ただの夜泣き? 睡眠障害?「夜泣き外来」に聞いたパパママを救う道

 

赤ちゃんの夜泣きによって、肉体的にも精神的にも疲労しているお父さん・お母さんはたくさんいらっしゃるかと思います。

 

そんな方々を救うために、

兵庫県立リハビリテーション中央病院「夜泣き外来」を開設したのはご存知でしょうか?

 

 

日本では唯一の専門外来であることもあり、全国からわざわざ訪れる方も多いという夜泣き外来。

 

一体そこでは、どのような治療をしてもらえるのか? 

その効果は? 

どのくらい夜泣きが酷かったら受診していいのか? 

 

気になることがたくさんあるので、実際に「夜泣き外来」を立ち上げた、子どもの睡眠と発達医療センター長の菊池清(きくちきよし)先生に、詳しくお話を伺いました。

 

菊池清
1977年に京都大学医学部医学科卒業後、倉敷中央病院、京都大学医学部附属病院、島根医科大学(現、島根大学医学部)附属病院、島根県立中央病院で小児科医として勤務。この間、1989年~1992年にワシントン大学(米国、セントルイス)で成長因子の研究に従事。 2017年3月、島根県立中央病院を病院長として定年退職。2017年4月から兵庫県立リハビリテーション中央病院 子どもの睡眠と発達医療センター長として勤務。医学博士。小児科専門医、内分泌代謝科(小児科)専門医・指導医。

 

夜泣き外来とは?

 

yoshikawa

菊池先生、今日はよろしくお願いいたします。

 

sensei

よく来てくれました、よろしくお願いします。

 

yoshikawa

早速なのですが、菊池先生はどうして「夜泣き外来」を立ち上げられたのですか?

 

sensei

これまでは小児科の専門医として、睡眠障害に悩む子どもたちを診察してきたんです。
一番多かったのは小学校高学年〜中学生くらいだったんですが、年に10人程度、1〜3歳の子どもを連れて「生まれてこのかた、上手に寝てくれない」と悩むお父さんお母さんが来られることがあったんです。

 

yoshikawa

1〜3歳というと、夜泣きしているイメージはあまりなかったです……。

 

sensei

そうですか。でもこれが深刻でね。お父さんお母さんは夜中に泣き出した子をどうにかして寝かしつけようとするんだけど、なかなか寝てくれない。仕事も生活もあるのにほとんど眠れない日々が長期間続くと、本人も親もどんどん疲れてくるでしょう。

 

yoshikawa

確かに、ノイローゼになってしまいそう……。

 

sensei

そうなんです。
でもね、うちの病院の外来はそのころ、予約をしても2〜3ヵ月待ちとかだったんですよ。

 

yoshikawa

2〜3ヵ月待ち……!?

 

sensei

ちょっと待てないよねぇ。
だから、特別枠として「夜泣き外来」を作ったんです。
少しでも早くたくさんの人を診てあげたくて。

 

yoshikawa

そういうことだったんですね……ちなみに、反響はどうでしたか?

 

 

sensei

それが、予想していたよりも反響がすごくて! 
せっかく夜泣き外来を作ったのに、予約枠が直ぐに埋まって、また予約が2ヵ月待ちとかになっちゃって……。
できるだけ多くの子を診てあげたいから、決められた予約枠外でも診察しているんだけど、数人の医者でできることは限られていてねぇ……。

 

yoshikawa

赤ちゃんの夜泣きで悩んでいた人は本当はたくさんいたけれど、病院に相談していいものかどうか分からなかったのかもしれませんね。だから「夜泣き外来」ができたことで、「あ、夜泣きで病院にかかってもいいんだ!」と思えた人は多かったんじゃないでしょうか。

 

sensei

そうなんですよ。夜泣きは世間的に「赤ちゃんは泣くのが仕事。大きくなったら治る」と安易な対応をされてしまうことが多いんです。
うちの病院にお子さんを連れて来られるのは大抵の場合がお母さんですけど、お母さんたちも1年も2年も寝不足でしんどい状況を続けておられたりするんですよね……。

 

yoshikawa

そんな状況が1〜3年も続くと、心身ともにすっっごくすり減りますよね……。

 

sensei

そうだねぇ、可哀想に、お母さんが心身ともに疲れきってね。中には、疲労のあまり、どんどん赤ちゃんが可愛く思えなくなってしまって、そういう自分が怖くなって、追い詰められて心療内科や精神科を受診するお母さんなんかもいるわけですよ。

 

yoshikawa

夜泣きって、思った以上に深刻なんだなぁ……。

 

 

 

どんな子が対象になるの?見極め方はある?

