座席に座っている人

ふくらはぎのむくみに注意|エコノミークラス症候群の症状と予防法

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エコノミークラス症候群は医学的に「静脈血栓塞栓症」と呼ばれ、長時間同じ体勢でいると血流が悪くなって静脈の中に血の塊ができ、それが肺に飛んで血管を詰まらせることで起こります。

ここでは、脚のむくみなどの初期症状から大事に至る症状、予防法などについて説明します。

エコノミークラス症候群とは

飛行機の機内

2002年にサッカーの日韓ワールドカップを目指していた高原直泰選手が、「エコノミークラス症候群」にかかって日本代表となれなかったことがあります。これを機会に、エコノミークラス症候群という病気が、一般の人にも知られるようになりました。

 

エコノミークラス症候群は、脚の静脈の中に血液の塊ができる「深部静脈血栓症」と、その血の塊が肺に飛んで肺動脈を詰まらせる「肺血栓塞栓症」を合わせて使われています。医学的には「静脈血栓塞栓症」と呼ばれています。

また、長距離バスの乗客でも起こったことがあるため「旅行者血栓症」とか、エコノミークラス以外の飛行機の座席でも起こることから「ロングフライト症候群」と呼ぶこともあります。実際に高原選手は、飛行機のビジネスクラスに乗っていて発症しました。

 

旅行しなくても、エコノミークラス症候群には注意が必要です。東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)などの災害のときに、車中泊や避難所で生活している人にエコノミークラス症候群が起こり、亡くなった方もおられました。

ゴールデンウィークや夏休み、シルバーウィーク、年末年始などには、海外旅行へ行く人が増えます。誰でもエコノミークラス症候群になる可能性がありますから、長時間の移動の際には十分に注意してください。

 

エコノミークラス症候群はなぜ起こる?その原因は?

ふくらはぎのむくみ

 

脚の静脈の中に血液の塊(血栓)ができやすいのは、次の4つの場合が考えられます。

1.血液の流れがとどこおっているとき

 脚は「第2の心臓」とも呼ばれています。歩くときには、脚の筋肉が伸びたり縮んだりします。この時、筋肉の中にある血管は、筋肉に押しつぶされたり広げられたりして、血液の流れを促します。

長い時間、同じ姿勢をしていると、筋肉のポンプ作用が働かなくなり、血行がとどこおって血の塊ができます

飛行機やバスなどで座ったまま長い時間を過ごすと、血の塊ができやすくなります。また、病気でベッドに寝ていないといけないときや、骨折などでギプスを巻いている間も、血栓を作りやすくなります。

脳卒中の後遺症で手足にまひがあると、エコノミークラス症候群のリスクが高まります。さらに女性の場合は、子宮筋腫や卵巣腫瘍、妊娠などでおなかの大きな静脈が圧迫されて、血栓を作ることがあります

 

2.血液の濃度が高いこと

 血液の中の水分が少ない状態、いわゆる「ドロドロの血液」は、サラサラの血液よりも血栓を作りやすくなります

隣の座席の人に遠慮して、トイレへ行かないようにするため水分を控えると、脱水になって血液濃度が上がります。また、カフェインやアルコールは、尿の量を増やして血管の中から水分を奪います。

さらに、飛行機のなかはとても乾燥しているので、知らないうちに体から水分を奪われています

 

3.血管が傷ついているとき

 血液は正常な血管の中を流れているときは、ほとんど固まりません。ところが、血管の内側の膜が傷ついていると、そこに血の塊ができてしまいます

骨折などのケガで血管が傷ついたときや、栄養補給や検査などのために血管の中に「カテーテル」という管など入っているときなどは、血栓を作る可能性があります。

 

4.血液が固まりやすい体質を持っているとき

出血したときに血が止まらなければ死んでしまいます。そのため私たちの身体には、血液が血管の外に出たときに血液を固める働きが備わっています。ところが、この働きに障害があると、血管の中でも血の塊ができてしまいます。

たとえば、アンチトロンビンやプロテインC、プロテインSなどの血液を固まりにくくする物質が生まれつき少ない人は、エコノミークラス症候群のリスクが高まります。

また、ガンや抗リン脂質抗体症候群という病気の人も、血栓を作りやすい状態にあります。さらに、これまでにエコノミークラス症候群になったことがある人も、再発しやすいことが知られています。

 

エコノミークラス症候群の症状

息苦しさを訴える女性

エコノミークラス症候群のうち深部静脈血栓症では、起こってもまったく症状が出ないことがあります。

主な症状として、ふくらはぎの痛みや違和感、むくみがあります。微熱や、皮膚表面の静脈が浮き出て見えることもあります。これらの症状は両方の脚に同時に現れることもありますが、多くに場合は片方の脚だけに症状が出ます

