをかくようになった場合は、突然、上気道が狭くなってきた可能性があります。その中で最も怖いのが、上気道にがんができて狭くなってきたケースです」

 

脳腫瘍・脳梗塞

脳腫瘍、脳梗塞などによって、舌や軟口蓋の動きをコントロールしている中枢に障害が現れます。また、脳溢血などで脳の働きが悪くなり、上気道の筋肉を緊張させる信号が上手く届かなくなったためにいびきが発生することもあります。

「割合は高くありませんが、いびきの原因ががんや脳腫瘍・脳梗塞などの重大な病気である可能性もあるため注意が必要です」(竹腰先生)

 

鼻粘膜の異常

アレルギー性鼻炎や花粉症などによって鼻粘膜が腫れると、鼻づまりが起こります。すると、睡眠中も口呼吸になってしまい、舌が喉に落ち込むことで上気道が狭くなります。

 

扁桃肥大

のどちんこ(口蓋垂)の両側にある扁桃が大きい場合、空気の通り道が狭くなり、いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因になることがあります。

 

精神安定剤や睡眠薬の服用

薬剤の働きで筋肉が弛緩し、上気道が狭窄するためにいびきが生じます。

 

加齢

加齢により上気道の筋力が弱くなったり、コラーゲンが減少して上気道の弾性力が低下したりして、いびきが起こりやすくなります。また、長年にわたるいびきから口蓋垂が腫れて大きくなり、さらに症状を悪化させることもあります。

さらに、もともと女性はいびきをかきにくいとされ、いびきに悩む女性は男性の3分の1ほどといわれていますが、加齢とともに女性のいびきは増えていく傾向があります。

「女性ホルモンが軟口蓋(口の中の奥にある上あご部分)を緊張させる作用を持っているため、女性は男性よりいびきをかきにくい傾向があります。しかし、女性ホルモンが減少するとその作用が弱まるため、50歳を超えた頃から急激に女性のいびきが増えていきます」(竹腰先生)

 

肥満

首回りや喉の裏側などに脂肪がつくことで上気道が狭くなるため、いびきが起こります。

 

飲酒

飲酒をすると筋肉が弛緩し、舌や軟口蓋が落ち込みやすくなります。また、アルコールによって身体の血行が促進されるため、鼻腔の血管が膨張して鼻の通りを悪くするだけでなく、上気道も狭くなっていびきが起きやすくなります。

 

喫煙

タバコに含まれる有害物質が、鼻や喉の粘膜を刺激します。刺激による炎症で鼻や喉が腫れて扁桃腺も大きくなるため、上気道が狭まりいびきの原因になります。

喫煙本数が120本以上だと、いびきをかく確率が非喫煙者の約2になるという研究結果があります。また、両親が喫煙者である場合、子どもがいびきをかく確率が高くなるという報告もあり、受動喫煙の影響も見逃せません。喫煙がいびきに関与することは明らかです」(竹腰先生)

 

あごが小さい

日本人は欧米人に比べて下あごが小さく、また、顎が小さい人は通常より顎が奥に後退していること割合が高いため、気道が狭くなっていびきをかきやすくなります。

 

疲労

疲労が蓄積すると、喉まわりの筋肉がゆるんで舌が喉の奥に落ち込んで上気道が狭くなり、いびきをかきやすくなります。

 

いびきの治療法

患者を診察する医師

いびきの治療には、原因を理解した上で症状を改善する方法を選択することが重要です。いびきの主な原因は上気道が狭くなることで起こるため、各原因によって生じた狭窄部位を拡大し、気道を確保することがいびきの治療になります。

いびきは複数の原因によって起こることが多く、個人で原因を特定することは困難です。慢性的ないびきを自覚した際は、適切な治療のためにも医療機関の受診をおすすめします。

以下、主な治療法をまとめました。

 

生活習慣の改善

飲酒や喫煙などの生活習慣を改めると、いびきの改善につながります。また、肥満を解消して適正体重になるといびきが解消することがあります。

 

寝具や寝相を変える

仰向けで眠っていると、重力で舌が喉の奥に落ち込み、上気道が狭くなりやすくなります。そのため、横向きで寝た方が気道を広く保てます。抱き枕を抱えたり、枕の片側を高くして斜めにしたりして、横向きで眠りやすい環境を整えましょう。

 

手術や医療器具の使用

上気道が狭くなる要因に身体的な問題(あごが小さい、扁桃肥大など)がある場合、器具による矯正や原因となる部位を切除するなどの手術が必要なこともあります。

 

マウスピースの装着

医療用のマウスピースは、舌や下あごを前方に固定し気道スペースを確保するためのもので、装着して眠ると気道が開き空気が通りやすくなるため、いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療に使用されています。一方、市販のマウスピースは外に漏れるいびきの音を低減させるもので、気道を広げるような効果は見込めません。

 

鼻チューブの装着

シリコン製の柔らかいチューブ状の医療デバイスを、鼻から口蓋垂まで挿入することで気道を確保し、いびきを軽減します。また、鼻チューブの装着はいびき治療の方針を決めるためにも有効だといいます。

「複合的な要因によって起こってくるいびきにおいて、鼻チューブの装着でいびきが軽減されることが確認できれば、治療すべきポイントや手段を見極めることができます」(竹腰先生)

 

