UUUM代表取締役、鎌田和樹さんが「寝る時間を削って」でもやりたいこと

マネジメント、サポートするチャンネルは5800以上。国内最大級のマルチチャンネルネットワーク(MCN)、UUUM株式会社を2013年に創業した代表取締役CEOの鎌田和樹さんは、多忙な毎日の中でどんな睡眠を取っているのだろうか。そして、「好きなことで、生きていく」ことの真意とは。

ギリギリまで、なるべく起きていたい

「睡眠、かぁ……今がいちばん寝てないですね」

鎌田さんは気まずそうに笑う。毎晩、YouTuberや取引先などとの会食を経て、帰宅するのは午前1時過ぎ。

それからスマホを見たりマンガを読んだり、「脳が疲れてくるまで」好きなように時間を過ごして、もうそろそろ寝ないとマズい、というところまで粘って、眠りにつく。

「眠くなるまでは、なるべく起きていたいんです。だって、仮に3日間寝なかったからって、そのあと6時間×3日=18時間の睡眠をまとめて取るわけではないじゃないですか。だったら、1日あたりの睡眠時間は少なくしたほうが、自分の使える時間が長くなるはず」

 

2013年6月に創業し、丸5年の月日が経った。一介の会社員から携帯電話販売店の責任者を務め、さらにYouTuberHIKAKINさんとの出会いから、日本初のマルチチャンネルネットワーク(MCN)を立ち上げた。以来、文字通り寝る間も惜しんで、事業成長に取り組んできた。

「寝てる間にもずっと仕事のことを考えつづけているんです。よく、夢の中でプレゼンしてるんですよ。いつも拍手喝采で目が覚める。だから、起きたときには疲れてグッタリして(笑)。そのぶん、当日は消化試合みたいに、緊張も何もしないので、テンションだけを上げていく感じです」

そんな鎌田さんにとって、「いい睡眠」とは、イヤなことや不安を忘れられる清涼剤のようなものだという。

「従業員たちの愚痴は聞いてあげられるけど、僕の愚痴は誰にも言えない。社長ってそんなもんじゃないですか。だから、何かイヤなことがあれば、寝る。すると翌日にはわりと忘れてるし、案外解決していたりもする。それが僕にとっていちばんの眠りですね」

 

0→1を生むため、いちばん楽しいことを譲り渡す

深夜まで及ぶスケジュールでも、鎌田さんの朝は早い。6時半には目覚めて、会社へ向かう。

10時始業だから、全然もっと遅くでもいいんだけど、何かあったら不安で。みんなががんばっているときに、自分だけが何もしない、というのは、落ち着かないし、朝早いほうが仕事もはかどるから、全然苦ではないです」

社員数は250名を超えるほど、この5年で着実に会社としてスケールアップしてきた。組織として、社員に任せる場面も増えてきたが、「基本はいつもスクランブル状態」だと語る。

 

「既存事業は任せられても、そこで空いた時間に違うことをやりたくなる。結果、どんどん忙しくなってるんです(笑)。やっぱり、01を生み出すことが大切で、そのためにいかに自分の仕事を動かしていくか、周りやパートナーと協力しながら、進めていかなくちゃいけない」

とはいえ、内心複雑なジレンマと戦っているという。

「やっぱり、クリエイター(YouTuberのこと。同社ではYouTuberを「クリエイター」と呼び、そのサポート業務を担当する社員ことを「バディ」と呼ぶ。二人の関係に上下がないことを表すための呼び名だ)のことが好きだし、この仕事は自分がサポートすることで彼らが輝くその瞬間こそ醍醐味なんです。本当は、そういう瞬間をたくさん見たい」

  でも、誰かに任せていくということは、自分がいちばん楽しいことを譲り渡すことでもある。イベントを見にいけないと寂しいし、できるだけたくさんのクリエイターと会っていたいけれど、それも社員に任せることが増えてきました」

