【36時間連続更新21本目】「クッキングパパに異常に詳しい松坂くん」と関西学院大学の思い出

この記事でなんとなくの高校生の頃の話を書いたので、今度は大学生活について書いてみたい。
僕が通っていたのは「関西学院大学」であり、「かんせいがくいんだいがく」と読む。
日大アメフト部のウンタラカンタラが当大学を「かんさいがくいん」呼ばわりして盛大に叩かれていた事は世間の記憶にも新しいと思う。
ちなみに今から書く話はあくまで僕が通っていた当時、15年くらい前の話である。

僕が通っていたのはそういう、ちょっと呼びづらい名前の、兵庫県西宮市にある大学だ。
学校の建物は画像の通りとてもオシャレかつ綺麗だし、近隣は高級住宅街で神戸からも近い。
必然的にいわゆる「シュッとした感じの学生」が多くなる。これは本当にそうだ。
今でもきっとそうなんだろうと思う。東京で言えば早稲田、明治、というより慶應、青学みたいなイメージが近いかも知れない。

そんな感じで男子も女子も「なんとなく育ちが良さそうな、シュッとした感じの学生」がめちゃくちゃ多い大学なのですが、
方や僕はこの記事でも書いた通り、大阪下町のスラム街みたいな所で育っているので、それはもう簡単に、学校で浮きまくったのである。
単刀直入に言うと友達がまったく出来なかった。学食で一緒に食べる友達すら居なかった。
留年も含めると5年間大学に通ったのに、「友達」と言って良さそうな友人はたったの3人しか出来なかったのである。
1年にひとり、というペースですらない異常事態である。
今日はそんな数少ない3人の友達の内、「クッキングパパに異様に詳しい松坂くん」の話をしたい。

松坂くんは九州の出身で、1浪して関西学院大学に入ってきた。
僕を含めた4人組、みたいな感じにグループが出来たのだけど、松坂くん以外はみんな自宅から通っていたので、
学校近くで一人暮らしをしていた松坂くんの家が必然的に僕らのたまり場になる。
大多数の大学生と同じく、もちろん僕らも授業をサボって松阪くんの家で賭け麻雀をしたりしていたのだけど、
この松坂くんの部屋には「クッキングパパ」が全巻揃っていて、作者であるうえやまとち先生のサインも大事そうに飾られている。
そう、松坂くんは「クッキングパパ」の大ファンなのだ。

そんな松坂くんの特技は「セリフを読むだけでクッキングパパの何巻のどういうシーンの誰のセリフかを当てる」という、
「すごいけど全然自慢にならない」というたぐいのものだった。

ぼく
「主任、大変です!田中が〇〇になりました!」

松坂くん
「あー、それは〇巻でパパが××を作った時の回で、田中が〇〇になった時に△△が飛び込んできて言ったセリフやね?」

といった具合に、こっちの方をチラッとも見ずに言うのである。すごい。
すごいけど本当に何の役にも立たない。

そんなクッキングパパ好きの松坂くんは素朴な優しい九州男児、といった具合で、
僕らが急におしかけて「今日泊めて~や~!」なんて言っても嫌な顔ひとつせずに泊めてくれたりしたものである。

そんな松井くんが、ある時期を境に豹変する。
クッキングパパをあれほど愛した松坂くんが、いきなりドレッドヘアーになり、HIPHOP好きの黒人みたいないでたちに変わったのだ。
原因は「バレエ・ダンス・カンパニー」という名前のダンスサークルに入ったからだ。

「それ、パパが残業で遅くなったママに〇〇を作った時のセリフやろ?」と嬉しそうに語っていた九州男児が、
急にドレッドヘアにして信号待ちでステップを踏むようになる。
なんか知らんけどラップバトル?的なものを僕らにいきなり仕掛けてきたりもした。ぶん殴ってやろうかと思った。

デビューである。

完全無欠の大学デビューである。

僕らは焦った。何故なら松坂くんをバレエ・ダンス・カンパニーに取られたら、
大事な大事な僕らの、唯一のたまり場が失われてしまうからだ。

「松坂くん、ダンスなんかやめようや。麻雀の方がええやろ。麻雀」

「あんな?お前らももう少し社交性身に着けた方がええで?なんならウチの代表紹介したろか?」

そんな風にステップを踏みながら言い放つ松坂くん。
気付いたらサングラスなんかもかけるようになってる。
真冬だし、曇りの日なのに。

松坂くんを取られた僕らは悲しみに暮れる。
食堂でバレエ・ダンス・カンパニーのチャラ男達と談笑する松坂くんを横目に。
麻雀をする場所を失い、麻雀をする仲間も失った。

「これでは学校に来る意味がないじゃないか」

僕らの、松坂くんを取り戻すための作戦がはじまった。

後半に続く。


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