睡眠時間が短くてもバリバリ動けるショートスリーパー(短眠者)に対して、睡眠時間が10時間を超える「ロングスリーパー(長眠者)」という人たちがいます。ロングスリーパーの特徴や、ほかの病気との見分け方、睡眠時間を短くする方法などについて解説します。

ロングスリーパーの睡眠時間は短縮できる?その特徴と原因、改善方法

ロングスリーパーは病気なのか?

睡眠時間の長さによって、「ロングスリーパー」「ショートスリーパー」「バリアブル(variable) スリーパー」の3つに分けることがあります。ふだんの睡眠時間が10時間以上の人、子どもでは年齢相応の睡眠時間より2時間以上長いときに、ロングスリーパーと呼ばれます。ショートスリーパーは、いつもの睡眠時間がおおむね5時間未満の人のことです。睡眠時間がロングスリーパーとショートスリーパーの間にある多くの人は、バリアブルスリーパーです。
 
アメリカで行われた調査では、男性の2%、女性の1.5%が習慣的に10時間以上の睡眠をとっていました。ただし、この中には病気のために長く眠っている人たちも含まれるため、健康なロングスリーパーはさらに少なくなると思われます。
 
5年ごとに行われているNHK国民生活時間調査によると、最近の50年間で日本人の平均睡眠時間は約1時間も短くなりました。それにともなって、10時間以上眠る人の数も少しずつ減ってきています。自分の周りも見回しても、ロングスリーパーにはたまにしかお目にかからない気がします。
 
長時間睡眠をとっている人のすべてが、「病気」というわけではありません。必要な睡眠時間は人によってそれぞれ違い、ロングスリーパーはたまたま他の人より長い時間眠らないといけないだけです。ただし、1日のうちのかなりの時間を睡眠に費やさないと体調を保てないロングスリーパーの中には、仕事や勉強、人付き合いなどの社会生活に難しさを感じている人が多いのも事実です。
 
有名人では相対性理論を提唱したアルベルト・アインシュタインや、日本人で初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士は、ロングスリーパーだったと言われています。最近の人では、F1グランプリのミハエル・シューマッハや、ゴルフのタイガー・ウッズもロングスリーパーのようです。
 

ロングスリーパーの睡眠や性格の特徴は?

ロングスリーパーとショートスリーパーの睡眠を比べると、深いノンレム睡眠(=脳が休む眠り)の長さには差がありません。しかし、ロングスリーパーでは、浅いノンレム睡眠やレム睡眠(=体が休んで、脳がメンテナンスする眠り)が、多くなっています。また、ロングスリーパーは、寝つきが悪く夜中に目を覚ましやすく、起床時の不快感が強いことも知られています。つまり、ロングスリーパーはショートスリーパーに比べて、やや効率が悪い睡眠をとっていることになります。
 
睡眠時間と性格の関係の研究も、たくさん行われています。社会への適応性について、ロングスリーパーはショートスリーパーよりも良いようです。外向性については、ショートスリーパーの方がロングスリーパーよりも強いとする研究がありますが、変わらないという報告もあります。不安やこだわりの強さなどについては、相反する結果が出ているので、はっきりした違いはないようです。
 

ロングスリーパーになるワケ

どのような人がロングスリーパーになるかということは、まだはっきりわかっていません。ただし、「体内時計が他の人より長いから」や、「体内時計の光に対する感受性が低いため」といった仮説はあります。
 
朝起きるのがつらくて日中かなり眠気が強く、夜は早い時刻に眠くなって睡眠時間が長いというのが、ロングスリーパーの特徴です。しかし、このような症状がある人のすべてが、ロングスリーパーとは限りません。同じような症状を出す他の病気もあり、注意が必要です。
 
痛みやかゆみ、せき、胸やけなどの体の症状がある人は、睡眠が浅くなるため睡眠時間が長くなり、睡眠不足から日中の眠気も強くなります。躁うつ病や季節性感情障害の患者さんの中には、過眠になる人がいます。季節性感情障害のうち冬季うつ病は、過眠のほかに食欲増進やうつ気分などが寒くなると現れる特徴的です。
 
