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寝ているときに、心臓がバクバクする…|考えられる原因と対処法

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寝つけない睡眠の質睡眠時無呼吸症候群(SAS)

夜寝てるとき心臓がバクバクする、という感覚が気になりだすと、眠れなくなったり、何か大きな病気ではないかと不安になったりすることがあります。このような、心臓の動きが早くなる、ドクンと大きな脈拍があるなど、自分で感じられる心臓のバクバクやドキドキを「動悸」といいます。

就寝時に起こる動悸にはさまざまな原因が考えられますが、中には生活習慣を改善することで抑えられるものもあります。今回は、睡眠を妨げる動悸について、その原因や考えられる病気、対処法などについて、心臓血管研究所所長で同附属病院院長の山下武志先生にお伺いしました。

就寝時に心臓がバクバクする原因

眠れない女性

動悸を感じると、まず心臓の病気を疑ってしまいますが、必ずしもそうとはいえません。ここではまず、就寝時の動悸について、考えられる代表的な原因を解説します。

 

不安によるもの

眠りにつくまで考え事をしてしまう人に多い動悸です。不安に襲われることで、心臓がバクバクし、なかなか眠れなくなります。

解決することのない不安によって動悸が起こる人が、実は一番多いのです。動悸は階段を上っても起きますが、『激しく動いたから心臓がバクバクした』と理解できますから不安になることはありません。対して、『がんになったらどうしよう』というような健康面の心配などは、その場では解決しませんから、どうしても不安が募ってしまいます。日中は考え事をする暇がなくても、寝る前はふと考えてしまうことで動悸が起こる人が多いようです。これは、医学的に問題はないタイプの動悸です」(山下先生)

 

自律神経の乱れによるもの

睡眠不足などのストレスによって自律神経が乱れた人も、就寝時に動悸が起こりやすくなります。

「『睡眠時無呼吸症候群』などによって、睡眠不足になることで自律神経が乱れ、動悸が起こる人もいます。自律神経の乱れから、普段の脈拍が1分間に60回だったのが70回になるなど、正常値の範囲内でわずかに上昇し、それを動悸として感じるようです」(山下先生)

 

心臓の不調などによるもの

心臓の不調などから起こる動悸には、大きく分けて3つの原因が考えられます。また、動悸によって眠れない、眠っていても目が覚めるなど、就寝時への影響も異なります。その3つの原因について解説します。

 

期外収縮(きがいしゅうしゅく)

期外収縮は疾患ではなく、ごく普通に表れるもので「予想される時期のほかに出現した収縮」を意味します。心臓は、血液を全身に送り出すために規則的な収縮を行っていますが、それが不規則になることを指しています。

「手首や首で脈をとると、トン・トン・トン・トン…という規則的なリズムが感じられますが、時々、その間隔が早くなったり遅くなったりします。脈が不規則になるので心配になるかもしれませんが、実は多くの人に起こることです。心臓は機械ではありませんから、不規則になることは自然なことなのです。期外収縮は1日中出ていますが、多くの人は日中、活動中にはほぼ感じることはありません。夜、就寝前の落ち着いたときに動悸として感じやすくなるようです。心配することはありません」(山下先生)

 

心房細動

心臓の血液を貯める場所である心房が、細かく動き続けてしまう状態を「心房細動」といいます。心臓のポンプとしての働きは損なわれませんが、収縮のリズムはとても不規則になり、人によって速いこともあれば遅いこともあります。

「発作的に生じる『発作性心房細動』と、慢性的に続く『慢性心房細動』に分けられ、慢性心房細動がある人は、現在日本に、約100万人いるとされています。つまり、およそ100人に1人は慢性心房細動があると言えるのです。心房細動は夜に起こりやすいため、眠る前に動悸を感じることが多いようです。夜中に動悸を感じて目が覚めることもあります。動悸のほか、息切れ、頻尿になることが特徴です。心房細動は脳梗塞や心不全につながる可能性がありますから、注意が必要でしょう」(山下先生)

 