 

yoshikawa

とはいえ、多くのお父さんお母さんは、やっぱり「ただの夜泣きで病院にかかるなんて……」と思ってしまうと思うんですよね。病院にかかる目安は、何かありますか?

 

sensei

個人差があるから難しいんだけどね、ただ「保護者が育てにくさを感じる」というのは基準の1つだと思いますよ。

sensei

あとは、医学的な定義でいえば、「生後6ヵ月以降」で、眠る環境が適切であるにもかかわらず、「①寝つきが悪い(20分以上かかる)または②夜中に途中で目が覚める(20分以上起きている)、または③早く目が覚める(午前4、5時に起きる)」により睡眠時間が短くなり、「日中の眠気やだるさ、注意力低下、やる気低下、イライラや落ち着きのなさなどの問題行動がある」ことが週に3日以上、3ヵ月以上続いている。これが一般的に「乳幼児の睡眠障害(不眠症)」と定義されています。

 

yoshikawa

乳幼児睡眠障害……!? 
そういう赤ちゃんは結構いそうですけど、ただの夜泣きではないということですよね……?

 

sensei

そうですね。ただの夜泣きだと思っても、実は睡眠障害(不眠症)の可能性があります。でも、夜泣き外来に来られるお父さんお母さんは意外と、自分たちでやれることは全部されてるんですよ。

sensei

乳幼児健診の場でも、かかりつけのお医者さんにも相談して、助言をもらっているんだけど、お母さんたちの口から出るのは「あともう一歩の支援がなかった」と。
最終的には「そのうち治る」という言葉に流されてしまってねぇ

 

 

yoshikawa

出た! 「夜泣きはそのうち治るよ」理論!

 

sensei

それで「夜泣きでは、病院に行ってはいけないんじゃないか」と思っている人も多いみたいで。来られる方々は、親子共々疲れ果てた姿で診察室に入って来られますねぇ。

 

 

 

実際にどんな治療をしている?

 

yoshikawa

実際に夜泣き外来に来られたお子さんには、どんな治療をするんですか?

 

sensei

まずは、お家での1日の生活をお子さんだけではなく、お父さん、お母さんの分も一緒に聞き取りしています。何時に寝て、起きて、ごはん食べて、何時に公園に遊びに連れて行くか、保育園に行っているか、夕ごはんは何時か、仕事から何時に帰って来るか。全部聞きますね。

 

yoshikawa

そこで生活習慣に何か問題があれば、指導という形をとるんですか?

 

sensei

そうですね。ただ、親御さんのしんどさを軽減させる目的もあるので、こちらから睡眠指導をするにあたって、お父さんお母さんに大きな負担をかけるわけにはいかないんですね。だから「どの程度のことならできるか」を、まずは確認しないといけません。

 

yoshikawa

各家庭によって、それぞれ事情はありますもんね。

 

 

yoshikawa

初めて夜泣き外来にかかられたお父さんお母さんからお話を聞いて「これが原因じゃないか?」という生活上の問題点は見つかるんですか?

 

sensei

見つかることが多いですね。

 

yoshikawa

そういう場合は、一度生活上の指導をして、それでも解決しなければ、また来てもらうんですか?

 

sensei

そうですね、投薬治療をすることもありますよ。
睡眠薬ではなく、幼い子どもにも安心して使える眠気を誘う薬を使います。たとえば、「抗ヒスタミン薬」という、抗アレルギー薬とも呼ばれるお薬ですね。鼻水止めや風邪薬の中に入っている、眠気を誘う成分があるでしょう? あの成分だけを取り出したものです。

 

yoshikawa

あ、睡眠薬は使わないんですね。

 

sensei

そうですよ。昔から使われてきた漢方薬とかも使います。

 

yoshikawa

赤ちゃんだからこそ、強い薬を使うのは心配ですもんね……。

 

sensei

あと考えられるのは、「眠ることが上手でない体質」が原因で眠れないという場合
最初は生活指導や眠気を誘う薬などを試しますけど、体質に合わせた治療が必要になる事例があります。中には発達障害の方もおられ、それぞれの体質に効果がある薬を使わないと眠れない子もいます。

 

yoshikawa

夜泣き外来に来て、子どもが発達障害であることがわかる場合もあるんですか?

