「自分が我慢すれば家庭は回る」は間違い! 赤ちゃんの眠り研究所に聞いた夜泣き対策と育児

 

 

【今回お話を伺った人】

清水えつこ先生 

NPO法人 赤ちゃんの眠り研究所代表理事
これまでなんとなく話し継がれてきた赤ちゃんの眠りについて科学的な根拠に基づいて伝える、赤ちゃんを持つお父さん・お母さんのサポート団体「赤ちゃんの眠り研究所」の所長。同研究所の講座では、睡眠が子供の発達に及ぼす影響についてや、講座後のアフターフォローとしての座談会を実施。乳幼児睡眠アドバイザーの育成も行っており、現在14名が活動している。

 

 

夜泣きを止めるコツを聞いてみよう!

 

今回は乳幼児の睡眠と夜泣きについてのアドバイスをいただきたいです。
早速ですが、赤ちゃんの夜泣きをできるだけなくす方法はあるんですか?

 

そうですね。夜泣きにつながる原因はいろいろある中で、私たちは対策として主に2つをお伝えしています。

①大前提として、生活リズムを整えること。
大人だって生活リズムが整っていないと睡眠に問題が出ます。生活環境も含めて改善する必要があります。
②あまり手をかけないで寝かせるようにすること。
寝かしつけの習慣として、親の手助けがないと眠れなくなってしまっている子は、夜よく起きる傾向にあります。

 

うちは寝かしつけのとき、抱っこしながらミルクを飲ませて寝かせているので、手をかけまくりですね……(笑)。

 

それはかなり手をかけていますね(笑)。
自然と眠くなる環境を作って、なるべく抱っこではなく布団に置いた状態で寝てもらうように習慣づけたいところです。

 

いつも「こういう状況になったら安心して寝ていいんだよ」って教えてあげるのが、寝かしつけの意味だと私は思っています。寝つきの状況と夜間の状況がなるべく同じになるように、手をかけない方がいいのかなと思っています。

 

なるほど。どうやったら寝かせられるか・泣き止むかってことばかり考えていました。
音楽を聞かせたり、バウンサーに乗っけたり、YouTube観せたり……。

 

最近は親も戸惑ってますよね。
寝かせようとしたときに「泣き止ませればいいんだ」って発想から、抱っこしたりおんぶしたり外に出たりといった努力をしてしまうご家庭は多くいらっしゃいます。

 

まさにうちです。

 

みなさん「いろいろ寝かしつけ方法を試している」とおっしゃるんですけど、赤ちゃんからしたらいろいろやられるほど「どういう状況になったら寝ていいの?」と思うはずなので、余計に伝わらないんですよね。

 

そういうことなんですね。

 

 

 

私たちの講座では、『夕方くらいから、家でやることの流れを統一しましょう』って話をよくしているんです。

たとえば、夕ご飯を食べて、お風呂からあがったらテレビを消して、ゆったりした遊びや2〜3冊絵本を読んで、そしたらお布団に入りますよ、みたいな一定の流れを作る。決してその逆戻りをさせない。布団に入れるまでを習慣化するんです。

 

それで泣かなくなるんですか?

 

もちろん最初は泣くんですが、心を決めて一週間くらいやってみると、あっという間に習慣がついていくんですね。お母さんたちの話を聞いていると、親が「この寝かせ方でやるぞ」って覚悟を決めれば、泣いて抵抗するピークは三日くらいです。

 

それでも夜泣きしたときってどうしたらいいんですか? 触らない?

 

最初2〜3分は寝たふりで様子を見て、触らない方がいいと思います。初日はさすがに泣きじゃくって、そのままスッと寝てくれることはないと思うんですけど。

 

泣き止まなかったら、どうするのがいいですか?

