睡眠不足が高血圧につながることは、以前にご紹介したとおりです。このように、血圧と睡眠は深い関係にあります。今回は、血圧のことや血圧と睡眠の関係について解説し、血圧をうまくコントロールする方法をご紹介します。

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血圧が高くなったり低くなったりするワケ

心臓は、血液を全身に送り出すポンプの働きをしています。血液は心臓から出ると動脈を通り、毛細血管から酸素や栄養を細胞に届けます。細胞から二酸化炭素や老廃物を受け取った血液は、毛細血管から静脈を通って、再び心臓に戻ってきます。このとき、血液が血管の壁を押す力が「血圧」です。
 
血圧は、血液の量や心臓の力強さ、血管の硬さで決まります。大出血をして血液の量が減ると、血圧が下がります。塩分をたくさんとると、血液中の塩分の濃度を下げようとして血管内に水が入り、血液量が増えて血圧が上がります。心不全や心筋梗塞などで心臓のポンプ機能が弱くなると、血液を押し出す力が小さくなって血圧が下がります。若いころは血管が軟らかいので血圧は低めですが、年齢とともに血管が固くなり血圧も上がります。
 
ストレスなどで緊張すると、自律神経の一つである「交感神経」の活動が高まり、血管が収縮して血圧が上がります。一方、リラックスしたり眠ったりしているときは、もう一つの自律神経である「副交感神経」が優位になるので、血管がひらいて血圧が下がります。
 
血圧には、収縮期血圧(いわゆる最高血圧)と拡張期血圧(いわゆる最低血圧)があります。心臓が最も縮んだときの血圧が収縮期血圧(最高血圧)で、心臓が一番大きくなったときの血圧が拡張期血圧(最低血圧)です。日本では、診察室で測定した血圧が140/90mmHg未満、あるいは家庭で測定した血圧が135/85mmHg未満を、「正常血圧」としています。

悪い睡眠が高血圧を起こす

日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン」では、診察室で測定した血圧が140/90mmHg以上、家庭で測定した血圧が135/85mmHg以上を、「高血圧」としています。日本ではこの基準に当てはまる高血圧症の人が、1,000万人以上もいると考えられています。
 
血圧は1日のうちで、20~40mmHgほど上下します。健康な人は、起きている時間帯はほぼ一定の血圧を保ちますが、寝付くと次第に血圧が下がり、目覚める少し前に最も低くなります。そして目覚めると、日中の活動に備えて急激に血圧が上がります。
 
睡眠時間が不足したり睡眠の質が悪かったりすると、それらがストレスとなって、交感神経が活発になり血液中のアドレナリンも増えます。すると、睡眠中の血圧が下がらなくなり、起きてからの血圧も高いままになります。1日中、血管に高い圧力が加わっていると、動脈硬化が進んだり動脈が狭くなったりして、さらに血圧が上がってしまいます。
 
約5,000人を8~10年間にわたって追跡調査した研究では、睡眠時間が5時間以下の人はそうでない人に比べて、明らかに高血圧になりやすいことが示されました。睡眠時間と高血圧を持っている割合を調べた研究では、睡眠時間が7~8時間の人に比べて睡眠時間がそれより短い人は、高血圧である確率が高いこともわかりました。
 
血圧が正常な人でも、一晩徹夜すると翌日の血圧が10mmHgほど高くなります。血圧を下げる薬は、平均して1錠で約10mmHg血圧を下げますから、徹夜一回で薬の効果がなくなってしまいます。また、睡眠時間を3~4時間に制限すると、翌日の血圧が1日を通して高くなることも知られています。このように、睡眠不足や質の悪い睡眠は、高血圧を引き起こす原因になります。

昼寝と二度寝で血圧を下げる

高い血圧を下げるためには、食生活の見直しや減量、ストレスへの対処、睡眠習慣の改善などが必要です。
 
食生活では、塩分摂取量を減らすことが基本です。適正な塩分量は、1日6グラム以下です。しかし、いきなりこれを達成しようとすると、食事が味気なさ過ぎて長続きしません。まずは、ラーメンの汁は1センチ残す、みそ汁は具だけを食べて汁は残すなど、できることから少しずつ減塩していきましょう。
 
体重が標準値を超えている人は、減量も必要です。【体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)】を「BMI (Body Mass Index)」といいます。このBMIが25をこえると肥満です。間食や夜遅くの食事をやめたり、細切れでも良いので1日にあと30分歩いたりして、1カ月に500g~1kgのペースで体重を落としましょう。
 