 

sensei

ありますね。
うちの夜泣き外来は、小児科医だけでやってるわけじゃないんです。発達障害の子どもをたくさん診てきた看護師、保育士、作業療法士、臨床心理士、言語聴覚士など、全員でチーム医療をやっています。
だから「もしかしたら……」と気になる子は、そういう道のプロ達に観察してもらいながら、発達障害の特徴がないか診ていきます。

 

yoshikawa

そこまで徹底して診てくれるところって、なかなかありませんよね。

 

sensei

そうかもしれませんね。
しかも、診察中は、看護師と保育士が遊ばせてくれるから、子どもはリラックスして安心した顔して遊んでますよ(笑)。僕は遊ぶ姿を見ながら、発達障害の可能性をチェックして、お父さんとお母さんと話しながら診察するんです。子どもの中には、遊べるので、再診を楽しみにしている子もいるようです。

 

yoshikawa

あ〜、リラックスした状態の、普段通りの子どもを診るということですね。

 

sensei

もちろん看護師の目でも、保育士の目でもよく観察するのね。
で、ちょっと気になる子は作業療法士に見てもらったりします。そして何回かの診察で「発達障害かもしれないなぁ」とご両親も気付いていく。
そうやって時間をかけて、治療をしていくようにしています。

 

 

 

入院治療はどんなときに必要?

 

yoshikawa

夜泣き外来では、入院治療を行うこともあると聞いたんですが、それはどういった場合ですか?

 

sensei

例えばお母さんが心身ともにあまりにも疲れていて、自宅での治療が難しい場合ですね。そういう場合は、夜泣きしたらお母さんを子どもから一時的に離してあげる工夫をした、母子同時入院という方法を取ります。

 

yoshikawa

なるほど……虐待の防止にも繋がりそうですよね。

 

sensei

うちには一応、大人も診ることができる児童精神科の医師も週1で外来に来てくれているから、その人の力も借りながら、とりあえずすぐに対応しないといけないと判断した人は入院してもらって、母親と子どもの2人のケアをします。

 

yoshikawa

どちらか一方だけの治療をしても、根本的な解決にはならないですもんね……入院中は、どのような生活をするんですか?

 

sensei

昼間はお母さんに面倒を見てもらうんだけど、子どもを夜に寝つかせたあとは、子どもが何回起きても看護師が対応するんです。お母さんにはとにかく別室で寝てもらうんです。

 

yoshikawa

幼い子どもって、お母さんやお父さん以外の人が寝かしつけてもきちんと寝てくれるものなんですか……?

 

 

sensei

幼い子どももね、えらいもんで看護師がお世話すると、気持ちの整理をつけてくれるのか、だんだん自分で眠れるようになりますね。ちゃんと自分で眠る力をつけてくれるんです。

 

yoshikawa

へぇぇ赤ちゃんすごい……! 大人……!

 

sensei

もちろんひどい場合は薬を使いますけどね。

 

yoshikawa

ちなみにその入院期間はどれくらいなんですか?

 

sensei

10日から2週間くらいかな?

 

yoshikawa

退院したあと、状況は大きく変わるものですか?

 

sensei

うん、退院したあとも、外来で診た人もみんなそうだけど、治療することで親御さんの表情が和らいでいくんですよね。自分たちが心身ともに疲れ果てても、我が子のことを考えて病院に連れて来られた親御さんたちだから、親子の絆というか、愛情はもともと深くて。だから、少し休んでもらうことで状況は改善されますよ。

 

yoshikawa

実際に夜泣き外来にかかった方たちからは、どんな声がありますか?

