体内時計によって制御されている寝起きのタイミングと、生活スケジュールで決められた実際の寝起きのタイミングのずれによって生じる、「社会的時差ぼけ」かもしれません。

 

ヒトの脳内には生物時計(体内時計)が存在し、十分に活動・睡眠をとれるように体内の環境を整え、最適な睡眠と覚醒のタイミングを制御しています。体内時計の周期には個人差があり、周期が長い人と短い人では、眠くなる時刻や自然と目が覚める時刻が異なります。これをクロノタイプといいます。(いわゆる朝型・夜型、日周指向性と呼ばれるもの)。そのため、学校や会社などの社会生活で求められる生活スケジュール(社会時計)によって起きる時刻と、体内時計によって決められた起きる時刻との間にずれが生じることがあります。これを、社会的時差ぼけといいます。

 

例えば、体内時計によって決められた眠くなる時刻が午前1時で、身体が求める起きる時刻が午前9時の個人が、午前1時に就寝し、会社に間に合うために午前7時に目覚まし時計を使って起きたときには、身体の求める時刻より2時間早く起きたために、睡眠時間が2時間不足します。その結果、起きるのも辛く、日中も眠気が生じるといった、慢性的な睡眠不足になってしまうのです。

 

平日に溜まった睡眠不足を取り戻そうと、休日に寝だめをすると、起きる時刻が普段よりも遅くなり、眠気は解消されますが、眠たくなる時間帯が普段よりも遅くなってしまいます。しかし、休日明けの月曜日には、社会時計によって起きる時刻が決められているため、睡眠時間はさらに短くなり、眠くて仕方がない状態になってしまうわけです。

 

まずは、自分のクロノタイプを知り、社会的時差ぼけによる睡眠不足が生じている場合には、平日は夜間の睡眠とは別に短時間の仮眠(昼寝)をとる、休日は普段より早く就寝し、起床時刻が遅れないようにする等の対策が重要です。最近の研究では、社会的時差ぼけが肥満のリスクを高めることが報告されており、企業によっては個人のクロノタイプに合わせてフレックスタイムを導入する試みも検討されています。

 

※クロノタイプ(朝型夜型、日周指向性)を判定するための質問紙(Munich ChronoType Questionnaire: MCTQ, ミュンヘンクロノタイプ質問紙)は、2003年にドイツのLudwig-Maximilian大学のTill Roenneberg教授によって提案されました。国内では、国立精神神経医療センターの三島和夫先生の研究グループにより日本語版に翻訳され公開されています。
日本語版MCTQ http://mctq.jp/

監修:山仲勇二郎先生
北海道大学大学院 医学研究科 生体機能学専攻 生理学講座 助教。主な研究分野は、環境生理学、時間生物学、睡眠科学。日本時間生物学会評議員、日本生理学会評議員。環境生理学グループ久野寧記念賞(2012年)、日本時間生物学会学術奨励賞(2014年)。国内唯一の時間隔離実験室を使用し、ヒトの生物時計を対象とした時間生物学研究に従事している。主な著書に『体内時計の科学と産業応用(株式会社シナジー 2012年)』、『からだと温度の事典(朝倉書店 2010年)』など。
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