睡眠中に突然大声をあげたり、走り回ったり、激しい動きをしたりする病気があることをご存じですか? これは「レム睡眠行動障害(Rapid Eye Movement Sleep Behavior Disorder:RBD)」と呼ばれ、よく見られる「ねぼけ」行動とは違うものです。レム睡眠行動障害は放置したままにしていると、本人や家族、パートナーが怪我(けが)をする危険性もあります。適切な対処をするために、レム睡眠行動障害の症状や自宅でできる対策をまとめました。

レム睡眠行動障害とは?|睡眠中に叫ぶ、暴れるパートナーの対処法

 

レム睡眠行動障害(RBD)ってどんな病気?

レム睡眠行動障害(RBD)ってどんな病気?

「レム睡眠行動障害(RBD)」は、睡眠中に大声で叫んだり、暴れたりするなどの行動をとる病気。身体は休んでいて、脳が覚醒している「レム睡眠」時に起こる異常行動「睡眠時随伴症(パラソムニア)」の症状の一つです。睡眠中にとった行動が自分や周囲の人を傷つけてしまうこともあるので、まず自分が以下のような行動を睡眠中にとっていないかどうか家族に確認しましょう。そして、レム睡眠行動障害がどんな病気なのかを知り、早めに対応しましょう。

<レム睡眠行動障害の人が睡眠中にとる行動例>

  • けんかをしている夢を見て、相手を殴ろうとして隣で寝ている奥さんを殴る
  • フットボールの試合をしている夢を見て、障子にタックルをして突き破る
  • 車を運転している夢を見て、ハンドルを切ろうとして手を動かす

 
なぜ、このような行動をとってしまうのでしょうか。レム睡眠行動障害がおこる原因は次のとおりです。

レム睡眠行動障害のメカニズム

レム睡眠行動障害が起こる原因は、明らかではない場合も多いのですが、患者の傾向として約半数に脳や脊髄の「中枢神経系の疾患」があると言われています。本来、レム睡眠中は、夢の中の行動をそのままとらないよう、脳から運動神経を麻痺させ、筋肉を弛緩させる緩める命令が出ています。しかし、そのシステムがうまく作動しなくなると、夢の中での行動が、身体にそのまま反映され、異常行動をとってしまいます。
 
また、レム睡眠行動障害患者の多くが、その数年後に「パーキンソン病(※1)」や「レビー小体型認知症(※2)」を発症しているという報告から、パーキンソン病、やレビー小体病などの初期症状ではないかという指摘もあります。
 
※1パーキンソン病
40~50代以降に発症する原因不明の神経変性疾患。手足が震えたり、筋肉が硬直したりするなど、身体の運動症状が出る。
 
※2レビー小体型認知症
神経細胞にできる特殊なたんぱく質「レビー小体」が、大脳皮質や脳幹に多数出現し、神経細胞が減少することで生じる認知症の症状。
 
続いて、レム睡眠行動障害かどうかを知るためのチェック方法をご紹介します。

レム睡眠行動障害チェック

レム睡眠行動障害チェック

「レム睡眠行動障害」は前述のとおり「睡眠時随伴症」のひとつで、身体が休んでいて脳が覚醒しているレム睡眠時に起こり、脳や神経細胞に異常がみられる可能性があります。対して「寝言」や「ねぼけ」は別の症状で、身体も脳も休んでいるノンレム睡眠からの覚醒時に発症する「ノンレム関連睡眠時随伴症」に含まれます。
 
「レム睡眠行動障害」は自分の症状に気がつかない場合が多いので、まずは現状を把握することが大切です。以下のチェックリストを利用して、家族やパートナーにレム睡眠行動障害の症状を指摘されたことがないか調べてみましょう。

<レム睡眠行動障害チェックリスト>
次のような症状がありませんか?
 
□睡眠中に、大きな声でストーリーのある寝言を言ったり、笑ったり、説教をしているようだといわれたことがある。
 
□睡眠中に手足を振ったり、黒板に字を書くような格好をしたり、急に布団に座ってしゃべりだしたりするといわれる。
 
□夢を見ていてベッドから落ちて怪我(けが)をしたり、夢で出てきた邪魔なものを蹴飛ばしたら室内にあったテレビやタンスあるいは壁などが壊れてしまっていた。
 
□夢の中で、動物に追われて部屋を逃げ回ったり、ベッドの近くのものを夢の中で動物に投げたつもりが、本当に物を投げてしまっており、室内が壊れた。
 
□夢を見ていて、となりで寝ている人の首を締絞めたことがある。
 
□夢遊病のようにベッドや布団から出て、室外に出ようとしたり、家の外に出たことがある。
 
□異常行動をしている時に起されると、すぐに目覚め、夢を見ていた内容が思い出され、異常行動と一致している。

参照:前田呼吸器科クリニック – レム睡眠行動障害

 
このような行動のどれか一つに当てはまる場合、レム睡眠行動障害の可能性があります。
 

レム睡眠行動障害の二次障害に注意

レム睡眠行動障害の二次障害に注意

レム睡眠行動障害は、夢の内容に合わせて行動してしまうという症状自体よりも、それに伴う二次障害に注意が必要な病気です。
 
主な二次障害としては、下記のようなことが考えられます。

  • 異常行動による事故、傷害
  • 家族にケガを負わせる
  • 家族関係の悪化
  • 家族のストレス

 

