寝不足になると、心身ともに不調が出ます。すぐに解消できるものから、慢性化してしまったり、病気を引き起こしたりするものまで、さまざまな症状があります。寝不足による症状を改善するには、生活習慣の見直しが必要。今回は寝不足になったときに出る症状や、寝不足になったときの対処法、寝不足を予防する方法などをまとめました。

寝不足のサインって? 寝不足が引き起こす症状と対処法

 

寝不足になったら出る症状

寝不足になったら出る症状

寝不足とは、十分に睡眠時間が確保できなかったり、睡眠の質が下がったりして睡眠不足になることをいいます。
 
不注意によるミスが続くなど「寝不足のサイン」を見逃すと、生活習慣を見直す対策がとれず、日中に強い眠気におそわれるなど、さらに深刻な症状が出てしまう可能性があります。

寝不足のサイン

日常生活を送るうえでよく起こりがちなミスも、実は寝不足が原因かもしれません。以下に、寝不足になったときによく出る症状をまとめました。

人やモノにぶつかりやすくなる

寝不足になると、脳の目覚めのレベルが下がり、自分の身体の動きを正しく予測する感覚が低下します。すると、頭の中のイメージと実際の身体の動きにギャップが生まれ、ドアに肩をぶつけたり、机の角に太ももをぶつけたり、すれ違いざまに人とぶつかったりしてしまうといったことが起こります。

アメや氷をかんでしまう

「かむ」という動作は、1秒間に2~3回行われる「リズム運動」。規則的に同じ動きを繰り返す「リズム運動」は、神経伝達物質「セロトニン」の分泌をうながし、「セロトニン」の効果で目を覚まさせると同時に気分を安定させます。「セロトニン」は別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、目を覚ます働きだけでなく、心のバランスを保つ働きもしています。
 
無意識にアメや氷をかんでしまうときは、気分を安定させるために脳がセロトニンの分泌をうながしている状態です。寝不足になるとセロトニンの分泌が減り、気分が不安定になるので、「リズム運動」をすることによって、脳が気分を安定させようとしている可能性があります。

机や部屋が散らかる

寝不足になると、思考の切り替えを行ったり、複数の情報を同時に処理したりする脳の「前頭葉」の働きが低下します。机や部屋が散らかるのは、買ったものや使ったものをどう処理すべきかをとっさに判断できず、場当たり的に対処したためです。必ずしも本人の性格がだらしないわけではなく、寝不足によって情報処理能力が低下しているのかもしれません。

夜中に甘いものが食べたくなる

朝昼晩の三食をとる時間以外のタイミングで、食欲がわいたり、過剰に甘いものが食べたくなったりするのも、寝不足のサインです。脳の目覚めのレベルが低下すると、満腹ホルモンである「レプチン」が減少し、食欲を刺激する「グレリン」というホルモンの分泌が活性化されるため、夜中に空腹を感じたり、エネルギー源となる糖分が含まれている甘いものが欲しくなったりします。

忘れっぽくなる

何かをしようとしていたのに、いざ行動に移そうと思うと目的を忘れている、ということが起こるのは、脳の目覚めのレベルが低下しているサイン。睡眠不足が続くと、脳が目を覚ましている状態になろうとして過剰に興奮したり、注意力が散漫になったりします。すると、情報が整理できず、記憶が混乱し、直前まで何をしようと思っていたのか思い出せなくなる、ということが起こります。これは「物忘れ」とは異なり、「脳の目覚めのレベルが低下しているので対処をしなさい」という、脳からの警告です。

寝不足になって感じる不調

寝不足のサインを放置しておくと、少しずつ身体にも不調が出てきます。代表的な症状は以下のとおりです。

日中に眠くなる

昼食後に午後の仕事へ取りかかろうとしたとき、睡魔におそわれた経験はありませんか? 脳は起き続けていると、疲れた神経を休ませ、再び機能を高めるために、眠気を起こす仕組みになっています。そのため、1日に2回、寝起きから8時間後と22時間後に、脳を休ませるために眠らせようと指令が出て、眠気を感じさせます。これは脳にもともとそなわっているシステムです。しかし、寝不足だと普段よりも脳を休ませる必要があるため、より強い眠気を感じてしまうのです。

疲れがとれなくなる

寝不足の状態が続き、疲労の回復のための時間が減ると、脳だけでなく身体にも疲れが出ます。睡眠科学の世界では1回の徹夜よりも、1日2時間程度の寝不足が続く方が、脳と身体への影響が大きいといわれています。寝不足状態が続くと、ストレスなどによって増える物質「活性酸素」を処理しきれず、傷ついた細胞の修復ができなくなり、疲れがとれなくなります。

太りやすくなる

目覚めのレベルが低下すると、脳がエネルギーを補おうとして、食欲を刺激するホルモン「グレリン」の分泌をうながします。寝不足の状態が続くと食欲が過剰になり、食べ過ぎの状態が続くことで、肥満の原因になります。

寝不足になって出る精神面への影響

寝不足の状態が続くと、脳の神経伝達物質「セロトニン」が不足してしまうので、気持ちが不安定になり、精神面にも悪影響が出ます。
 
たとえば、ささいなことが気になってクヨクヨといつまでも悩んだり、イライラしやすくなったり、突然怒りやすくなったりと、感情の起伏が激しくなります。

寝不足になる生活習慣

寝不足になる生活習慣

寝不足になってしまうのは、必要な睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりするため。以下に寝不足の原因となる生活習慣をまとめました。

寝酒

お酒にはエタノールという神経を麻痺(まひ)させる成分が含まれているため、寝酒をすると眠気を感じ、寝つきがよくなる場合があります。しかし、アルコールの利尿作用によって夜中に目が覚めやすく、睡眠の質が低下し、寝不足になりがちです。

