「疲れがとれない」と感じてはいるものの、どうしたらいいのかわからず、具体的な対策ができない状態が続いていませんか? 私たちが感じる疲れの大半は病気とは無関係ですが、背後に病気が隠れている場合もあります。今回は「疲れがとれない」状態が長く続いたときに疑われる病気や、病気によるものではないとわかった上で「疲れがとれない」と感じている人への対処法をご紹介します。

疲れがとれない原因と病気のリスク|疲労回復に効くメソッドとは

【目次】

疲れがとれないのはなぜ?

疲れがとれないのはなぜ?

そもそも「疲れ」とは何なのでしょうか。ここでは疲れを感じるメカニズムや、疲れの慢性化の原因を説明します。

疲れを感じるメカニズム

疲れの発生にはいくつかのメカニズムが知られています。

  • 活性酸素の増加
  • 脳内セロトニンの作用減少
  • サイトカイン(免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質)の増加
  • 血液中のアミノ酸成分の変化
活性酸素の増加

活性酸素とは、呼吸で取り入れた酸素を利用してエネルギーがつくられるときに生じる物質で、常に体内で発生しています。活性酸素は、激しい運動後や、病気、ストレスに伴って増加します。増えた活性酸素を処理しきれないと、全身の細胞にあるタンパク質や脂質が酸化を受け、細胞のはたらきが鈍くなってしまい、細胞の機能修復にも時間がかかるため、疲労が生じます。

脳内セロトニンのはたらきの減少

ストレスや生活リズムの変化などにより、脳の神経と神経の間にあるセロトニンという物質のはたらきが悪くなり、疲労感を生みます。

サイトカインの増加

インフルエンザにかかったときのぐったりとした疲れを経験した方も多いでしょう。これは、免疫細胞がつくるサイトカインという物質が増えることによります。肝臓の病気、悪性腫瘍、抗がん剤を始めとする薬の副作用、慢性疲労症候群という病気で感じられる疲労感にも、サイトカインが関与しています。

血液中のアミノ酸成分の変化

一部の肝臓病、手術後、激しい運動の直後などでは、血液中のアミノ酸の成分が変化していますが、これが脳にも影響し、疲労を感じることがあります。

病気でないにもかかわらず疲労が慢性化する理由

病気に伴う疲労の場合には、状態が改善したり治癒したりしなければ、取り去ることができないというのはご理解いただけると思います。
 
しかし、病気でないにもかかわらず、疲労が慢性化する場合があります。人の身体には、「神経系」「内分泌系」「免疫系」の相互の働きによって、身体を一定のコンディションに保とうとする“恒常性(ホメオスタシス)”という性質があります。例えば、健康な状態であれば活性酸素が発生しても、体内で活性酸素を処理する仕組みが働き、疲れをきちんと解消します。
 
しかし、過労やストレスなどホメオスタシスを乱す要因があると、活性酸素を処理しきれなくなり、細胞が傷害され、細胞の修復にも時間がかかるため、疲れが抜けにくくなります。また、ストレス対処がうまくいかない場合や、生活リズムが崩れた状態が是正されない場合は、脳内神経系の働きを回復させることも難しく、セロトニンの作用が減少した状態が続いてしまいます。

「飽きた」は脳の疲れのサイン

「デスクワークでパソコンを使い続ける」などの作業が長時間続くと、脳のある一定の神経回路に負荷が集中し、活性酸素が発生します。その神経回路は、活性酸素によって「酸化ストレス」にさらされるため、脳が「もうこれ以上、ここの神経回路を使わないで!」とアラームを発信します。そのアラームが「飽きる」という感覚です。もし、作業に「飽きてきた」と感じたら、疲労のサインです。積極的に休息をとりましょう。

疲れがとれないのはキケン? 疲労度チェックリスト

疲れがとれないのはキケン? 疲労度チェックリスト

疲労は、痛みや発熱と並ぶ“生体アラーム”の一つです。「これ以上運動や仕事の作業を続けると身体に害が及ぶ」という警鐘で、疲労が蓄積すると、身体的・精神的にパフォーマンスが低下します。
 
疲れがとれない状態になると、主に以下のような症状が現れます。

<疲労がとれないときの代表的な症状>

  • 思考力が低下する
  • 刺激に対する反応が鈍くなる、または過度に敏感になる
  • 注意力が衰える
  • 動作が緩慢になる
  • 行動の量が低下する
  • 目がかすむ
  • 頭痛がする
  • 肩こりが起きる
  • 腰が痛くなる

 

疲労度チェックリスト

ひと晩寝たら次の日は体調が回復している、週末に少し寝坊することはあってもリフレッシュをしたと感じる、といった場合は問題ないと考えてよいでしょう。しかし、眠っても疲れがとれないと感じる状態が続く場合は、疲労がたまっている可能性があります。
 
自分の疲れが問題ないレベルかどうか、以下のチェックリストで確認してみましょう。3つ以上チェックがついたら「危険な疲れ」の可能性があります。

<疲労度チェックリスト>

□いままでにない疲労感、疲れやすさが続いている

□しっかり休養したつもりでも、なかなか回復しない

□疲れで日常のパフォーマンスが50%ぐらいに落ちている気がする

□風邪をひきやすい、ひくとなかなか治らない

□検査してもはっきりしない頭痛、腰痛、筋肉痛がつづく

□食欲がない、おいしいと感じない

□よく眠れない

引用:『「昨日の疲れ」が抜けなくなったら読む本』(だいわ文庫)西多昌規著

疲れがとれないのは病気のせい?