レム睡眠行動障害は、症状によっては、本人だけでなく、周囲の人に危険が及ぶ場合もあります。また、周囲の人が本人の睡眠中の行動を恐れて精神的に追い込まれてしまい、不眠症やうつ病にまで発展することも少なくありません。
 
適切な対処をするため、自分の睡眠中に異常を感じたり、起きるといつの間にか怪我(けが)をしていたり、家族に睡眠中の異常を指摘された方は、早めに睡眠外来を受診しましょう。

レム睡眠行動障害が初期症状となる脳の疾患

レム睡眠行動障害が初期症状となる脳の疾患

パーキンソン病

パーキンソン病とは、原因不明の脳の特定の神経細胞群が徐々に死んでゆく「神経変性疾患」のひとつ。日本だけでも現在10万人以上の患者がいると考えられており、今後も増加していく見込みの病気です。
 
主に40~50代以降に発症しますが、70代以上の高齢、または30代という若年でも発症することもあると言われています。若くして発症した患者の中には、遺伝子に何らかの異常があると言われています。

主な症状

手足の震え・こわばり

身体の片側から、徐々に他の部分へ進行していくのが特徴。じっとしている時に手足が震えたり、立ち止まってから足がすくんでしまって動けなくなったりします。身体がうまく動かせなくなるため、転びやすくなって怪我(けが)をしてしまうこともあります。

抑うつ

気持ちの落ち込みや意欲の低下、不眠などがあるとされ、うつ病と誤診されてしまうこともあります。また、発症する年齢が高いと、認知症と間違われることもあります。

治療法

ドーパミンを補う薬物治療

パーキンソン病の根本的な原因である神経伝達物質「ドーパミン」の不足を、経口薬で補います。また、ドーパミンの働きを補助する薬も開発されており、組み合わせることでより効率よく治療できると言われています。

手足の震え・こわばりを治すリハビリテーション

代表的な症状である手足の震え脳やこわばりは、リハビリテーションである程度回復するそうです。自宅での簡単なストレッチや、病院での専門的なトレーニングを繰り返すことで、症状の緩和や、日常生活において必要な身体の動きを向上させられると言います。

脳深部刺激療法(手術)

薬物治療やリハビリテーションでも効果が出ない場合や、薬の副作用がある場合、身体の痛みが強くリハビリテーションができない場合は、手術をすることもあります。脳の深部に電極を置き、電気刺激を与える方法です。優れた症状緩和効果がありますが、根本治療ではないため、慎重な判断のもとに行ったほうがよいとされています。

レビー小体型認知症

レビー小体とは、神経細胞にできる特殊なタンパク質のこと。レビー小体が脳の大脳皮質(人間がものを考える時の中枢を担っている部分)や脳幹(呼吸や血液循環など、生命維持のための中枢を担っている場所)に集まり、神経細胞を減少させることによって起こると考えられています。

主な症状

幻視

「男の人が来ている」「子どもが3人いる」など、具体的ではっきりした描写をする人が多く、服や電柱を人と見間違えたりすることもあります。

妄想

物を盗まれたという妄想や、被害妄想などがみられます。家族が他人になってしまっているという「替え玉妄想」や、「自分の家に他人が上がり込んでいる」という妄想の例も挙げられています。

治療法

現在、レビー小体型認知症の根本治療の方法はないとされています。
 
レビー小体型認知症の症状の進行をゆっくりするために、アルツハイマー型認知症の治療薬が使われます。薬物療法に加え、運動療法などの非薬物療法を併せて用いることにより、認知機能の低下を防ぐことが有効だと言われています。

幻視への対処法

「幻視」という症状が出ている時は、患者との接し方にも注意が必要です。幻視は、本人には実際にそこに「見えている」といいます。その時、「何かがいる」「〇〇が帰ってきた」などという言葉を否定するのはよくありません。自分の言葉を否定されると、患者は「嘘をつかれている」「バカにされている」と感じ、怒って暴力を振るったり、裏切られたと思ったりする恐れがあります。
 
適切なケアのためにも、きちんと患者の声に耳を傾けてから、別の話題に変えるなどしましょう。

レム睡眠行動障害の診察・治療の方法は?

レム睡眠行動障害の診察・治療の方法は?

