心配ない”あくび”と、心配な”あくび”【医師コラム】

眠たいときや退屈なときに出る「あくび」。どうしてあくびが出るか、知っていますか? いつもあくびが出て困るという人は、もしかしたら“単なる寝不足”ではない可能性も。
ここではあくびが出るメカニズムや、心配がないあくびと心配なあくびの違い、気を付けなければいけない病気などについてご紹介します。

「心配がないあくび」と「心配なあくび」の違い

あくびには、心配ないあくびと心配なあくびがあります。その違いは、「どんなときにあくびが出るか」が、判断のポイント。いつものあくびがどちらのあくびなのか、振り返ってみましょう。

心配がないあくび

夜に眠たくなったときや朝に目が覚めたときなど、睡眠と覚醒のはざまに起こるあくび。退屈な会議のときや、やることがなくてボ~ッとしている時にも、あくびがよく出ます。これは普通のあくびで、「心配がないあくび」です。このあくびは眠気によって意識のレベルが下がったり、注意力が散漫になったりしたときに出て、目を覚ましてくれたり注意力を高めたりしてくれます。

心配なあくび

脳の血流が減ったり、血液中の酸素やブドウ糖の濃度が下がったりしても、あくびが出ます。こちらは眠くなくても出るので、「生あくび」といわれます。生あくびは脳の病気や低血圧・低血糖などのサインなので、「心配なあくび」です。心配なあくびが出たら、すぐに周りの人に助けを求めて医療機関を受診しましょう。

「心配がないあくび」のメカニズム

あくびをすると、大きく口を開けて深く息を吸い込みます。また、自然と背中が伸びる姿勢になったり涙が出たりします。息を吐くときに、「あ~あっ」と声が出ることもあります。さらに、男性では勃起が見られることもあります。
 
これらの一連の動作に伴い、脳の働きが活発になって覚醒レベルが上がります。同時に、血圧が少し下がり、自律神経のうち「昼の神経」ともいわれる交感神経の活動が落ちることも知られています。眠たいときに出るあくびは、眠気を少し減らして寝床へ入りたくなるまでの時間を稼ぎ、寝床へ入ったらグッスリ眠るために役立ちます。
 
会社の会議や自動車の運転中など、眠ってはいけないけれど退屈なときに出るあくびは、眠気を減らして集中力を保つようにしてくれます。口を大きく開けたり思いっきり背伸びをしたりしたときに、アゴや体幹の筋肉が引き伸ばされます。この刺激が脳に伝わり、脳が活性化されます。

「心配なあくび」が出たときに疑うべき病気

眠気も感じず、退屈でもないときにでるあくびには、病気や身体の不調が隠れている場合もあります。「眠くないのにあくびが出る」というときは、病気のサインがないかチェックしてみましょう。

睡眠不足症候群

睡眠不足がかなりたまっているのに、自分ではそれを自覚していない状態を、「睡眠不足症候群」といいます。この状態になるとあまり眠気を感じなくなり、あくびばかりが出る人がいます。慢性的な睡眠不足に気づけないでいると、身体にさまざまな不調が生じる他、うつ病などの病気のリスクを高める可能性も。
睡眠時間が短めで、感情のコントロールが難しかったりミスや事故が多い人は、睡眠不足症候群の可能性があります。できれば10~20分の仮眠をとり、夜の睡眠時間を見直してみましょう。

脳の病気や急病

脳梗塞や脳出血、脳腫瘍、脳炎などの脳の病気や、心筋梗塞などの心臓の病気、胃潰瘍などからの大出血などでは、脳の血流量が減ります。酸素は血液によって運ばれるので、血流量が減ると脳が酸欠状態になります。脳は大量の酸素を消費するので、酸欠になったら大変です。そこで、大きく息を吸って意識レベルを保つために、あくびが起こります。意識のレベルが下がってあくびをしている人を見たら、脳や心臓などの急病の可能性がありますから、すぐに救急車を呼んでください。

低血糖

血糖降下薬の内服やインシュリンの注射をしている糖尿病の患者さんがあくびを始めたら、低血糖になっている可能性があります。脳以外ではブドウ糖のほかにタンパク質や脂肪もエネルギー源として使えますが、脳はブドウ糖からしかエネルギーを作れません。ですから、低血糖になると脳は働きが低下して意識がなくなる危険があります。そのためあくびをして覚醒度を上げ、ブドウ糖の補給を促すのです。こんなときはすぐに、病院からもらっているブドウ糖をなめたり、アメや甘いジュースをとったりしましょう。

乗り物酔いや偏頭痛の前兆

乗り物酔い(動揺病)や片頭痛(偏頭痛)の前兆としても、あくびが出ることがあります。これらの病気を持っていて、あまり眠くないのにあくびが出だしたら、酔い止めの薬や痛み止めの薬を早めに飲みましょう。

大あくびには注意を

あくびのときに思いっきり口を開けて背伸びをすると、とても気持ちが良いものです。しかし、口を開け過ぎるとアゴの関節を外す(顎関節脱臼)ことがあるので、注意が必要です。片側のアゴが脱臼すると痛みのほかに、顔が左右非対称になる、舌が動かしにくい、口が閉まりにくい、会話がしにくいなどの症状がでます。両側のアゴが脱臼すると、下あごが出っ張って口が閉まらなくなり、よだれが垂れて出てしまいます。
 
アゴの脱臼が疑われたら、整形外科などの外科系の医師に診てもらいましょう。多くの場合、簡単な操作で脱臼を戻してくれます。まれに、脱臼を整復しにくいときがあります。そんなときは骨折も疑われますので、口腔(こうくう)外科などの専門医を紹介してもらいましょう。
 
普段何気なくしているあくびにも、実は病気のサインが隠れている場合もあります。心配のないあくびだとしても、それは身体が休息を必要としている立派なSOSという場合も。“たかがあくび”と侮らずに、身体からのサインに早めに気づけるように心がけておきたいものですね。
 

photo:Thinkstock / Getty Images

 

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