膝を痛めた女性高齢者

膝が痛いときはどうすればいい? 原因・症状・対処法

カラダの悩み

膝が痛むと、運動はもちろん外出すらも面倒になってきてしまいます。生活に支障をきたす膝の痛みを和らげ、根本的な改善にもつなげるために、自分でできることは何でしょうか。今回は、膝の痛みを引き起こす原因や、膝の痛みを改善・予防する体操などのセルフケア方法について、お茶の水整形外科・機能リハビリテーションクリニックの銅冶英雄(どうやひでお)院長にお話を伺いました。

膝が痛いときに考えられる原因

病院で膝の診察を受けている女性

膝の痛みは主に、膝の骨の連結部となる「膝関節」や腰の部分の「腰椎(ようつい)」の不調が原因です。以下に部位別に膝が痛くなる原因をまとめました。

 

「膝関節の不調が原因」で起こる膝の痛み

膝関節とは、「太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)」「膝のお皿ともいわれる膝蓋骨(しつがいこつ)」「すねの内側の骨である脛骨(けいこつ)」「すねの外側の骨である腓骨(ひこつ)」の4つの骨が組み合わさった関節のことで、この骨と骨の間には、80%の水分と20%のタンパク質で構成される軟骨があります。膝の痛みは、この軟骨に何らかの不調が生じているときや、膝蓋骨の動きが悪くなっているときなどに現れます。

 

軟骨がすり減り、膝関節が変形する

膝関節を構成する4つの骨の間にある軟骨には弾力性があり、骨同士の摩擦を和らげるクッション的な働きを担っています。これにより、膝を滑らかに曲げたり伸ばしたりできるのです。

「老化や肥満などにより膝の軟骨がすり減ると、炎症が出て痛みが起こります。また、症状が進むと膝関節が変形し、炎症や痛みが悪化します。この状態を『変形性膝関節症』と呼び、膝の痛みを訴える人によく見られる疾患です」(銅冶先生)

 

脚の骨の変形や怪我などで軟骨がすり減る

軟骨のすり減りは、O脚やX 脚と呼ばれる脚の骨の変形や、膝の怪我が要因になることがありますが、明らかな要因のないこともあります。

O脚の人は膝の内側部分、X脚の人は膝の外側部分に体重がかかりやすい傾向があります。片方に負荷がかかると軟骨がすり減りやすいため、膝の痛みが表れることがあります」(銅冶先生)

 

膝蓋骨の動きが悪くなることで摩擦が起きる

膝蓋骨は、膝関節の前方に位置する「膝のお皿」とも呼ばれる骨のことです。何らかの原因によって膝蓋骨につながる筋肉やじん帯が損傷すると、膝蓋骨の動きが悪くなってしまうことがあります。膝のお皿周囲に痛みが生じ、動かすとこりこりと音を立てているときは、膝蓋骨の動きが悪くなっている可能性があるので注意してください。

「膝蓋骨の動きの悪さが長期間続くと、膝蓋骨の下にある大腿骨との間で摩擦が起きるようになります。その結果、『膝蓋大腿関節症』という膝の痛みを伴う疾患につながるため、早めにケアする必要があるでしょう」(銅冶先生)

 

「腰椎の不調が原因」で起こる膝の痛み

腰椎とは、腰部分にある5つの椎骨(ついこつ)から構成される骨で、背骨の一部です。この腰椎の不調が原因となって、膝の痛みが起こる場合があります。以下で腰椎の不調による膝の痛みが生じるメカニズムを解説します。

 

腰椎椎間板ヘルニアなどによる神経の圧迫

腰椎には脊髄が通っており、そこから神経根が左右に枝分かれしています。『腰椎椎間板ヘルニア』に代表される腰の病気などで脊髄や神経根が圧迫されると足に痛みやしびれが生じますが、それが膝の痛みとして感じられることがあります。