 

泣き止まなくて、もうこれはちょっと待てないなというところまできたら、抱き上げるか、おっぱいをあげるか、トントンしてもいいと思います。ただ、最終的にうとうとし始めたら、すぐに親の動きを止めることを強調してお伝えしています。

 

なるほど。

 

 

 

おっぱいとかも、飲ませながら寝かせたくなると思うのですが、そうならないように最初のうちは気を張って、口に含ませてうとうとし始めたらすぐおっぱいを外す。口の中に何もない状態で寝かせる。抱っこも、うとうとし始めたらすぐに置くことを実践してもらいたいです。

最初のうちは親も子どもも寝不足がひどくなることもあるんですけど、「一週間頑張ろう」って決めてみると、本当にころっと寝てくれます。習慣は、親より子どもの方が受け入れが早いと思います。

 

卒乳と一緒ですよね。
うちの奥さんも、娘が卒乳するというときは「一週間覚悟するわ!」って挑んでいたので。

 

そうですね。そのくらいの覚悟がないと、寝かしつけは結構難しいと思います。

 

 

みんなからの質問に答えてもらった

▲事前にツイッターで【赤ちゃんの夜泣きに関する疑問】を募集したので、その中からいくつか答えていただきました。

質問1
夜泣きしたとき、落ち着かせるために明るいところへ連れて行き、一度目を覚まさせるのは、良いのでしょうか?

基本的にはやめた方が良いとお伝えしています。

赤ちゃんは睡眠が未発達な部分も多くて、深い睡眠のときにいきなり覚醒に向かってしまうこともあるんです。

わーっと騒がれると心配だと思うけれども、寝ぼけているだけのことも。暗い環境だからこそ分泌される成長に大切なホルモンもあるので、できるだけ暗い中で危険のないように見守るのが大事かなと思います。

 

質問2
すごく叱った日は夜泣きしやすいとか、昼頃にあった出来事に睡眠は影響するのでしょうか?

影響すると思います。

人は眠りに入ると、脳の中で「おさらい」が始まるんです。睡眠中に記憶を整理することが実験でわかっているので、赤ちゃんも眠りながら記憶を整理するときに、怒られた記憶が呼び起こされてしまうのかなと思っています。

 

 

質問3
お母さんの生活リズムは体内の子どもに影響するんでしょうか?

影響します。

お腹の中の赤ちゃんはとくに妊娠七カ月以降から、胎盤を通して親のホルモンバランスを感じ取り、昼夜を認識できるようになってきます。メラトニンというホルモンが大きな役割を持っていますが、このメラトニンが胎盤を通して赤ちゃんの生活リズムにも作用しているんですね。

妊娠中に早寝早起きをしていたお母さんから生まれたお子さんと、生活が乱れていたお母さんから生まれたお子さんが、生後一カ月の時点でどの程度夜に長く寝るかを調べた研究もあります。

その研究を見ても、生活リズムをしっかり整えていたお母さんから生まれたお子さんの方が夜長く寝てくれる結果が出ていますので、やはり、生まれる前から準備できた方がいいなと思います。

 

 

 

これだけはやったほうがいい! 夜寝る前に赤ちゃんとすべきこと

赤ちゃんの眠り研究所として、これはやったほうがいい! これは個人差なくお伝えしたい! ってことがあったらぜひ書きたいと思うんですけど。

 

寝る前にゆったりした時間を持つ!
とくに働いているお母さんはとにかくノンストップで生活して、「あぁ、もうこんな時間だから寝なきゃ……」って強制就寝になりがちなんですけど、一旦子どもと向き合う静かな時間を、10分でもいいから作ってもらいたいです。

 

なるほど。

 

電気も暗くして、お話を聞くのでも絵本を読むでも何でもいいから、少しクールダウンしてからお布団に入るかたちをしてくれたら、だいぶ違うはずと思っています。

 

寝る前の10分が大事なんですね。

 

そうですね。
あと、楽に子育てしているお母さんたちの特徴は、「やるだけやったけど、そんなもんよね」とか「一回二回くらい起きるよね」と思えている人が多いんです。

 

いい意味で開き直ること、ですね。

 

そうです。睡眠の生理学からみても、私たち人間は起きるのが当たり前っていう生き物なので、多少起きて親を求めてもいいよねくらいに思えた方が楽なのかなとは思っています。難しいとは思うんですけど、ポジティブな諦めを広めようみたいなことを言ってますね。

 

 

 

夫婦の協力について

僕個人の相談もしていいですか?

