血圧を正常に保つための生活改善マニュアル

健康診断で毎回測る血圧ですが、多くの人はその数値を何気なく見ているだけではないでしょうか。実は、血圧の異常は身体にさまざまな症状や病気を引き起こす可能性があります
 
はっきりと目に見える異常ではないため、気づかないうちに症状が進んでしまうことも…。そこで今回は、運動・食事・睡眠の3つの視点から、血圧の正常化に向けた改善方法をご紹介します。

 

「血圧」とは?

「血圧」とは?

血圧とは、血液を押し出す(流す)際に血管の内側の壁にかかる圧力のこと。私たちの体内を血液が循環しているのは、心臓が膨らんだり縮んだりして、ポンプの役割を果たしているため。人間の全身の血管をつなぎ合わせると全長約10万kmにもなるといわれ、その長さはなんと地球2周半に相当します。これほど長い距離のすみずみにまで血液が届くよう、血液は強い勢いで心臓から押し出されます。そのため、血管にはとても強い圧力がかかっています。
 
その圧力の数値を調べるのが、健康診断などで行われる血圧測定です。測定では「血管内で正常に血液が流れているか」「血管の内部に異常がないか」といったことを調べています。

正常な血圧の数値

■最高血圧

「収縮期血圧」のことをいう。「左心室」が収縮することによって中の血液を大動脈に押し流すとき、大動脈にかかる圧力。

■最低血圧

「拡張期血圧」のことをいう。「左心室」が拡張して血液を取り込んだときに、血管にかかっている圧力。

ちなみに「mmHg」という単位ですが、これは血圧の数値を示す際に使われる単位で「ミリメートル水銀柱」と読みます。「血圧計の水銀をどれだけ押し上げられるか」の数値で、血液をどれだけ押し流せるかを表しています。
 
例えば、血圧の数値が100mmHgなら水銀を10cm押すほどの圧力、130mmHgなら水銀を13cm押し上げるほどの圧力がかかっているということ。水銀をより身近な水に置き換えてみると、水銀は水と比べて13.6倍の重さがあるため、100mmHgなら1m36cm、130mmHgだと約1m77cmも押し上げるほどの圧力がかかることになります。血管がいかに過酷な状況に置かれているか、イメージできたでしょうか。

血管にかかる圧力は実際どれくらい?

心臓は1回拍動する毎に、70〜90mlの血液を押し出しています。その回数は、1分間に約70回、1日では約10万回にものぼります。
 
先ほどご紹介したように、血圧は140/90mmHg未満が正常とされています。しかし、年齢が上がると収縮時血圧が上がるといわれており、しばしば正常値を上回ってしまい、高血圧の疑いも高まります。

「血圧」の数値が上がるわけ

年齢を重ねると収縮時血圧が跳ね上がるのは、血管の弾力がなくなるため。
 
若い人の弾力がある血管は、血液が流れるときに負荷がかかっても、それを跳ね返すだけの力があります。しかし、歳を重ねて弾力がなくなった血管は、血液の圧力を跳ね返す力が弱いため、血管により大きな負担がかかってしまいます。さらに、負荷を軽減できないために、血管を傷つけてしまう恐れもあるのです。

高血圧と低血圧の危険性

では、高血圧と低血圧には、具体的にどんな危険性があるのでしょうか。

高血圧の危険性

「高血圧」の場合、血圧の上昇によって血管に穴が空いたり、血流が悪くなったりします。血液が運んでいる酸素や栄養素が身体全体へ十分に届けられなくなる可能性があります。

低血圧の危険性

低血圧は血液を押し流そうとする力が不足しているため、十分な血流が得られず、高血圧と同様に酸素や栄養素が全身に届きにくくなります
 
身体の全身に酸素や栄養素を運ぶためには、血圧が高くても低くてもダメ。健康な状態というのは、絶妙なバランスの上に成り立っているのです。

血圧異常に潜む病気の危険性

血圧異常に潜む病気の危険性

高血圧や低血圧といった血圧異常は、身体的な症状がはっきりと出ないため、見逃されてしまうことが多いようです。しかし、そのままにしていれば命に関わることもあります。特に、高血圧は40歳以上になると2人に1人が当てはまるといわれ、日本人の主要な死亡要因になっていることから「サイレントキラー」とも呼ばれています。

「サイレントキラー」高血圧の弊害

歳をとって血管の弾力性が衰えると、収縮時血圧が上がるということは前述の通りですが、血管もただ強い圧力を受け続けているわけではありません。圧力によるダメージを軽減するため、血管の壁は硬く・厚くなっていきます。これが「動脈硬化」と呼ばれる症状です。動脈硬化は、さらにさまざまな病気を引き起こすきっかけになります。

