過呼吸はなぜ起こる?|予防・対策のセルフケア

過呼吸とは?|過呼吸の正しい対処法

ココロの悩み
呼吸呼吸法寝る前にやること

過呼吸とは、呼吸が浅く、速くなり、息苦しくなる状態。うまく呼吸ができず、「窒息してしまう…!」とパニックになり、さらに苦しくなってしまうこともあります。

自分が過呼吸になってパニックにならないよう、また周りの人が過呼吸になった時に正しい対処ができるよう、原因や症状、対処法を知っておきましょう。

 

過呼吸とは?

過呼吸はなぜ起こる?|予防・対策のセルフケア

突然発症すると、冷静に対処しづらい過呼吸。過呼吸とはどのような状態で、どんな症状が出るのかまとめました。

 

過呼吸って何?

過呼吸とは、「息を吸いすぎて、息を吐きすぎている」状態のこと言います。   平常時と比べて浅く、速い呼吸を繰り返すことで、血液中の二酸化炭素が大量に排出され、血中酸素が多くなり、同時に血液がアルカリ性になることで息苦しさを感じるようになります。

重度の場合、しびれやけいれん、意識混濁(こんだく)といった症状が出ることもあります。

<過呼吸が発生するメカニズム>

  1. 呼吸が浅く、速くなる
  2. 血液中の二酸化炭素濃度が下がり、酸素濃度が上がる
  3. 脳が息苦しさを感じ、「息を吸いすぎて、息を吐きすぎる」状態になる
  4. 血液中の二酸化炭素不足によって、手足のしびれなどの異常が出る

 

過呼吸の症状

過呼吸になると、血管の一部が収縮することで血液の量が減り、全身に酸素が行き渡りづらい状態になります。そのため、息苦しさだけでなく、以下のような症状が現れます。

  • 頭や身体がふらつく感じがする
  • めまい(自分が回っているような感覚)
  • 自分の身体が自分のものではない、現実に存在しないかのように感じる
  • 心拍数が増加する(脈拍が速くなる)
  • 手足や顔がビリビリする(机の角にぶつけたときに近いしびれ)
  • 身体中の筋肉がこわばる
  • 手のひらに汗をかく
  • 口が渇く(口の中がパサパサしてうまく話せない)

 

過呼吸の原因

過呼吸の原因

浅く、速い呼吸になってしまう「過呼吸」は、過度な緊張や不安、またパニック障害など精神的な理由によって引き起こされると考えられています。具体的にどんな原因があるのか、見ていきましょう。

 

過呼吸は自律神経の乱れが原因

過呼吸は、血圧や血液をコントロールする自律神経が乱れると、発症しやすくなります。自律神経の乱れは、心身の緊張状態を生み出して呼吸速度を上げ、血液中に酸素量を増加させるからです。

つまり、自律神経の乱れを引き起こす以下のような要因が、過呼吸の原因になると考えられます。

 

(1)ストレス・疲労

仕事へのプレッシャーや過労、仕事や私生活における人間関係など、精神的なストレスによって、自律神経が乱れ、過呼吸になりやすくなります。

 

(2)睡眠の質の低下

自律神経のうち、活動している時や緊張している時にはたらく交感神経は、昼に優位になり、休息をつかさどる副交感神経は、夜に優位になります。

しかし、睡眠の質が低下するなどして自律神経が乱れると、夜に交感神経が優位になってしまいます。交感神経が優位になると呼吸が速くなり、過呼吸が起こりやすくなります。

 

過呼吸になりやすい人の特徴

過呼吸になりやすい人の特徴

過呼吸の発症には、ライフスタイルも影響します。以下に挙げた行動をとっている人は過呼吸になりやすい可能性があるので、注意しましょう。

 

(1)ベッドにスマートフォンを持ち込んでいる

ベッドに入ってから眠るまでのあいだ、スマートフォンでSNSやニュースをチェックしてしまう習慣がある方は要注意。

ちょっとした気分転換のつもりでも、目から入るスマホの光が刺激となって脳が覚醒し、交感神経が優位になりやすくなります。眠る前に交感神経が優位になると、睡眠の質の低下にもつながります。