安静時狭心症

心臓をとりまく動脈である冠動脈(かんどうみゃく)が狭くなり、心臓に送り込まれる血液が不足することで酸素不足になり、胸に痛みが現れる疾患を「狭心症」といいます。睡眠中、特に明け方に起こりやすい狭心症が「安静時狭心症」で、冠動脈が痙攣(けいれん)を起こして収縮し、血流が一時的に止まることで起こります。胸の痛みが現れ目覚めてしまうことが多いようです。

胸の痛みが大きな特徴ですが、それを動悸だと認識する人もいます。明け方、4~5時頃に胸の痛みによって目が覚め、10分から20分痛みが続いた後に収まり、また眠れるようになります。胸だけでなく、胃のあたりや首、肩、歯が痛くなることもあります。これは、れっきとした心臓の病気です。思い当たる場合は病院を受診しましょう」(山下先生)

 

起床時に起こる動悸の原因

胸に痛みを感じる女性

朝、目覚めてから起こる動悸もあります。以下で、その原因について解説します。

 

血圧の上昇

血圧は一定ではなく、1日の中で変動しています。通常、眠っているときは低く、朝起きて行動を始めると心臓から送り出される血液量が増えるため、上昇します。

「朝の血圧上昇は自然なことですが、上の血圧が正常値を超えて、例えば200mmHgくらいになると、動悸を感じることがあります。血圧が上がるほど心臓は大きく膨らむので、心臓の前にある骨が押されることで、心臓の鼓動を感じるようです」(山下先生)

 

労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)

眠っているときなど、安静にしているときに起こる安静時狭心症に対して、動いているときに起こるのが「労作性狭心症」です。階段を上ったり重いものを持ち上げたり、力仕事をすると胸などに痛みが現われるものですが、起床時にも起こることがあります。

「目が覚めて行動を始めると多くの血液が必要になり、全身に血液を送るため心臓の収縮回数が増えます。しかし、心臓の冠動脈が狭くなっているため、十分な血液を送ることができず、動悸や胸の痛みとして現れます。目覚めて胸が痛むときは、しばらく安静にすると治まります」(山下先生)

 

動悸につながる症状・疾患

めまいを起こしている女性

心臓そのものが原因ではなく、心臓に負担をかける症状・疾患がある場合も、動悸を感じやすくなります。

 

貧血

「貧血」は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンが減少した状態を指します。ヘモグロビンには体内に酸素を供給する働きがあり、減少することで体が酸素不足になります。

「ヘモグロビンが少ない血液では十分な酸素を供給できないため、できるだけ多くの酸素を送ろうとして、ポンプの役割を担っている心臓が収縮回数を増やします。そのため、貧血がある場合は脈拍が早く、心臓の鼓動も激しくなり、動悸が起こります。活動している日中は感じにくいものの、就寝前の落ち着いた時間に感じやすくなります」(山下先生)

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD

「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」は、タバコの煙や汚染された空気など、有害物質を長期間吸入することで起こる、炎症性の肺疾患です。肺の内部が破壊されたり、気管支が狭くなったりすることで、息切れや、息を吐き出しにくいという症状が現われます。

「肺は、酸素と二酸化炭素を交換する場所となっています。その機能が低下すると血液中の酸素が不足するため、少しでも多くの酸素を送ろうとして心臓の収縮回数が増えるのです。慢性閉塞肺疾患は肺の疾患ですが、心臓にも負担をかけますから、動悸を感じることになります」(山下先生)

 

動悸の予防・改善方法

心臓を守るイメージ

狭心症など治療が必要な病気を除き、就寝時の動悸を予防・改善する方法があります。以下で、心臓を守ることで動悸の予防・改善につながる方法を解説します。

 

減塩をする

血圧が高くなると、心臓に負担がかかるため、減塩は心臓を守るための基本といえます。人の身体には、血液中のナトリウム濃度を調整する働きが備わっているので、塩分を多く摂ってナトリウム濃度が高くなると、薄めるために水分を取り込もうとします。塩分が多い食事を摂ると喉がかわいて水を摂るようになるのはこのためですが、水分を摂ることで血管を流れる血液量も増えるため、血圧が上がってしまうのです。塩分の摂取量は、高血圧の人は16g未満、一般の人は男性で8g未満、女性で7g未満が推奨されています。それを超えないように減塩を心がけましょう。

