「歌舞伎町の女王」は本当に実在するの?眠らない街の案内人に裏事情を聞いてきた

 

眠らない街、新宿・歌舞伎町。

 

多くの人で溢れ、夜には街並みがネオンサインで青白く染まる、日本最大規模の歓楽街。

生まれも育ちも兵庫県である私にとってはまったくと言っていいほど縁がない街ですが、そんな私でも持っている歌舞伎町についてのイメージがひとつあります。

 

それは、椎名林檎さんの『歌舞伎町の女王』という曲です。

 

 

この曲では「かつて歌舞伎町の女王だった母に代わり、15歳の娘が新しく女王になる」というエピソードが歌われています。

しかし、私は思ったのです。

 

「歌舞伎町には、本当に女王が存在するの?」

「もし実在するなら、それってどんな人なの?」

 

リリースは1999年。あれから19年たった今でも私は夜の世界のことがまったく分かりませんが、これ、めっちゃ気になりませんか?

もし歌舞伎町を牛耳っている女王がいるなら、どんなシステムで女王に君臨しているのか知りたくないですか……?

 

ということで、今回は歌舞伎町の裏事情を調査するべく、東京・新宿へ行ってきました。

(そのためだけに大阪から日帰りで行きました。)

 

 

「歌舞伎町ガイド人」にやばすぎる裏事情を聞いた

今回お話をお伺いしたのは、有名月刊誌「裏モノJAPAN」を発行する株式会社鉄人社の、仙頭正教(せんとうまさのり)さんです。

仙頭さんは、歌舞伎町界隈で超がつくほどの有名人。

歌舞伎町に週4で足を運ぶ生活を10年以上続け、この街の古くからの歴史から風俗嬢・◯◯◯の情報までも聞き込み・情報収集しているのだとか。

あまりにも歌舞伎町の過激な裏事情に精通しているため、「歌舞伎町ガイド人」として歓楽街ツアーを主催するほどです。

 

▲ちなみに仙頭さんはこの日、チャリで来た。

 

yosikawa

仙頭さん、今日はよろしくお願いします。

 

sentou

こちらこそよろしくお願いします!
さあさあ、まずはどこから案内しようかな〜?

 

yosikawa

実際に歌舞伎町を歩きながら案内してくださるんですか!

 

sentou

もちろん! その方が分かりやすいし、見せたい場所もたくさんあるから!

 

yosikawa

(めちゃくちゃイキイキしてる……)

 

sentou

よし、まずは◯◯◯の事務所でも見に行ってみる?

 

yosikawa

すみませんこわいのでそれだけは勘弁してください……。

 

▲新宿は快晴。この街の成り立ちについて聞かせてくれながら、歌舞伎町の奥へと進む。

 

 

 

歌舞伎町の女王は実在する?

 

yosikawa

さっそくですが、椎名林檎さんの曲で『歌舞伎町の女王』って曲があるじゃないですか。実際の歌舞伎町にも、女王的存在の人っているんですか……?

 

sentou

います。

 

yosikawa

いるんだ!!

 

sentou

今日もいるかなぁ……ちょっと僕についてきてください。

 

 

sentou

あ、いたいた。
あそこに、ガードレールに腰掛けてる女の子たちがいるでしょ?

 

yosikawa

5人くらいいますね。

 

sentou

あの子たちは、いわゆる「ウリ」をやってる子たちなんだよね。

 

yosikawa

売春……てことですか?

 

sentou

そうそう。で、あの中で一番ガタイの大きい子がいるじゃない? 

 

sentou

あの子が「セイラ」(仮名)って言って、歌舞伎町で「ウリ」をやってる女の子たちを取りまとめてるボスなんだよね。

 

yosikawa

組織化してるってことですか?

 

sentou

そう。自分と同じような境遇の女の子と知り合いになって、一緒にいたがるんだよ。そのほうが心強いのかもしれないね。

 

yosikawa

なるほど……それでグループに属しているんですね。

 

 

 

sentou

で、セイラはその子たちにお客さんを紹介し、紹介料を徴収してるってわけ。

 

yosikawa

え! その子たち同士でトラブルになったりはしないんですか?