「神経が圧迫されなくても、椎間板(椎骨同士のあいだにある円盤状の軟骨)にずれが生じることで、問題が生じた部分とは異なる部分に痛みを感じる『関連痛』が発症し、膝が痛む場合もあります」(銅冶先生)

なお、転倒や捻挫が原因で膝が痛む人は、膝の骨や軟骨が損傷していたり、じん帯が痛んでいたりする恐れもあります。その場合、以下で紹介するような体操で無理に膝を動かすと症状を悪化させる恐れもあるため、まず、病院で専門医に相談してみてください。

 

【部位別】「膝が痛い」を改善、予防する体操

屋外で体操を行う女性

膝の痛みは、痛む部位別に適切な体操を行うことで改善することができます。痛む部位に合った体操を実践し、習慣づけるようにしましょう。

「体操には、膝の痛みを緩和するだけでなく、膝の不調に伴う可動域(膝の関節を動かすことのできる範囲)の制限をとる効果などがあります。日常の動作がスムーズになるとともに、膝の痛みを予防する効果も期待できます」(銅冶先生)

以下で部位別に有効な体操を紹介します。

 

膝関節が不調のときに行う体操

膝関節の不調が原因で膝が痛む場合、「膝を伸ばして痛みを和らげる体操」と「膝を曲げて痛みを和らげる体操」の2種類の方法があります。

 

膝伸ばし体操

デスクワークで長時間椅子に座りっぱなしの人や、和室で畳に座ることが多い人など、日常生活の中で膝を曲げている時間が長い人におすすめの体操です。普段の生活習慣とは逆の動きを取り入れることで、膝の痛みを改善する、痛みを予防する効果が期待できます。

手順>

  1. 椅子に浅く腰をかけ、痛むほうの脚を軽く前に伸ばす
  2. 膝のお皿部分のすぐ上に両手の平を当て、垂直方向にゆっくり押す。膝を伸ばしきったら、その状態を12秒間キープする
  3. ②を10回繰り返す。

<1日の目安>

10回1セット×56

 

膝曲げ体操

立ち仕事などで脚を伸ばしている時間の多い人にオススメの体操です。膝伸ばし体操と同様に膝の痛みを改善、予防する効果が期待できます。

<手順>

  1. 足を置いたとき、膝が90度に曲がる高さの踏み台や椅子を用意する。痛むほうの脚を上にのせて、両手は膝の上に添える
  2. 膝を前方に突き出すように身体の重心を前方に傾けて、ゆっくり膝を曲げる。膝を曲げきったら、その状態を12秒間キープする
  3. ①の体勢に戻り、②を10回繰り返す

<1日の目安>

10回1セット×56

 

膝蓋骨が不調のときに行う体操

膝蓋骨の不調が痛みの原因であるときは、体操の前に膝蓋骨を指で押し、痛みを感じる正確な場所を探すことからスタートします。膝蓋骨の内側下部が痛む人は「膝蓋骨内下押し体操」、膝蓋骨の外側下部が痛む人は「膝蓋骨外下押し体操」で膝の痛みを改善していきましょう。

 

膝蓋骨内下押し体操

膝蓋骨の痛みを訴える人の多くは、「膝蓋骨の内側下部が痛む」タイプです。膝蓋骨の内側下部を重点的に押しながら動かす以下の体操を行うことで、ずれの改善することができます。

<手順>

  1. 椅子に座って痛むほうの膝を軽く伸ばし、かかとは床につける
  2. 両手の親指を立てるようにして、膝関節の中心に向かって、膝蓋骨の内側下部にある圧痛点を押す
  3. 圧痛点を押しながら、足のつま先が軽く上下に動くように足首を動かす。この運動を10回繰り返す

<1日の目安>

朝晩各2セット

 