適度なストレスは人生のスパイスですが、過度のストレスは不眠や高血圧、脳卒中、心筋梗塞、うつ病などの原因になります。ストレスの原因を減らしたり、自分に合ったストレスを発散する方法を見つけたりしましょう。
 
夜に軽く運動したりぬるめ(40度以下)のお風呂に入ったりすると、ストレス解消になるだけでなく、寝つきが良くなったり眠りが深くなったりします。睡眠時間が足りない人は、夜の睡眠時間を増やすのが原則です。それが無理な人は、午後3時までの20分の昼寝や、20分以内の二度寝で何とか睡眠時間を確保しょう。

朝、起きられないのは低血圧のため?

高血圧には国際的な基準などがありますが、低血圧には今のところはっきりした基準はありません。一般的には、収縮期血圧(最高血圧)が100mmHg以下の状態を、低血圧といっています。
 
血圧が低いと全身に血液が行き渡らず、身体の各器官が十分に働けません。たとえば、急に立ち上がった時に血圧が十分上がらない「起立性低血圧」では、脳に行く血液が減ってしまい意識を失うこともあります。いわゆる「脳貧血」と呼ばれる状態です。
 
ほかの病気が原因で起こる低血圧を、「二次性低血圧」と呼びます。糖尿病やパーキンソン病などが、代表的な二次性高血圧の原因疾患です。血圧を下げる薬やうつ病の治療薬でも、低血圧を起こすことがあります。これらの病気や薬が原因として疑われるときは、早めに医師に相談してください。
 
原因が思い当たらずに朝、目覚めてもなかなか布団から出られない人は、まず布団の中で血圧を測ってみましょう。収縮期血圧(最高血圧)が100mmHg以下なら、低血圧が原因と思われます。しかし、血圧がそれより高ければ、起き上がれない原因はほかにあるかもしれません。低体温や低血糖が原因のこともあります。目覚めたらすぐに体温を測ったり、前夜の食事の量やタイミングを思い返したりしてみてください。

低血圧で起きられないときの対処法

低血圧が原因で起き上がれないときは、寝床の中で軽く運動をしましょう。特に効果的なのが、アイソメトリックス(等尺性運動)です。これは、関節を動かさず筋肉に力を入れる運動です。たとえば、両肘を直角に曲げて、両手のひらを胸の前で合わせ、5~10秒間、両手を思いっきり押し合います。こうすることで徐々に血圧が上がり、体温や血糖値も上がってきます。
 
起き上がるときにも工夫が必要です。低血圧の人がなかなか起き上がれないのは、起きようとして頭を上げると脳の血流が減って、不快な症状が出るからです。そのため、起き上がるときはゆっくり時間をかけることが大切です。
 
まず、おへそを見るように首を前に曲げて頭を枕から浮かし、30秒ほど様子を見ます。いやな症状が現れなければ、首を曲げたまま30秒ほどかけて、ゆっくり上体を起こして座ります。次に、首を曲げたまま30秒ほどかけて立ち上がります。そして、頭を下げたまま30秒ほど、ゆっくり歩いてみます。それでも大丈夫なら、30秒ほどかけてゆっくりと頭を上げていきます。
 
普段の生活では、下半身の筋肉量を増やすようにしましょう。立った時には重力の働きで、血液が下半身にたまります。下半身の筋肉が十分あれば、筋肉が収縮して筋肉内の血管を押し、中の血液が押し出されて血圧が上がります。車に乗らずに歩く時間を増やしたり、エレベーターをやめて階段を使ったりすると、下半身の筋肉が増えてきます。
 
規則正しい生活をすると、体内時計や自律神経の働きが良くなって朝の起きにくさが減ります。就寝時刻や起床時刻、食事の時間は、平日・休日を問わずなるべく一定にしましょう。生活習慣の改善では、夕食は眠る時刻の2~3時間前に終わらせる、夜は少し早めに寝床につく、眠る前の30分はテレビやパソコン、ゲーム機、スマートフォンなど電子メディアの画面を見ない、などがおすすめです。

さいごに

血圧を安定させて健康な毎日を過ごすためには、十分な睡眠時間と質の良い睡眠が必要不可欠です。自分の身体に合った眠り方・対処法で、健康的な血圧を手に入れましょう!

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