 

どうぞどうぞ。

 

僕は会社から帰ってくるのが19〜20時ぐらいで、ご飯を食べて子供とお風呂に入って、その後1時間ぐらい触れ合うようにしています。で、子供が寝た後にイラストの仕事をしてるんですけど、そうすると自然に、仕事は僕、家事は妻。と分かれてしまっていまして。

 

うんうん。

 

子供の将来のために積み立てておきたいとか、しっかり保険に入っておきたいとか考えると出ていくお金も多くて……。収入的にも副業してないと厳しい現状ですし、手が空いたときに洗いものしたり、子供にご飯食べさせたりしているんですけど、育児や家事をたまにしかできないのがさすがに申し訳ないと思います。

 

なるほど。

 

その状況を緩和させたく、妻も働きたいと思ってくれていたんですが、最近まで待機児童で保育園に預けられない状態でした。

そんな中、育児を女ばっかりに押し付けるの? って意見もよく耳にします。「私も働きたい!」って気持ちすごくわかるので、複雑な心境なんです。

 

そうなんですね。

 

どちらの言い分も、わかるんですよ。わかるんだけど、「世の中はこういう流れだけど、”うち”はどうするのか」って夫婦の話し合いが必要ですよね。
なぁなぁにして両方が鬱憤を重ねたまま言えない状況が、一番切ないなって思います。

 

確かに。

 

話し合いがうまくいっている夫婦は非常に幸せそうに子育てをしているなと思うんです。今、うちの団体でもパパママ講座を二カ月に1回くらいやっているんですけど、お母さんが強いところもあれば、お父さんが強いところもあって、いろんな夫婦模様が見えてきます。

お母さんの育児をバンバン否定しているような会話が聞こえてくることもあれば、仲良く「うちの場合どうする?」って話し合いがある家庭もあります。見ていると、家庭によって表情がだいぶ違いますよね。

 

そんなにですか!
うちは特に話し合ってはいないんですけど、いつの間にか二人の子供を一人ずつ担当してお風呂に入れるようになっていました。
あと、上の子が生まれたときは三人で寝ていたんですけど、僕は仕事もあるので、妻が「別室で寝ていいよ」って言ってくれたんですよ。

 

うんうん。

 

そのときは夜泣き対応もやってくれるんだったらそれでいっかって甘えてしまっていて。二人目が生まれてから『あれはダメだったな』って反省して、今は泣き声が聞こえたらすぐに行くようにしています。
その都度話し合って変わっていかないといけないし、生活リズムを作るのも協力的じゃないとできないですね。

 

本当にそうですね。お互いに言い合えることも含めて話ができる仲になっているなら、奥さんの鬱とかそういう心配も減っていくだろうし。女性も女性で「うちの夫は皿洗いしかしてくれない」って嘆く人もいますけど、皿洗いだけでもしてくれたらいいんじゃない? って思いもします。

 

その辺きれいに半々って絶対に無理なんですよね。だからこそ話し合っていくしかない。不公平感って必ずどちらかがあります。それはやっぱり、お互いへの感謝で補っていくしかないんじゃないかなって思います。

 

 

 

虐待について

 

もう一つ、最近話題にもなった虐待について聞きたいです。
僕は子どもに虐待とか考えたことがなかったんですけど、育ててきた中で虐待と紙一重だったんだなって記憶はたくさんあって。それこそ、夜全然寝てなくてイライラしてしまうと、寝かしつけの背中をトントンしてる手がすごく強くなっていたとか。

 

ああ、わかります。

 

どれだけ子どもが可愛くても、言うことを聞いてくれなかったり、寝不足で翌日のことを考えたりすると、ストレスが蓄積されて子どもに対して無意識に当たってしまう人もいるし、ノイローゼになってしまうこともある。

 

みんなギリギリの中で生きているんだろうなってことをすごく感じていて。それを緩和する方法は無いのかなとずっと思っているんです。今回は改善の話をしてもらって、先生の考えがもっと広がっていけばいいなと思っているんですけど。

 

以前、能登半島の先っぽの自治体に呼ばれて、育児期のお母さんが集まっている所でお話しさせていただいたことがあるんです。
でも、都会のお母さんと違ってほとんど興味がないような感じで。あとから「今どんな感じで子育てしているの?」って話をいろいろ聞いていくと、まぁストレスが少ないんですよね。

都心だと「近隣の声が気になるから」って理由で夜中に泣かせないようにしてるって話がほとんどなんですけど、その街の方々は、「赤ちゃんなんて、泣くもんかなと思って~」といった雰囲気。