膝蓋骨外下押し体操

膝蓋骨の痛みを訴える人の中で2番目に多いのが、「膝蓋骨の外側下部が痛む」タイプです。こちらも、「膝蓋骨内下押し体操」同様に、お皿のずれの改善が期待できます。

<手順>

  1. 椅子に座って痛むほうの膝は軽く伸ばし、かかとは床につける
  2. 両手の親指を立てるようにして、膝関節の中心に向かって、膝蓋骨の外側下部にある圧痛点を押す
  3. 圧痛点を押しながら、足のつま先が軽く上下に動くように足首を動かす。この運動を10回繰り返す

<1日の目安>

朝晩各2セット

 

腰椎が不調のときに行う体操

腰椎の不調が原因の場合に行う体操には、前屈、後屈、側方という3つのタイプがあります。まずはテスト運動を行い、膝の痛みが和らぐと感じる動作を知り、最適な体操を見つけましょう。テスト運動の手順は次の通りです。

<テストの手順>

  1. 腰を反らす
  2. 腰を前方に曲げる
  3. 腰を左右に動かす

①〜③の順番でそれぞれ10回ずつテスト運動を行い、どの動作で膝の痛みが軽くなるか確かめます。①で痛みが和らいだ人は「腰椎後屈タイプ」、②なら「腰椎前屈タイプ」、③なら「腰椎側方タイプ」の体操を行いましょう。

 

壁反らし体操(腰椎後屈タイプ)

「腰椎が原因の場合、約8割の人が壁反らし体操で膝の痛みが改善される傾向にある」と銅冶先生は言います。壁に向かって両手をつき、両腕を水平状態にキープしたままで腰を緩めて腰椎を反らすことで、膝の痛みの緩和が期待できます。

<手順>

  1. 壁と向かい合わせの状態で半歩〜1歩ほど離れ、両足を肩幅に開いて立つ。顎は引いて、顔はまっすぐ前方に向け、両手を壁につける。
  2. 肘と膝を伸ばした状態で、腰椎をゆっくりと反らしていく。腰椎を反らしきったら、その状態を12秒間ほどキープする。
  3. ①の姿勢に戻る。

<1日の目安>

10回1セット×56

 

壁おじぎ体操(腰椎前屈タイプ)

壁反らし体操と同様、膝の痛みの緩和が期待できる体操です。壁さえあれば、自宅でも外出先でもできる体操なので、時間を見つけて実践してみましょう。

<手順>

  1. 壁に背を向けて30cmほど離れた場所に立ち、両足を肩幅に開いて壁に寄りかかる。足は壁から半歩ほど離れるようにする。
  2. お尻を壁に押し付けた状態で、息を吐きながらゆっくりとおじぎをする。
  3. できるところまでおじぎをしたら、その状態を12秒間キープする。
  4. ゆっくりと上体を起こし、①の姿勢に戻る。

<1日の目安>

10回 1セット×56

 

お尻ずらし体操(腰椎側方タイプ)

文字通りお尻を左右にずらす体操です。膝の痛みによって、左右どちらか片方だけにずらした方がよいケースと、両方にずらした方がよいケースがあります。お尻を右にずらしたときのみ膝の痛みが緩和した人は右方向だけ、左にずらしたときのみ膝の痛みが緩和した人は左方向だけの体操を行いましょう。反対方向にお尻をずらすと、痛みが悪化することもあるので注意してください。

<手順:左方向へずらす体操の場合]>

  1. 壁が自分の左側にくるように、身体を横に向けた状態で少し離れて立ち、左肘を肩の高さに上げて、肘から先を壁につける。
  2. 右手は腰に当てて、手で腰骨を押すようにお尻を壁側(左)にずらし、その状態を23秒間ほどキープする。
  3. ゆっくりと①の姿勢に戻す。
  4. 両方を行う場合は反対側も同様に行い、お尻を右方向にずらして改善する人は右方向のみ、左方向にずらして改善する人は左方向のみを繰り返し行う。

※右方向へずらす体操の場合は、左右逆で行ってください。

<1日の目安>

10回1セット×56

 