 

sentou

たまに、そうなることもあるみたいだね。
ある女の子は、セイラにスマホで頭を殴られてケガをしてたよ

 

yosikawa

グレッチじゃなくて良かったですね。
なぜスマホで頭を??????

 

sentou

セイラの言うことを聞かなかったことが原因だったみたい。
セイラって、170cm100kgくらいあるからめっちゃ怖かったと思うよ。

 

yosikawa

デカイ……!
仙頭さん的には、セイラが歌舞伎町の女王だと思いますか……?

 

sentou

「売春」というくくりで言うと、そうだと思う。
実際、グループを作って牛耳っているし。

 

 

 

yosikawa

なんか、イメージしていた女王とはちょっと違っていて複雑な気分です……。

 

sentou

でも、僕は個人的にセイラより、違う女の子を推しているんだよね。

 

yosikawa

それはどんな人なんですか?

 

sentou

「もちゃ」(仮名)っていう女の子。といってももう30代だけど、彼女はグループには属さず、完全に1人で売春をしている子なんだ。

 

yosikawa

そういう女性もいるんですね。

 

sentou

めずらしいけどね。何がすごいって、その子は1年に3000万円以上稼ぐんだよ!

 

yosikawa

ええーー!? 金額感が完全に女王!

 

 

 

 

sentou

もちゃは、他の女の子たちが働かない日も関係なく働くんだよね。クリスマスとか、お正月とか、そういう日でも絶対に仕事を取るの。

 

yosikawa

シフト制の職場で重宝されるタイプだ……。

 

sentou

もちゃとは実際に話をしたことがあるんだけど、こういう仕事をしてると、やっぱり危ない目にあったり、殺されかけたりしたこともあるらしいんだよね。

 

yosikawa

お店に属していないと、そういうリスクも大きくなりそうですね。

 

sentou

で、もちゃに「精神的に病んだりしないの?」って聞いたことがあるんだけど。

 

yosikawa

はい。

 

sentou

そしたらもちゃ、「昔、柔道やってて鍛えられてるんで大丈夫です」って言ったの。

 

yosikawa

完全にフィジカルの話だ!!?

 

sentou

俺もう、その瞬間から「もちゃを応援しよう」って思っちゃって……アイツすげぇよ……。

 

 

yosikawa

その話を聞く限りだと、さっきのセイラより、もちゃの方が女王っぽい気がするんですけど……。

 

sentou

そうだよね。だけどもちゃは今、拠点を歌舞伎町から池袋に移しちゃったから、「歌舞伎町の女王」って感じではないんだよね。

 

yosikawa

あ、そうなんですか! どうして拠点を変えちゃったんでしょう?

 

sentou

昔からずーっと歌舞伎町にあったテレクラが去年潰れちゃって。テレクラって、男女が出会うのにすごく手っ取り早い手段だったからもちゃもよくそこにいたんだけど……。池袋にもその系列店があるから、そっちに行っちゃったんだよ。今でもたまに歌舞伎町で見かけることはあるけどね。

 

yosikawa

「あの日飛び出した此の街と君が正しかったのにね」だ……。
売春にもいろいろと事情があるんだなぁ……。

 

 

女王はいっぱいいた! 個性豊かな歌舞伎町の女性たち

 

sentou

他にもね、「出会いカフェの女王」みたいな人もいるよ。

※出会いカフェ…お店にいる女性を、同意のもとで外に連れ出してデートすることができるシステムの喫茶店。女性は、男性からの「お小遣い」目当てでお店に会員登録していることが多いらしい。

 

yosikawa

出会いカフェに常駐してるってことですか?

 

sentou

そうそう、「ルミ」(仮名)っていう50代の女の人がいてね。売春一筋30年で、歌舞伎町では有名人なんだよね。で、このルミがほんとすごいんだよ。

 

yosikawa

具体的に、何がすごいんですか?

