年間372回チェックインしたホテル評論家に「ホテルのベッドから足を出しづらい理由」を聞いた

 

ホテルのベッド

出張や旅行先で、こうしたベッドと遭遇したとする。 いざ眠ろうとしたとき、皆さんはどうするだろうか?

 

布団を剥ぐ

こうではないだろうか。  

ベッドから、足を出して寝たい。 いや、実際に足を出して眠ることはなくとも、「足を出す・出さないの選択の自由」がほしい。それが、人類共通の願いではないか?

 

アンケートツイート

試しにTwitterでアンケートを取ってみたところ、2万100票のうち66%は「足を出したい」と答えた。これは世論であり、民意だ(※そんなことはありません)。

やはり我々は、足を出したい。出したいのだ。

 

ベッドの端

なぜ、ホテルのベッドは我々の足を封じ込めようとするのか? どのような大義があり、使命があり、義務があるのか??   疑問と怒りに満ちた私は、一流ホテルの担当者すら認めるホテル評論家・瀧澤信秋さんに、話を聞いてみることにした。

 

説明する瀧澤さん
瀧澤 信秋さん

ホテル評論家。リゾートホテル、ビジネスホテル、カプセルホテル、レジャーホテル等、あらゆるホテルに自腹でチェックインし、評論するスゴい人。日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に『ホテル評論家が自腹で泊まる! 最強のホテル100』(イースト・プレス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)など。2014年度には、365365ホテルの旅と題したミッションを遂行、365日で372のホテルにチェックインした。 http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/

発覚「ホテルのベッドで足を出せない理由」

考える瀧澤さん

 

カツセ

瀧澤さん、ホテルのベッドはどうして、足を出させてくれないのでしょうか?

 

瀧澤さん

なるほど。いいところに目を付けましたね。

 

カツセ

これ、いいところなんですか?

 

瀧澤さん

ベッドから足を出せないのは「マットレスに掛布団を巻き込んでいるから」なのですが、その理由を一言で表すなら、「見栄えの問題」になります。

 

カツセ

見栄え! 完全にホテルの見栄ってことじゃないですか!

 

瀧澤さん

一概にそうとは言えません。僕は“ホテル評論家”を名乗って5年ほど経ちますが、最初に著書を出したときからずっと「ベッドメイキングの重要性」について説いてきました。

 

カツセ

瀧澤さん、その話、長いですか?

 

笑う瀧澤さん

(長そうだ)

 

瀧澤さん

カツセさんの仰っているベッドメイキングのスタイルは、正式名称を「スプレッドタイプ」と呼びます。スプレッドタイプのベッドメイキングはご存知の通り、ベッドのマットレスにベッドカバーごと巻き込むスタイルです。しかし、この掛布団は、毎回は洗いません。

 

カツセ

え、そうなんですか?

 

 

瀧澤さん

その代わり、掛布団の下に、アッパーシーツを敷いている。皆さんが足をバタバタさせているのは、このシーツなのです。

 

カツセ

そうか、僕たちを「ウォォォ!!」と大暴れさせる原因は、アッパーシーツなんですね?

 

 

瀧澤さん

そう。なぜシーツの間に挟み包むか。それは、掛布団のクリーニングの手間を減らすためにあったんです。掛布団を毎回洗うのはコストがかかるから、間に挟んであるシーツに体を触れさせることで、掛布団自体は洗わずに、シーツだけ取り換えれば済むわけです。

 

カツセ

なるほど!

 

 

瀧澤さん

そして、ベッドメイクは見た目が大事。シワをできるだけ目立たないようにするため、四方をピンッと張って、シーツをベッドカバーごとマットレスに入れ込んでいたわけです。そもそもシーツは大きいので、マットレスに挟み込まなければダラ〜っと垂れて床に着いてしまいますし。

 

カツセ

理解しました! マットレスに入れ込んでいるのは見栄えの問題ですが、あのシーツにはそんな意味があったんですね。

 

 

瀧澤さん

そう。ただ、それだとちょっと不衛生に感じるでしょう? そこで、ホテルのベッドメイキングスタイルも日々進歩していったのです。

 

カツセ

おお、また新たなかたちが……?

 

進化していくホテルサービスとベッドメイキング

説明する瀧澤さん

 

瀧澤さん

スプレッドタイプは「掃除のしやすさ、効率の良さ」を優先したスタイルでした。しかし、もっと顧客を満足させるベッドメイキングのかたちがあるはずですよね。そこで最近ブームになっているのが、「スプレッドタイプ」に代わる「デュベスタイル」です。

 

カツセ

デュベスタイル!

