睡眠時間を削って学習時間にあてたのに、思ったほどの成果が出せなかった…という経験はありせんか? それは睡眠不足による脳の機能低下が原因です。脳に学習した情報を整理して記憶させるには、十分な睡眠時間が必要。さらに、学習効果を高めたいときには睡眠の質を上げることが重要です。そこで今回は睡眠と学習の関係や、学習効率を上げるために最適な睡眠法などをご紹介します。

睡眠が学習に与える影響とは? 学習効率を高める眠り方

 

睡眠と学習の関係

睡眠と学習の関係

睡眠時間を削って学習しても、あまり身にならないのはなぜなのでしょうか。ここでは、睡眠と学習の関係について解説します。

睡眠が学習にもたらす影響

(1)記憶を整理する

脳は、身体が休んでいて脳が目覚めている状態の「レム睡眠」の時に、日中インプットした情報を整理するなどのメンテナンスを行います。また、同時に記憶として定着させる働きをします。

(2)脳をクールダウンし、学習効率を上げる

睡眠によって脳の疲労回復ができたかどうかも、学習効果に影響します。レム睡眠が記憶の定着に作用する一方で、身体と脳が両方休んでいる状態の「ノンレム睡眠」の時は、日中にフル稼働していた脳をクールダウンさせます。疲労やストレスが十分な睡眠によってリセットされると、脳のパフォーマンスが回復し、翌日の学習効率が上がります。

睡眠しながら学習することは可能?

睡眠と学習、といえば、眠りながらにして学習をする「睡眠学習」を思い浮かべる人がいるかもしれません。しかし、学習は意思を持った行動の一つなので、脳が目覚めて意識がはっきりしている「覚醒状態」のときしか、何かを学習することはできないといわれています。基本的に、睡眠中は外界から得た情報を処理することはできないので、「睡眠学習」は現実的ではありません。

睡眠不足で起こるリスク

睡眠不足で起こるリスク

睡眠不足になると、脳に記憶が定着しにくくなるなど、次のようなデメリットが生じてしまいます。

脳の機能低下

仕事や勉強、スポーツなどで使うのは、「思考」「創造性」「記憶」をつかさどる脳の「大脳皮質(だいのうひしつ)」です。十分な睡眠をとり、脳に休息を与えないと、疲労が蓄積し、正常に機能しなくなります。すると、集中力や思考力が低下して作業の能率が悪くなってしまいます。

集中力の低下

脳の機能が低下すると、注意力が散漫になり、ひとつのことに集中できなくなります。すると、学習時に簡単な計算もミスをしたり、文章を読み間違えたりするなどのケアレスミスが増え、学習効率が下がります。

論理的な思考能力の低下

論理的な思考力を使い、判断や計画、分析するときには、脳の「大脳皮質」の中の「前頭連合野(ぜんとうれんごうや)」が機能します。
 
睡眠時間が不足すると、「前頭連合野」が十分に休息できなくなり、機能が低下します。すると、思考のスピードが落ちて柔軟に物事を判断できなくなり、学習効率が悪くなります。

精神面への影響

睡眠不足によって脳が疲労した状態になると、気分や感情のコントロールが難しくなるといった影響が出ます。

意欲の低下

日中に脳や身体を動かすと、体内に老廃物がたまります。通常は睡眠をとることで老廃物を分解・除去できますが、睡眠不足になると老廃物が蓄積し、身体が重い、だるいといった症状が出ます。すると、目の前の学習や仕事、作業に対するやる気が低下し、新しいことにチャレンジする意欲もわかなくなってしまいます。

自己評価の低下

睡眠の質が低下した状態が続き、睡眠不足の状態になると、次第に物事をネガティブに考えるようになります。これは、脳の奥に位置する人間の感情や記憶をつかさどる「扁桃体(へんとうたい)」と呼ばれる部分が正常に機能しなくなり、感情をコントロールできなくなるためです。状況の変化に柔軟に対応できなくなったり、物事を誤ってとらえたりしてしまうため、イライラやゆううつ感を引き起こします。同時に、自分の力量や仕事に自信がなくなったり、自己批判をしたりしてしまいます。

学習効率を高める睡眠法

学習効率を高めるためには、十分な睡眠時間だけではなく、睡眠の質の確保も重要です。早めに寝床に入っても、なかなか寝つけなかったり、夜中に目が覚めてしまったりすると、脳の疲労が十分に回復せず、学習効率が下がってしまいます。ここでは、より睡眠の質を高めるための方法を紹介します。

睡眠の質を高める快眠法

睡眠の質を高めるために、就寝前の行動を工夫しましょう。スムーズに眠りに入ったり、深い眠りに入ったりするために必要なポイントを以下にまとめました。

(1)就寝1時間前にぬるま湯に入る

スムーズな眠りのためには、身体の内部の温度「深部体温」を一度上げ、その後下げることが有効。湯船につかると、体温が上って、一時的に血管が広がり、入浴後には身体の熱が外に排出されるため、深部体温が下がります。これにより、自然な眠りにつくことができます。
 