 

sentou

ルミに話を聞きに行ったことがあるんだけど、テクニックについて聞くと「◯◯を使って××の裏を……」とか「△△を××して◎◎して……」とかいろいろ教えてくれて。

 

yosikawa

はい、今のところ全部媒体的にNGなので伏字です。

 

sentou

で、最終的に「特技が『つばだく』だ」って話が出てきたのよ。

 

yosikawa

つばだく。

 

sentou

つばだく。

 

yosikawa

つゆだくみたいに言わないでほしかったですけど、どういう技かは不思議とわかりますね。

 

sentou

でしょ(笑)

 

 

sentou

あとは、人気風俗店の女王というか、僕イチオシの女の人もいて。

 

yosikawa

その人もレジェンド的な存在なんですか?

 

sentou

そうそう。「メイ」(仮名)っていう40代後半の女性なんだけど。メイはね、16年くらい前から、そのお店でランキング3位以内を取り続けてるの。

 

yosikawa

それって、どれくらいすごいんですか?

 

sentou

これはめちゃくちゃすごいことだよ。そんなに長い間3位を取り続けるのって、並大抵のことじゃないと思う。例えば、J-POPのアーティストで、16年間トップ3に入り続けるって考えたらすごくない? ミスチル級でしょ?

 

yosikawa

確かに、歌舞伎町という大繁華街で、若い子たちがどんどん入ってくる環境でその位置に立ち続けるのはすごいことですよね……。

 

sentou

メイは今も月あたりの指名数が300以上らしくて、本当にレジェンド風俗嬢だと思います。

 

 

仙頭さんにとっての歌舞伎町とは?

 

yosikawa

結局、歌舞伎町にはとにかくキャリアが長い伝説的な「女王」もいれば、女の子たちを束ねている「女王」もいるし、切り口によっていろんな「女王」がいるってことなんですかね?

 

sentou

そういうことになるだろうねえ。

 

yosikawa

仙頭さんはもう10年以上歌舞伎町を見てきたと思うんですけど、歌舞伎町が昔と今で変わったところはありますか?

 

sentou

うーん、やっぱり大きいのは、街並みがきれいになったところかなぁ。
石原慎太郎さんが都知事をやってた頃、「歌舞伎町浄化作戦」という改革があったでしょう。

 

yosikawa

たしか、違法風俗店の摘発とか、スカウトやキャッチの規制が行われたんですよね?

 

sentou

そうそう。それに加えて、景観も大きく変わったよ。
新宿コマ劇場の跡地に「TOHOシネマズ新宿」がオープンしたり、「VR ZONE SHINJUKU」というVRの施設ができたりね。

 

 

 

▲「VR ZONE SHINJUKU」前。

 

yosikawa

新宿コマ劇場といえば、50年以上歌舞伎町のシンボル的な存在だったと聞きました。それが取り壊されたというのは、大きな変化だったんでしょうね。

 

sentou

そうだねー。

 

 

 

sentou

歌舞伎町って、第二次世界大戦で一面焼け野原になっちゃったんだけど、戦後に「闇市」ができて、いろんな勢力が関わりあって、次第に繁華街として発展していったと言われているんだよね。

 

yosikawa

意外と戦前は、現代のような「歌舞伎町」っぽさはなかったんですね。

 

sentou

そうそう。で、今も新しいビルの建設計画があったりして、これからもどんどん歌舞伎町は変わっていくと思う。

 

yosikawa

確かに、ここ10年ほどでもここまで大きく景観が変わったことを考えると、数年後には全く違う街並みになっている可能性もありますよね……。

 

sentou

そうだね。でも、見た目は変わったけれど、歌舞伎町の本質的なところはあまり変わっていないかもしれない。

 

yosikawa

そうなんですか?