マンションと言われるものが全くない、一戸一戸ポツンって建っているような地域だったので、周りの環境が違うだけで子育てのストレスってこれだけ違うんだっていうのをすごく感じたんですよね。

 

すごい。そんなところもあるんですね。

 

周りの目が温かくなるような環境を作るっていうのはすごく大事なことです。本当に世の中育児がしやすい環境ってどうやったらできるのか考えていかなきゃいけないなあと思います。

 

 

 

「自分が我慢すればこの家は回る」は、間違いです

最後に、赤ちゃんの眠り研究所として、読者に何かあれば……。

 

本当に一人で悩まないために、何でもいいから「助けてください」を言えるようになってほしいなって思いが一番です。
ネットだけじゃなくて、ここにたどり着いたのも何かのご縁ですから、調べる力があるんだったら地域の情報を調べて、誰かに話しに行く。

 

なるほど。助けを求める行動が大事なんですね。

 

あとは「自分が我慢すればなんとかこの家庭は回るはずだ」って考えのお母さんが多い
強いお母さんであっても、それは強く見せようと気を張ってるだけ。実際には、もっと不安とか悩みをお父さんに打ち明けたいのに、キャラ的に言えない人もいそうです。しんどい人は「助けて」って声をあげてほしいなって思っています。

 

みんなが声を上げ始めたら、必然的に仕事一辺倒だったお父さんたちも意識してくれるかもしれないですもんね。

 

そう思いますね。

 

今聞いて、僕ももっと協力的にならないとなって思えました。
たくさん良いお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

 

ありがとうございました!

 

 

 

 

終わりに

先生の話を伺って、改めて「子供を育てる上での環境づくりの大切さ」を感じました。
寝ればいい、泣き止めばいいってことじゃなくて、子供が自ら落ち着いて寝れる環境を”夫婦で作る”。

この取材の翌日から、我が家では20時ごろから部屋の電気を暗くしていくようにしています。テレビも極力つけない。つけていてもボリュームは小さめで、激しい遊びはせずにクールダウンするようゆったりとした時間を作るようにし始めました。今までの環境に慣れてしまってる子供達なので、なかなか上手くはいきませんが、根気強くやっていきます。

そして、何より大事な“子供を持つ夫婦のあり方”ってものを考えるキッカケになりました。正直、今まで「してるつもり」でしたけど、まだまだ妻に任せきりなことばかり。各家庭ごとに分担やルールがあるとはいえ、“相手を思うこと“はどの家庭でも大切なこと。どちらかの気持ちのバランスが崩れると、子供にまで影響が出てしまうかもしれない。

先日も“虐待”が大きな話題となりましたが、本当にどこの家庭でも”絶対にないと”は言えないものだと思っています。
「虐待するぐらいなら産まなければよかったのに」って意見をよく目に/耳にしますが、子供が生まれるまで自分が虐待をするなんて誰も思っていなかったはずです。

幸せな家庭を想像したり、子育て頑張ろうって意気込んだりしていても、産まれてから知る大変さの方が何倍も大きい気がします。
逆に、産まれるまで不安に思っていた人や、子供嫌いだった人が育てているうちに幸せを感じることが多くなっていくこともあると思います。

だからこそ、張りつめていたものがプツンと切れてしまわないように、夫婦や家族、友達と話せる環境を作ることが重要だと考えさせられました。

『赤ちゃんの眠り研究所』のような夫婦をサポートしてくれるような場所がもっと増えますように。

 

(協力)

赤ちゃんの眠り研究所
https://www.babysleep.jp/

 

 

 

吉本ユータヌキ

執筆

イラストレーター・漫画家

吉本ユータヌキ

イラストやマンガを描いてる31歳の大阪人。集英社より子ども観察マンガ『おもち日和』を出版。現在はSNSでたまに4コママンガをアップしています。

Site: https://horahareta13.thebase.in/


※体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。
編集部内で信頼できると判断した情報、並びに医師や専門家への取材を元に信頼性のある情報提供を心がけておりますが、自己の個人的・個別的・具体的な医療上の問題の解決を必要とする場合には、自ら速やかに、医師等の適切な専門家へ相談するか適切な医療機関を受診してください。(詳細は利用規約第3条をご確認ください)