居眠りをする高齢男性

「傾眠」とは|居眠りは意識障害のサイン?家族が知るべき原因と対処法

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「傾眠(けいみん)」とは、睡眠時間は足りているのに日中に眠気を感じ、無意識のうちに居眠りをしてしまう意識障害の一種です。今回は、傾眠の原因や注意点について、きくかわクリニックの菊川昌幸先生にお話を伺いました。

傾眠とは

時計と睡眠中の高齢女性

「傾眠(けいみん)」は軽度の意識障害の一種で、日中、頻繁にウトウトして浅く眠っている状態を指します。肩を叩いたり、声をかけたりするなどの軽い刺激ですぐに目が覚めるのが特徴です。また、1回だけで目覚めることもあれば、刺激を与えても断続的に浅く眠ることもあります。

高齢者は特に傾眠傾向に陥りやすく、認知症や脳や内科的疾患などの病気が潜んでいる可能性もあるため注意が必要です。一見、睡眠不足などで起こるうたた寝や居眠りと同じように見える「傾眠」ですが、前者は生理的に起こるもので「傾眠」とは異なります。

 

意識障害の種類

意識障害のレベルは段階的に「傾眠」「混迷」「半昏睡」「昏睡」の4つに分類されます。

傾眠

肩を叩く、声をかけるなどの軽い刺激で目を覚まします。刺激がないと眠ってしまう状態です。

昏迷(こんめい)

強い呼びかけに対して一瞬だけ反応します。

半昏睡(はんこすい)

大声で呼んでも反応はしないものの、身体を強くつねるなどの刺激を与えると、身体の一部が反応します。

昏睡(こんすい)

重度な意識障害。外部からの刺激に対して反応がなく覚醒させることができない状態です。

 

傾眠と睡眠障害の違い

「傾眠」は意識障害の一種であり、ナルコレプシー、睡眠時無呼吸症候群、精神的なストレスによる不眠や過眠などによる居眠りを引き起こす「睡眠障害」とは異なります。ヒトの覚醒を司る脳幹網様体(のうかんもうようたい)が障害を受けたり、服薬によって機能が低下したりした場合に、「傾眠」が引き起こされます。

高齢者に多い傾眠ですが、年齢を問わず誰にでも起こりうるため、この違いの見極め方はとても難しいといえます。不安な方は専門医に相談しましょう。とくに、傾眠傾向があり、嘔吐や発熱を伴う、食事や水分を摂取できない、身体の麻痺が出ているなど随伴症状を伴っている場合は、すぐに医療機関を受診してください。

 

傾眠の原因

不安な表情の高齢女性

傾眠には、脳幹部にある「脳幹網様体(のうかんもうようたい)」と呼ばれる領域が大きく関係しています。脳幹網様体は、脳幹内にある神経繊維が網目状となった神経系で、自律機能を直接制御し、覚醒の調整を行うことで、ヒトの意識水準を決めています。

何らかの原因によって、脳幹網様体がダメージを受けたり、機能が低下したりすると、意識レベルを保つことが難しくなり、意識障害が起こります。これが傾眠につながるのです。傾眠を引き起こす原因は、次の6つが挙げられ、これらが複合的に影響し発症します。

 

加齢

傾眠は、高齢者に多く見られます。これは、加齢により記憶能力や認知機能が低下するように、神経伝達の機能が低下してしまうためです。

 

脱水症状

熱中症などで体温調整機能がうまく働かず、水分やミネラルなどの体液が不足し、脱水症状が起こります。脱水症状により身体機能が低下し、ボーッとする、うとうとした状態などの傾眠傾向が見られます。

 

薬の副作用

アレルギー症状を抑える抗ヒスタミン薬、風邪薬、抗てんかん薬、向精神薬や睡眠薬、アルツハイマー型認知症の薬などの副作用によって、脳の機能低下が引き起こされ、傾眠が起こることがあります。

 

認知症

認知症を発症してしまう仮説として、アミロイドベータ(βアミロイド)やタウ・タンパク質が脳に蓄積し、それが脳の神経細胞を破壊するものが最も有力とされています。そのため、脳幹網様体にダメージがあり、機能が低下してしまうと傾眠を引き起こしてしまいます。

 

脳の疾患

脳の血管が詰まったり、破れたりして起こる脳血管疾患(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)や脳挫傷のように脳が直接ダメージを受けてしまう場合に傾眠が起こることがあります。

 