 

(2)就寝直前まで仕事のことを考える

眠りに入る直前まで仕事のことを考えるなど、脳が興奮状態になるような習慣も避けたい行動の1つ。  

思考のスイッチを切らないまま眠りに入ると、眠りが浅くなり、身体の緊張が抜けない状態で朝を迎えることになります。結果、翌朝起きた時に余計な力みが残って緊張状態になりやすくなり、浅い呼吸にもつながります。

 

(3)食べ過ぎ、飲み過ぎ

食べ過ぎや飲みすぎは、内臓を圧迫して息苦しさを生み、呼吸を乱す原因になります。特に、おなかがパンパンに張るほどの満腹状態だと、横隔膜を十分に動かすことができず、胸式呼吸になってしまいます。

胸式呼吸は、身体に力が入って呼吸が浅くなるので、過呼吸になりやすいといわれています。「腹八分目」という言葉がありますが、リラックスした呼吸をするためにも、食べる量や飲む量は、息苦しさを感じない程度に抑えましょう。

 

(4)頑張り過ぎてしまう

仕事やプライベートの活動を頑張り過ぎてしまい、「睡眠やリラックスできる時間がしっかりとれない」という人は、交感神経のスイッチが常にONの状態。身体が常に緊張状態で、呼吸が浅く速くなりやすくなっており、過呼吸が起こる危険性も高まります。

また、頑張りすぎてしまっている人がつく「ため息」は、過呼吸の「前触れ」という説もあります。「一定時間息をためて、一気に吐く」という行為は、呼吸のリズムを乱す原因になるので注意が必要です。

 

過呼吸の対処法

過呼吸の対処法

過呼吸は、症状が出てから30分ほどで症状が落ち着くケースがほとんどです。過呼吸がおさまるとともに血管が広がり、血流も平常時の状態に戻るため、重篤な状態になることはまれです。

しかし、いざ「息が吸えない」「酸素が足りない」といった過呼吸の状態になると、命の危険を感じ、焦ってしまう人もいるかもしれません。また、いざ過呼吸になった人を前にすると、冷静に対応できないこともあります。

そこで、いざというときのための過呼吸の対処法をご紹介します。

 

正しい過呼吸の対処法

過呼吸の対処をする際に重要なのは、「酸素を必要以上に摂取しないこと」です。今回は、「呼吸コントロール法」という、道具がなくても対処可能な方法を紹介します。

 

呼吸コントロール法

  1. 何かをしているときなら、とりあえず安静な姿勢をとる
  2. 息を止めて、10数える。その時に息を吸わないように気をつける
  3. 10まで数えたら、息を吐き、静かな落ち着いた調子で、自らに「リラックス」と声かけをする。その時、必ず鼻で息を吸うこと
  4. 「3秒間息を吐いて、3秒間息を吸う」ことを10回、1分間繰り返す。息を吐くたびに「リラックス」と自分自身に声をかける
  5. 再び10秒、息を止める
  6. 再び3秒息を吐いて、3秒鼻で息を吸う「6秒サイクル」の呼吸を1分間続ける
  7. 症状が落ち着くまで①〜⑥を続ける

出典:「パニック障害と過呼吸」(幻冬舎)

 

過呼吸のNG対処法

過呼吸になった時、「苦しい」と感じて余計に息を吸ったり吐いたりしたくなり、呼吸の回数が増えることがあります。すると、血液中の二酸化炭素濃度が下がり(酸素濃度が上がり)、過呼吸の症状がさらに悪化してしまいます。できるだけ落ち着いて呼吸をしましょう

ただし、深呼吸をするのはNG。深い呼吸は、酸素をたくさん取り入れてしまい、逆効果です。周囲の人が過呼吸になった時、「深呼吸」をすすめないようにしましょう。

 