 

sensei

夫婦喧嘩しなくなったとか、もっと早く受診したかったとか、そういうことを聞きますね。やっぱり子どもを巡ってお父さんお母さんで揉めることも多いみたいでね、夜泣きが続くと子どもももちろん、親御さんもしんどいですからね。

 

 

 

睡眠障害を放っておくとどんなリスクがある?

 

yoshikawa

「乳幼児睡眠障害」を放っておくと、どのようなことが起こると考えられますか?

 

sensei

睡眠障害によって脳機能が低下して、発達の遅れが生じることがあります
大人でも睡眠不足だと集中力が落ちて、イライラするし、仕事でミスしたりするでしょう? 子供にもそういうことが起こるんですよ。
できることが人よりも少なかったり、人の話が最後まで聞けなかったり、常にそわそわして落ち着かなかったり。

 

yoshikawa

それって、もしかして発達障害とも関係があるんでしょうか……?  例えば、睡眠障害がきっかけで後天的に発達障害になる可能性があるとか……。

 

sensei

それは明確なエビデンスがないのでこう説明させてほしいんだけど、「睡眠不足に陥ると、発達障害を思わせる症状が出ます」
例えば「注意欠如・多動症」は有名な発達障害の一つだけど、注意を継続できなかったり、注意の集中ができない、忘れ物が多いという症状があるんだよね。でも、それは睡眠不足でぼーっとしてるときも同じことが起こるでしょう。

 

yoshikawa

確かにそれを聞くと、睡眠不足が原因なのか、発達障害が原因なのかはわからないですね……。

 

sensei

そうそう。睡眠障害の人は、睡魔と戦っているのか、じっとしてないことが多いですよね。
子どもは睡眠不足の場合に、「注意欠如・多動症」を思わせる症状が出揃うんです。でも、そういう子たちの中には、きちんと眠れるようになるだけで、症状が出なくなることがあるんです。

 

 

sensei

一方で、体質的に発達障害を持っている子たちは、高い確率で睡眠障害を伴うんです。でも、睡眠障害を治療してあげると、発達障害の子たちも、できることが増えるんです。

 

yoshikawa

発達障害の早期治療に繋がる、ということですよね。

 

sensei

そうです。
例えば「保育園や幼稚園で他の子はできるのに自分はできない」という体験をすると、その子は自信を無くしちゃうでしょう。それが怖いんですよ。
寝てないことによって能力が発揮されていない、本当の自分ではない自分の姿を見て自己肯定感が下がっちゃったり、自信を無くしてしまう、そういう状態を避けたいと思ってるの。

 

yoshikawa

確かに、そういう体験や記憶は、本人にとっては大きな傷になってしまいますよね。

 

sensei

だから、睡眠障害に気づいたら、子どものうちから積極的に治していくべきなんです。
「その子たちの自己評価をできるだけ低くしないように、自信を無くさないように生きてほしい」。夜泣き外来は基本的にはそういうスタンスでやってます。

 

yoshikawa

菊池先生やチームのみなさんがこれまでたくさんの子どもさんを診られて来られたからこそ、気付けるところですよね。

 

 

sensei

3、4歳の子でもね、「あの子はできるのに僕はできない」とか、「ほかの子よりも体格が小さい」とかには気付くんですよ。
眠れないと、体格(身長や体重)が他の子よりも小さかったりする場合もある。幼い子でも、その子なりに本当に悩んでると思いますよ。

 

yoshikawa

私も小さいころは身長が低くて、コンプレックスでした……。

 

sensei

そうだよねぇ。
さらに言えば、眠れていない子どもは、そうでない子と比べると脳の容積が小さいことも示されています。もう少し具体的に言えば、記憶に重要な働きをする「海馬」という部分が小さくなるんです。

 

yoshikawa

それは、もともと小さいんですか? それとも縮むんですか?

 

sensei

動物実験の結果だと、縮むそうです。

 

yoshikawa

そんなこと、全く知らなかったです……そう考えると睡眠って、私たちが考えている以上に重要なことなんですね。

 

sensei

そういうことです。
で、お父さんお母さんには「子供はすべてを親にさらけ出していない」のを理解していてほしいです。
僕ら大人も、子どもだった時代を思い出してほしい。みんな親に言ってないことはたくさんあったよね(笑)。だからこそ、いろいろと考えてあげないといけない。子どもが自分らしく生きられるように、サポートをしてあげてほしいですね。

 

 

 

まずは家庭でも実践できる夜泣き対策は?

