あなたの不眠症傾向と、タイプ別の適切な治療法とは?

不眠の原因となる「悪いクセ」を「良いクセ」に変えていくことで、睡眠薬に頼らずに不眠症を改善するという「認知行動療法」。治療法の効果は医学的に立証されているものの、知らない人もまだまだ多く、聞いたことはあっても「自分に合うのか不安」「自分の症状にも効くの?」と疑問を抱く人もいるかもしれません。そこで、臨床心理士で早稲田大学人間科学学術院助教の岡島義先生に、認知行動療法を受ける患者さんの傾向や、不眠症タイプ別の改善例について話を伺いました。

あなたの不眠症タイプは? 症状によって異なる治療方法

岡島先生によれば、不眠症には3つのタイプがあり、以下のようにそれぞれ特徴や適した治療方法が異なるようです。
 
●入眠困難タイプ
入眠困難の患者さんは、「今日も寝つけないかも」という恐怖感が強く、寝るための努力をしているにも関わらず、寝つきに1時間以上かかるという人が多いそうです。そうした場合は、身体や環境の調整をして、眠れる状態をつくることを目指します。
 
「『眠れないから早く寝なければ』という意識が強く、早めに床につく人が多いので、『睡眠スケジュール法』を使った治療を行い、睡眠時間のムダをなくし、眠りの質を高めることを目指します。また、夜になると悩み事や考え事をしてしまって眠れないという人には、寝る前に『筋弛緩法』を行ってもらい、リラックスして眠りにつけるようにアドバイスします」(岡島先生)
 
●中途覚醒タイプ
高齢になると中途覚醒は増えていきますが、それを除くと中途覚醒だけが症状として現れる人は少なく、入眠困難と併発することが多いとのこと。中途覚醒の人がやりがちな特徴は、起きるたびに時計をチェックしてしまうことだそうです。これは「また起きてしまった」と意識してしまい、中途覚醒を悪化させる習慣です。
 
「ついつい時計を見てしまうなら、時計を徹底的に排除することが大切です。夜だけでもよいので、家中の時計を隠すようにしましょう。また、中途覚醒は高齢の方に多いですが、これは年齢により睡眠の質が落ちるためで、ある意味仕方のないことです。その点を理解し、不要な焦りを感じないように、まず睡眠教育で加齢による睡眠の変化をお伝えするようにしています」(岡島先生)
 
前述の通り、中途覚醒と入眠困難は同時に現れることもあるため、両方の対策を同時に行うことも多いそう。また、30〜40代の若年層に見られる中途覚醒は、忙しい人、責任感が強い人に多く、帰宅後も仕事のことを気にしてしまいがち。「そんなときは考え事をせずリラックスできるように、治療法として筋弛緩法を取り入れます」と岡島先生。
 
●早朝覚醒タイプ
早朝覚醒に悩む人は、ここまでに紹介した2つのタイプと対策がやや異なります。
 
「不眠症の中でも、早朝覚醒は特に高齢者に多いですね。夜の入眠が遅くても、早朝4時や5時に起きてしまうのです。睡眠時間が短いため、夕方くらいに眠気に襲われていることも多く、寝てしまえば夜の入眠も遅くなっていきます。まずは『夕方に眠くなっても眠らない対策』を一緒に考え、実践してもらいます」(岡島先生)
 
自分の不眠がどのタイプか分かれば、治療の流れがある程度イメージできそうです。カウンセリングに行っても、どんなことをするのか分からなくて不安…という人は、まずは自分の状態がどのタイプに当たるか、チェックしておくといいかもしれません。

不眠症の原因によって、治療が大きな効果を発揮する場合も

認知行動療法はカウンセリングを通じ、患者さんそれぞれに合った方法で治療を進めていきます。不眠症の深刻な悩みを抱えていても、適した治療を行うことによって、大きな効果が得られることもあるそう。治療の方法と、その方法で大きな改善効果がみられた患者さんのタイプについて、岡島先生に実例を教えてもらいました。
 
●睡眠教育・睡眠衛生指導が効果的だった患者さん
睡眠に関する知識が少ないことで、不適切な睡眠習慣を続けてしまっている人には、基本的な知識を与えてくれる睡眠教育や睡眠衛生指導が効果を発揮することがあります。
 
