睡眠薬を減らしながら、しっかり不眠症を改善する方法とは?

睡眠薬は不眠症治療の現場で多く使われています。しかし睡眠薬には、即効性などのメリットだけでなく、副作用や依存などデメリットもあります。

そこで、臨床心理士の岡島義先生に、睡眠薬との付き合い方や、睡眠薬に頼らない睡眠を目指す「認知行動療法」について伺います。

 

現在、不眠症の治療といえば睡眠薬を使った薬物治療が主流です。

しかし、睡眠薬を使用する治療は再発率が高いとされ、「睡眠薬をいつやめられるのか分からない」「段々と睡眠薬の量が増えてしまうかも」といった不安もつきまといます。

 

そこで注目されるのが、不眠症治療と同時に睡眠薬も減薬できるという認知行動療法。

同療法に詳しい臨床心理士で早稲田大学人間科学学術院助教(*監修時)の岡島義先生に、睡眠薬のメリットとデメリット、また、睡眠薬の種類や違いについて、話を伺いました。

 

すぐに不眠症をなんとかしたい! そんなときの強い味方が睡眠薬

睡眠薬の最大の特長は、即効性にあります。薬を飲むだけで眠れない苦しみから解放されるため、ストレス性の急性不眠などの場合には特に有効です。

 

「急性不眠の場合、睡眠薬の力を借りて眠っていれば、やがてストレスが解消したり,ストレスに慣れていき、症状が改善することがあります。

しかし、慢性的な不眠症の場合、長期間睡眠薬を飲み続けることになるので、さまざまな問題が発生する可能性があるのです」(岡島先生)

 

睡眠薬を服用し続けることによるデメリットとしては、続ければ続けるほど、やめにくくなってしまうこと。

しかし、止め方を知らずに、自分の判断で勝手に服用と中止すると、リバウンドが起こって余計に眠れなくなるとともに、薬への依存傾向が強まることもあるそう。

 

「睡眠薬が飲みたくて飲んでいる人はいません。皆さん、やめられるものならやめたいと思っているんです。しかし、自分の判断でやめてしまうのは危険です。

もし、睡眠薬を飲まなかったことによって眠れなかったり、夜中に起きてしまったりすれば、『やっぱり飲まないと眠れない』という恐怖感で睡眠薬への依存心が強まっていきます。

また、リバウンドとして、不眠症だけでなく頭痛や強い不安などの症状が表れることも。薬をやめたいのであれば、きちんと医師と相談して少しずつ減らしていくようにしてください」(岡島先生)

 

ほかにも、服薬の副作用として、薬の効果が朝まで残ってボーッとしてしまう「持ち越し効果」や、一時的に記憶が飛んでしまう記憶障害(例えば、夜中に起きてご飯を食べたことを覚えていない)が起きることもあるそう。

また、同じ薬を服用し続けることで耐性ができ、一度は薬で改善することができた不眠症が再発することも…。

 

それでも、現在のところ、不眠症最大の問題である「眠れない」という症状を緩和するには、睡眠薬が第一の選択肢になります。

現在、不眠症治療に取り組んでいる患者さんのほとんどが、睡眠薬を使用しているのだそうです。

 

睡眠薬にも色々あるけれど…主な睡眠薬の種類と使い分け

一言で睡眠薬といっても、その種類はさまざま。症状や体質により、使い分けられています。

また、薬が合わなかったり耐性ができてしまったりして効かなくなった場合には、さらに異なる種類の薬が処方されるため、数種類の薬を服用している人も多いといいます。

 

「睡眠薬は、『入眠困難の人には薬が効き始めるまでの時間が短いもの』『中途覚醒の人には薬の効果が長く持続するもの』『早朝覚醒の人はさらに効き目が長く続くもの』…というふうに使い分けられています。

なので、複数の症状を抱えている人は、数種類を服用することがあります。

また、体質によっても効くもの、効かないものがあるので、どの睡眠薬を処方するかは医師が診察をもとに決めているんです」(岡島先生)

 

なお、不眠症改善のために睡眠薬を飲み始めるときは、「いつかは薬をやめることを前提に考えてほしい」と岡島先生。

「症状の悪化などで一時的に薬の量が増えることがあっても、基本的には症状が落ち着いたら量を減らしていくべきです」(岡島先生)

 

認知行動療法を併用することで減薬が進むことが研究により明らかになっており、減薬目的で治療に訪れる患者さんは多いそう。

認知行動療法で順調に治療を続けていけば、薬を減らし、いつかはやめることができます

医師や認知行動療法のカウンセラーの助けを借りながら、着実に不眠症治療を進めていきましょう。

 

2種類の減薬方法をどう使い分ける?

減薬は、自分の判断ではなく医師の判断をあおいでから始めます。

ある程度、症状が安定していなければ始められないため、睡眠薬を早くやめたいときは、睡眠環境や生活習慣などをしっかりと改善し、少しでも早く減薬に取りかかれるように準備することが必要です。

 

「減薬の方法は大きく分けて2通り。

1つは『漸減法』といい、薬の量を3/4に減らして2週間~1カ月ほど様子を見て、問題なければ元の量の1/2に、そして2週間~1カ月後に問題なければ元の量の1/4に、というように1/4ずつ薬を減らしていく方法です。

徐々に徐々に減らしていくので、薬の量が多い人ほど時間がかかります。

 

もう1つは『隔日法』といい、薬の量を半分ほどに減らして数週間様子を見ながら、徐々に全く飲まない日を増やしていきます。

こちらは長時間効く薬を服用している場合に使われますが、判断が難しいため、こまめに医師の診察を受ける必要があります」(岡島先生)

 

どちらも減薬によるリバウンドの可能性があるため、医師の指示を受けながら行う必要があります。

これらの減薬法に加え、身体を眠りやすい状態にする認知行動療法を行えば、睡眠薬の量を減らした際に、「眠れない」という事態を防ぎやすくなります

 

ちなみに、睡眠薬を毎日1錠飲んでいる人の場合、漸減法で完全に薬をやめるまでには単純計算で最短2カ月程度はかかるそう。

長い道のりかもしれませんが、薬が減るほど徐々に快方に近づいているということ。焦って結果を出そうとしないことが大切です。

 

不眠症は不安との戦いでもあります。中でも、薬を飲んでも眠れない日はどうしようもない不安を感じるかもしれません。しかし、「そんな日は何をしてもムダですよ」と岡島先生。

「どうしても眠れない日というのは、時々あるものです。そんなときは、次の日眠れるように、無理に眠ろうとしないことも肝心です。

眠れない日は不運と割り切り、あまり気にしないようにしましょう」(岡島先生)

 

不眠症の治療が始まり、睡眠薬を飲むことになっても、正しい減薬法をきちんと行えば不必要に不安に思うこともなさそう。

睡眠薬に対してなんとなく「怖いもの」というイメージがあった人は、正しい内容を知って上手に付き合っていきましょう。

【認知行動療法については、下記の記事もご覧ください】
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photo:Thinkstock / Getty Images

岡島 義

監修

博士(臨床心理学)

岡島 義

認知行動療法および睡眠心理学を専門とし、睡眠問題が及ぼす精神・身体症状、対人関係、社会生活への影響について研究を続けている。主な著書に、『薬を手放し、再発を防ぐ 認知行動療法で改善する不眠症』(すばる舎)、『4週間でぐっすり眠れる本』(さくら舎)など。

東京家政大学 人文学部心理カウンセリング学科 准教授


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