 

yoshikawa

最後に、睡眠障害や夜泣き対策として、簡単に家庭でも実践できることはありますか?

 

sensei

お昼は明るく、外遊びも取り入れて、からだをよく動かす
夜は、暗い室内で静かに過ごすことです。
夜7時、8時になったら部屋を暗くしてあげないと、身体の中で眠るための準備が始まりません。特に、今よく「経済的だ」といって一般家庭で使われている白色LEDライトは注意してください。

 

yoshikawa

えっ、なんですか!?

 

sensei

あらら、知らないか。白色LEDライトはね、眠りにくくする作用があるんですよ。
身体に備わった眠りの仕組みのひとつ、眠らせるホルモン(メラトニン)の分泌を、抑える波長が異常に高いん
ですよ。今は室内灯も、コンビニの灯りも、スマホやパソコンの液晶画面の光にも、白色LEDライトが使われていますよね。だから夜になっても眠れない、という問題が多く起きているんです。

 

yoshikawa

ブルーライトは聞いたことがあったんですけど、白色LEDライトがそうだったんですね……。
じゃあ、赤ちゃんがゆっくり眠るためにも、夜になったら暗くするとか、LEDライトをオレンジ色の光に切り替えるとか、そういう工夫が必要なんですね。

 

sensei

そうそう。
ほかにも大事なのは、幼い子にはカフェインを控えること。コーヒーとかお茶とかはみんなよく知ってると思うんだけど、チョコレートが意外とみんな盲点らしいの。毎晩子どもにチョコレートをあげていたけど、指導のあと、あげるのをやめたらそれだけで子どもがぐっすり寝るようになったというお母さんもいました。

 

yoshikawa

チョコレート好きな子って多いですもんね……可愛くてついついあげてしまう気持ちもわかるかもしれない。

 

sensei

あと気をつけてもらいたいのが、夜間の授乳。これがとても重要です。

 

 

yoshikawa

あ、確かに赤ちゃんが夜泣きすると、お乳を与えるイメージがあります。

 

sensei

夜間の授乳をいつまで続けるのかというのは重要な問題でね、長く続けると、子どもには夜間にお乳を飲む習慣がついちゃうの。だから夜中に授乳を長く続けると、睡眠障害を起こす可能性が高くなります。

 

yoshikawa

え、そうなんですか?

 

sensei

僕らは「生後6ヵ月を過ぎて、その頃から離乳食が始まって、生後9ヵ月くらいになって離乳食を安定して食べられるようになったら、夜間は断乳するように」と指導しています。そうしないと、夜中に起きる癖がついちゃうから。お昼間に授乳するのはいいんだけどね。

 

yoshikawa

そういえば大人でも夜中に何か食べる習慣があると、夜中にお腹が空くし、消化するために内臓が動いて眠りが浅くなると言いますもんね……。

 

sensei

そうそう、夜食を食べてるようなもんだよね。
赤ちゃんは、生後4〜5ヵ月を過ぎれば眠り続ける力が育ち、途中で起きずに、朝まで眠れるようになる子が増えていくんですよ。また、眠りというのは、赤ちゃんも大人も深くなったり、浅くなったりを繰り返すんですよ。

 

yoshikawa

レム睡眠とノンレム睡眠、というやつですよね。

 

sensei

そう。これは個人差があるけれど、眠り続ける力が強い子は浅い睡眠になっても眠り続けられる。一方で、眠り続ける力が弱い子は起きてしまって泣いたり、行動を起こすわけです。

 

yoshikawa

なるほど、そこで授乳をするのは「ちょっと待った!」なんですね。

 

sensei

生後6ヵ月を過ぎたら、少し様子を見て、本当にお腹が減っているのか、お母さんに何かして欲しいと望んでいるのか、それとも単に起きちゃったから泣いてるだけなのか、5分くらいは様子を見るように指導してるんです。
単に眠りが浅くて起きちゃうだけだったら、またすぐに寝るんですよね、赤ちゃんって。

 

yoshikawa

私だったら過保護すぎて「ヤダ〜〜どしたの〜〜〜(泣)」ってすぐ抱っこしに行っちゃいそうです……。

 

sensei

そう、やっぱりその5分が待てないお母さんがいるのね。「お腹減ってるんじゃないか、おむつが濡れてるんじゃないか」って世話をし始めちゃう。そうすると逆に赤ちゃんも、しっかり目がさめてしまうんです。

 

yoshikawa

逆効果なのか……!