過呼吸の予防法

過呼吸の予防法

過呼吸は突発的に起こるものですが、呼吸を整え、過呼吸を引き起こす原因を避けることで、予防することができます。ここでは呼吸法を中心とした予防法を紹介します。

前述のとおり、過呼吸は生活習慣が影響するので、呼吸法を毎日取り入れることがおすすめです。

 

丹田呼吸法

「丹田呼吸法」とは、ヘソから指四本分下にある「臍下丹田(せいかたんでん)」というツボを意識して、深呼吸をする呼吸法のこと。

丹田は“気の心臓”と呼ばれ、丹田に向かって横隔膜を動かし、深く呼吸をすることで、過呼吸の原因となる自律神経の乱れを調整できます。自律神経が整うと、心身ともにリラックスした状態になるので、試してみましょう。

<丹田呼吸法>

  1. 仰向けに寝た状態で、脚を軽く開く
  2. 脚の付け根をほぐすことを意識しながらつま先をゆらゆらと動かし、首の付け根をほぐすように頭を左右にゆする
  3. 両手を平らにしておなかの上に置き、両手の親指同士、人差し指同士をつけて三角形を作る。三角形の中心を、おへそに合わせる
  4. 身体の中にある息をすべて吐き切りながら、肩の力を抜く
  5. 鼻からゆっくりと息を吸いながら、横隔膜を下げるように、下腹(手を置いたおヘソの辺り)に空気を満たしつつ、軽くふくらませる
  6. そのまま、取り込んだ酸素を全身に拡散させるようなイメージで、3秒間、息を止める
  7. ゆっくりと息を吐きながら、身体の緊張が抜けていくように、下腹を軽くへこませる
  8. 心地良いと感じられるリズムで、⑤~⑦をしばらく繰り返す

 

アロマを使った片鼻呼吸

「片鼻呼吸」はヨガの呼吸法の一つで、鼻の穴の片方を指で押さえながら呼吸する方法。 ヨガの考えでは、右鼻からの呼吸は「活力」、左鼻からの呼吸は「落ち着き」をもたらすと言われており、左右の鼻から交互に呼吸することで、心身の興奮と鎮静の2つのバランスが整うと考えられています。

同時に、アロマセラピー(芳香療法)を行うことで、心と身体の安らぎが深まり、リラックス効果が高まります。足指や手首を軽くほぐして、ウォーミングアップしてから行うとさらに効果的です。

<アロマ×片鼻呼吸の方法>

  1. アロマポットやディフューザーで香りを広げ、あぐらまたは正座など、楽な姿勢で座る
  2. 右手の人差し指と中指を折り曲げる
  3. 下腹を締め、腰を立てて背筋を伸ばす。この時、左手は膝の上に置き、②の形にした右手を顔の前に置いて、息を吐いてリラックスする
  4. 右の親指で右鼻を閉じて、左鼻から息を吸う
  5. 息を吸いきったら、薬指で左鼻を閉じ、右鼻から息を吐く
  6. 息を吐ききったら、そのまま右鼻から息を吸う
  7. 親指で右鼻を押さえて、左鼻から息を吐く
  8. ④~⑦を1サイクルとして、5~10セット繰り返す
  9. 最後に、左鼻から息を吐ききったら、両手を膝の上に。目を閉じたまま自然な呼吸で余韻を感じる

 

ゆるめる呼吸

現代人は、パソコンやスマートフォンに集中するうちに自然と首が下を向き、呼吸が浅くなりやすい傾向にあります。浅い呼吸は過呼吸の原因にもなるため、ほど良く身体をゆるめることができる、「ゆるめる呼吸」を実践しましょう。

<ゆるめる呼吸の方法>

  1. 肩を持ち上げながら、鼻から息を吸う
  2. 息が吸えなくなったら、「ハアー!」と一気に吐き出す。息を吐く時は、おじさんのような「野太い声」をイメージすると、より身体がゆるみやすくなる
  3. 息を吐きながら、肩を落とす

 

ここで紹介した呼吸法については、以下で詳しく紹介していますので、参照してみてください。

 

過呼吸とパニック障害の違い

過呼吸とパニック障害の違い

過呼吸と似た症状が出るのが「パニック障害」。何度も過呼吸を繰り返す場合、パニック障害を併発している可能性があります。ここでは、パニック障害について紹介していきます。

 

パニック障害とは?