 

瀧澤さん

スプレッドタイプでは掛布団の間にシーツを使っていましたが、デュベスタイルでは、羽毛布団を布団カバーで包んだものを使用するんです。このとき利用する布団カバーはスプレッドタイプのものより布団の長さに合っているので、スプレッドタイプのようにマットレスに巻き込まないものもありますし、足を出しやすいのです。

 

カツセ

デュベスタイル、羽毛布団がぬっくぬくだし、足も出しやすいなら最高じゃないですか!

 

瀧澤さん

そうなんです。ただ、デュベスタイルはベッドメイクをするときに手間がかかります。スプレッドタイプはアッパーシーツを洗えばよいですが、デュベスタイルは一度カバーを外して、洗って付け替えなければならない。これはかなり手間ですよ。

 

カツセ

たしかに。

 

瀧澤さん

コストもかかるし、手間もかかるので、「デュベ」は当初、高級ホテルのみに採用されていました。ただ、ホテル業界は競争が激しい。ほかのホテルとの差別化を図るために、ビジネスホテルでもデュベスタイルを採用するところが増えてきたんです。

 

カツセ

なるほどなるほど!? おもしろい話になってきましたね!?

 

瀧澤さん

これは正確な情報ではないですが、僕の中で最初にデュベスタイルを取り入れたイメージがあるビジネスホテルは、「アパホテル」さんです。

 

カツセ

なんと! アパホテル!!

 

瀧澤さん

ビジネスホテルは部屋が狭いですよね。法律では「9平米」以上と定められているので、同程度の広さのホテルは多くあります。デュベスタイルにすると、羽毛布団とカバーは柄物ではなく「白」を使うことが多いので、部屋に広がりが出るんですよ。アパホテルさんがデュベスタイルを採用したのを見たとき、正解だなと思いました。

 

カツセ

デュべすごい。それを採用したアパもすごい。

 

瀧澤さん

逆に、最後までデュベじゃなかったのは「東横イン」さんだった気がします。全国で275店舗(2018年5月時点)もある日本最大規模のチェーンなので、運用を切り替えるのはもちろん大変。しかし、その東横インさんもデュベスタイルの導入が進められています。

 

カツセ

利用者目線に立ったデュベスタイルが全国で進んでいるのは、ひとえにホテル業界の頑張りと言えそうですね……。

ホテル評論家がオススメする“眠りを考えたホテル”

説明する瀧澤さん

 

カツセ

余談になるんですけど、これまでホテルに通いまくってきた瀧澤さんがオススメするホテルって、ありますか?

 

瀧澤さん

その質問は、難しいんですよ。「今度、旅行があるんだけど、どこのホテルがいいですか?」って聞かれても、その人が誰と行くのかも、どんな趣味嗜好があるのかも分からないですから。『ホテル評論家が自腹で泊まる! 最強のホテル100』にも書いたのですが、ひとりひとりに、最強のホテルがある。そのことを覚えておいてほしいですね。

 

カツセ

なるほど、すみません……。

 

瀧澤さん

そのうえで、フミナーズさんは眠りに関するサイトとのことなので、今回は「寝心地が良いホテル」を紹介したいと思います。たとえば「ウエスティンホテル」さんはヘヴンリー・ベッドというオリジナルマットレスを使っていて、「天空の寝心地」をうたっていますね。こういった高級ホテルでは1台100万円を超えるベッドを揃えているところもあります。

 

カツセ

100ま……!?

 

瀧澤さん

でも、高級ホテルだったらそれは当たり前に感じるかもしれません。それよりも、ビジネスホテルなのに寝心地が最高なホテルがおもしろいですよね。

 

カツセ

たしかに。

 

瀧澤さん

そこで、僕の一押しは、阪急阪神第一ホテルグループが運営している「レム」さん。

ホテルremmトップ

 

瀧澤さん

東京では日比谷と六本木、関西では新大阪駅にあるのですが、ホテル名がレム睡眠・ノンレム睡眠の「レム」から来ているほど、眠りを科学したホテルです。

 

カツセ

たしかにネーミングからして眠る気まんまんですもんね。

 

瀧澤さん

コンセプトが「眠りをデザインするホテル」なんです。日本ベッドさんと共同開発したオリジナルマットレスを使っているのですが、普段は朝4時くらいに起きて仕事を始める僕が、7時まで寝ちゃった。レムにはやられましたね。

 

カツセ

すごい。

 

スーパーホテルトップ

 

瀧澤さん

ほかに「眠り」で忘れてはならないのが、スーパーホテルさんです。スーパーホテルさんはおそらくビジネスホテルで初めて「眠り」に力を入れたホテルチェーンだと思います。最近行った新しい店舗では、フロントから客室までの導線が照明などに気遣っていて、眠りに誘う雰囲気です。客室でもヒーリングミュージックがかかっていて、既に眠りに誘導していました。

 