 

sensei

そういう習慣が付くとね、お母さんも一生懸命やってるつもりなんだけど、逆にそういう行動が睡眠障害を引き起こす場合もある。夜間授乳の習慣がついて、眠り続ける力が育っていない場合には、夜間に断乳してもらうことを指導してますね。

 

 

sensei

あとは夜間断乳するときに、お父さんに活躍してもらうんです。

 

yoshikawa

お父さんに?

 

sensei

うん、これ大事だよ。赤ちゃんはね、お父さんとお母さんの違いを感じ取ることができるの。いつまでたっても泣き叫んで寝付かない子どもに、お母さんも仕方なく夜間授乳して、それが長期間続くというケースもよくあってね。でも夜中に対応するのがお父さんに変わった途端、3~7日くらいで夜間授乳を求めずに泣くのをやめたりするの。

 

yoshikawa

えー!

 

sensei

だからね、お父さんにその話をして「ちょっと休みを取って、4〜5日は夜中の面倒はお父さんが見る、そしてお母さんは別室で寝る!」というのを徹底してもらうと改善することがあるんですよ。
だからお父さんには心を鬼にして「お乳はないぞ!」と対応してもらわないといけないのよね(笑)。重要な役割だからね

 

yoshikawa

確かに「こいつお乳出ねぇな……」って思ってもらえたら、しぶしぶ寝てくれるかもしれないですもんね。

 

sensei

そしてこれはみんなに知っておいてほしいんだけど、親子の絆は、決して母乳だけで育まれるものではないんです。今は「赤ちゃんが自然と飲まなくなるまでは母乳をあげるべき!」といういわゆる「卒乳」と呼ばれる流行もあるみたいなんだけど、肌の触れ合い、言葉をかけたりすること、日常の世話そのものが絆を育んでいるからね。だから夜間断乳をすることに罪悪感を感じたりはしないでほしいです。

 

 

 

おわりに

 

「夜泣き」と「乳幼児睡眠障害」は素人目線では非常に見極めが難しく、気軽に相談できる場所がほしいというお父さんお母さんは多いのではないでしょうか。

 

取材後、菊池先生に「全国にもっと『夜泣き外来』ができれば……と思うのですが、現状それは難しいのでしょうか?」と聞いてみたところ、このような答えが返ってきました。

 

「残念ながら、乳幼児の睡眠障害に対する深刻さを、十分に認識できている人がまだまだ少ないのかもしれないですね。医師も、保健師も、助産師も、そういう風に考えている人は決して多くはないと思っています。

 

だけどね、日本では、こうした問題に理解がある人も絶対いるはずなんです。だからね、わざわざ僕らのところに来てくれる人たちは、たまたまそういうお医者さんにめぐりあえなかったのかもしれないけれど、僕は全国に夜泣き外来を作っていく仲間が増えたらいいなと思って、シンポジウムを開催するなどしています。

 

きっとこれから、こういう専門外来は増えると思います。最近は昔に比べて、みんなの睡眠への関心が高くなっています。『フミナーズ』のようなメディアがあったりするくらいだもんね(笑)。だからそれまでは、せめて理解のあるかかりつけ医に出会えればいいですよね。

 

『一人で背負いこんで悩まないで、まずはかかりつけのお医者さんに頼って、相談してみなさいよ』というのは、僕がよく言う言葉なんですけど」

 

 

子育ての中で悩まされるお父さん、お母さんも多い赤ちゃんの夜泣き。「自分たちでどうにかしないといけない」なんて思わず、信頼できるお医者さんや、夜泣き外来に相談をしてみてはいかがでしょうか。

 

赤ちゃんのためにも、自分たちのためにも、どうか我慢しすぎず、助けを求めてほしいと思います。

 

 


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