不眠症の原因となる身体の緊張を解消! 寝る前に試したい「筋弛緩法」

仕事で遅くまで残業して帰宅し、身体は疲れ切っているはずなのに眠れない…。多くの人に心当たりがあると思いますが、忙しくストレスの多い現代人は心身の状態が安定せず、無意識のうちに身体を力ませて緊張させています。

この緊張状態が、不眠の原因の一つになるそう。そこで、緊張状態を解消するため、認知行動療法の一環として行われている「筋弛緩法」について、臨床心理士で早稲田大学人間科学学術院助教(*監修時)の岡島義先生にお話を伺いました。

 

緊張で全身ガチガチ!? そんなあなたも使える筋弛緩法

不眠症の原因の一つに、心身の緊張があります。うまくリラックス状態をつくることができない患者さんの場合、以前の記事で紹介した睡眠スケジュール法に加えて「筋弛緩法」を使う場合があると岡島先生。

 

「筋弛緩法とは、力を入れたり抜いたりすることを繰り返し、身体の力を抜く感覚をつかむ方法です。緊張しやすいのは不安感の強い人である場合が多く、それが原因で不眠症になってしまいます。

自分では気づいていなくても、カウンセリング中に身体がこわばっていたり、呼吸が浅かったりという特徴が見られる方には、筋弛緩法を試してもらっています」(岡島先生)

 

身体が緊張しているかどうかは、意外と簡単な方法でチェック可能。力を抜いて膝に置いた手首を、他人に胸のあたりまで持ち上げてパッと放してもらいます。

その手首がダランと元の場所へ戻らず、空中で止まってしまう場合は身体が緊張で固まっている状態だといいます。

 

「研究では、筋弛緩法を取り入れることで寝つきや睡眠の質が改善したという結果が出ています。

不眠症の人は、そこまではっきりとした効果が出なくても、以前に比べると寝つきが良くなったとか、眠りが深くなったという声は多いですね。

筋弛緩法は不眠症以外にも使えるリラックス方法で、健常な人が行った場合は、その効果がより分かりやすいと思います」(岡島先生)

 

では、その筋弛緩法とは、どのような方法で行うのでしょうか。具体的に伺っていきましょう。

 

繰り返して覚えよう! 1回15分の筋弛緩法

筋弛緩法は、身体のさまざまな部分に力を入れてから抜くという動作を繰り返しながら、力が抜けた時の感覚をつかむ方法です。緊張を解きほぐしてリラックスさせるために行いますが、まずは次のような準備が必要です。
 
・なるべく静かな場所を選ぶ
・背もたれのある椅子など、腰掛けられるものを用意する
・アクセサリーやベルト、時計など締め付けるものはなるべく外す
 

「基本姿勢は、背もたれに寄りかからず浅く腰掛けた状態です。足は肩幅程度に開いておきます。膝の角度は90度にし、足の裏全体が床につくように調整しましょう。

力を入れたり抜いたりを繰り返していきますが、力を入れる時間は5秒程度、抜いた後の時間は20秒程度が目安です。ただし、時計を見る必要はありません。頭の中で数えてみてください。

力を入れる際は8割程度の力で行い、ゆっくりと、力の入っている部分や力が抜けた時の感覚に集中しながら行いましょう」(岡島先生)

 

身体の部分ごとに行うため、すべての工程を行う所要時間の目安は1回につき15分ほど。実践する際には、以下のような手順で試してみましょう。

 

 1.手のリラックス

①前かがみになり、手のひらをぎゅっと握る
②ストンと力を抜き、手のひらに感じる感覚に集中する
③もう一度手のひらを握る。今度は力が入っている感覚に集中
④ストンと力を抜く
⑤手のひらを目一杯広げ、手のひらが張っている感覚に集中
⑥ストンと力を抜く

 

2.腕のリラックス

①こぶしを軽く握り、ひじをぐっと曲げて脇を締める。ひじに力を込め、腕が震えるくらい力む。
②太ももにストンと腕を落とす。

 

3.首のリラックス

①背筋を伸ばし、首をストンと落とし、あごと鎖骨を近づけるようにして下を向く。首の後が伸びているのを感じる
②首を傷めないようゆっくりと、正面を向く
③そのまま頭を後ろに倒し、なるべく後ろの方を見るようにする
⑤ゆっくりと正面を向く
⑥肩を動かさず、左肩に左耳を近づけていく。右の首筋が伸びていることを意識する
⑦元に戻し、右肩に右耳を近づけていく。今度は左の首筋が伸びていることを意識する
⑧ゆっくりと正面を向く

 

4.肩と上半身のリラックス

①肩をすくめるようにして肩を上げる
②ストンと力を抜く
③こぶしを握り、腕をぐっと曲げて脇を締め、肩をすくめる。
④太ももにストンと腕を落とす

 

