過緊張の原因と対処法|仕事のストレスで常に緊張状態に陥ったら

過緊張の原因と対処法|仕事のストレスで常に緊張状態に陥ったら

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マインドフルネス不眠寝つけない

「過緊張」とは、ストレスによって緊張が高まりすぎ、過剰に交感神経が優位になってしまう状態を指します。

過緊張が続くと睡眠の質の低下や頭痛などの身体的な不調を招くだけではなく、うつ病にもつながる恐れもあります。

今回は、過緊張の症状や原因、正しい対処法、予防法などについて、杏林大学名誉教授の古賀良彦先生にお伺いしました。

 

過緊張の症状

過緊張で頭痛に悩む女性

「過緊張」とは、仕事や試験などのストレスによる緊張で、過剰に交感神経が優位になってしまう状態です。

そのような人は、ストレスを感じる場面が過ぎても緊張状態が続き、状況にかかわらず常に交感神経が高ぶるために、心身にさまざまな悪影響が及ぶ恐れがあります。

ここでは、過緊張が続いてしまったときに引き起こされる症状について解説します。

 

睡眠障害

過緊張が続くと最も出やすい症状が「睡眠障害」です。
 
「本来リラックスしているはずの睡眠時にも交感神経が高ぶってしまうため、寝つきが悪い、眠りが浅くなる、朝早く目覚めてしまうなど、不眠の症状が現れやすくなります。

また、睡眠の質が低下することで、眠気や疲労、気分の落ち込みなどを引き起こし、日中のパフォーマンスに悪影響が出ることもあるでしょう」(古賀先生)

 

頭痛・肩こり

交感神経が過剰に高ぶった状態が続くことで、筋肉がこわばり、頭痛や肩こりなどにつながってしまいます。
 
「交感神経が常に高ぶっていると、筋肉を緩める時間がなくなり、身体全体が固くなります。

特に、こめかみ付近にある側頭筋や、肩甲骨あたりにある僧帽筋(そうぼうきん)といった筋肉がこわばりやすく、頭痛や肩こりを引き起こしてしまうこともあります」(古賀先生)

 

冷え、疲労感

過緊張が続くと血行が悪くなり、手足の冷え、全身の疲労感につながります
 
「交感神経が高ぶった状態が続くと、皮膚の血管が収縮し血行が悪くなるため、手足に冷えの症状が現れやすくなります。

さらに、血行不良は代謝の低下につながり、全身の筋肉や内臓などへ酸素や栄養がうまく行き渡らなくなるため、全身にだるさや疲労感を感じることもあるでしょう」(古賀先生)

 

過緊張の原因

ストレスに悩む男性

過緊張を引き起こす原因は、ストレスによる自律神経の乱れにあります。

交感神経と副交感神経からなる自律神経は、正常な状態であれば、朝目覚めたときに覚醒をつかさどる交感神経が優位な状態に、就寝に向けて休息をつかさどる副交感神経が優位な状態に切り替わっていきます。
 
しかし、過緊張が続くとそのバランスが崩れ、夜になっても交感神経が高ぶったままで、副交感神経への切り替えがスムーズに行われなくなります。

こうした自律神経の乱れを引き起こす主たる要因は、「日常にあふれるさまざまなストレス」だと古賀先生はいいます。

 

ストレスの種類

ストレスとは、「ストレッサー」といわれる「外部からの刺激」によって心身に「ストレス反応」が出ている状態をいいます。

ストレッサーは、騒音や臭いといった物理的、あるいは化学的なものから、職場や人間関係の問題といった「ライフイベント」といわれる心理社会的なものまで、日常生活の至るところに潜んでいます。
 
「仕事のちょっとしたミスや不安など、毎日のささいなトラブルは『デイリーハッスル』と呼ばれ、一つひとつは小さな問題であるものの、それが積み重なることで大きなストレスになっていきます。

このストレスを放置し蓄積させてしまうことが、過緊張の大きな原因になっています」(古賀先生)

 
ストレスの要因であるストレッサーの分類と、その代表的な種類は以下の通りです。

  • 物理的ストレッサー
    温度、気圧、騒音など
  • 生物的ストレッサー
    ウイルス、痛み、疾病など
  • 化学的ストレッサー
    アルコール、薬物、光化学スモッグ、大気汚染物質、臭いなど
  • 心理社会的ストレッサー(ライフイベント)
    転居、死別、結婚、昇進、退職、事故、介護、借金など

 

過緊張になりやすい人

過緊張になりやすい人

過緊張になりやすい人には、大きく分けて3つの傾向が見られるといいます。以下に過緊張になりやすい人の特徴をまとめました。

 

周囲の変化や刺激に敏感な人

このタイプの人は、常に緊張が解れず、自らストレスを溜め込みやすい心理状況をつくり出してしまう傾向があります。
 
「周囲の変化や刺激に敏感で、繊細といわれるような人は、交感神経が高ぶった緊張した状態が続いてしまう傾向にあります。

一方、楽観的でのんきな性格の人は、リラックスするのが上手で、ストレス状態が続かないことが多いため、過緊張になりにくいとされています」(古賀先生)