いびき改善のために病院へ行ったほうがいい理由

病院の受付風景

いびきはパートナーや家族からの指摘で気付く人が大半です。また、最近は指摘された人がスマホアプリなどで自分のいびきを確かめてから病院へ行くケースが増えています。しかし、いびきを自覚しても放置する人も多くいるといいます。

「飲酒時や鼻風邪、疲労などにより一時的にいびきをかいている場合は治療の必要はないとされています。しかし、慢性的ないびきがある場合は、気付いた段階で医療機関を受診することをおすすめします。病気だけでなく、パートナーの睡眠を妨げてしまうことで関係性が悪化し、医療機関を受診される方も多くいらっしゃいます。また、自分のいびきを自覚しているからこそ、他人と寝泊まりすることに不安を感じ、旅行に行くことなどを躊躇してしまうようなケースも少なくありません。不安解消には、いびきの治療が必要です」(竹腰先生)

そのほか、いびき改善のため病院に行ったほうがいい理由について、以下で解説します。

 

いびきの原因を特定し、適切な治療ができる

いびきの治療のためには、原因を突き止めることが重要ですが、自分でそれを特定することは非常に困難だといいます。

「いびきの原因を知るためには、病院で検査を行う必要があります。また、複数の要因が重なっていびきが起こっているケースが多いため、適切な治療方法を医師の診察によって決定していくことが重要です」(竹腰先生)

適切に治療がなされることで、いびきに伴うさまざまな問題を解決することができます。また、原因を特定する過程で、下記のような病気に気付くこともあるようです。

 

睡眠時無呼吸症候群

前述の通り、慢性的にいびきに悩んでいる人の約3割が睡眠時無呼吸症を持つと報告されています。そのため、来院した患者を検査した結果、いびきの原因が睡眠時無呼吸症候群によるものだと判明するケースも少なくありません。また、病気の発見につながるだけでなく、睡眠時無呼吸症候群に伴う病気の予防や危険回避にもつながります

 

いびきを伴う重篤な病気

ガンや脳梗塞などの兆候としていびきが起こっている場合、病気の発見につながります。

 

いびきのチェックリスト

いびきを自覚していても、病院へ治療に行くべきか迷っている人は、下記のチェックシートを確認してみましょう。

 

<スノーラー自己テスト>

  • 周囲の人から、いびきをかいていることを指摘されたことがある。
  • 夜中に何度も目が覚めトイレに行ってしまう。
  • 朝に目が覚めると、喉が渇いている。
  • 十分に眠ったはずなのに、朝起きても疲れが取れていない。
  • 日中の眠気がひどい。
  • お酒を飲む機会が多く、いつもついつい飲みすぎてしまう。
  • 肥満体型で、おなか周り(おへその高さ)が男性で85cm、女性で90cmを超えている。
  • 首が太くて姿勢が悪い。
  • 下あごが小さくて歯ならびが悪い。
  • アレルギー性鼻炎(鼻づまり)などの鼻の病気や、アデノイド、扁桃肥大など喉の病気がある。

(出典:一般社団法人 日本肥満症予防協会HP より(「塩見利明ほか. 睡眠医療 2017; 11(2); 245-248.より作成 監修:塩見利明(愛知医科大学睡眠科 教授)」)

 

上記項目のうち4個以上当てはまるという人は、いびきの原因が「睡眠時無呼吸症候群」である可能性が高まります。すぐに医療機関を受診するようにしましょう。

 

いびき治療の病院選びのポイント

机の上に置かれた聴診器やカルテなど

いびきの診断や治療のために病院に行こうと考えた時、多くの人がどのような病院を選ぶべきか迷うのではないでしょうか。病院選びで注意すべきポイントをまとめました。

 

何科を受診すべきか?

受診科目としては、内科や耳鼻咽喉科が適切です。子どもの場合は小児科も適しています。また、少数ですが、いびき外来や睡眠外来など専門性が高い医療機関もあります。

 

睡眠時無呼吸の検査ができる病院を選ぶ

慢性的ないびきに悩む人の3割が睡眠時無呼吸症候群を伴っているとの報告があります。いびきの治療においても、睡眠時無呼吸症候群があるかどうかを見極めることが、大きなポイントになります。

「睡眠時無呼吸症候群は多くの病気のリスクを高めることがわかっているため、いびきがある場合、まず無呼吸症状があるのかを調べることが重要になります。睡眠時無呼吸の検査ができる病院をおすすめします」(竹腰先生)

 

通いやすい病院を選ぶ

定期的な通院が必要になるケースもあるため、自分の生活に合わせ、通いやすい病院を選びましょう。また「かかりつけの医師に紹介してもらった専門医だから安心して相談できる」「女性のため同性の医師がいい」など患者と医師との相性も判断のポイントになります。

 

必要に応じて専門医を紹介してくれる病院を選ぶ

受診した先で治療し、症状が改善しない場合、別の検査や治療が必要になるケースもあります。必要に応じて別の病院や専門医を紹介してくれる病院が良いでしょう。

 

いびき治療に対応している病院をお探しの方は、下記のリンクをご参照ください。

いびき治療の医療機関一覧

 

Photo: Getty imagaes

竹腰 英樹

監修

医師・医学博士

竹腰 英樹

医療法人社団 英紀会 東京ロンフェルメ耳鼻いんこう科 理事長


※体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。
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