動脈硬化が引き起こす病気

動脈硬化によって血管の内部が狭くなると、血流が悪くなり、血のかたまり(血栓)ができたり、血管が破れたりします。すると、次のような重大な病気の引き金に…。

心筋梗塞

心臓に血液を供給する「冠動脈」と呼ばれるところに、スムーズに流れることができなかった血液が固まって詰まり(血栓)、その先に血液が流れず、壊死してしまうことで起こります。心筋梗塞によって胸の痛みや呼吸困難、吐き気などの発作が起こると、最初の発作で3割、それから1時間以内で約半数の人が亡くなるという危険な病気です。

脳梗塞

動脈硬化が起き、血液が流れにくくなっている箇所に血栓がたまることで発症します。それが原因で脳細胞へ酸素や栄養が届かず、言語障害や身体の片側における麻痺(片麻痺)などが現れます。

脳出血

動脈硬化により、脳内の細い血管が突然破裂して出血してしまう病気です。死にいたるほどの重度の症状で、脳梗塞と同様に言語障害や片麻痺が残ることもあります。

低血圧の弊害

低血圧の場合も、脳に関連する症状が現れます。

起立性低血圧

立ち上がったとき、めまいや立ちくらみでくらくらする症状。脳は身体の中で最も上部に位置しているため、血液を供給するにはある程度の血圧が必要です。しかし、その圧力が足りず、脳に血液が供給されないことで生じます。
 
血圧異常による病気には、ゆっくり進行するものもありますが、突然「死」という形で襲いかかる恐ろしいものも。健康診断などで血圧に異常が見つかったら、「ただ血圧が高いだけ」と軽視せず、次は病院で具体的に診察してもらうのが安心です。

血圧を正常にするための3つのアプローチ

血圧を正常にするための3つのアプローチ

高血圧や低血圧の改善は、薬にばかり頼る必要はありません。日々の生活にちょっとした工夫を取り入れることで、ゆっくり時間をかけて血圧を正常値に近づけていくこともできます。ただし、高血圧と低血圧では、その対策が正反対になる場合もあるため、注意が必要です。

運動

血圧異常の対策で効果的といわれているのは、継続的に弱い力を筋肉にかけ続ける「有酸素運動」です。全身の血流が促進されることで、動脈硬化が起こりやすいといわれている末梢血管への圧力が低下し、血圧を下げることができます。
 
しかし、どんな運動でも良いというわけではありません。効果があるのは、水泳、ウォーキング、ジョギングなど、自分のペースで一定のリズムを保ちながらできる運動メニューに限られます。また、一回の運動量は若干の汗が出るくらいにとどめ、無理はせず、継続して行うことを意識してください。
 
運動でも血圧改善にはNGなのが、筋トレやサッカー、テニスなどに代表される瞬間的に筋肉を使う「無酸素運動」です。これらは末梢血管に負担がかかって血圧が上昇しやすいといわれているため、血圧異常のケアが目的の場合は避けましょう。

食事

血圧対策には食事も重要。食べ物に含まれる栄養素は、血圧異常の予防につながることもあれば、逆に異常を引き起こすこともあるので、効果があるものをきちんと把握しておきたいところです。

塩分

高血圧の人は、塩分控えめが基本。塩分(塩化ナトリウム)は、血液を循環させるために欠かせないものですが、過剰に摂取してしまうと塩分濃度を一定の数値に下げようとして体内の水分を吸収してしまいます。すると、血管中に水分が吸収されることになり、血液量が増加して、血圧が増大してしまうのです。
 
しかし、高血圧のために減塩ライフを実践しようとしても、塩気をおさえた料理はちょっと物足りないと感じる人もいると思います。そんな人には「天然塩」がおすすめ。というのも、普通の塩は塩化ナトリウムが99%以上の純度であるのに対し、天然塩は塩化ナトリウムが79.5%。つまり、天然塩に置き換えるだけで「20%の減塩効果」があるのです。
 
さらに天然塩には、カリウムやマグネシウム、カルシウムなど血圧を下げるとされる成分も含まれているため、高血圧対策に有効な調味料なのです。ただし、減塩だからといって使いすぎは禁物です。
 
一方、低血圧の場合は、塩分を含めてあらゆる栄養素が足りていない場合が多いといわれています。そのため、栄養のバランスが整った食事をとることが重要です。

睡眠

血圧の数値は常に一定ではなく、上がったり下がったりを繰り返すもの。日中は身体の活動を促進する交感神経が働いているため血圧が上がりやすく、夜は身体の活動を抑え休息させる副交感神経が働いているため、下がりやすい特徴があります。しかし、睡眠サイクルが乱れると交感神経が活性化され、夜になっても一向に血圧が下がらないことも。この状態を「夜間高血圧」と呼び、以下の2タイプに分けられます。