病気の治療薬が原因で、夜の睡眠時間がのび、日中の眠気が強くなることもあります。精神科で処方される薬や花粉症などのアレルギー性疾患を治療する抗ヒスタミン薬、パーキンソン病の治療薬などが過眠を起こすことがあります。女性では、月経の周期に関連した「月経随伴睡眠障害」の可能性もあります。これらの病気や薬の副作用が疑われるときには、かかりつけ医などに相談してみましょう。
 
自分では気づかない睡眠の病気が隠れていることもあります。眠っている間に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」や、足が規則的に動く「周期性四肢運動障害」、脚の変な感じのため足を動かさずにはいられない「むずむず脚症候群」などでは、本人は十分眠っているつもりなのに朝が起きにくく、日中に強い眠気の襲われることがあります。
 
過眠症の代表であるナルコレプシーでは、日中の発作的な激しい眠気(睡眠発作)のほかに、笑ったり怒ったりすると力が抜ける「情動脱力発作」や、寝つくときに変なものが見える「入眠時幻覚」、いわゆる金縛り(睡眠麻痺)などの症状が現れることが特徴です。
 
ストレスなどによる一時的な不眠がいつの間にか長引いてしまう「精神生理性不眠(原発性不眠)」では、不眠に対する恐怖感が強いために何とか眠ろうとして布団にしがみついて、寝床の中で長時間過ごしがちになり、ロングスリーパーのように見えることがあります。
 
体内時計の故障が原因となる「概日リズム睡眠障害」のうち、睡眠の時間帯が遅いほうにずれて極端な夜更かしの朝寝坊になる「睡眠相後退症候群」や、体内時計の1日の周期が24時間より長くなる「非24時間睡眠覚醒症候群」では、朝起きるのが難しくなり、日中の眠気が強くなります。これらの睡眠障害が疑われるときは、睡眠障害の専門医療機関を受診することをお勧めします
 

ロングスリーパーを変えるには

ロングスリーパー自体は病気ではありません。その人の特徴といえます。しかし、睡眠のために長い時間がとられると、社会生活に支障をきたすことがあります
 
多くのロングスリーパーは、平日は9時間ほど眠り、休日に12~15時間ほど眠って寝不足を補っていることが多いようです。また、通学や通勤にかかる時間を縮めて睡眠時間を確保するために、学校や職場の近くに引っ越す人もいます。さらに、自分の睡眠パターンに合わせて、覚醒していられる時間帯にできる仕事に変わることもあります。
 
ロングスリーパーはショートスリーパーに比べて、睡眠の質がやや悪いことがわかっています。そのため、睡眠の質を高めると睡眠時間を短くできるかもしれません。次のあげる項目をやってみて、生活習慣を整えてみてください。
 

  • 平日の起床時刻を一定にする
  • 休日も平日+2時間以内に起きる
  • 朝目覚めたら太陽の光を浴びる
  • 日中は活動的に過ごす
  • 午後3時までに20分ほどの短い仮眠をとる
  • 夕食は就寝の3時間前までに終わらせる
  • 夕食後は、少し暗めの白熱灯の下で過ごす
  • 就寝の1~2時間前に、軽い運動や入浴で体温を少し上げる
  • 眠る前の1時間はテレビやパソコン、ゲーム機、スマートフォンなどの画面を見ない
  • 就寝時刻を1~2週間ごとに、10~15分ずつ遅くする

 
基本はできることから睡眠環境を整え、少しずつ生活習慣を変えていくということです。あまり無理せずに、ゆっくりと挑戦してみてください。
 
残念ながら、ロングスリーパーの特効薬はまだありません。しかしこれまでには、メラトニンやビタミンB12がロングスリーパーの睡眠時間を短くした、という研究報告もあります。また、日中の強い眠気に対して、精神刺激薬が処方されることもあります。もし、自分ではどうしようもなくて困っているのなら、睡眠障害の専門医に相談してみてもよいかもしれません。

photo:Getty Images

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