「慢性不眠症の人は、睡眠について自分でもいろいろと調べているので、知識をかなり持っています。一方、例えば頭痛持ちなどの身体疾患による症状の一つとして不眠症に悩んでいる患者さんは、あまり知識を持たないことが多いんです。そういう人には、睡眠衛生指導が有効。また前述のように、高齢者の方には睡眠教育で年齢と睡眠の関係についてお話すると、『今までと同じように眠れなくてもいいんだ』と気づき、不眠症が改善するケースもあります」(岡島先生)
 
●筋弛緩法が効果的なケース
緊張感が高い人や考え事が多すぎて眠れない人には、筋弛緩法が効果的です。
 
「具体的な例では、60代で20年間睡眠薬を飲み続けている患者さんがいました。睡眠に関する知識は豊富でしたが、色々考えすぎてしまうタイプで緊張感が強そうに見えたので、筋弛緩法を取り入れました。すると、次のカウンセリングで『いつになく眠れた!』との報告があったのです。結局、その方は筋弛緩法を始めただけで治療が終わってしまいました」(岡島先生)
 
不眠の原因や患者さんのタイプと治療方法がぴったり合えば、このように絶大な効果を発揮する可能性もあります。「自分には合わないかも…」と思わず、カウンセリングを大切に行っていくことが大事なのですね。

時には難しい治療も…でも、一人じゃないから頑張れる

カウンセリングを重ね、不眠の原因となるクセを改善していく認知行動療法。少しずつ進めていくため、薬物治療よりも治療期間が長くなりがちです。中でも特に長かったケースについて、岡島先生に聞いてみました。
 
「20代の患者さんが不眠を訴えてやってきました。不眠症の治療を3カ月行ったのですが、どうにも結果が出ない。そこでもう一度ヒアリングを行ってみると、どうやら不眠症に加えて睡眠リズム障害(概日リズム障害)の特徴もあることが分かってきました。不眠症と睡眠リズム障害は違いが分かりづらく、混同されることが多いんです。また、同時に生じるケースもあります。その患者さんは入眠困難と中途覚醒を併発していたのですが、シフトワークのせいで生活リズムが不規則で、さらに夜眠れないと何か食べてしまうという状態でした。そのため、まずは朝の光をしっかり浴びること、また朝食として何かしら口に入れるようにすること、夜は早めの時間に多めに食べることを指導し、末梢時計、いわゆる腹時計を整えたんです。このようにリズム障害の治療を4カ月行って、ようやく不眠症状が改善しました」(岡島先生)
 
ほかにも、睡眠薬をやめたい人に対しては、カウンセリングを何回か行った後で減薬を開始するため、断薬成功に至るまでの期間が長くなる傾向にあります。減薬の様子を見ながら、1年ほど治療が続くこともあるとか。しかし、治療の内容ではなく、意外なことがきっかけで症状が好転していくこともあります。
 
「重度の不眠症に悩んでいたある患者さんは、さまざまな病院を転々としても不眠が改善されず、藁にもすがる思いで私の元にやって来ました。私もどうにかして患者さんの不眠を解消してあげたいと思い、力強く『一緒に何とかしましょう!』と声をかけたことを覚えています。そのことがきっかけで信頼していただき、一生懸命治療に協力してくれたことで症状も改善していきました。この患者さんの場合、治療方法というよりも、治療に向けて信頼できる人物の存在が不眠解消へのきっかけになったと思います」(岡島先生)
 
認知行動療法は時間がかかるだけでなく、ホームワークや睡眠スケジュール法でそれまでの行動パターンを変える必要があるため、強い自制心が求められます。しかし、一人では難しい治療も、カウンセラーが一人ひとりのことを考えてサポートしてくれます。カウンセラーと一緒なら乗り越えられる! 認知行動療法には、そんな利点もありそうですね。
 
監修:岡島義(早稲田大学人間科学学術院助教)
 
【認知行動療法については、下記の記事もご覧ください】
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photo:Thinkstock / Getty Images

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