パニック障害とは、突然起こる動悸や発汗、めまいなどの「パニック発作」がくり返し起きてしまう病気です。

パニック発作は、電車に乗っているときや人ごみを歩いているとき、高速道路を運転しているときなどに、突然強いストレスを感じることで起こります。発症してから10分以内に発作がピークに達します。

パニック発作の症状は、以下のような傾向があります。全13項目の中で4つ以上当てはまる場合はパニック発作に当てはまります。

<パニック発作の症状>

  • 動悸、心悸亢進※、または心拍数の増加
  • 発汗
  • 身震い感または息苦しさ
  • 窒息感
  • 胸痛または胸部の不快感
  • 嘔気または腹部の不快感
  • めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
  • 現実感消失(現実ではない感じ)または離人症状(自分自身から離れていく感じ)
  • コントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖
  • 死ぬことに対する恐怖
  • 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  • 冷感または熱感

※編集部注:心悸亢進(しんきこうしん)―心臓の拍動数が増加して,前胸部に鼓動を強く感じること

出典:『パニック障害と過呼吸』(幻冬舎)

 

パニック障害の原因

パニック障害の原因は、まだ明らかになっていませんが、脳内神経伝達物質の異常が関連していると考えられています。

怖いものを見たり、不安を感じたりしたときに放出される神経伝達物質「ノルアドレナリン」が分泌されると、自然と心臓がドキドキして交感神経が働きます。

平常時は、興奮した状態をおさえるために神経伝達物質「セロトニン」が放出されますが、何らかのきっかけで「ノルアドレナリン」と「セロトニン」のバランスが崩れるとパニック発作が起こる、と言われています。

 

パニック障害の治療

パニック障害の治療で一般的なのが、パニック発作による不安や恐怖などを抑える抗不安薬や、脳内のセロトニンを増やす「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」の処方です。

また、近年は薬に頼らない「認知行動療法」という治療法が注目を集めています。不眠症治療などにも用いられるこの治療法は、患者一人ひとりに対して、発作が起きる状況や生活習慣、思い込みなどを改善し、呼吸のコントロールなどを促すという問診を中心とした方法です。

 

過呼吸は突然起こるため、本人も周囲の人も焦ってしまうことが多いものですが、対処法を知っておけば、いざというときにも冷静な行動がとれるはずです。

また、普段の呼吸法を整えるよう意識するだけで予防につながるので、実践してみてください。普段あまり意識しない呼吸のことだからこそ、普段からの予防が大切です。

 

<参照>   『パニック障害と過呼吸』磯部潮著(幻冬舎新書) 『いつもの呼吸で病気を流す』森田愛子著(ワニブックス)

photo:Getty Images

坪田 聡

監修

医師・医学博士

坪田 聡

医師として睡眠障害の予防・治療に携わる一方で、睡眠改善に特化したビジネス・コーチとしても活躍中。「快適で健康な生活を送ろう」というコンセプトのもと、医学と行動計画の両面から睡眠の質を向上させるための指導や普及に尽力。総合情報サイトAll about 睡眠ガイド。 「睡眠専門医が教える! 一瞬で眠りにつく方法」(TJMOOK 宝島社)、「パワーナップ仮眠法」(フォレスト出版)他、監修・著書多数。

医療法人社団 明寿会 雨晴クリニック 副院長

Site: http://suiminguide.hatenablog.com/


※体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。
編集部内で信頼できると判断した情報、並びに医師や専門家への取材を元に信頼性のある情報提供を心がけておりますが、自己の個人的・個別的・具体的な医療上の問題の解決を必要とする場合には、自ら速やかに、医師等の適切な専門家へ相談するか適切な医療機関を受診してください。(詳細は利用規約第3条をご確認ください)

眠りのQ&A