ただし、熱すぎるお湯に長時間つかったり、就寝直前に入浴したりすると、熱がなかなか体内から抜けず寝つけなくなってしまいます。38〜40度のぬるま湯に設定し、就寝1時間前には入浴をすませるようにしましょう。

(2)入浴後はドライヤーで髪を乾かす

髪がぬれたまま放置すると首元が冷え、覚醒をつかさどる交感神経が刺激されてしまうため、スムーズに入眠しづらくなってしまいます。特に髪が長い人は、3分程度でもいいので、ドライヤーで髪を乾かす習慣をつけましょう。

(3)寝室ではテレビやスマートフォンを見ない

テレビやスマートフォンのディスプレイから発せられる青い光の「ブルーライト」には、睡眠をうながすホルモン「メラトニン」の生成を抑制し、脳を覚醒させる作用があります。テレビやスマートフォン、パソコン、ゲーム機などは、就寝の1時間前から見ないようにしましょう。

(4)夜はハーブやコーヒーのよい香りをかぐ

嗅覚は脳と深く結びついているため、「よい香りをかぐ」と心身がリラックスし、寝付きがよくなります。とくにラベンダーやカモミールなどハーブ系のアロマには、安静効果があります。また、コーヒー豆や粉末を容器に入れ、枕元に置き、香りを楽しむことでもリラックス効果が上がります。

(5)気になることはメモ書きでアウトプット

不安やストレスを抱えたまま眠りに入ると、夜中に目が覚めやすくなったり、深い眠りにつけなくなったりします。眠る前にリラックスするために、気になることをメモ帳にアウトプットし、心のモヤモヤを吐き出してから眠りにつくようにしましょう。書く内容はできるだけシンプルに、「勉強」「〇〇さん」などの単語だけでもよいでしょう。

(6)眠る前にコップ1杯の水を飲む

睡眠中にしっかり汗をかいて体温を下げると、深い眠りにつくことができます。そのためにも、就寝前に必ずコップ1杯の水を飲んでください。ただし、冷えた水は身体を緊張させ、覚醒させてしまうため、常温の水を飲みましょう。

日中の仮眠法

睡眠時間が短くなってしまったときは、日中に仮眠を取りましょう。ここでは、効率的に脳の疲労回復ができる仮眠法を紹介します。

(1)15時までに15〜20分眠る

正午から15時までの間に15〜20分程度の仮眠をとり、脳の疲労をとりましょう。
 
15時以降に仮眠をとると、体内時計のリズムが崩れ、夜になかなか寝つけなくなってしまうことがあります。また、20分以上眠ってしまうと、深い眠りに入ってしまうため、すっきり目覚められなくなってしまいます。アラームをセットするなどして時間を守りましょう。

(2)カフェインをとってから仮眠をとる

カフェインの覚醒効果があらわれ始めるのは、カフェインをとってからおよそ15〜20分後になります。なので、仮眠をとる直前にコーヒーを飲んでおくと、スッキリと目覚められます。

学習効率を上げるためのスケジュール

学習効率を上げるためのスケジュール

1日の脳のリズムに合わせて学習内容を変えることで、学習効率をより高められます。ここでは、効率よく習得するための学習法を紹介します。

午前中は「論理」が必要な教科を学習

睡眠中に記憶が整理されるため、朝に目覚めた直後は頭がすっきりした状態です。そのため、朝は情報がスムーズに頭に入り、思考が整理されやすい時間。国語や数学など論理力や思考力が問われる問題を解くと、学習がはかどります。

空腹時に暗記が必要な教科を学習

空腹時には「グレリン」という脳内ホルモンが分泌されます。「グレリン」は記憶をつかさどる「海馬(かいば)」の働きを促進するホルモンです。「グレリン」が多く分泌される空腹時、たとえば昼食の前に暗記タイムをもうけてみましょう。

学習中に眠くなったときの対処法

学習中に眠くなったときの対処法

学習中、不意に強い眠気におそわれ、困ったことはありませんか? ここでは、学習中の睡魔の対処法を紹介します。

日光浴

強い光を浴びると、睡眠ホルモンである「メラトニン」の生成をおさえられるため、眠気を解消できます。

アイソメトリックス(等尺性運動)

「アイソメトリックス」とは、関節を動かさず筋肉を収縮させる運動のこと。交感神経が活発になり、血圧や体温も上がるため、脳や身体が活性化します。簡単な「アイソメトリックス」は、「両肘を直角に曲げ、両手のひらを胸の前で合わせて、5~10秒間思いっきり押し合う」という方法です。

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冷水での洗顔

冷たい刺激によって交感神経が活発になり、一時的に目が覚めます。即効性があるので、「いま眠るわけにはいかない!」というときの緊急対策として試してください。
 
監修:坪田聡(雨晴クリニック副院長)
 
<参照>
『ぐっすり眠れる5つの習慣』坪田聡(三笠書房)
『合格を勝ち取る睡眠法』遠藤拓郎
『受験脳の作り方』池谷裕二(新潮文庫)
『「睡眠力」を上げる方法』白川修一郎(永岡書店)
『脳も体も冴えわたる1分仮眠法』坪田聡(すばる舎)
『パワーナップ仮眠法』坪田聡(フォレスト)

photo:Getty Images

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