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皆さんは、定年後にどんな生活を送りたいですか?Fuminners(フミナーズ)読者なら、快適な睡眠が満喫できる生活に憧れを抱く人も多いのではないでしょうか。時間を気にせず、眠れるだけ眠って、起きたいときに起きる。時間に十分な余裕がある老後なら、そんな夢のような日々を過ごせる…なんて考えは、もしかしたら大間違いかもしれません。
 
身体や見た目が変化するのと同じように、睡眠の質も加齢によって低下します」と語るのは、東京医科大学睡眠学講座の駒田陽子准教授。高齢になるほど、さまざまな睡眠障害が起こる確率が増加したり、高齢者特有の症状が出たりと、さまざまな問題を抱えてしまうのだそう。意外にシリアスな高齢者の睡眠事情とは?

高齢者は睡眠時間が短くて当たり前!?

高齢者の睡眠の特徴は、睡眠時間の減少と睡眠効率の低下、つまり睡眠の質が悪くなるという点にあります。
 
「特徴的なのは、若い頃に比べて、睡眠時間が短くなる、深い睡眠が減り中途覚醒が増えるという点です。そんな状況に焦ってしまう人も多いのですが、加齢による睡眠の質の低下は、体力や食欲が落ちるのと同じで抗うことができません。自然な変化なので、深刻に考えすぎる必要はありませんよ」(駒田先生)
 
しかし、どうして歳をとると睡眠時間が減ったり、睡眠の質が下がったりするのでしょうか?
 
睡眠時間が短くなってしまう原因は、日中の活動量の減少にあります。朝から晩まで仕事で脳と身体をフル稼働させていたときは、その疲労を回復するために十分な睡眠時間を要しましたが、仕事をしなくなり、外出や身体を動かすことにも消極的な状態になると、身体も脳もほとんど疲れないため、少しの睡眠時間で体力が回復してしまいます。また、深い睡眠が減るのは、加齢によって体温などのメリハリが小さくなることも影響しているそう。
 
また、高齢者は早寝早起きという印象がありますが、これは体内リズムが前倒しになっていることが原因なのだそう。
 
「仕事をリタイアして社会活動の時間が少なくなると、どうしても時間を持て余して夕食や就寝の時間が早くなってしまいます。すると、体内リズムの前倒しに拍車がかかって、早寝早起きの生活スタイルが確立されてしまうんです。つまり高齢者は、望むと望まざるとに関わらず、体内リズムの影響で“仕方なく” 早寝早起きしてしまうものなのです」(駒田先生)

高齢者の睡眠障害対策は、昼間に明るい場所で活動すること

加齢にしたがって睡眠の質が下がっていくのとリンクして、睡眠障害の割合も高くなるといいます。特に多いのは、不眠症、睡眠時無呼吸症候群(SAS)、周期性四肢運動性障害、むずむず脚症候群といった症状です。成人期と同様、不眠症は女性、SASは男性に多く見られます。
 
「高齢期で特徴的なのは、閉経後の女性を中心にSASの症状が出やすくなること。これは、呼吸筋肉を保つ働きをもつ女性ホルモンが減少することが一つの原因とされています」(駒田先生)
 
また、高齢者の中には、しっかり眠れているのに、十分に睡眠がとれていないと思い込んでしまう人もいるそう。では、高齢者はどのように自身の睡眠と接していくのが理想的なのでしょうか?
 
「まず“歳をとってからは、そんなに眠れるものではない”という割り切りが必要でしょう。時間が十分にあるため、少しでも長く寝ようと、布団の中に居続けてしまう人も多いですが、本来寝る場所であるベッドで眠れない時間を過ごすわけですから、不眠感がより強くなってしまい、逆効果です。“ちょっと遅寝&ちょっと早起き”を心がけて、布団にいる時間と、実際に眠る時間が近づくようにすれば、同じ睡眠時間でも熟睡感が得られますよ」(駒田先生)
 
具体的な睡眠対策については、「積極的に身体を動かすことが一番」。高齢者の睡眠の課題は、運動量や社会活動量の低下が原因であることが多いので、その活動量を補填できるように、こまめに動くことが有効な対策となります。運動が難しいようであれば、外出する、家事をするなどでもOK。
 
介護が必要な高齢者の場合は、周囲の人たちが積極的に外の空気を吸わせてあげることが不眠対策につながるそう。
 
「ずっとベッドに寝たままだと、昼にたっぷり寝てしまって夜に眠れなくなったり、体内リズムが崩れたりと、睡眠に悪影響を与えてしまいます。自然光を浴びるだけでも体内リズムは正常になるので、日中は積極的に外へ連れ出してあげるのが理想です。室内でも、部屋を明るくし、昼間であることを身体に認識させると、睡眠に必要なホルモンの分泌にも良い影響が出てきます」(駒田先生)
 
高齢者にとっては、“有り余る時間”が睡眠の大敵。ダラダラと過ごすのではなく、少しでもアクティブに使うことが一番の不眠対策になるようです。よく、「働いているうちから老後の楽しみを見つけておくことが重要」なんてことを耳にしますが、まさにその通り。若いフミナーズ読者の皆さんは、今のうちから“老後の生活の軸”を見つけられるように、さまざまな種まきをしておくとよさそうですね。
 
監修:駒田陽子(東京医科大学睡眠学講座 准教授)
 
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photo:Thinkstock / Getty Images

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