疲れがとれないのは病気のせい?

激しい運動をしたり、長時間労働をしたりしているわけでもないのに、疲れやすかったり、眠っても疲れがとれなかったりする場合は、病気の可能性があります。数多くの病気で疲れやすいという症状がみられますが、ここでは、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能低下症、慢性疲労症候群の三つについてとりあげます。
 
睡眠時無呼吸症候群と甲状腺機能低下症は、頻度は高いのですが、健康診断でも発見されにくい病気です。慢性疲労症候群は、強い疲労ゆえ、社会生活に支障をきたすことも多いのですが、医療関係者にもいまだ十分理解されていない病気です。

(1)睡眠時無呼吸症候群

成人男性の約3~7%、成人女性の約2~5%にみられます(日本呼吸器学会)。「しっかり寝ているのに、日中眠くて仕方がない」という場合は、「睡眠時無呼吸症候群」の疑いがあります。「睡眠中の無呼吸」と呼吸再開時の「大きないびき」が特徴的です。
 
無呼吸により身体が低酸素状態になると、酸素をより取り入れようとし、心拍数や血圧が上がります。この時、本来休んでいるはずの交感神経が活発になり、眠りの質が下がるため、翌朝目覚めても疲れがとれていない、という状態になってしまいます。
 
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、高血圧症や心筋梗塞などの重篤な病気にかかるリスクを高めることがあります。以下のチェックストで病気に関するリスクを確認してみましょう。

<睡眠時無呼吸症候群チェックリスト>

□家族や友人から、「いびきが大きい」と指摘されたことがある

□最近かなり体重が増えた。または、肥満ぎみである

□あごが小さい、あごが引っ込んでいる

□鼻がつまりやすい、鼻に病気がある

□気がつくと口で呼吸している

□高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある

□毎晩のようにアルコールを飲むことが多い

□喫煙者である

□夜寝ているのに、日中に眠気がある

□会議室や仕事中に、気付いたら眠り込んでしまったことがある

『図解 睡眠時無呼吸症候群を治す! 最新治療と正しい知識』白濱龍太郎著(日東書院)より引用

甲状腺機能低下症

女性に多くみられる病気です。のどの前に位置する甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが減少した結果、疲れやすい、気力低下、むくみ、体重増加、寒がり、便秘、肌の乾燥、月経異常などの症状がみられます。放置した場合、心臓の合併症が現れることもありますので、これらの症状に該当する場合は受診しましょう。

(3)慢性疲労症候群

「慢性疲労症候群」とは、日常生活に影響が出るほどの強い疲労を長期間感じる、原因不明の病気です。生活リズムの見直し、心理療法、薬物療法などによって治療が行われます。
 
以下の10個の項目のうち、8項目以上が6カ月以上続く場合は、「慢性疲労症候群」の恐れもありますので、医師に相談してみましょう。

<慢性疲労症候群の主な症状>

・微熱がある

・頭が痛い

・眠れなかったり、眠りすぎたりする

・ゆううつな気分が続く

・関節が痛む

・筋肉が痛む

・筋力が低下する

・仕事をしたあと、疲れが長く続く

引用:『「疲れ」をとる頭のいい方法』(河出書房新社)ライフ・エキスパート著

疲れがとれないのは睡眠不足のせい?

疲れがとれないのは睡眠不足のせい?

疲れがとれない要因の一つに「睡眠不足」があります。慢性的に睡眠時間が不足していたり、睡眠の質が悪かったりすると、疲れがとれなくなります。ここでは睡眠不足によってもたらされる弊害をお伝えします。

自律神経の乱れ

睡眠時間が不足すると、自律神経が乱れやすくなります。自律神経には、「緊張」をつかさどる交感神経と「休息」をつかさどる副交感神経の2種類があります。睡眠不足やストレスなど、心身に負荷がかかると、交感神経が優位になり、副交感神経がきちんと作用しなくなります。交感神経が優位で緊張状態が続くと、身体も脳も休息できなくなり、疲れがとれなくなります。

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免疫力の低下

睡眠中には、成長ホルモン、プロラクチン、メラトニン、レプチンといったホルモンが分泌され、病気に抵抗するための準備状態をつくります。したがって、疲労に加えて寝不足の状態が続くと、免疫力がさらに低下し、感染症にもかかりやすくなります。

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疲れをとる方法

疲れをとる方法

できるだけ効率的に疲れをとりたい、と思っている方はいませんか? ここでは日常生活を送りながら実践できる「疲労回復のコツ」をご紹介します。

15分の昼寝で身体をスイッチオフ

「夜の睡眠だけでは疲れがとれない」という人は、1日1回、15分の昼寝をするのがおすすめ。適度な昼寝は脳や身体にとって適度な休息になるとともに、眠気の解消にもなるので、仕事のパフォーマンスも上がります。ただし、夜の睡眠に悪影響が出ないように、午後3時頃までに済ませるのがベターです。