 

肺血栓塞栓症は、エコノミークラス症候群の中でも最重症です。肺血栓症研究会からの報告によると、呼吸困難(73%)や胸痛(53%)、不安感(31%)、冷汗(31%)、失神(27%)などが見られます

脚の血栓が肺に飛んで肺動脈を詰まらせると、心臓から肺へ行く血液の行き場が失われて胸の痛みを感じます。肺から心臓へ戻ってくる血液が減るので、全身の細胞への酸素の供給が絶たれます。

肺の中には酸素があるのですが、血液を通して脳へ運ばれる酸素が激減するため、息苦しさ(呼吸困難)を感じます。脳の酸素が限界を超えて少なくなると、脳の働きが鈍くなって不安を感じたり気を失ったりします。血圧も下がるので、冷や汗が出てきます。最悪の場合は死に至ることもあります。肺血栓塞栓症患者の10%は、発症後の数時間以内に死亡すると言われています。

 

エコノミークラス症候群の予防策6つ

ふくらはぎのマッサージ

どのような病気でもそうですが、エコノミークラス症候群もきちんと予防すれば、かかるリスクを減らせます。厚生労働省のホームページでは、次の6つの予防法を勧めています。

 

1.ときどき、軽い体操やストレッチ運動を行う

飛行機の中では座りっぱなしでなく、1時間に1回は歩きましょう。座席でもストレッチ運動などで体を動かすと、血行が良くなって血栓を防いでくれます

 

2.かかとの上げ下ろし運動をしたり、ふくらはぎを軽くもんだりする

ふくらはぎの筋肉を動かして、脚の血液の流れを良くすることも大切です。足を床につけてかかとを上げ下ろししたり、足の指を曲げ伸ばししたりしましょう。また、ふくらはぎを軽くもんだりさすったりすることも、エコノミークラス症候群の予防になります。

 

3.十分にこまめに水分を取る

血液が濃くなり過ぎないようにするため、十分な水分をとりましょう。一度にたくさんの水分をとると、尿になって早く水分が失われてしまいます。時間をかけてこまめに水分補給してください。また、ただの水よりもイオン飲料の方が、体の中の水分を失いにくいという研究もあります。

 

4.アルコールを控える。できれば禁煙する。

アルコールをとるとトイレが近くなって、血管内の水分が失われます。また、タバコは血管を収縮させて血液の流れを悪くするので、飛行機に乗る前後も禁煙しましょう。

 

5.ゆったりとした服装をし、ベルトをきつく締めない

身体を締め付ける服を着ていると、血液の流れが悪くなります。また、座席の安全ベルトも、締め過ぎには注意しましょう。同じ締め付けると言っても、静脈血栓予防用の弾性ストッキングは使ってもかまいません。

 

6.眠るときは足をあげる

血液は重力に従って、低いところにたまる性質があります。横になるときは、脚の下にクッションを入れるなどして足を少し高くすると、血液の流れが良くなります。座っているときも、足を台に乗せるなどして高くしておきましょう。

 

注意したい3つの行動

バツ印

1.アルコールの多量摂取

飛行機の中では普段よりも酔いやすいため、少しのアルコールでも眠たくなることがあります。狭い座席で長時間、同じ姿勢で座って眠っていると、エコノミークラス症候群になる危険性が増します

 

2.睡眠不足

長時間のフライトのときは、それまでの睡眠不足を解消しようとしがちです。短時間の仮眠なら良いですが、長い時間眠ると脚の血行が悪くなり血栓が生じる可能性があります

 

3.足のむくみがひどくなったり胸が痛み出してからの急なマッサージや運動

この状態ではすでに、脚や肺の血管の中に血栓ができてしまっています。そんな時にマッサージや運動を行うと症状を悪化させて、最悪の場合には死に至ることがあります。おかしいなと思ったら、早めに客室乗務員などに相談しましょう。

photo: iStock

坪田 聡

執筆

医師・医学博士

坪田 聡

医師として睡眠障害の予防・治療に携わる一方で、睡眠改善に特化したビジネス・コーチとしても活躍中。「快適で健康な生活を送ろう」というコンセプトのもと、医学と行動計画の両面から睡眠の質を向上させるための指導や普及に尽力。総合情報サイトAll about 睡眠ガイド。 「睡眠専門医が教える! 一瞬で眠りにつく方法」(TJMOOK 宝島社)、「パワーナップ仮眠法」(フォレスト出版)他、監修・著書多数。

医療法人社団 明寿会 雨晴クリニック 副院長

Site: http://suiminguide.hatenablog.com/


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