耳掃除をする女性

耳垢の正しい取り方は?|理想的な耳掃除の頻度と方法

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特別な意識をせず耳掃除を行っている人もいるかもしれませんが、耳垢には重要な役割があり、頻度やタイミングなど注意すべき「正しい耳掃除の方法」があります。今回は、ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック院長の永倉仁史先生に、耳垢の役割や正しい耳掃除のポイントなどについてお話を伺いました。

耳垢とは?

耳の断面図

耳垢とは、皮脂を分泌する「皮脂腺(ひしせん)」と、汗腺の一種である「耳垢腺(じこうせん)」から出る汗や皮脂などに、剥がれ落ちた肌の表皮や抜け落ちた耳の毛などが混ざってできた垢のことをいいます。耳垢は、一般的に耳の穴といわれる「外耳道(がいじどう)」の入口から3分の1程度、約1〜1.5センチの場所に溜まり、ほとんどは、外耳道の入口付近に生える毛の働きによって自然に排出されます。

 

耳垢の役割

外耳道の入口付近に溜まる耳垢は、「耳から出る排泄物」であるとともに「耳の健康のためには不可欠な存在」です。以下、耳垢の主な役割について解説します。

 

鼓膜を守る

耳垢の大きな役割の一つが、外的要因から耳の奥、特に鼓膜を守ることです。

「耳垢には、耳の中への異物侵入を防ぐ役割があります。耳の奥にある鼓膜はとてもデリケートな部位で、ほこりや汚れにとても弱いため、入口付近の耳垢や毛がこれらの侵入やダメージを防ぎ、鼓膜の正常な状態をキープしてくれているのです」(永倉先生)

 

抗菌作用

耳垢のもう一つの代表的な役割が、抗菌作用によって耳の中を清潔な状態に保つことです。

「耳垢自体が、抗菌作用や外耳道の表面を潤す作用を持っており、耳の中を清潔な状態に保つ役割を担っています。そのため、耳掃除はやりすぎてはいけません」(永倉先生)

 

耳垢のタイプ

綿棒と耳垢のタイプ

耳垢は「乾性耳垢(乾型)」と「湿性耳垢(湿型)」の2種類に大別され、日本人には乾性耳垢が多いとされています。

「耳垢のタイプは遺伝子によって決まります。もともとはすべての人類が湿性耳垢だったのが、なんらかの突然変異が起こって、乾性耳垢の人が増えていったと考えられています」(永倉先生)

 

乾性耳垢

カサカサと乾いていて鱗のような形をした耳垢が、「乾性耳垢」といわれるタイプの耳垢です。北東アジアの人に多く見られ、日本人の約85%が乾性耳垢に該当するといわれます。

 

湿性耳垢

やや褐色でベトベトと湿ったタイプの耳垢が「湿性耳垢」です。ヨーロッパやアフリカの人に多く、欧米人の約9割がこのタイプだそうです。乾性耳垢の人と比べて耳垢腺の数が多く、また、皮脂腺や耳垢腺から出る皮脂などの分泌物も多いと考えられています。

 

耳垢の正しい掃除方法

真っ白な綿棒

耳掃除は、耳に負担をかけないよう正しい頻度と方法で行う必要があります。耳掃除のやりすぎは、外耳道を傷つけるなど耳の中にダメージを与えてしまう可能性もあるため、以下を参考に正しい方法で耳掃除を行いましょう。

 

耳掃除の基本の考え方

一般的に耳垢が溜まるのは、外耳道の入口から1〜1.5cm程度のところまでです。耳掃除をするときは、以下を参考にし、この部分の耳垢をやさしく撫でるように取り除いてください。市販の綿棒や耳かきなどを使って、できるだけ耳に負担をかけず、傷つけることのないように行いましょう。

 

月2回程度の頻度で行う

耳掃除の頻度が高いと、以下で述べるように耳の健康を損なう可能性が高まるため、「月2〜3回程度がよい」と永倉先生は言います。

「耳掃除をしすぎると、耳を守る耳垢の量を減らしてしまうだけでなく、外耳道を傷つけてしまう原因にもなります。すると、そこにかゆみが生じ、耳をかくために耳掃除の頻度が高くなり、悪循環に陥ってしまう恐れもあります。耳掃除の頻度は、月に2〜3回程度で十分です。なお、耳垢の量には個人差があるので、特に汚れやすいと感じる人は、多少回数を増やしても問題ないでしょう」(永倉先生)

 

かゆみや溜まりを感じたタイミングにも行う

耳垢は、外耳道の入口付近に生える毛の働きにより、ある程度は耳の外に排出されるようになっています。しかし、長期間放置していると、耳垢が溜まりすぎてしまうことがあります。

かゆみや、耳垢が溜まっているような感覚があったときは耳掃除をしてください。サッと綿棒でふき取る程度の耳掃除でよいと思います」(永倉先生)

 

力加減

耳掃除をする時は、力を入れすぎたり、綿棒や耳かきを耳の奥まで入れたりしてしまうのはよくありません。耳を傷つけるだけでなく、本来は耳の入口付近にと溜まっている耳垢を奥まで押し込んでしまう可能性があります。

綿棒の腹部分で拭うような感じで、やさしく行ってください。力を入れすぎると耳から血が出たり、奥まで入れすぎると鼓膜を傷つけてしまったりすることもあるので気をつけましょう」(永倉先生)

 

耳垢のタイプ別掃除方法

上記の基本的な耳掃除のポイントに加えて、耳垢のタイプ別にも耳掃除のコツがあります。

乾性耳垢は、先がヘラ状になった市販の耳かきなどでそっとかき出すようにするのもよいでしょう。綿棒の場合、お風呂上りで湿っている時などは耳垢が取りやすくなります。一方、湿性耳垢は、ベトベトしているために耳の穴にくっついて残ってしまうことがあるので、注意しながら、綿棒で拭き取る感覚で掃除するとよいでしょう」(永倉先生)

