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熱帯夜が続く夏は、「暑くて眠れない」「寝苦しい」と感じてしまう人が多いのではないでしょうか。そんな夏の睡眠の悩みを解決してくれるのが「ぬる湯」の温泉。「夏に温泉なんてとんでもない!」「余計眠れなくなりそう」と思うかもしれませんが、「ぬる湯」は快眠に直結する自律神経を整えることに効果的なのだとか。
 
今回は日本全国の名湯を巡る、温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリストの石井宏子さんに、暑苦しい夏でも “ウトウトできる”ぬる湯の温泉地を紹介していただきました。

自律神経のバランスを整え、眠気を誘う「ぬる湯」

ぬる湯とは、30~40度の風呂温度のこと。一般的なお風呂の温度が42度前後なので、ぬるめの温泉はやさしく感じて、物足りなく感じるかもしれません。しかし、ミネラル豊富な温泉のぬる湯なら、じっくり深部体温を温める効果があるそう。自律神経のバランスを整え、入浴後にじわじわと眠くなる身体をもたらしてくれるのだとか。
 
寝付きが悪かったり、寝ている間に途中で目覚めてしまうなど睡眠の不調があるときは、自律神経のバランスが乱れている可能性大。緊張やストレスの中で優位になる交感神経を鎮め、休息系の副交感神経が優位な状態へと、自律神経のバランスを正常化していくことが必要になります。
 
入浴で深部体温が温まれば、その後深部体温の低下に伴って自然な眠気がやってきます。夏場こそ、この熱すぎないほどよいぬるさが、温泉をゆったりリラックスして楽しむにはもってこいです。
 
「自律神経のバランスが崩れていて、夜なかなか自然な眠気がやってこない人も多いはず。休んでいる時間にもあれこれ考えすぎてしまうんですね。それにはリラックスすることが必要です。温泉は、忙しい人が『スイッチオフ』を思い出す手段の1つだと思うんです」(石井さん)
 
確かに、スイッチオンのまま走り続けている人は、自分がどうしたらリラックスできるのか、スイッチの切り替え方法を忘れてしまっている場合もあるのかもしれません。体温とほぼ同じ温度の「ぬる湯浴」は、湯船につかっていると自分の身体の存在がわからなくなるような感覚に陥ることから「不感浴」とも呼ばれているとのこと。
 
「世界と自分の境界線がなくなったような不思議な感覚が、究極のリラックスになります。頭や心の中がからっぽになっていく開放感は本当に気持ちがいいですよ」(石井さん)
 
身ひとつでぼーっとする時間を持つことで、リラックスしながら自律神経に好作用していく「ぬる湯」。スイッチオフを思い出させるだけでなく、快眠をも後押ししてくれる力がありそうです。

意外と多い! 温泉の基本成分とは?

ここで温泉の成分を少しだけご紹介しておきましょう。温泉には大きく分けて9種類の泉質(単純温泉、塩化物泉、硫黄泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、含鉄泉、酸性泉、二酸化炭素泉、放射能泉)があり、それぞれに特徴や作用が異なります。そこで女性なら気になる「美人の湯」。実は、特定の泉質だけを指すものではなく、これにもいくつかの種類があり、目的が違うそう。
 
【「美人の湯」とされる主な泉質】
●ナトリウム-炭酸水素塩泉(重曹泉)
肌の汚れや古い角質を落とし、石けんのような作用が期待できる温泉。お肌がつるスベになります。pH8.5以上のアルカリ性の温泉も同じような作用が期待できます。
 
●硫黄泉と炭酸ガスを豊富に含んだ二酸化炭素泉
血行を促進してくれる温泉。体中の酸素や栄養のめぐりがよくなり、代謝がアップ。デトックスされた身体、クリアな美肌へ導くサポートをしてくれます。
 
●ナトリウム-硫酸塩泉(芒硝泉)
化粧水のようなしっとり肌が期待できる温泉。塩化物泉は、塩の成分が薄いヴェールのように肌を包み、肌の水分や熱を逃げにくくしてくれます。湯あがりも「しっとり」「ほかほか」が持続します。
 