眠っている間に起こるレム睡眠行動障害。病院ではどのように治療を行うのでしょうか。まず、レム睡眠行動障害が疑われる場合、睡眠外来を受診します。

「睡眠ポリグラフ」での診断

睡眠外来では、センサーや電極を全身に取りつけたまま8時間ほど眠り、脳波・眼球運動・筋肉の動き・血中酸素濃度などを測定する「睡眠ポリグラフ」という検査をします。レム睡眠行動障害の場合は、筋肉が緩むはずのレム睡眠中に緊張していることが多いため、おもに睡眠ポリグラフ検査では筋肉の緊張状態を調べます。また、睡眠中に異常な行動がないか記録するため、同時にビデオ撮影を行って診断の確実性を高めます。

薬物療法での治療

レム睡眠行動障害の治療には、薬物療法が有効とされています。代表的なものは、「クロナゼパム」という抗てんかん薬。異常行動を抑え、悪夢を減らす効果があると言われています。睡眠を促す「メラトニン」というホルモンと同じ働きをするの経口薬が、処方されることもあります。

レム睡眠行動障害の対処法

レム睡眠行動障害の対処法

レム睡眠行動障害は、薬物治療を行っていても、完全に治るまでの時間には個人差があります。家族が自宅でできる対策を実行し、二次障害が起きないようにしましょう。また、患者の睡眠の質を変えることで、症状が抑えられることもあります。

家族が睡眠環境を整備する

患者がレム睡眠中の異常行動による事故やケガを防ぐため、家族は睡眠環境から危険なものを排除しておきましょう。寝具をベッドからマットレスや布団などの高さの低いものに変更したり、寝床の周囲に投げたり蹴ったりするおそれのあるものを置かないことが大切です。

家族が患者を起こす

レム睡眠行動障害の症状が出て、怪我(けが)の恐れがあるほど激しく暴れたり、大声を出したりしている場合、二次障害を防ぐために家族が患者を起こすことも必要です。起こす際には、大声で呼びかけて身体を揺するなど、強い刺激を与えることで、覚醒させることができます。

患者本人の睡眠の質を上げる

レム睡眠行動障害の症状が出るときは、追いかけられる、戦っている、などの不快な夢を見ていることが多いようです。不快な夢を見るときは、ストレスがたまっている時です。そのため、患者本人が日頃からストレスをため込まず、うまく解消していくことが症状の抑制につながります
 
質のよい睡眠をとることもストレス解消の1つの方法です。睡眠時間を確保するだけではなく、質やリズムにも注意が必要です。それには、眠る前に自律神経をリラックスさせ、脳を就寝モードにすることが必要。下記のような「入眠儀式」を行ってみましょう。
 
<今日からすぐに行える入眠儀式>
(1)3分だけでも髪をドライヤーで乾かす
髪が濡ぬれていると、首もとが冷えやすく、交感神経を刺激してしまいます。首には重要な神経が集まっているため、冷えると安眠の妨げになります。しっかりとドライヤーで髪を乾かすことが習慣になれば、身体と脳が入眠のリズムを覚えるきかっけとなります。
 
(2)眠る前にコップ1杯の水を飲む
睡眠中は汗をかきます。睡眠中や起床時の脱水症状を避けるためにも、就寝前の水分補給は不可欠です。冷えた水を飲むと身体が緊張して眠りが浅くなってしまうので、常温の水を用意しましょう。
 
(3)寝室ではテレビを観ず、一度読んだ本に目を通す
眠る前にテレビやスマートフォンを見ると、画面の光や内容が刺激となり、脳が興奮してなかなか寝つけません。何度も読んだ本や何も考えず眺められるカタログなど、刺激が少なく眠りを妨げない読み物を用意しておきましょう。
 
(4)夜はコーヒーを飲まずに香りをかぐ
嗅覚は脳と深く結びついている感覚なので、良い香りはリラックス状態へ導いてくれます。ラベンダーやカモミールなど、甘めのハーブ系のアロマを取り入れてみましょう。また、コーヒーの豆や粉末を容器に入れて枕もとに置くと、ほんのりといい香りが安静効果をもたらしてくれるといいます。
 
(5)気になることがあればメモ書きでアウトプット
眠る時に色々いろいろなことを考えすぎて眠れなくなってしまうという人は、思いついたことをシンプルな言葉でメモに書き出してみましょう。「会議」など単語のみでいいので、頭の中を空っぽにするイメージですべて書き出してみてください
 
レム睡眠行動障害は、場合によっては大きな怪我(けが)や事故につながることもあります。家族やパートナーの睡眠中に少しでも異変を感じたら、早めに病院に行くよう促してください。
 
監修:坪田聡(雨晴クリニック副院長)
 
<参照>
『睡眠障害のなぞを解く 「眠りのしくみ」から「眠るスキル」まで』櫻井武(講談社)
『認知症ケアガイドブック』公益社団法人日本看護協会(照林社)
 
前田呼吸器科クリニック – レム睡眠行動障害
http://www.maeda4159.net/modules/rem.html
 
松田脳神経外科クリニック
http://www.matsudaclinic.jp/disease/279/
 
東海大学医学部脳神経外科
http://neurosurgery.med.u-tokai.ac.jp/edemiru/par/chiryou.html
 
厚生労働省 e-ヘルスネット 情報提供
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-070.html
 
公益財団法人 健康・体力づくり事業財団
http://www.health-net.or.jp/tairyoku_up/chishiki/sleep/t03_10_11_03.html

photo:Getty Images

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