カツセ

もはや怖いですね、それ。

 

 

笑うカツセ

 

瀧澤さん

カプセルホテルも「眠り」に力を入れているところがあります。僕も個人的に大好きでよく行くカプセルホテルが、「豪華カプセルホテル 安心お宿」ですね。

 

安心お宿トップ

 

 

カツセ

名前がすでに豪華な予感すごいです。

 

瀧澤さん

東京だと汐留・新橋・秋葉原・新宿と荻窪にあり、この前、京都にもできました。カラオケで有名なパセラリゾーツと同じ運営会社の手によるカプセルホテルなのですが、何がすごいって、カプセルホテルなのにベッドがシモンズで驚きました。

 

カツセ

贅沢すぎる。

 

瀧澤さん

1泊5000円くらいしますが、カプセルホテルの域を超えています。また、カプセルホテルでは「音問題」がすごく重要で、たとえばキーボードの操作NG、電話も NGってホテルが多いんです。そうすると「目覚まし時計をどうするか?」って問題がありますよね。

 

カツセ

本当だ。みんな起きる時間は違いますし、でも音を鳴らしてはいけないし。

 

瀧澤さん

そこで「安心お宿」では、指定した時刻になると光がピカーッと降ってくるようになっています。

 

カツセ

光!!!!

 

瀧澤さん

それでも起きないと光が点滅しますし、アイマスクでもしない限り、確実に起こしてくれます。あれは画期的だと思いました。

 

カツセ

めちゃくちゃ行ってみたくなりました。どのホテルもいろんなことを考えているんですね……。

 

 

おわりに

本を見る瀧口さんとカツセ

改めておさらいするが、ホテルのベッドから足を出せないようにしているのは、見栄えの問題である。   ただ、単に見た目ばかりを気にしているのではなく、そこには宿泊者にできるだけ心地よい空間を提供しようとするホテル側の温かいもてなしと、ベッドメイキングの深い歴史が刻まれていた。

ベッドの端

足で「ブワァッ!」と掛布団を持ちあげるとき、なかなか足がだせなければ、スプレッドタイプ。羽毛布団があって、足が最初から出しやすければデュベスタイル。ホテルに行った際にはひとつ試してみたい貴重なトリビアを、皆さんにも覚えておいてもらいたい。

 

 

【おまけ】ホテル評論家がオススメしたラブホテル

本を見て笑う瀧澤さんとカツセ

 

カツセ

最後に余談の余談なんですが、瀧澤さんは、オススメのラブホ情報とかも、持っていたりするのでしょうか?

 

瀧澤さん

今はレジャーホテルと呼ぶことが多いですが、レジャーホテルはすごいですよね。どんな高級ホテルよりアメニティが多いです。ヘアドライヤーだけで4種類(ノーマル、カールドライヤー、ヘアアイロン2種)完備が常識となってきていますからね

 

カツセ

たしかにアメニティの数は半端ないなって思っていました。

 

瀧澤さん

そして、その中でもとくにオススメのレジャーホテルが、中央道・国立府中インターにある「ウォーターホテルS」さんです。

ウォーターホテルSトップ

 

カツセ

完全に高級リゾートホテルじゃないですか……?

 

 

瀧澤さん

100平米くらいの部屋があって、休憩料金で1万6,000円します。

 

カツセ

休憩で1万6,000円……!?

 

瀧澤さん

宿泊だと3万~4万円くらいでしょうか、でも決して高くはない。ルームサービスの食事もすごいです。食材の原価率は通常30%~40%と言われていますが、ウォーターホテルSさんは65%。青山で食べたら3千円はくだらないメニューが1000円で食べられますし、ドンペリをホテルで飲もうとすると5万円相場のところ、2万円くらいで提供されています。実際、ウォーターホテルSさんは朝8時に行っても満室のことも多く、驚きます。

 

カツセ

朝8時で満室!!

 

瀧澤さん

皆さん、タクシーでバンバン乗り付けてきます。広いデッキもあって、ジャグジーもあって、スチームサウナもある。ちょっとした旅行に行くくらいなら朝からウォーターホテルSさんに行ったほうが贅沢にくつろげるわけです。

 

カツセ

まさか府中インターにそんな世界があったなんて、知らなかったです。ありがとうございました……!

 

紹介いただいたホテル、ぜひ足を運んでみよう。

 

 

カツセマサヒコ

執筆

ライター/編集者

カツセマサヒコ

フリーライター/編集者。
編集プロダクション・プレスラボでのライター経験を経て、2017年4月に独立。
広告記事、取材記事、エッセイ、物語等の企画・取材・執筆を行う。
ツイートが20代女性を中心に話題を呼び、Twitterフォロワーは12万人を超える。
趣味はスマホの充電。


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