「一口に『美人の湯』といっても、美肌へのアプローチが異なるんですね。温泉選びは、その時に何をしたいかというインスピレーションを大事にすることがポイントです。例えば美肌の湯で気分がアガるなら、それに合った泉質から選んでみるのもいいですね。温泉から帰ってきたときの満足感もグッと増しますよ」(石井さん)
 
なるほど、何となく温泉を決めるのではなく、目的を決めていくと楽しみ方に幅が出そうです。

リラックス・安眠効果が期待できる! ぬる湯温泉6選

泉質の特徴を知れば知るほど、温泉選びはもっと楽しくなるもの。ご紹介した泉質をふまえ、さっそく「ぬる湯」をテーマに名所を見ていきましょう。
 
1. 長湯温泉(大分県)
●特徴:42℃のミネラルが豊富な炭酸水素塩泉と、33℃の天然の炭酸泉。(二酸化炭素泉)
●作用:血行促進
おすすめは「ラムネ温泉館」という外湯。炭酸泉には炭酸ガスがたくさん含まれ、じっと動かずにいると肌の上に泡がびっしりとついてきて感動的です。ぬるいお湯でも炭酸ガスの働きで身体の芯からぽかぽかしてきます。長湯温泉のラムネ温泉館の源泉は33℃で、そのまま加温せずに入れる適温で湧出する貴重な炭酸泉です。
 
2. 高峰温泉(長野県)
●特徴:42℃の加温した温泉と36℃の源泉浴槽(硫黄泉)
●作用:血行促進、自律神経のバランスを整える
温度差のある2つの浴槽へ交互につかることで、自律神経のバランスが整い「朝起きられない」「夜眠れない」など症状が緩和されます。高峰温泉は標高2,000m、渓谷を見下ろす「雲上の秘湯温泉」と呼ばれる名湯。真夏でも26℃程度の気温しかないため、避暑地としても候補に入れたい温泉です。
 
3. 栃尾又温泉(新潟県)
●特徴:ラジウムを含む放射能泉で泉温は37℃。
●作用:ホルモンバランスを整える、リラックス
8世紀に開湯され、古くから「万病の湯」「子宝の湯」として親しまれてきた湯治場です。のぼせることなく20~30分じっくり浸かることができ、深部体温を温めることでホルモンバランスが整い、子宝に恵まれると信じられてきました。リラックス効果や安眠への期待も膨らみます。
 
4. 神明温泉(岐阜県)
●特徴:アルカリ性の単純温泉、30℃の源泉と加温した温泉
●作用:リラックス、美肌
トロっとした質感でpH8.9と高く、お肌のつるスベ感を実感できます。そんな神明温泉のおすすめの宿は「すぎ嶋」。源泉と加温泉に交互に入ることで深いリラックス効果が期待できるはず。
 
5. 仙仁温泉(長野県)
●特徴:アルカリ性単純温泉(pH8)で、源泉温度は34℃
●作用:美肌、疲労回復
かつて山間の秘湯と呼ばれた一軒宿「岩の湯」の洞窟温泉がおすすめです。洞窟は一つしかないため混浴となりますが、男女それぞれ専用の脱衣所で湯浴み着を着て温泉に入ります。洞窟内には天然のミストが立ちこめ、なかなか触れることない洞窟という異空間そのものが癒しの一つになりそうです。
 
6. 法師温泉(群馬県)
●特徴:カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉、浴槽の底から自然湧出する希少な温泉
●作用:慢性疾患や神経痛、やけどなど、保湿、美肌
別名「お風呂の鹿鳴館」とも呼ばれる、国の有形文化財に指定された一軒宿「長寿館」。この宿は源泉を湯船に流しているのではなく、湯船の足下から源泉が湧いています。ぬる湯としては温度が高めで40℃。一番入眠しやすいお風呂の温度が湧き出ている貴重な温泉です。夏はやや暑いかもしれませんが、入浴時間を短くし、何度も入り直すことで自律神経のバランスが整っていき、眠気を誘います。
 
身体を芯から温めることで深いリラックス感を得ることができる「ぬる湯温泉」。今年の夏は、ぬる湯温泉でやさしい眠りを誘う旅をしてみませんか?
 
監修:温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト 石井宏子
 
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photo:Thinkstock / Getty Images

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