眠る直前に食事をする

眠る直前に食べ物を食べてしまうと、眠りに入ったあとも胃の中の食べ物を消化しようとします。すると、消化のために身体が休まらず、眠りが浅くなってしまいます。消化が落ち着くまでには3時間ほどかかるので、夕食は眠る3時間前までにすませましょう。

眠る前にスマートフォンやパソコン、テレビを見る

スマートフォンやパソコン、テレビなどの画面から発せられる青い光「ブルーライト」は、神経を興奮させ、睡眠をうながすホルモン「メラトニン」の分泌を減らしてしまいます。仕事のメールをチェックするだけでも、エスプレッソコーヒーを2杯飲んだときと同じ刺激があります。

寝不足の症状が出る病気

寝不足の症状が出る病気

寝不足になっているのは、病気が原因の可能性もあります。下記のような症状に当てはまるものがあれば、専門医を受診しましょう。

睡眠時無呼吸症候群

肺に通じる空気の通り道である気道が完全にふさがり、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気。大きないびきをかいたり、呼吸が止まったり、睡眠中に何度も目が覚めるといった症状が出ます。
 
眠っているあいだ、体内の酸素が不足することで心拍数が上がり、脳や身体に負担がかかります。脳と身体がともに休息できないため、日中の仕事効率が下がったり、眠気を感じやすくなったりします。

レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

夕方~夜にかけて「脚に虫がはっている」「脚の内側がかゆい」などと感じる症状が出て、眠れなくなってしまう病気。強い不快感から眠りにつけず、寝不足の原因になります。

寝不足になったときの対処法

寝不足になったときの対処法

寝不足になってしまい、日中眠くなってしまったらどうすればよいのでしょうか。寝不足による眠気を解消する方法をまとめました。

1分間仮眠

「どうしても仮眠する時間がない」という多忙なときは、「1分間仮眠」を試してみましょう。椅子に深く腰掛け、1分間目を閉じるだけです。目を閉じることによって、脳に入ってくる情報を遮断し、脳を休ませることができます。1分間という短時間でも、脳の中の情報を整理することで、集中力を高められます。

背筋を伸ばす

背筋を伸ばすと体温が上がり、活発に動けるようになります。背中には長時間安定的にエネルギーを発生させる遅筋(ちきん)が集まっているため、体温が上がり、全身が「活動モード」になりやすくなります。

明るい場所で光を浴びる

強い光には睡眠ホルモンの「メラトニン」を減少させ、眠気をやわらげる効果があります。直射日光を浴びたり、外を眺めたりするだけでも目が覚めます。

寝不足の予防法

寝不足を予防するには?

寝不足を予防するためには、寝不足の原因をつくらないようにすることが一番です。自分にとって必要な睡眠時間を確保し、睡眠の質を上げましょう。

十分な睡眠時間を確保する

自分にとって必要な睡眠時間は個人差があり、年齢によっても変わります。そのため、同じ時間眠っていても、睡眠不足になる人とそうでない人がいます。
 
自分に合った睡眠時間を知るために、日中に眠気を感じるタイミングを把握しましょう。例えば、23時に眠って7時に起きる生活を1週間続け、日中に眠気を感じるようだったら睡眠時間を少しのばし、また1週間続けるという生活をしてみましょう。眠くならなければ、その時の睡眠時間が最適と考えます。

睡眠の質を上げる

スムーズな眠りに入れなかったり、夜中に目が覚めてしまったりすると、睡眠の質が下がり、寝不足になります。ぐっすりと眠るためには、以下のことを心がけましょう。

ストレスをためない

ストレスがたまると、脳を目覚めさせるホルモン「コルチゾール」が分泌され、スムーズな眠りにつけなくなります。ストレスをためないように、運動や趣味の時間を作ったりして定期的にストレスを発散しましょう。

ストレッチをしてから眠る

眠る1時間前にストレッチをすると深部体温が上がり、その後下がるため、自然な眠気を感じやすく入眠がスムーズになります。

カフェインをとるときの注意点

カフェインは眠気を一時的に取り除くことができますが、根本的な寝不足の解消にはなりません。カフェインは、脳が眠ろうとするのをブロックできても、身体や脳の疲れまで取ることはできません。カフェインによって眠気がとれるのは、長くても3~4時間程度。
 
カフェインを飲んで目を覚ますことは、眠気の根本的な解決ではなく、応急処置と考えましょう。また、コーヒーに含まれるカフェインの効果が出るまでには、30分程度かかるため、即効性はありません。スッキリしたいタイミングから逆算してコーヒーを飲みましょう。

参考書
『ぐっすり眠れてすっきり起きられる50のコツ』菅原洋平(宝島社)
『「いつも眠い~」がなくなる快眠の3法則』菅原洋平(メディアファクトリー)

 
監修:坪田聡(雨晴クリニック副院長)
 
<参照>
『「いつも眠い~」がなくなる 快眠の3法則』菅原洋平(メディアファクトリー)
『睡眠障害のなぞを解く ~「眠りのしくみ」から「眠るスキル」まで~』櫻井武(講談社)
『睡眠専門医が教える! 一瞬で眠りにつく方法』坪田聡(宝島社)
『脳も体もガラリと変わる!「睡眠力」を上げる方法』白川修一郎(永岡書店)
『ぐっすり眠れてすっきり起きられる50のコツ』菅原洋平(宝島社)
『睡眠の病気』内山真(NHK出版)
『脳も体も冴えわたる1分仮眠法』坪田聡(すばる舎リンケージ)
『大人のメンタルヘルス常識』トキオ・ナレッジ(宝島社)

photo:Getty Images

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