旅先でうまく眠れないのは“半球睡眠”のせい? 出張や旅行でぐっすり眠るコツ

”半球睡眠”が旅行で眠れない理由? 出張や旅先でぐっすり眠るコツ|医師コラム

枕が変わると眠れない……。旅行先や出張先で、眠れない経験をしたことはありませんか? リフレッシュ旅行ならまだしも、大事な出張で眠れないと困りものです。

ここでは、旅先でも落ち着いて眠るためのコツを、睡眠専門医がご紹介します。

 

なぜ旅先では眠れなくなるの?

はじめて泊まるホテルなど、いつもと違う環境でよく眠れないことを、「第一夜効果(ファーストナイト・エフェクト)」といいます。多くの場合、同じところでの2泊目以降は、普段と同じように眠れるようになります。

 

睡眠の研究のために検査室へ泊まってもらうとき、はじめの夜は第一夜効果のためデータが使えず、2番目以降のデータで研究を行います。

最初の夜の脳活動を詳しく調べると、片側(右あるいは左)の脳は活動を停止して眠っていましたが、反対側の脳は目覚めているときと同じくらい活動的でした

 

自宅など慣れたところで眠るときも、外界の音や光などの刺激に対して目を覚ますことがあります。脳のごく一部が目覚めていて、「見張り番」あるいは「夜警」の働きをしているからです。

いつもと違うところで眠る最初の夜は、見知らぬ環境に対して警戒心が強く働き、片方の脳全体が起きているため、寝つきが悪く、夜中に目覚めることが多くなるのです。

 

片方の脳だけが眠る睡眠法を、「半球睡眠」といいます。呼吸のため定期的に水面に出ないといけないイルカや、長い距離を飛び続ける渡り鳥などは、この半球睡眠を使って脳を半分ずつ休ませています。

第一夜効果は、ときに厄介ではあるものの、人間がもつ動物本来の名残とも考えられます。

 

旅行先や出張先で落ち着いて眠るコツ

眠るときの環境が変わったため、警戒心が強くなるのが第一夜効果です。ということは、はじめて泊まるところの環境を自宅と似たものにすれば、気持ちが落ち着いて眠りやすくなります。

 

いつもの使い込んだ枕と、同じ枕の新品で寝心地を比べた実験があります。それによると、ふだん使っている枕の方が、睡眠の質がよいことが分かりました

おそらく、使っているうちに素材が弱って部分的にくぼみ、自分の頭の形に合うようになったためと思われます。

 

また、自分のにおいがしみ込んだ枕や、慣れた手触りの枕カバーで眠るほうが、安心できて眠りやすいと考えられます。

旅行などで枕が変わると眠れない人は、自宅の枕を持っていくか、少なくともいつも使っている枕カバーを旅先でも使うと、眠りやすくなりそうです。

ナイトウエアやぬいぐるみなどの小物、アロマオイルも、自宅で使っているものを持っていきましょう。

 

自宅と同じ行動パターンをとる

日本代表チームが大活躍したラグビーのワールドカップでは、五郎丸歩選手の「五郎丸ポーズ」が話題になりました。本番の前に行う一定の動作を、「プレパフォーマンス・ルーティン」といいます。

相撲の力士が取組前に行う仕切り動作も、「プレパフォーマンス・ルーティン」の一つです。「プレパフォーマンス・ルーティン」を行うことで、気持ちを落ち着けたり集中力を高めたりできます。

 

眠る前にも決まった行動をとると、緊張が取れて寝つきが良くなります。この行動を「スリープ・セレモニー」あるいは「睡眠儀式」といいます。

睡眠儀式を行うと、昼の神経である交感神経から、夜の神経である副交感神経への切り替えがスムーズに行われて、眠る準備ができます。

 

たとえば、ぬるめのお風呂にゆっくり入って、パジャマに着替えて歯を磨き、軽くストレッチングをして寝床に入り、「おやすみなさい」とつぶやいて、ライトを消して目を閉じる。

このような睡眠儀式をふだんから行っておいて、旅先でも同じように行動すると、リラックスできて自然に眠りやすくなります。

 

お酒や薬の上手な使い方

寝酒は、世界中で見られる文化です。特に日本では、多くの人がお酒に頼って眠ろうとします。確かにお酒を飲むと、寝つきが良くなります。

 

しかし、時間とともにアルコールの分解が進んで、血液中のアルコール濃度が薄くなると、眠りを浅くしてしまいます。そのため、睡眠の後半では深い睡眠が減り、睡眠全体としては質が悪くなります。

 

お酒を飲むなら、適量を眠る3時間前までにしておきましょう。そうすれば眠るまでにアルコールが分解されるので、睡眠への悪影響が少なくなります。

適量とは、体重60kgの成人男性で日本酒1合、ビール中瓶1本、ワインなら軽くグラスに2杯までです。女性や高齢者はアルコールの分解が遅いので、これの半分くらいが適量です。

 

どうしても眠れないときは、薬局で買える睡眠改善薬を使うという手もあります。とくにカゼ薬や花粉症・アレルギーの薬で眠くなる人には、効果が高いです。

薬が効いてくると急に強い眠気に襲われることがあるので、安全のため薬を飲んだら、すぐに布団に入りましょう。

 

photo:Getty Images

坪田 聡

執筆

医師・医学博士

坪田 聡

医師として睡眠障害の予防・治療に携わる一方で、睡眠改善に特化したビジネス・コーチとしても活躍中。「快適で健康な生活を送ろう」というコンセプトのもと、医学と行動計画の両面から睡眠の質を向上させるための指導や普及に尽力。総合情報サイトAll about 睡眠ガイド。 「睡眠専門医が教える! 一瞬で眠りにつく方法」(TJMOOK 宝島社)、「パワーナップ仮眠法」(フォレスト出版)他、監修・著書多数。

医療法人社団 明寿会 雨晴クリニック 副院長

Site: http://suiminguide.hatenablog.com/


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