内科的疾患

身体の別の部分に障害が起こることで、脳がダメージを受けて、傾眠を引き起こすこともあります。例えば、心不全や心筋梗塞などによって脳に十分な量の酸素を送ることができない場合や、肝性脳症や腎性脳症などのように肝臓や腎臓の働きが低下し、身体に有害な物質が排出されなかったり、ミネラルのバランスが崩れたりする場合です。

 

傾眠の対処法

カルテと処方薬

傾眠を放置しておくと重篤化することもありますが、日頃の生活を整えることで改善していくケースもあります。傾眠を改善させるためには、根本の原因を知り、医師の判断を仰いだ上で、対処することが大切です。傾眠傾向が出はじめたらできる対処法としては以下が挙げられます。

  • 専門の医療機関の受診
  • 主治医へ相談のうえ処方されている薬の量を見直す
  • できるだけ話しかける
  • 体を動かす
  • 規則正しい生活を心がける

 

医療機関を受診する

傾眠傾向が見られた場合には、内科や神経内科、老年内科、睡眠に特化したクリニックなどを受診しましょう。検査で原因となる疾患が見つかった場合には、疾患に応じた専門医のもとでの治療を行います。「うとうとしているだけ」という誤った判断により、意識障害が進行してしまう可能性もあります。

 

処方された薬の量を見直す

処方された薬の量が原因で傾眠が起きている場合もありますので、薬を飲み始めたら傾眠傾向が出るようになったなど原因が明らかであれば、医師へ相談してみましょう。

 

話しかける・体を動かす

傾眠傾向がある人には、話しかけたり、身体を動かすために一緒に散歩に出かけたりしましょう。脳を覚醒させ、体温を上げることも有効です。身体を動かすことで、食欲もわき、筋力をつける効果もあります。

 

規則正しい生活を心がける

昼夜逆転の生活を元に戻すためにも、規則正しい生活をしましょう。朝は決まった時間に起き、日光を浴びてください。また、きちんと朝食を摂り、夜は決まった時間に眠るといった生活リズムを整える工夫もしましょう。規則正しい生活を続けることで、傾眠が改善していくこともあります。

 

30分程度の仮眠

15時まで、20~30分程度の仮眠をとることで、脳の疲労が取れすっきりすることができます。30分後には必ず起こして覚醒させましょう。

 

家族や介護する側の注意点

高齢女性と介護者の女性

家族や介護などで身近に傾眠傾向の人がいる場合は、以下の点に注意しましょう。本人に対して良かれと思ってとった行動が、逆に命取りになりかねないこともあります。傾眠は意識障害だということを理解し、丁寧に対応することを心がけましょう。

 

強引な行為をしない

傾眠をやめさせるために、強く揺さぶる、大声で怒鳴るなど強引な行為はやめましょう。

 

嘔吐や発熱がないか

嘔吐や発熱がある場合には、意識障害が進行していることもあります。速やかに医療機関を受診しましょう。

 

食事の摂り方

誤嚥性肺炎の可能性

うとうとしながらの食事は、誤嚥性肺炎(※)を起こす可能性があるため大変危険です。無理に食事をさせずに、起きてから食事をさせるようにしましょう。

(※)嚥下機能障害により、食べ物や唾液が誤って気管に入ってしまい、これが原因で肺炎となってしまうこと

「隠れ誤嚥」にご用心! 眠っている間に進行する「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」とは?
→誤嚥性肺炎を引き起こす原因と、予防法について解説しています。

栄養失調や脱水症状

傾眠傾向が強く、眠ってばかりいることで食事や水分を摂れなくなってしまうと、栄養失調や脱水症状になるリスクが高まります。栄養補助食品や電解質を補給できるようなものを利用して、食べやすいものや飲み込みやすいものにするなどの工夫をしましょう。

 

筋力低下による転倒

傾眠が起きると、眠っている時間が長く不規則な生活で食事量が減り、ほとんど動くことなく寝ているため、筋力が低下します。このような原因により、つまずいたり、転倒したりすることが多くなるため、家族や介護者が注意し、転倒を防ぐように気をつけましょう。

 

服薬による副作用は出ていないか

服薬により傾眠傾向が強い場合には、薬剤師に相談し、医師に相談のうえ、眠気が少ない薬に変えるなどの対処をしましょう。

 

傾眠は、介護する側の心がけひとつで改善されることもあります。同居している高齢の家族に傾眠の症状が見られるようでしたら、一度クリニックの受診をしてみましょう。

 

<参照>
意識障害について:日本神経学会
主訴別の患者の診かた:医学書院
脳幹について
うつ病:厚生労働省資料

菊川 昌幸

監修

医師・医学博士

菊川 昌幸

医療法人社団 健寿の樹 きくかわクリニック 院長

Site: https://kikukawa-cl.jp/


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