夜間高血圧の2つのタイプ

・夜間昇圧型:元々、日中よりも夜間の方が血圧が高いタイプ
・夜間非降圧型:夜間になっても血圧が下がりにくいタイプ
 
夜間に血圧を測定する機会が少ないため、夜に血圧が上がっていることを把握している人は少ないのが実情です。しかし、夜間高血圧は普通の高血圧より約6倍も心筋梗塞などの病気にかかりやすいといわれています。それだけ眠っている間の血圧には重要な意味があります。

夜間高血圧の対策

では、夜間高血圧への対策はどのようにするのがベストなのでしょうか? まずは、自分が夜間高血圧症だと認識することから始めるのが重要です。簡単な方法としては、就寝前と起床後に血圧を測定して、その数値の差で判断することができます。自分でケアする場合は、一般的な高血圧対策や不眠対策が有効です。
 
具体的には、睡眠の1時間前に心地良いと感じる温度のお風呂(38〜40度くらいのややぬるま湯)に浸かったり、心身をリラックスさせるためにヒーリング音楽を流したり、アロマを取り入れたりなどしてみましょう。心身が落ち着くことで副交感神経の働きが高まり、血圧低下が期待できます。

自宅で血圧を測定する時のポイント

自宅で血圧を測定する時のポイント

サイレントキラーと呼ばれる血圧の異常事態は、目に見えないところでも着実に身体をむしばんでいきます。だからこそ、血圧がどんな状態なのかを日々、把握しておくことが大切です。そこで、自宅で血圧を測定する際のポイントをまとめてみました。

自分で血圧を測るときのポイント

血圧測定器には主に3つの種類があります。代表的なものは「上腕に腕帯(カフ)を巻いて測るタイプ」「リストバンドのように手首に巻いて測るタイプ」、そして「腕を血圧計に挿入して測るタイプ」です。どれを選んでも問題ないので、自分が使いやすいかどうかを判断基準にしましょう。

血圧測定のタイミング

血圧は「朝食をとる30分前と、夕食間か就寝前」に測るのが理想的。血圧は時間によって数値に差が生じるため、2回以上は測定するようにしましょう。朝は睡眠中に副交感神経が高まり、交感神経が沈静化している状態のため、血圧は低い状態ですが、夕食前や就寝前は交感神経がまだ働いているため、血圧が高くなりやすい傾向があります。朝と夜に血圧を測って平均値を割り出せば、正確な数値に近づきます
 
また、血圧を測定するタイミングとして、一時的に血圧が下がるといわれる食事後、入浴後、運動後は避けるようにしてください。

血圧の測り方の例

一般的によく使用されている「上腕カフタイプ」を例に、理想的な血圧測定の方法をご紹介します。
 
①セット
イスに座り、測定器をテーブルの上に置き、自分の心臓と上腕が同じ高さになるようにセットする。
 
②カフを巻く
カフをひじの内側から2cmくらい上になるように巻く。カフと腕の間は指が2本入るくらいが理想的。服をまくってカフを取り付けている場合、服で腕を圧迫しないよう注意する。
 
③血圧測定
初めて測定する人は、緊張で血圧がやや上昇してしまうことがあります。何度か測定してみて、その平均値を割り出してください。
 
定期的に測定することで、自分の血圧の基準値が徐々にわかってくるもの。基準値がわかることで、「いつもと数値が違うかも」など、血圧の異変に気づくことができるようになり、血圧異常が引き起こす恐ろしい病気の早期発見にもつながります
 
血圧とは、単なる数値ではなく、自分の健康状態を数字で表したもの。同時に血圧改善に効果的な運動、食事、睡眠は、私たちが健康に生きていくためには欠かせないものです。普段から身体に気を遣うことが、血圧対策の最善の方法といえそうです。
 
監修:坪田聡(雨晴クリニック副院長)
 
<参照>
「薬を飲まずに3週間で無理なく血圧を下げる方法」(桑島厳:SBクリエイティブ株式会社)
 
血圧ドットコム
http://www.ketsuatsu.com
 
健康・福祉の情報発信「いきいき倶楽部」
http://www.nanotechss.co.jp/ikiikikurabu/kenkoujouhou/teiketuatu.html
 

photo:Thinkstock / Getty Images

 

編集部内で信頼できると判断した情報、並びに医師や専門家への取材を元に信頼性のある情報提供を心がけておりますが、自己の個人的・個別的・具体的な医療上の問題の解決を必要とする場合には、自ら速やかに、医師等の適切な専門家へ相談するか適切な医療機関を受診してください。(詳細は利用規約第3条をご確認ください)