1日15分のウォーキング

適度な運動は、脳内のホルモン「セロトニン」を増加させ、ストレスホルモン「コルチゾル」によって興奮した神経を沈静化してくれます。ウォーキングによってセロトニンが増えると、不安やストレスが和らぎ、緊張もゆるみます。まず、1日15分のウォーキングを試してみましょう。出勤や帰宅の際に少し遠回りをするなど、ちょっと汗ばむくらいが目安です。

「丹田呼吸法」で自律神経を整える

「丹田呼吸法」とは、ヘソから指4本分下にある「臍下丹田(せいかたんでん)」を意識して深呼吸をする呼吸法のこと。丹田は“気の心臓”と呼ばれ、丹田に向かって横隔膜を動かし、深く呼吸をすることで自律神経のバランスを整える効果が期待できます。自律神経が整うと、心身の状態もおだやかになり、リラックスして疲れをとることができます。

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筋弛緩法で身体をほぐす

「筋弛緩法」は、まず身体に力を入れ、次に一気に力を抜くことにより、こわばっていた筋肉をゆるめ、コリをほぐし寝付きやすい状態にする、というリラックス法です。身体をリラックスさせ、心もリラックスさせると自律神経のバランスが整います。
 
手や肩、顔、脚など、全身の様々な部位のコリをほぐせるので、ストレス解消にもつながるといわれています。

ぐっすり眠れる筋弛緩法 はじめる前の準備編

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猫と犬のストレッチ

眠る前に凝り固まった関節などをほぐし、副交感神経を優位にするための「アニマルストレッチ」です。

  • 床に両手、両ひざをつけ、背中をフラットにします。
  • 吐きながら、骨盤を起点にし、脊柱1つ1つを動かすように背中を丸めていきます。
  • 吸いながら、骨盤から腰を反りながらおへそを地面に近づけていきます。首の背骨(けい椎)に負担がかかるため、頭を上げすぎないようにしてください。ゆったり呼吸を繰り返しながら3セット繰り返します。

 

フラミンゴのストレッチ変形

  • 右膝を両手で抱え込み胸に近づけます。深い呼吸を4呼吸繰り返します。
  • 右手で膝を、左手で足首を持ち、胸に近づけます。お尻をしっかり伸ばして同様に4呼吸繰り返します。
  • 膝を左手に持ち替え、左側にゆっくりとパタンと倒します。右手と顔は右側に向け、腹部を捻じり4呼吸繰り返します。リラックスしながら、反対も同様に行います。

疲労回復におすすめの食材

疲労回復におすすめの食材

疲労を効率的にとりのぞくためには、肉・魚・野菜・果物をバランスよく適量食べることがポイント。特に「疲労を早くとりのぞきたい」というときにおすすめの食材をご紹介します。

ビタミンB群を含む食材

ビタミンは、エネルギー源となるアミノ酸の代謝に欠かせません。ビタミンが不足すると疲れがとれない、イライラしやすい、眠れないといった状態が続きます。ビタミンのなかでも特に不足しやすいと言われているのが、ビタミンB1、B2、B12などのビタミンB群。以下の食材を参考にして、普段の食生活にうまく取り入れて疲労回復を促進しましょう。
 
<ビタミンB1を多く含む食品>
豚肉、うなぎ、ゴマ、干しのりなど
<ビタミンB2を多く含む食品>
牛乳、納豆、レバーなど&gt;
<ビタミンB12を多く含む食品>
魚類、貝類、レバーなど

大豆

豆腐や納豆などの大豆製品に多く含まれるアミノ酸の一種「トリプトファン」は、不安や抑うつを抑えるセロトニンの原料になります。セロトニンは、外部からストレスを受けた時に分泌され緊張状態をつくる「ノルアドレナリン」に対抗する働きがあるため、疲労感の解消に役立ちます。
 
ただし、大豆ばかりに偏って食べるのはNG。たんぱく質の過剰な摂取につながり、痛風や肥満の原因になりやすいので、野菜や果物などとともにバランスよく食べましょう。

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疲労を「なんとかなっているから大丈夫」と放置していると、仕事の効率を下げるだけでなく、病気のリスクを高めてしまいます。自分らしく生き生きと過ごすためにも、まずは日常生活でできる疲労解消法をはじめて、疲れがとれない状態から抜け出しましょう。
 
監修:吉田菜穂子(産業医、内科・心療内科医)
 
<参照>
Besedovsky L1, Lange T, Born J. Sleep and immune function. Pflugers Arch. 2012 ;463(1):121-137.
 
『疲れを明日に残さないからだリセット』永井峻著(自由国民社)
『「昨日の疲れ」が抜けなくなったら読む本』西多昌規著(大和書房)
『「疲れ」をとる頭のいい方法』ライフ・エキスパート著(河出書房新社)
『すべての疲労は脳が原因』梶本修身著(集英社)

photo:Getty Images

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