そんな鎌田さんの思いが窺い知れるツイートがこれだ。

— かまだかずき (@kamadaman) July 8, 2018

 

「会社に来てた水溜りボンドのトミーから、『僕らのトラック見ました?』って言われて。わざわざ本人から言われると、なんとしてでも見たくて、仕事の合間にどうにか時間を作って見に行ったんです。

  そうしたら、いざ目の前をトラックが通ると、興奮して『わーっ!』ってはしゃぎながら動画撮って。たまたま隣にいた女の子たちも『きゃー!』ってなってたんですけど、あとで僕がTwitterに動画をアップしたら、『隣にいたおじさんは鎌田さんだったんですね』って反応返ってきて、おじさんかー……って(笑)」

 

 

一点突破するには「好き」という感情が強い

経営者として大きな成功を掴んだように見える鎌田さんだが、その本質は変わっていないのかもしれない。YouTuberたちの活躍を素直に喜び、サポートし、毎日を楽しんでいる。

「今も昔も、やりたいことだけをやってる。そんなアクロバティックなことをやっているつもりはないんです。ただ、HIKAKINというYouTuberと出会って、『他にもたくさんYouTuberがいるよ』と紹介してもらったら、僕と同じように短パン・ビーサンの格好をしていた。

  仲良くなって、飲み会して忘年会して……。その延長線上にいるので、果たして『サポートしてる』って言えるんだろうか、と申し訳ないくらい、企業を運営してる自覚がない(笑)。ましてや当時、『これで成功しよう』とか思っていなかった。いつの間にかビジネスになってきたんです」

 

会社がどんなに大きくなっても、安定を求めたり、売り上げだけを求めたりはしない。根底にあるのは、クリエイターに対する敬意と、「好きなこと」至上主義だ。

「走りつづけている機関車みたいなものだから、安定はないですよ。ハラハラドキドキのスリルをどれだけ楽しめるか、と考えられる人のほうが合っているかもしれない。やってる当人からすれば、いつも一生懸命で。ただ、何かがんばってるときがあるとすれば、それは『売り上げのため』じゃなくて、『クリエイターのため』なんです」

 

「クリエイターのやりたいことを叶えたい、という思いでここまで来られた。だから、どんなに売り上げの高い案件でも、クリエイターがやりたいと思えないものだったら、僕らは断ります。クリエイターの言いたいことを言えないような案件も受けない。

クリエイターがやりたいこと、好きなことで企画を実現できれば、クリエイターも面白い動画を作ってくれるし、再生数が伸びるし、クライアントも喜んでくれる。僕らもそれがうれしい。そうやってみんながハッピーになれるじゃないですか」

けれどもこれだけ選択肢の多い世の中で、「好きなこと」「やりたいこと」を見つけきれない人もいる。それを見いだすにはどうすればいいのだろうか。

 

「小さなころは、僕ものほほんとして生きていた。でも、このご時世、誰かが何かを言えば、必ず反対の意見が返ってくる。100パーセントみんなが一致する答えなんてないじゃないですか。

 その中でやっぱり強いのは、『これだ』と思った方向に突き進められるかどうか。分散した力よりも一択の力がバシッと強いのは間違いない。もしかしたらその方向が間違っているかもしれなくても、最後まで突き進めようという力は、必ず何かを成し遂げるはず。

  そう思えるような動機を考えると、やっぱり『好き』という感情以外にないと思うんです。僕自身、ビジネスをやる以上は大きい会社にしたいし、他の誰かには負けたくない。そんな負けん気から、好きなこと、楽しいことを求めてきたような気がします」

 

 

動画配信サービスの未来はそれでも明るい

UUUMが足場を置く動画市場の競争は、ますます激しさを増しているようにも思える。Amazon PrimeNetflixなど海外発のサブスクリプション型サービスに加え、国内ではAbemaTVも堅調に視聴者数を伸ばし、ツイキャスやSHOWROOMLINE LIVEなどライブ動画サービスの人気も根強い。