 

 

 

 

sentou

昔に比べて人が少なくなったとか、外国人観光客が増えたとか、そういう変化はあったけど、僕にとって歌舞伎町は以前と変わっていないように思うし、見た目がきれいになったことで、より歌舞伎町の「明」と「暗」のコントラストが強くなったように感じる。

 

yosikawa

「明」がきれいになった街並みだとすると、「暗」は売春や違法風俗店、違法薬物の売買などですよね。

 

sentou

さっき紹介した「ウリ」をやっている女の子たちも、家がなくてネカフェで寝泊まりして生活していたり、父親がわからない子供を産んで育てたり、色んな事情があるんだよね。

 

yosikawa

もしかしたら、彼女たちは歌舞伎町でそういう生き方を選ぶことしかできないのかもしれませんね……。

 

sentou

僕はね、「歌舞伎町がきれいになってほしい」とか「浄化された方がいい」なんて思っていないんだよね。
明暗があるからこそ魅力的だと思うし、日の当たらない場所ならではの「人と人の結びつきの強さ」もあると思ってる。

 

yosikawa

人と人の、結びつきの強さ、ですか?

 

sentou

例えば、僕がよく顔を出す飲食店にホームレスのおばあちゃんがいつもいるんだけど。彼女は、僕の顔を見るといつも「ビールおごって〜」って言ってくるんだよね(笑)。
僕も彼女から歌舞伎町のいろんな話を教えてもらっているし、「ビールくらいいいか」と思って、2人でビールを飲みながら立ち話したりするのね。

 

yosikawa

なるほど、そうやって歌舞伎町の情報を集めているんですね。

 

sentou

売春をしていて群れている女の子たちもそうだし、僕もそうだし、そういう人と人との強いつながりがあるからこそ生きていける人もいる。僕にとっては、それが歌舞伎町の魅力だと思っています。

 

 

おわりに

仙頭さんは、今も頻繁に歌舞伎町に出入りしては「日の当たらない場所」に目を見張らせているのだそうです。

「どうしてそんなに歌舞伎町に入れ込むのか」という私の質問に、仙頭さんはしばらく考えたのちに「自分でもわからない」と答えました。

そしてさらに間を置いてから、どうしてかわからないけど、何か猛烈に興味をかきたてられるのだ、と話してくれました。

 

私はこれまで、歌舞伎町に対して「こわい」という印象がどうしても拭えなかったのですが、仙頭さんとお話をしてから、その認識はほんの少し変わりました。

「もうこわくない」と言うと嘘になってしまうけれど、歌舞伎町には、人間の血が通っていて、人と人とのつながりが強いことを知りました。人のつながりが歌舞伎町の基盤となり、活気を生み出し、たくさんの人を魅了し続けてきた理由の一つなのでしょう。

仙頭さんは月に2回、「歌舞伎町観察ツアー」を主催して、歌舞伎町のおもしろさや魅力を人々に伝える活動を続けているそうです。歌舞伎町のことが本当に好きで、積極的に現地に赴いて人間関係を作り続けてきた仙頭さんにしか伝えられないことが、きっとたくさんあります。

 

 

アイキャッチ

きらびやかで喧騒な歓楽街の裏側には、知られざる歴史や、蜘蛛の巣のように複雑に絡み合う人間関係、そしてそれぞれの思いがありました。

世の中の酸いも甘いも知っている歌舞伎町は、実は人情味があふれていて、懐の深い街なのかもしれません。

 

吉川ばんび

執筆

フリーライター

吉川ばんび

1991年生まれのフリーライター。ジモコロ・SPOT・文春オンラインなど様々な媒体で取材記事・コラム等を執筆している。

Site: http://bambi-yoshikawa.hatenablog.com/entry/2018/02/08/181437


※体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。
編集部内で信頼できると判断した情報、並びに医師や専門家への取材を元に信頼性のある情報提供を心がけておりますが、自己の個人的・個別的・具体的な医療上の問題の解決を必要とする場合には、自ら速やかに、医師等の適切な専門家へ相談するか適切な医療機関を受診してください。(詳細は利用規約第3条をご確認ください)