 

肥満を解消する

一般的に、肥満の人は正常体重の人に比べて、高血圧になる可能性が23倍高いといわれます。肥満の人は食事量が多い傾向にあり、それに伴って塩分も多く摂っているからだと考えられるためです。また、肥満の人がなりやすい睡眠時無呼吸症候群も、心臓に負担をかける原因です。摂取カロリーを減らすなどして、肥満を解消するようにしましょう。

 

運動する

運動は、肥満解消にも役立つ上、心臓を強くすることにもつながります。

普段運動をしていない人は、ちょっと動いただけでも心拍数が上がり、心臓に負担をかけることになります。生活に運動をとり入れて心臓が強くなると、心拍数が上下しにくくなります。運動は自律神経を整えることにもつながりますから、夜はぐっすりと眠れるようにもなるでしょう」(山下先生)

 

医師の診察を受ける

動悸を不安に感じたら、病院へ行くことも大切です。様子を見て、症状が改善しないようなら医師に診てもらうようにしましょう。

動悸が1度でなく、2度3度と気になったことがあるようなら、医師に診てもらうといいでしょう。そのままにしていると不安を抱えたままになり、ますます眠れなくなって悪循環に陥ります。心房細動のあった人が、受診をきっかけに症状がなくなったということもよくあることです。不安が解消し、生活習慣が改善したことが理由だと考えられます。動悸のほとんどは怖い病気ではありません。正常であることのほうが圧倒的に多いのです」(山下先生)

心臓は生命維持に重要な臓器ですから、異変を感じると不安になるものです。しかし、その不安によって動悸がさらに大きくなるということもあります。睡眠は心臓を休めるためにもとても大切な行動です。就寝時に心臓がバクバクするのは、「きちんと眠って」という心臓からのサインかもしれません。リラックスした気持ちで眠りにつけるように、食の改善や運動など、できることからはじめてみましょう。

 

女性特有の狭心症「微小血管狭心症」

不安を抱える女性

「微小血管狭心症」は、4050代の女性に多い狭心症です。就寝時、特に明け方起こることが多く、胸の痛みのほか、背中、あごや喉などにも痛みが広がるのが特徴です。症状は安静時狭心症と似ていますが、冠動脈に問題はありません。非常に細かい末梢の血管に一時的な収縮が見られる程度です。

 

微小血管狭心症の原因

心臓の検査をしても、問題が見つからないことが多く、はっきりとした原因はわかっていませんが、女性ホルモンが関係していることはほぼ確実だとされています。

女性ホルモンのエストロゲンには、身体を守る働きがあります。血管の詰まりを防ぎ、血液の循環をスムーズにし、動脈硬化が起こらないようにしていることもそのひとつです。ですから、エストロゲンが分泌されている女性が、血液を送るポンプである心臓の病気にかかる確率はとても低いと言えます。ただ、40~50代になるとエストロゲンの分泌が減少していくため、次第に血管が狭くなっていき、狭い道管に血液を通すために血圧が高くなります。その変化を身体の不調として感じるようです」(山下先生)

 

微小血管狭心症の改善方法

心臓に問題がないため、効果的な薬もありません。とはいえ、エストロゲンの減少によって起こっていることだと理解しておくことは、不安を解消するひとつの手段だといえます。

「微小血管狭心症だと思われる人には、『好きなことをして、楽しい時間を過ごして』とアドバイスしています。年を重ねてエストロゲンが減少するのは、自然に起こることです。更年期は急速に身体が変化するため、さまざまな不調が現れますが、60歳を迎えるころにはその変化にも慣れるようで、それらの不調も次第に収まります」(山下先生)

<参照>
一般社団法人 日本生活習慣病予防協会HP
公益財団法人 日本心臓財団HP
一般社団法人 日本肥満症予防協会HP

山下 武志

監修

医師

山下 武志

公益財団法人 心臓血管研究所 所長・付属病院 院長


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