 

耳鼻科での耳掃除

耳掃除は、耳鼻科で行うことも可能です。「小さな子どもや高齢者は、2〜3カ月に1回、耳鼻科で耳掃除をすることを推奨します」と永倉先生は言います。

「ご自宅で耳掃除をすると、お子さんが痛がったり嫌がったりしてしまい、正しく耳掃除ができていないケースが見られます。そのため、最近では耳鼻科に来る方がとても増えています。一方、高齢者は、耳垢が溜まりやすくなる傾向があるため、耳掃除の頻度が増えがちで、ケガをしてしまう可能性も大きくなります。ご家庭や自分で無理をせず、耳鼻科で耳掃除をしてもらってください」(永倉先生)

 

耳垢が関係する病気

耳に違和感を覚える女性

耳垢が溜まりすぎてしまったり、間違った方法の耳掃除で耳垢を奥に押し込んでしまったりしてしまうと、耳の病気を誘発してしまうことがあります。以下で代表的な病気を解説します。

 

耳垢栓塞(じこうせんそく)

「耳垢栓塞」は、耳の奥まで耳垢が詰まってしまう病気です。自覚症状がないことが多い病気ですが、まれに耳の中に違和感があったり、耳が聞こえにくくなったりする症状が出ることがあります。

「耳垢がカチカチに固まってしまい、自分で耳垢を取り除くことが困難なため、耳鼻科での処置が必要になります。『耳垢鉗子(じこうかんし)』というピンセットのような専用器具を使って、奥に詰まった耳垢を剥がして除去したり、点耳薬を使って耳垢をやわらかくしたりして取り除きます」(永倉先生)

 

外耳道湿疹

「外耳道湿疹」は、外耳道にかゆみや痛みが起こる皮膚炎の一種です。外耳道の入口には皮脂腺や耳垢腺などが多いため、分泌物や耳垢がつきやすくなります。それによって皮膚が炎症を起こしてガサガサになったり、かゆくなったりといった症状が生じ、皮膚のバリア機能が低下してしまうのです。その結果、黄色ブドウ球菌などの細菌に感染して炎症を引き起こし、外耳道湿疹に発展してしまいます。また、耳かきのしすぎや触りすぎなどの外傷性によるものや、金属アレルギー、アトピーなどの要因によって起こることも多いと考えられています。

「湿疹によって激しいかゆみが生じたり、ふやけてしまったりするため、耳掃除などで傷つきやすくなります。耳鼻科で炎症や感染を抑える薬を処方してもらい、薬を塗るとき以外は耳を触らないようにしてください。治療によって症状は徐々に軽減していきます」(永倉先生)

普段、特に意識をせずに取り除いている耳垢は、耳の健康のためには不可欠な存在で、“正しい”付き合い方をしていく必要があります。今日から適切な方法で耳掃除を行うように心がけてみましょう。

 

耳掃除の道具について

耳かきつきの綿棒

耳掃除の道具は、綿棒もしくは耳かきなどの専門道具を状況に応じて使ってください。

 

綿棒

綿棒は、耳掃除の基本的な道具です。外耳道に耳垢がくっついて取りにくい場合は、軽く湿らせるのもよいでしょう。耳垢をかき出すのには適していないため、耳垢を奥まで押し込んでしまわないように注意しましょう。

 

耳かき

「昔ながらのヘラ型のものは、日本人に多い乾性耳垢を取るには適している」と永倉先生は言います。また、耳垢を吸着する粘着型や剥がし取るコイル型のものなど、耳垢がよく取れるような形のものや、力を加えやすいものは、外耳道の皮膚を傷つけてしまいがちなので、注意して使用してください。

 

子どもの耳掃除について

赤ちゃんの耳掃除

小さな子どもの耳は、大人以上にデリケートなため、耳掃除の際には注意が必要です。耳の穴が小さいため痛みを感じやすかったり、耳掃除に恐怖感を抱いたりします。お子さんの耳掃除をするときは、以下のポイントを意識してみましょう。

 

子どもが動かないように身体を押さえる

耳掃除をしている最中に子どもが身体を動かすと、ケガや痛みの原因になるため、耳掃除をしているときは動かないように言い聞かせるか、誰かに子どもの身体を押さえてもらうようにしましょう。身体、特に頭をしっかりと固定することが大切です。

 

耳たぶを軽く引っ張る

子どもの頭が動かないように押さえたら、耳の穴が奥までまっすぐ見えるように、耳たぶを軽く引っ張ってから綿棒や耳かきをそっと入れましょう。それでも耳の中が見えにくい場合は、ライトつきの耳かきを使ったり、明かりが耳に当たりやすい場所に移動したりしてください。

 

綿棒や耳かきを耳の奥まで入れない

大人の場合と同様、耳垢を耳の奥まで押し込んでしまわないように注意してください。子どもは大人よりも外耳道が短いため、綿棒や耳かきを1cm以上深く入れないようにしましょう。

 

拭うようなイメージでやさしく行う

耳垢を取るときは、外耳道の入口側にある汚れだけを、12回、かき出すようにして掃除します。綿棒や耳かきをくるっと回転させて汚れを拭うイメージで行うとスムーズに掃除できるでしょう。

 

<参照>
「ジェネラリストのための耳鼻咽喉科疾患の診かた」藤原崇志(中外医学社)
東北大学 東北メディカル・メガバンク機構
「家庭の医学」(主婦の友社)
徳島県医師会
公益財団法人 日本学校保健会 学校保健HP

永倉 仁史

監修

医師

永倉 仁史

ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック 院長


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