膝が痛いときの適切なケア方法

医師にインソールを当ててもらう女性

膝の痛みを緩和させる方法には、体操のほかにも、湿布や鎮痛薬、サポーターやインソールの使用、関節において、潤滑油の役割を果たす関節液の成分であるヒアルロン酸を注射する方法など、専門医の指導の元で行う処置があります。

 

サポーター

O脚やX脚といった脚の変形による膝の痛みを緩和させるには、サポーターが効果的だといいます。

「サポーターは、膝を正常な形にしっかり固定して、脚の変形を矯正するものです。布製のサポーターよりも、金属製支柱つきの膝装具のほうが膝の矯正力が高いので、膝の痛みが強い人にはおすすめします」(銅冶先生)

 

インソール

靴の中に入れる足の裏を支える敷物であるインソールにも、O脚やX脚を正す効果があるそう。

O脚の場合は、インソールの外側を高くすることで、膝の内側ばかりに重心が傾くのを防ぐことができます。一方、X脚の場合は、インソールの内側を高くすることで、膝の外側に重心がかかるのを改善します」(銅冶先生)

 

鎮痛効果のある湿布・薬・注射

非ステロイド性消炎鎮痛作用のある塗り薬や湿布、痛みを和らげるアセトアミノフェンを含む飲み薬などの鎮痛薬を使用したり、関節液の成分であるヒアルロン酸を注射したりすることで、膝の痛みを抑える方法があります。

「病院で処方される湿布やヒアルロン酸注射などは、膝の痛みを一定期間抑える効果があります。継続的な処置が必要な場合もありますので、必ず医師の診断に従って行ってください」(銅冶先生)

 

「膝が痛い」を予防する食生活

冷蔵庫にある卵を手に取る女性

「肥満による体重増加は、膝への負荷に影響し、痛みを生じさせてしまうことがあります。そのため、食べ過ぎなど、食生活の乱れにも注意が必要です」と銅冶先生は言います。肥満を予防するためには、どのような食生活を心がければよいのでしょうか。

 

「もどきご飯」で肥満対策

肥満は、膝への負荷が大きくなり、膝の痛みを引き起こしやすくなります。そのため、肥満対策として、特に体重増加の原因につながりやすい米やパンなどに多く含まれる糖質を制限する方法をおすすめします。

「これまで主食の定番としていたお米を控えることは難しいと感じる人も多いでしょう。そんな人にオススメなのが、糖質の少ない卵や野菜をお米に見立てた『もどきご飯』です。これらをパラパラとそぼろ状に炒めると、ご飯に似た食感になるので、お米の代わりに取り入れてみるとストレスなく、糖質制限を行えるはずです」(銅冶先生)

 

タンパク質をしっかりとる

膝の痛みを予防するために、積極的に摂取するとよい栄養素が「タンパク質」です。

「肉や魚、大豆食品などのタンパク質には、傷んだ骨や軟骨を修復する働きがあります。膝関節やその間の軟骨を健康に保つために、タンパク質が含まれた食材をバランスよく取り入れた食事を心がけましょう」(銅冶先生)

体重が増加して膝への負担が気になっている人は、お米やパンなどの糖質を控え、タンパク質を主体とした食事メニューに切り替えてみましょう。具体的な糖質摂取量や食事におけるタンパク質のバランスなどは、以下の記事も参考にしてみてください。

膝の痛みは正しく対処しないと悪化する恐れがあります。セルフケアに不安がある場合は、医師の判断を仰ぎながら最適なケア方法を見つけるようにしましょう。

 

<参照>
3万人のひざ痛を治した!痛みナビ体操」銅冶英雄(アチーブメント出版)
大阪大学医学部付属病院 麻酔科ペインクリニック
補装具費支給事務ガイドブック」厚生労働省

銅冶 英雄

監修

医師・医学博士

銅冶 英雄

お茶の水整形外科・機能リハビリテーションクリニック 院長


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