 

長時間にわたり緊張状態が続く仕事をしている人

神経を使い続ける必要がある仕事や、責任が重い仕事をしている人も過緊張になりやすいといわれています。
 
「繊細な感覚が要求される仕事や、多忙で気持ちを緩める時間がない仕事やポジションなど、長時間にわたって緊張状態を強いられている人は、どうしても日中の緊張した感覚を夜まで引きずってしまいます。

そのまま布団に入っても交感神経は高ぶったままなので、寝つきが悪くなり、睡眠の質も低下してしまいます。

睡眠の質が低下すると、身体も脳も休まらなくなり、自律神経の乱れを整えることができず、結果、過緊張が助長される可能性があるのです」(古賀先生)

 

過度な疲れが続き、睡眠中にリラックスできない人

深夜まで仕事が続き帰宅後は寝室へ直行、入眠前の入浴やストレッチなどで身体もほぐさず、疲労が蓄積している人も過緊張になりやすいといえます。
 
「日中に緊張を強いられている人であっても、入浴などで緊張を緩め、リラックスして眠ることができれば問題はありません。

しかし、心身ともに疲れ、リラックスする余裕や時間もなく、ただ寝て起きるだけのような睡眠は、翌日に緊張状態を持ち越してしまいます。その積み重ねが、過緊張へとつながってしまうのです」(古賀先生)

 

過緊張が引き起こす病気

問診を受ける患者

過緊張が続き自律神経も乱れたまま放っておくと、以下のようなさまざまな心身の不調につながってしまいます。症状や環境に過緊張の不安を感じる方は、早めに専門医を受診しましょう。

 

うつ病

「うつ病」の症状が発症するメカニズムは過緊張と深く関係しています。
 
「うつ病は自律神経が乱れることがきっかけで起こることがあります。

ストレスからくる過緊張は、憂鬱感や疲労感、日中の強い眠気を継続的に引き起こすなど、自律神経のバランスを整えることを難しくしてしまうため、うつ病発症の引き金になることが少なくありません」(古賀先生)

 

パニック症

過緊張が続き、さらに進行して症状が酷くなってしまうと、パニック症を誘発する恐れがあります。
 
「過緊張になると交感神経が高ぶって脈拍が速くなるため、息苦しさや息切れを感じるほか、心臓の鼓動が速くなったり、身体が震えたりすることがあります。

この状態が悪化すると、急激に不安や恐怖を感じる『パニック症』に発展する可能性があるのです」(古賀先生)

 

胃潰瘍

過緊張は、常に心身にストレスを与えているため、胃に大きな負担を与えてしまうこともあります。
 
「過緊張が続くと、ストレスによって胃粘膜が刺激され続け、胃潰瘍を誘発することがあります。重度の場合は、胃壁が大きくえぐれてしまったり穴が開いたりして、手術が必要となります。

日常生活で緊張状態が続き、胃に違和感がある場合、放置せずに専門医に相談するようにしましょう」(古賀先生)

 

高血圧

交感神経が高ぶった状態である過緊張を放置すると、血管が収縮し、血圧の上昇につながることがあります。
 
「通常であれば、血圧は一時的に高くなっても自然と正常な値に戻ります。しかし、過緊張が続くと血圧が自然に下がらず、高血圧が常態化してしまいます。

高血圧が続くと、血管に大きな負担がかかり、脳梗塞や心筋梗塞といった死亡リスクの高い疾患につながる恐れもあります」(古賀先生)

 

気管支喘息

交感神経が高ぶった状態の過緊張は、喘息発作につながるケースもあります。
 
「交感神経が高ぶった状態だと、気管支が収縮して喘息の発作が起きやすくなります。

特に子どもの場合、精神的な緊張から小児喘息を引き起こすケースが多く見受けられます」(古賀先生)

 

過緊張性発声障害

子どもの場合、過緊張によって「喋り」に悪影響が出ることがあります。
 
「過緊張で舌の奥に力が入りすぎてしまい、声が小さくなる、しどろもどろになる、ろれつが回らなくなるなどの症状が現れることがあります。

また、家庭では普通に話せるのに、幼稚園や小学校など特定の場所や条件では話さなくなる『選択緘黙(せんたくかんもく)』という症状が起こることもあります。

一般的には、歳をとるとともに、どこででも自然に話せるようになることが多いですが、緊張が緩和されない状況が常態化すると、大人まで症状が残ることもあります」(古賀先生)

 

過緊張の対処法

リラックスする女性

過緊張は、適切に対処すれば症状の解消が見込めます。
 
「原因の大元である自律神経の乱れを整えることが、過緊張を解消する近道です」(古賀先生)
 