最近では新たにInstagramが縦型映像配信サービス「IGTV」をスタートし、まさに戦国時代といった状況だ。依然、圧倒的な視聴者数を誇るYouTubeでさえ、安泰とは言い切れない。

だが、鎌田さんの見立てはあくまでポジティブだ。

「結論としては、競合ではなく、むしろパートナーだと思っています。1020代前半の方の場合、朝AbemaTVでニュースを観て、夜寝る前にYouTube2時間くらい観るというのが、平均的なトレンドになっていて、テレビを持っていない人も多い」

「たとえどんなプラットフォームでも、何らかのネット動画を観て、余暇時間を楽しむものが増えていけば、僕らの配信先も増えるということ。今、経済的合理性を考えてYouTubeを選んでいるクリエイターも多いですが、女性のインフルエンサーを中心にInstagramを選ぶ人も多い。あくまで選択肢が広がっていくということだと思います」

 

今から5年前、YouTuberが「小学生がなりたい職業トップ10」にランクインすることを想像していた人が、どれほどいただろう。私たちはこれから5年先の未来さえ、よくわからないままに進んでいる。そんな中で、鎌田さんが描く夢はどんなものなのだろうか。

「海外では既に、YouTuberから映画監督やユニセフの親善大使など、世界的なスターとなった人たちがいる。ジャスティン・ビーバーだって、ある種そのひとりだと言えるかもしれません。日本やアジアからも、そういうスターが出てくればいいな、って。

 一方で、今はそれぞれの興味関心がタコツボ化していって、クリエイターのジャンルもどんどん細分化している。それってつまり、一人ひとりの趣味嗜好に合わせたコンテンツになってきているということなんですよね。ZOZOスーツが話題になったみたいに、『私だけのコンテンツ』を観られるようになっていくかもしれない。

  その中で、YouTubeではなく、TwitterInstagramなど別のプラットフォームを選ぶ人もいれば、ラジオやテレビに出るようになる人もいるかもしれない。過渡期ではあるけど、むしろどう変化していくのか、ワクワクするんですよね。その中で僕らは、これまでの動画製作を進化させていって、ビジネスモデルもアップデートして、『クリエイターたちがやりたいことを実現できる』環境を作っていきたいですね」

 

「そろそろ、メシでも食いに行くか、って約束してたんですよ」。

そう言って彼が向かったのは、空港だった。これから佐賀県で暮らすYouTuberに会いに行くのだという。ビジネスのスケールはどんどん広がっていても、鎌田さんの中では「短パンとビーサンでYouTuberに会いに行った」ころと変わらないのだろう。

 

鎌田和樹 | UUUM株式会社 代表取締役

19歳で大手通信会社入社。総務、店舗開発・運営、アライアンスなど多岐にわたる分野で実績をあげ、2011年よりイー・モバイル一次代理店の責任者を務める。 その後、孫泰蔵氏の薫陶を受け、起業を決意。ほどなくして、HIKAKINとの大きな出会いを得て、29歳で独立。

Site: https://www.uuum.co.jp/

Twitter:https://twitter.com/kamadaman

 

撮影:伊藤圭

大矢 幸世(おおや・さちよ)

執筆

ライター・編集者。

大矢 幸世(おおや・さちよ)

愛媛生まれ、群馬、東京、福岡育ち。立命館大学卒業後、西武百貨店、制作会社を経て、2011年からフリーランスで活動。鹿児島、福井、石川など地方を中心に取材執筆を行う。2014年末から東京を拠点にウェブや雑誌などで執筆・編集を行う。著書に『鹿児島カフェ散歩』、編集協力に『逃げる自由』、『グーグル、モルガン・スタンレーで学んだ 日本人の知らない会議の鉄則』など。話す口実が欲しくて、インタビューをしています。


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