5.背中とお腹のリラックス

①腕を垂らし、そのまま後ろに引いていく。同時に、胸とお腹を前に突き出す
②ストンと力を抜く
③両手を重ね、丹田(おへその下)に当てる。
④息を口から「ふ〜っ」と吐き出し、鼻から吸う。
⑤息を止め、手でお腹を押していく。その手を跳ね返すように、腹筋に力を入れる。
⑥苦しくなってきたら、息を口から「ふ〜っ」と吐くのと同時に力を抜く

 

6.脚のリラックス

①腰を傷めないよう背もたれに寄りかかるよう深く腰かける
②ひざをくっつけて脚を伸ばす
③つま先を手前(身体の側)に向ける。ふくらはぎが張るように
④脚からストンと力を抜く

 

7.全身のリラックス

①背もたれに寄りかかるように座る。
②こぶしを握り、腕をぐっと曲げて脇を締め、肩を上げて、ひざをくっつけて脚を伸ばし、つま先を身体の側に向ける。
③ストンと全ての力を抜く。

 

8.最後に1分間、全身のリラックスを感じる時間をとる

※以下の著書では、上記ステップをイラスト付きで解説しています(P153~)
岡島義・井上雄一著『認知行動療法で改善する不眠症(すばる舎)』

これら一連の動作を、なるべくセットで行うようにしましょう。力の抜けた感じがつかめなければ、それぞれ2回くらいは繰り返してもOKだそう。

力を入れて抜くだけという手軽な方法のため、覚えてしまえば気軽にできそうです。即効性があるため、不眠症改善のために行う場合は、寝る直前に試してみましょう。

 

「不眠症で睡眠薬を服用している人は、薬を飲んでから筋弛緩法を行いましょう。すると、寝るころには薬が効いてきて、より眠りやすくなるでしょう。

逆に服薬後すぐに眠くなってしまう人は、筋弛緩法を行ってから薬を飲むようにするといいかもしれません」(岡島先生)

 

また、力が入っている状態と抜けた状態に集中するため、テレビを見ながら、音楽を聞きながら行うのはNG。集中できる環境で行うことが大切です。

 

メリットだらけ! 筋弛緩法を毎日続けるべき理由

筋弛緩法のメリットは、自律神経が整い、身体的覚醒を鎮めるため、心身ともにリラックスできること。また、長期にわたり継続していくと、身体が段々と緊張しにくくなっていく効果もあるそう。

 

「身体が緊張している、力が入っていると気づいたら、いつでも筋弛緩法を行ってください。寝る前だけでなく日中にも行うことで、長期的な効果を得ることができます

ただ、後で眠気が出たりボーッとしたりすることがあるので、その場合は身体を伸ばすなどして、目を覚ましてくださいね」(岡島先生)

 

一連の動きを全て行うのが望ましいですが、時間がなければ一部だけ行うのもOK。力が入った状態を解消することが先決です。では、そのとき、どの部分のリラックスを行うかによって違いはあるのでしょうか。

 

「人により、力の抜けた感覚がつかみやすい部位とそうでない部位があったり、部位によって感じ方が異なったりするかもしれませんが、どの部分の筋弛緩法を行っても効果は同じです。

自分にとって特に効果が実感しやすい部分を選ぶと良いでしょう」(岡島先生)

 

また、リラックス効果だけでなく、以下のようなメリットもあります。

・高血圧が下がる
・慢性的な頭痛(特に緊張型頭痛)が改善
・消化器系の病気の予防、治療効果
・騒音や悪臭などから受ける不快感を和らげる
・爪を噛む、貧乏ゆすりをするクセが改善
・精神集中ができ、判断力が得られる
・落ち着きを取り戻す
 
……などなど、心身両面にさまざまな効果があります。なんだか緊張する、全身がこわばっている…そんなとき、覚えておけばいつでも活用できる筋弛緩法。緊張しやすい人は、大事なプレゼンなどの前にも使えそうです。

 

「不眠症でない人は比較的すぐに効果を感じられるのですが、不眠症の人は緊張が強いぶん,最初なかなか効果を実感できないかもしれません。しかし毎日継続して行うことが大切です。

慣れるのに1週間、効果が少し出てくるまでにもう1週間と考えてもらい、焦らず続けてくださいね」と岡島先生。

 

はじめはなかなかうまくいかないかもしれませんが、習慣になるよう毎日続けていきたいですね。
 

photo:Thinkstock / Getty Images

岡島 義

監修

博士(臨床心理学)

岡島 義

認知行動療法および睡眠心理学を専門とし、睡眠問題が及ぼす精神・身体症状、対人関係、社会生活への影響について研究を続けている。主な著書に、『薬を手放し、再発を防ぐ 認知行動療法で改善する不眠症』(すばる舎)、『4週間でぐっすり眠れる本』(さくら舎)など。

東京家政大学 人文学部心理カウンセリング学科 准教授


※体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。
編集部内で信頼できると判断した情報、並びに医師や専門家への取材を元に信頼性のある情報提供を心がけておりますが、自己の個人的・個別的・具体的な医療上の問題の解決を必要とする場合には、自ら速やかに、医師等の適切な専門家へ相談するか適切な医療機関を受診してください。(詳細は利用規約第3条をご確認ください)

眠りのQ&A