以下に過緊張を解消するための対処法をまとめました。

 

リセット呼吸術

「リセット呼吸術」は、自律神経のバランスを整える方法です。呼吸は自律神経と深く関わっていて、息を吸ったときには交感神経の働きが高まり、息を吐いたときには副交感神経の働きが高まるという仕組みになっています。
 
「息を吐く時間を吸う時間よりも意識的に長くすることで、副交感神経を刺激することができます。腹式呼吸を基本とし、息を吐く時間を吸った時間の2倍ほど時間をかけるイメージで行ってください」(古賀先生)
 
以下に具体的な実践方法が紹介されているので、気になった方は確認してみましょう。

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リセット呼吸術の方法と効果|ストレスの上手な対処法【医師監修】

→副交感神経を優位にする「リセット呼吸術」の効果や方法を解説しています

 

マインドフルネス瞑想

寝る前に緊張がほぐれないというときは、「マインドフルネス瞑想」がおすすめです。その瞬間の自分の感情を客観視することで、ネガティブ思考など感情の乱れを起こしにくくする方法です。
 
「過緊張が続いてしまう人は常に交感神経が高ぶった状態でリラックスできないため、日中に感じた不安やイライラを、リラックスできるはずの就寝時にも持ち込んでしまいます。

マインドフルネス瞑想は、そうした雑念から解放される方法として有効です。呼吸を整えながら自分の心がどんな状況なのか見つめていくと、睡眠前にネガティブな感情を切り離せるようになるはずです」(古賀先生)
 
具体的な方法については以下を参考にしてください。

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寝る前も!マインドフルネス瞑想の基本のやり方・時間・タイミング

→感情の乱れを整理できる「マインドフルネス瞑想」の方法を解説しています

 

自律訓練法

一時的・一晩程度寝つきが悪いだけなのに、「もしかして不眠かもしれない」「どうすれば眠れるか」など考えすぎて過緊張になり、睡眠障害につながってしまうことがあります。このようなときに有効なのが「自律訓練法」です。
 
「自律訓練法は、『右腕が重たい』『左腕が重たい』など、意識を身体の一点に集中させて呼吸を整えることで、副交感神経を優位にさせ、緊張状態をほぐす方法です。

副交感神経が優位になりリラックスするため、寝付きもよくなり、睡眠の質も向上するでしょう」(古賀先生)
 
詳しい自律訓練法については以下にまとめているので、参照ください。

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寝る前にできる自己催眠で「なりたい自分」になる方法

→リラックスした状態を「自己訓練法」で作る方法を解説しています

 

過緊張の予防法

休憩をとる男性

過緊張を予防するには、日々のストレスにこまめに対処し、緊張状態を引きずらないことが大切です。ここでは、過緊張を予防する方法を紹介します。

 

3つの「R」を実践する

過緊張の予防には、ストレスの要因となるストレッサーと向き合い、上手く対処する工夫が必要です。

ここでカギとなるのが、「 Rest(レスト)」「Relaxation(リラクゼーション)」「Recreation(レクリエーション)」の頭文字を略した3つの「R」です。以下で3つのRについて解説していきます。

 

Rest(レスト)

緊張を緩めるためには、気持ちを切り替えるための休憩(レスト)をとることが重要です。
 
「自律神経を整えるために十分な睡眠をとり、心身ともに休むことが最も有効です。ただ、過緊張の人に『寝てください』といっても逆効果になる場合もあります。

そこでおすすめしたいのが、仕事の合間に意識的に休憩を取ることです。30分に一回深呼吸をしてみる、コーヒーブレイクの時間を決めておくなど、緊張を緩める時間を確保するようにしましょう」(古賀先生)

 

Relaxation(リラクゼーション)

ここでいうリラクゼーションとは、「気持ちを楽にできる、リラックスできる時間をとる」ということです。
 
「先ほどの対処法でも紹介した、呼吸法やマインドフルネスなど、副交感神経を高めるリラックス方法を日頃から実践してみてください。

また、ストレッチや入浴など、自分の気持ちが楽になる行動をいくつか見つけておくとよいと思います」(古賀先生)

 

Recreation(レクリエーション)

過緊張をほぐし、自律神経のバランスを元に戻すためには、心から楽しめること(レクリーション)をすることも大事です。
 
「積極的に活動することで、ネガティブな感情からポジティブな感情へと切り替わり、自律神経のバランスが整います。

ポイントは『毎日できる』ことです。用意や片づけが簡単、お金もさほどかからない、アロマやジョギングなどがおすすめです。

また、どんなに忙しくても、1品だけお惣菜を作る習慣をつけるのも効果的だと思います。献立を考えている間や調理中は料理に集中できるので、嫌なことも忘れられるはずです」(古賀先生)

 

photo:Getty Images

 

古賀 良彦

監修

医師・医学博士

古賀 良彦

杏林大学医学部 名誉教授


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