【36時間連続更新22本目】「クッキングパパに異常に詳しい松坂くん」と関西学院大学の思い出 後編

前編の続き。

ドレッド・ヘアーにし、黒人のギャングスタ気取りですっかりチャラついてしまった松坂くんをどうにかして取り戻したい。
最悪、松坂くんはどうでもいいから自分達のアジトである所の松坂くんの家だけでも強奪したい。

そんな事を思いながら行動を開始する僕ら。
最初にとったのは「しょっちゅう泊まりに行こう作戦」である。

松坂くんの家に雪崩込み、そのまま泊まってなし崩し的に居座る、という画期的な作戦だ。
これは功を奏した。効果てきめん、というやつだ。突如ラップバトルを仕掛けてきたり、レコードも持ってないくせにターンテーブルをローンで買った時なんかは「本格的に気が狂ったのかな」と思ったのだけど、なんだかなんだ家に押し掛けると僕らの相手をしてくれるのが優しい優しい松坂くんである。

ただし、これが功を奏して居座りまくった結果、「お前ら、一回家に入れたら帰らんからなぁ」と、今度はなかなか家に入れてくれなくなった。
完全に逆効果である。

そこで今度は麻雀店に呼び出してみる。

「ごめん、俺サークルの打ち上げあるから」

来ない。

 

テスト前だし、図書館で勉強しよう。

「俺、サークルの奴とテスト勉強するから」

やっぱり来ない。

 

大阪で合コンあるけど、どう?

「行くわ」

「これだ!」と思った。結局松坂くんはダンスが好きなわけでもHIPHOPが好きなわけでもなく、
単純に女の子にモテたかっただけなのである。きっとそうだ。じゃなきゃ真冬にサングラスをかけたりしないし、
レコードも持ってないのにターンテーブルを買ったりしない。玄関に置いてあるスケボーだって完全にインテリアと化している。
やはり女の子で釣るのが簡単だ。なんだ楽勝だ。こんなの簡単なクイズじゃねえか。

でも松坂くんに紹介する女の子はすぐに尽きた。合コンなんてたぶん2回くらいやって、それで打ち止めだ。
そもそも、僕自身が女性の友達なんて数えるくらいに居なかったのである。

結局松坂くん奪還作戦は失敗し、松坂くんはどんどんサークルにハマり、
どんどんチャラくなっていった。それに比例するようにどんどん僕らと離れてゆく、。

久しぶりに会った時に、「グー」と「グー」をなんかこう、いい感じにぶつけあう、アメリカ映画の中でしかやらないような挨拶を強要してきた時は本気でぶん殴ってやろうかと思った。でも僕たちにはもう、松坂くんを取り戻すすべはないのだ。

悔しいから「2ちゃんねる」の関西学院大学のスレッドに「バレエ・ダンス・カンパニーの連中は全員性病だ」とかなんとか言って荒らした。
「バレエ・ダンス・カンパニーの連中は全員裏口入学」とかも書いた。すいません、あの時の荒らしは僕です。

そんなこんなで結局、卒業する間際になると松坂くんは完全にダンスサークルの一員、としての側面が大きくなり、
「ヨッピーの友達」という側面がどんどん小さくなってゆくのである。
そして卒業してからそのまま、会う事もなく松坂くんとは音信不通になった。

そんな松坂くんをFBで見かけた。びっくりしてメッセージを送ってみた所「今東京の〇〇で働いてる」と言う。

「飲もうよ」

「いいよ」

久しぶりに会った松坂くんはもちろんドレッドヘアーなんかではなく、真面目そうなサラリーマンになっていた。
今では結婚もして二児の父親になっているらしい。元から老けていたけど、更に老けたような気がする。
もちろんそれはお互い様なのだけど。

「そういえば松坂くんこのセリフ、わかる?『僕、こんなの食べたくない!』」

「あー、それね。それは〇〇巻でパパが××した時にまことがママに向かって言った言葉でしょ?」

「おお……、さすが……!」

この時もやっぱり「すごい。すごいけど本当に何の役にも立たないな」と思ったのだけど、
松坂くんが、15年ぶりの僕のもとに戻ってきたような気がした。

※ちなみに「こづかいが月に2万円しかない」と嘆いていたのでおごってあげました


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